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『人生に乾杯!』 (2007/ハンガリー)

   ↑  2014/03/27 (木)  カテゴリー: ロマンス、ドラマ




人生に乾杯! / 洋画


●原題:Konyec – Az utolsó csekk a pohárban
●監督:ガーボル・ロホニ
●出演:エミル・ケレシュ、テリ・フェルディ、ユーディト・シェル、ゾルターン・シュミエド 他
●ヨーロッパの小国ハンガリー。かつて運命的な恋に落ちたエミルとヘディも、いまや81歳と70歳の老夫婦。時代も変わり、年金だけでは家賃の支払いにも事欠く日々。そんなある日、ヘディの大切なイヤリングまで借金のカタに取られる事態に。見かねたエミルは年代物の愛車チャイカに乗り込むとひとり郵便局へと出向き、ついに強盗を決行。最初は当惑気味のヘディもやがて夫と合流、ふたりは手を取り合って逃避行へと繰り出すが・・・。



【ハンガリー映画】って、実は初めてだった!
というわけで、まずはハンガリーの歴史的背景についてまとめメモを。学生時代に世界史を習ったことがない私にとって、映画は歴史の勉強も兼ねていたりします。アリガタイ~



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第2次世界大戦後はスターリン指導のソ連の影響下に置かれ、1949年には東側諸国の一つの社会主義国家として「ハンガリー人民共和国」に。1956年にはスターリン批判を巡ってソビエト連邦軍とワルシャワ条約機構軍が進攻し【ハンガリー動乱】が起きる。政権交代により1968年には経済改革が行われ、市場経済が導入。1980年代、ソ連のゴルバチョフ書記長によるペレストロイカ以降は民主化が推し進められ、西欧流の社会民主主義を志向する「ハンガリー共和国」となる。1989年にはオーストリアとの国境線の鉄条網を撤去して東ドイツの人々のオーストリア国境通過を認めるという【ヨーロッパ・ピクニック計画】が起こり、後のベルリンの壁崩壊へと向かわせる契機に。一連の【東欧革命】後にソ連は崩壊、ハンガリーは社会主義から資本主義へと体制転換し【旧東欧の優等生】と呼ばれるほどの経済成長を遂げ、2004年にはEUにも加盟。ところが2008年の世界金融危機がEU市場を直撃し、ハンガリー経済も大きく後退。ハンガリー航空やブダペスト交通公社など元国営企業も経営破綻するなど、財政危機に陥り国民経済は失速することに。その後、IMF支援のもとで何とか持ち直し、2014年現在ではインフレの鎮静化や雇用環境改善などにより景気回復基調が明確になってきていると言われています←今ココ

また、ハンガリーは国民の自殺率が非常に高い国としても知られています。もともとハンガリーの自殺率は世界的に高く、社会主義時代には常に世界第1位だったほどでしたが、体制移行後もインフレと失業率の増加などで貧富の差が広がったことなどもあり、依然として深刻な社会問題として捉えられています。理由としては、東部と西部(西部の方が裕福)、首都圏と周辺地域、都市と農村地域の間に根強く残る格差問題や、年金制度改革や高齢者の所得保障問題などが主な原因として考えられているようです。10年ほど前は高齢者(75歳以上)男性の自殺率の高さが特徴と言われていましたが、2012年WTOによる資料では45~54歳層の多さが目立ってきているようです。ハンガリーと同様、やはり自殺率の高い日本人としても他人事とはいえない問題ですね・・・・・

参考資料:盛田 常夫 政治経済コラム「ハンガリーは資本主義経済か」ハンガリー治安情勢 在ハンガリー日本大使館~最近の話題から~世界最高水準の自殺率の構造を探る ニッセイ基礎研 REPORT1900年~2010年 主要国の自殺率(人口10万人当たりの自殺数)ハンガリー経済・金融概況





最近なんだか「高齢者映画」にすごく弱くて参ってしまう。
今はすっかりオジイチャン、オバアチャンになってしまった人たちが、昔は情熱と勇気を持って人生を切り開いてきたこと、時代を築き上げてきたこと・・・・誰にでも若い時があったなんて当たり前のことだけれど、でもこの映画を観るにあたってハンガリーという国が辿ってきた道のりを見つめ直してみたら、彼らの存在がさらに尊いものに思えて泣けてしまった。主人公のエミルが81歳ということは、上に書いたこの戦後激動の歴史を辿ってきた人なんだもの。



↑若かりし日のおじいちゃんとおばあちゃん    ↑強盗で指名手配されたおじいちゃんとおばあちゃん

『人生に乾杯!』なんていうハートフル系の邦題が付けられているこの映画ですが、そんなノリノリの気持ちで見られるものじゃありません。本当は高齢者の高い自殺率をも背景とした、ハンガリーの医療・年金・介護・福祉といった社会保障制度への痛烈な批判が込められているように思います。

ハンガリーでは、1998年の年金制度改革によって導入された「3つの柱」(①従来からの賦課型の公的年金、②民間の年金ファンドによって運用される強制加入型の個人積立年金、③任意加入型の故人積立年金)を並立させた【混合型の年金制度】が、短期的な政権交代が重なったこともあって2010年に挫折しているんですね。若い時代にはイデオロギーも含め国際政治の荒波に飲み込まれ、苦労を重ねてきた人生なのに「年金だけではもう生活できない!」と政治に翻弄されるおじいちゃんたちの怒りが、ダイレクトに伝わってくるってもんです。これはもう立派な反社会体制映画!アメリカン・ニューシネマと同じ流れ!



警察の追跡も包囲網も体当たりで次々に突破していく、希望の見えない逃走劇。
海に面していない内陸国ハンガリーに生きたヘディおばあちゃんが「人生の心残りは、海を見てみたかったこと」なんて呟く姿は『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』を思い起こさせるし、まるで『バニシング・ポイント』としか思えない主人公の行く手を塞ぐパワーショベルのダメ押し的な登場に、わたしゃラストを迎える辺りには「もーおじいちゃんたちにこれ以上酷い結末を迎えさせないでぇぇ!!」と胸が痛みまくりでした。

が、しかし。その割にはかなりツメの甘いラストで、逆に大いに笑わせてもらいました。このくらいユルくても私は全く構いません!(笑)




そういえば、原題の「Konyec」はロシア語の"Конец"からきた「The End(おしまい)」という意味なんだそうですが、原題にはもうひとつ、邦題にはない「Az utolsó csekk a pohárban」というサブタイトルが付けられています。これは"コップの中の最後の一滴"という意味。

旧ソ連体制によるハンガリーの共産主義時代の「終わり」がもたらしたもの、あるいは人間として、人生の終わりに見えてくるもの。最後とはいえど、きっちりとそこに存在したコップの1滴。最後は海に出会えたかな。


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  2014/03/27 | Comment (0) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit
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