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『ミラージュ』 (2007/チリ、アメリカ)

   ↑  2013/09/15 (日)  カテゴリー: アクション、パニック


ミラージュ [DVD]


●原題:MIRAGEMAN
●脚本、編集、監督:エルネスト・ディアス=エスピノーサ
●出演:マルコ・ザロール、マリア・エレーナ・スウェット、アリエル・マテルーナ、イバン・ハラ、マウリシオ・ペスティク 他
●クラブの用心棒マルコは、強盗に両親を殺害された過去をもつ男。唯一の家族、弟のチトはそのショックで心を閉ざし、現在入院療養中。愛する弟の治療費と生活費を稼ぐため、クラブのオーナーからの嫌がらせに耐えながら、毎日一人黙々とトレーニングを続けるマルコだったが、ある日、強盗団が押し入る現場に遭遇。とっさに強盗のマスクで顔を隠して強盗団を撃退、襲われていた女性を救う。翌日、ワイドでは「覆面ヒーロー、強盗を退治!」のニュースが。チトもニュースを見て大喜び。覆面ヒーローを真似て元気を取り戻していく。その様子を見たマルコは一大決断。お手製の覆面を被って「ミラージュマン」と名乗り、街に巣食う悪者たちと戦うことを決意する・・・!





街にはびこる悪をやっつける幻の男!ということで「ミラージュマン」。邦題も原題と同じ"ミラージュマン"にすれば良かったのになー。あらすじを見たらまるで『キックアス』のようだったので、てっきりコメディのノリかと思ってワクワク観始めたら、オープニングからいきなり悲惨すぎる設定にたじろいでしまった。物語の根にあるもの、ミラージュマンが背負うものがあまりにヘビーすぎる・・・・・。その暗さが常に付き纏うので、「痛快!コスプレヒーロー誕生!!」と言い放つエンターテイメントものとして観るには・・・かなり微妙かも。

しかも、陰惨な事件を扱う警察がミラージュマンにヘルプを頼むのだけれど、見取図やら犯人グループやらそこまで具体的に分かってるなら自分たちでやってくれ!って話ですし、女性レポーターも公共の電波を使ってベラベラ喋るなー!純真すぎるミラージュマンが可哀想よ・・・と色々ツッコミどころ満載の映画でした。


でも、この映画を手がけたエルネスト・ディアス=エスピノーサ監督のやりたいことというのは、それはもう手に取るようにビシビシ伝わってきます。いきなり画面が分割されて戦隊ヒーロー風にカッコよくキメてみたり、『タクシードライバー』ばりに鏡の前でトラビスをやってみたり、突然街中でのゲリラ撮影でリアルさを押し出してみたりだとか。編集は粗いんだけれど、情熱はシッカリ伝わってきました。(そうそう、チリは他の中南米諸国の中では比較的経済も治安状況も安定していると言われますが、やっぱりロングショットでの"ひったくり"のシーンを見せられると、あまりにリアルでドキ!!っとします)

それにね、ミラージュマン、最初は着替えにメチャメチャ時間がかかったり、挙動不審で目付きが怪しい強盗にしか見えないし、デザイン画も驚くほどヘタっぴですぐに凹んでしまったりと情けないところも多いんだけれど(男ってまったくも~という感じですかね)、言葉数は少なくとも心優しいお兄ちゃんとして、切ないものがありました。ほんと、暗いんだけどね。



それとこの映画の一番のみどころといったら、やっぱり本気度マックスの格闘シーン!映画のアクションシーンなんて今までどれも同じだと思っていたんですが、ミラージュマンはそこらへんのヘッポコ映画ヒーローとは全く違います。本物です。ミラージュマンの動きの速いこと速いこと!圧倒的に強く、しかも身のこなしが美しい!!ミラージュマンを演じたマルコ・ザロールは実際に武術家でもあるので、格闘系がお好きな人はバトルシーンなどかなり見応えあるかもしれません。つ、強すぎてシャレになりません・・・



↑トーク番組に出るミラージュマン(笑)。こういう変化球的なローテンション、私はけっこう好きでした。「えぇぇぇっ!?」というような、まさかの幕引きではありましたが、実は初めて観る【チリ映画】大変勉強になりました。「ミラージュマン2」お願いしたいところです。次回は是非、弟くんに頑張ってほしい!


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  2013/09/15 | Comment (2) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit

『幸せパズル』 (2010/アルゼンチン、フランス) ※ネタバレにご注意を ラストに触れています

   ↑  2013/06/18 (火)  カテゴリー: ロマンス、ドラマ




幸せパズル [ マリア・オネット ]


●原題:ROMPECABEZAS 英題:THE PUZZLE
●監督、脚本:ナタリア・スミルノフ
●出演:マリア・オネット、ガブリエル・ゴイティ、アルトゥーロ・ゴッツ、エニー・トライレス、フェリペ・ビリャヌエバ、フリアン・ドレヘル、ノラ・ジンスキー、マルセラ・ゲルティ、メルセデス・フライレ 他
●ブエノスアイレスで暮らす専業主婦のマリアは、夫と息子の幸せだけを生きがいにする平凡な女性だった。しかし、50歳の誕生日にジグソーパズルをプレゼントされたことで、彼女の人生は一変する。彼女にはそれまで気づかなかったパズルの才能があったのだ。ある日“パズル大会のパートナー募集”という張り紙を見た彼女は、家族に内緒で大富豪の独身紳士ロベルトのもとを訪ね、一緒にパズルの世界選手権を目指すこととなるが・・・。



スペイン語の原題「ROMPECABEZAS」は「ジグソーパズル」という意味ですが、語源から辿るとこのジグソーパズルとは【romper:壊す】+【cabezas:頭(cabezaの複数形)】で【頭破壊ゲーム】という直訳がコワイ単語でもあり(笑)、アタマをぶっ壊すほどの謎、だとか困難な問題といったイメージを持つ言葉でもあります。で、そこから転じて「人を熱狂させるような人物または物を指す言葉」という意味でも使われます。英語の場合の「PUZZLE」における"当惑"だとか"悩ます"というよりも、もっと強い感じ。

時々、映画制作本国のポスターデザインや原題を見ると、そこから伝わるものが日本のそれとだいぶ違うことがあります。この映画もこれに該当するのかも。誰も「幸せパズル♪」だなんて言ってない(笑)。この邦題って日本人が好みそうだなー。本当はビターなのに『マルタのやさしい刺繍』とか『しあわせの雨傘』だとか。



だから、この映画に関しても「家庭にしか居場所がなかった主婦が自分の好きなことを見つけて新しい世界に踏み出していく!」といった高揚感を全面に出した物語でもないし、彼女が纏う雰囲気も、いわゆる主婦の"悲壮感"とはだいぶ違う気がしました。

確かに、家族にも言いたい事を飲み込んでしまうほど控えめな主婦の立ち振舞いや行動には思わず「がんばれ!」と言いたくなってしまうけれど、でも実は、彼女は最後まで家族にも嘘を突き通したし、夫とのベッドでも時に積極的な表情を見せ、パズルのパートナーであるロベルトと寝ることも受け入れるという、ある意味一種の図太さやガッツ、官能への情熱や正直さも持ち合わせていたわけで。日本のポスターやジャケットデザインが「二人で幸せ♪」のように映しているけれど、オリジナルでは彼女一人で堂々と映っている意味も分かる気がします。

そう、だから私は決してマリアを不幸だとは思いませんでした。家事に明け暮れ、家族にこき使われているように描いてはいるけれど、彼女は"主婦"として家族に手の込んだ料理を出し、家事をこなし、夫と息子たちの世話をして家を守るということに不満を抱いてはいません。むしろプライドを持って"当然"のように思っている。だから、彼女の品のある姿勢や眼差しからは"不幸"なんて滲み出てはいませんでした。ただ、人生の中で何かが物足りず、理解されず、そして労われずに疲れていたのでしょう。マリアがパズルに向かう時だけに流れるオリエンタル調の音楽は、彼女だけに流れる時間。まるでマリアの人生のように、足りないピースを埋めていく繊細な指先の動きと一緒でとても印象的でした。





家族やお客様は皆ワイワイ勝手に楽しんでいて、自分はまるで給仕のようにテーブルとキッチンを行き来しては後片付けをするという・・・、これをほとんど当たり前的にやり過ごしている主婦の姿だけでも目を離せなくなるのですが、さらにこれから起こる「パズルの才能」をさり気なく重ねるというシークエンスの出来の良さ・・・さらにしかもそのパーティーの主役は奥さん、あなたじゃないですか(笑)!という、物凄く好きな滑り出し。巧いですよねぇ。

パンやチキン、チョコレートケーキといった料理のシーンからスタートするこの映画。食事のシーンが多い(食器を並べる、お皿に取り分ける、果物を切る、お茶を淹れるetc)映画というのは、たとえそこが行ったこともない見知らぬ外国のお話でも、食べ物を介することによって生活感が身近に感じられ、不思議と物語も近くに感じられてくるので大好きです。さらにその主人公が主婦であれば、自分にとってはなおさらだったかも。




そして、カタルシスとは程遠い、あくまでも現実的なラスト。
だけれど、このエンドロールの映像にはちょっと驚かされてしまいました。

それまでは、映画酔いしそうなほど揺れに揺れたカメラワーク&赤味がかったソフトな映像を重ね、マリアの外出のたびに流れるような外の風景や空のショットをわざわざ挟み込んではいたものの、『幸せパズル』という映画の中では空の色はすべて雲がかかって霞んだり、逆光で滲んだり、カーテン越しだったりしてよく見えなかったのです。そう、当たり前のようにある【青空】というものが、まるで、一度も出てこなかった!それがエンドロールでは一転、まるでマリアのこれまでの閉塞感が一気に解き放たれたような、眩しい世界が固定カメラでドンと据え置かれているんです。まるで薄曇りが吹っ切れた彼女の新世界を見た気がして、この空と雲と緑の美しさが急に目に沁みました。

夢中になれる大好きなこと、束の間の解放感、面倒だけれど愛しい家族、それに"思い出"。チャンピオンとなった今では自宅の片隅にパズル部屋まで作ったマリア。きっとこれからは大好きな絵をじっくり見ながらゆっくりとパズルの世界と向き合っていくんだろうなぁ。爽快感などとはちょっと違うけれど、遠い国のパズルマニアなる世界観&南米主婦の小さな大冒険を見せてくれたこの映画は、ちょっと新鮮でした。イマジカBSに感謝!





■追記:
ネフェルティティの胸像【wikipedia】マリアが魅了されていたパズルの絵柄は「ネフェルティティ」。ネフェルティティについては、その詳細はほとんど分かっておらず謎も多いのだけれど、「美しい人の訪れ」を意味するその名前のとおり、女性美の象徴としてもっとも有名な古代の女性のひとりと言われています。それを思うと、マリアがこの絵柄をまるで吸い込まれるようにじっと見つめているシーンはとても印象的です。



■追記:
アルゼンチンにおける「マチスモ(男性優位主義の思想に基づく行動および思考)」は、歴史的に旧植民地本国スペインによる女性観が根強く残っているとのこと。
その一つは女性に対する男性の肉体的優位と、男性に対する女性の恭順を是とする男尊女卑の思想マチスモ、そしてもう一つはカトリックの聖母マリアを理想像とし、その母性ゆえに女性が男性に対して精神的優位性をもつとする思想マリアニスモである。
この二つの女性観が継承される中、女性は男性より劣った存在で、男性に服従、奉仕するものとして処遇される社会構造がつくり出され、それと同時に、家庭においては、自己犠牲もいとわず家庭を守り慈しむ無私の母性愛を高く評価する価値観が定着していったのである。
『ラテンアメリカ 新しい社会と女性』国本伊代・編(新評論、2000年)

↑こうやって社会的な背景が少しわかるだけで、新しい角度からの発見があっていつも面白いなぁと思います。あ、まったく自分用メモなんですけれど(笑)。






■さらに追記:
マリアたちが郊外に持っている土地の名前、日本語字幕では「チャコモス」となっていて耳でもそう聞こえたのだけれど、ブエノスアイレス郊外にある地名および湖の名前では「Chascomús」しか見当たらなかった・・・。ここなんだろうか。

この辺りは、大都市から離れると湖がたくさんあって自然が豊かなんだなぁと思いながら観ていました。同じアルゼンチン映画でも、土地が異なるとまったく風景も違ってくるし、国内の経済格差の違いなどから垣間見える物語も違ったりしていてちょっと面白いです。

  『ボンボン』 (2004/アルゼンチン)
『ボンボン』 (2004/アルゼンチン)




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  2013/06/18 | Comment (2) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit

『ボンボン』 (2004/アルゼンチン)

   ↑  2011/06/24 (金)  カテゴリー: ロマンス、ドラマ






【送料無料】ボンボン/フアン・ビジェガス[DVD]


●原題:El perro / BOMBÓN - EL PERRO / Bombon:The Dog(英題)
●監督、原案、脚本:カルロス・ソリン
●出演:ファン・ビジェガス、ワルテル・ドナード、ミコル・エステヴエス、キタ・カ、クラウディーナ・ファッツィーニ 他
●ビジェガスは長年勤めたガソリンスタンドをクビになってしまった。彼は手作りのナイフを売って何とか生計を立てようとするがうまくいかない。そんな時、車が壊れて対応上している女性を助けたお礼にと、半ば強引に大きな白い犬、ボンボンを貰うことになってしまった。このボンボンがきっかけとなり、出会いが出会いを生み、話は転がっていくことに・・・。




―― 人類がアフリカを出て、世界に拡散したその最果ての地が パタゴニアだ ――
 「嵐の大地パタゴニア」関野吉晴 著 (小峰書店)より


パタゴニアとは、南アメリカ大陸の南緯40度付近を流れるコロラド川以南の地域の総称で、アルゼンチンとチリにまたがるエリアのことを言います。アルゼンチン側はパンパ(大草原地帯)が広がり、年間を通して強い風が吹きつける気候が特徴です。

思えば・・・『母をたずねて三千里』は、マルコ少年がイタリアはジェノバの港から、出稼ぎに出た愛する母親を捜し求めてブエノス・アイレスへ旅する物語でした。そう、アルゼンチンは20世紀半ばまで世界有数の富裕国だったのです。

しかし、1960年代以降は政変やクーデターが頻発、1982年には英国との間にフォークランド(マルビーナス)紛争、1988年~89年にかけては歴史的なハイパーインフレを経験、2001年末には巨額の公的債務を抱え経済危機に陥り、各地で死者を出す暴動を起こすまでの事態となりました。経済的信用度を落としたアルゼンチンはその後、失業率の高さや貧困の問題を抱えながらも、現在では経済活動の復活・成長へと繋げ、徐々に持ち直してきているようです。

今回のアルゼンチン映画『ボンボン』は、こういった経済的背景を持ちながら、強い風に吹き付けられて遥か高くに真っ白な雲を浮かべる広大なパタゴニアの空の下、失業してしまった素朴で慎ましい主人公のおじさんと、偶然出会ったある一匹の犬とが織り成す静かで優しい物語です。


※この映画に登場する"Bombon"は、正式名称:ドゴ・アルヘンティーノ(Dogo Argentino)というアルゼンチン原産の猟犬です。とても珍しい犬種で日本には数十頭しかいないそうです。闘犬として存在したこともある強くてプライドの高い犬なので、本当はビジェガスおじさんのような"初心者"ではとても手に負えないはずなのですが・・・ココが少しポイントだったりします(笑)。






実はこの映画、ほとんどがプロの役者ではなく、演技などしたことのない素人の方を起用しているのだそうです(観終わってから知った!)。恥ずかしがり屋でどこかお人よし、素朴な表情がとてもとても印象的だった主人公のビジェガスは、普段はガレージで20年間まじめに働くごく普通のおじさんだったわけです。ボンボンの調教を買って出てくれる巨体で元気なワルテルも、なんと普段はアニマル・コーディネーターとのこと。←俳優としか思えないあの堂々たる演技は一体・・・!?(笑)

日本版公式ページが既に閉鎖されていたため、カルロス・ソリン監督のインタビュー記事をコチラで少し読んでみました(【Austin Film Society】BOMBÓN: EL PERRO -Program Notes)。

「リアリティは、フィクションの中に絶えず入り込んでくる」と言うソリン監督は、混沌としたものであってもそれ以上に予期せぬ素晴らしい瞬間を切り取ることが出来る!という確信を持って撮影されていたそうです。新たなロケーションが、たとえ本来のスクリプトから大きくかけ離れてしまったとしても、偶然思いがけないものを映画にもたらしてくれるのだと。



ビジェガスが不安そうな表情を見せたり、ホッとしたり、動揺して指先が少し震えたり、微笑みがこぼれたり・・・そういった「演技」は、確かに映画の中のお話ではあるけれども、それは20年間ガレージで働いてきた真面目なファン・ビジェガスさんというその人自身が、実際に目にした世界の中で体験したリアルな感情そのままだったということなのでしょう。これって、まるである種のドキュメンタリーのようでもありますよね!まさに映画の奇跡、です。





『ボンボン』は、いわゆる【動物映画】のような"イヌと人間の心の交流"のようなものを描いたものではありません。ワンちゃんのブサ可愛い表情を捉えてみせたり、小首をかしげる決めポーズを披露したり、人間と犬が抱き合って喜ぶ感動のシーンがあるわけでもありません。動物と人間の距離はあくまで淡々としたものであり、必要以上のベタベタとした擬人的感情表現をボンボンに求めた映画でもありません。ですので「犬の人との感動物語」を期待していると肩透かしを食らうこと必至でしょう!

過去において「経済的負け組」となってしまったアルゼンチンを舞台とし、更にそのような状況から生まれたビジェガスのように決して豊かではない一般的な人々を映し出すこと、また、そういった映画をアルゼンチンで作ることが、きっとこの映画にとって大切であったのだと、そんな風に私は感じました。

ソリン監督は先のインタビューでも「裕福で魅力的な家族を撮ることなどには一切の興味がない」と断言されています。世界から切り離されたような場所で貧困や失業に直面した人々はアイデンティティを失いがちであり、そういった心の荒廃は、経済的なものよりもずっと深刻なのだ、とも。


だからこそ・・・
たった一匹の犬との出会いによって、これまでに経験したことのない新しい世界が主人公の目の前に広がっていく解放感や、人生において「希望」を見出せることの喜び、人との出会いによって心が浮き立つほど軽やかになる幸福感――こういったもの全てがどんなに素晴らしいものか。この作品を【アルゼンチン映画】として観ることのできる最大の醍醐味なのかもしれません。強い風だけが吹き抜けていくパタゴニアの地で、特別でもない平凡な人生の中にも、こんなに素敵な出会いや喜び、笑顔が生まれるのだということを。

もちろん、ビジェガスが次々と人々に出会い、ボンボンとともに新世界に飛び込んでいくというストーリーは、アルゼンチンから遠く離れた日本人の私の心をも軽くしてくれました。ビュービューと強い風が吹き荒び、人の影が見当たらない真っ直ぐに伸びる道を車でひた走る映像からは、普段見ることのできない、感じることのできないものを私に運んできてくれました。

爽やかな音楽が心に沁みる(因みに音楽の担当はソリン監督の息子ニコラス・ソリン)「感動のラスト」はもうズレズレなのですが(笑)、それもこの後へと繋がる大きな「希望」でもあり、本当に映画映画していない実に現実的でいい作品だったなぁと、思わず一人で笑ってしまうものでした。





そして、もう一つ。

私はこの映画を観ている最中、初見であるにもかかわらず、何故かずっと既視感のようなものを覚えていました。どうしてかなどうしてかな・・・・と思っていたのですが、カルロス・ソリン監督のフィルモグラフィーを見た時に、やっと答えが分かりました。



『エバースマイル、ニュージャージー』(1989/アルゼンチン、イギリス) 原題:EVERSMILE NEW JERSEY

ずっと以前にたった一度だけ観た、ダニエル・デイ=ルイス主演の作品の風景でした。
果てしなく広がるパタゴニアの空の下、"天使"を乗せて疾走するバイクの後ろ姿・・・。
あぁ、やっぱり映画の風景って、ずっとずっと忘れないものなのですね。


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  2011/06/24 | Comment (1) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit
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