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『バベットの晩餐会』 (1987/デンマーク )を観直してみました

   ↑  2010/06/20 (日)  カテゴリー: ロマンス、ドラマ





【送料無料】バベットの晩餐会 HDニューマスター/ステファーヌ・オードラン[DVD]【返品種別A】


●原題:BABETTE'S FEAST / 英題:BABETTES GASTEBUD
●監督:ガブリエル・アクセル
●出演:ステファーヌ・オードラン、ビルギッテ・フェダースピール、ボディル・キュア 他
●19世紀後半のデンマークの海に近い静かな村。プロテスタントの牧師を父に持つ2人の美しい姉妹がいた。牧師の他界後も村の人々たちとともに信仰を深め、質素な生活を続けていた。そんなある日、かつて村に宿泊していたオペラ歌手からの紹介でパリ・コミューンの中で夫と子どもを失ったバベットというフランス人女性が使用人としてやってくることに・・・
●1988年アカデミー賞「外国語映画賞」受賞作品。



これほど品のある映画を見つけることって、なかなか難しいんじゃないでしょうか。それでいて、時々垣間見える「人生」への優しい眼差しとユーモアがたまらなく温かい。

こういう映画を見つけられたことは、どうしようもなく嬉しいものです。

信仰を守りながら質素に暮らす牧師とその美しい娘姉妹。フランスで家族を失い、姉妹のもとへ使用人としてやってくるバベット。それぞれの人生のただ一瞬に心通わせた大切な人々。この小さな漁村に暮らす素朴な老人たち。

彼らの想いは、バベットの開いた晩餐会を通して人生の最終段階を迎えた時に、最も崇高で美しいものへと昇華されていくのです。何でも求めすぎる物質過多な現代では、およそ考えられないような“贅沢”を味わって・・・。人生の本当の喜びとは何か?信仰とは?愛とは何か。晩餐会のシーンに心を寄り添わせ、自分の心の声にそっと問いかけてみませんか。


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【2010年6月20日 追記】
『バベットの晩餐会』というタイトルながら、物語は牧師の娘姉妹マーチーネとフィリパを中心に進んでいきます。慎ましく生きる姉妹と彼女らを想う男性、そして村人たちとの交流という物語をこれまで何度繰り返して観たか知れません。

でもなぜか今回は、バベットの姿をずっと追ってしまいました。

夫と息子を亡くし、自らの命も危ぶまれる中フランスから亡命せざるを得なかったバベット。パリでは位の高いシェフとして思う存分その腕を揮い、地位のある人々をもてなし、きっと不自由のない幸せな生活を送っていたであろうバベット。

苛酷な道を辿ってきたはずの彼女ですが、この映画の中で描写される限り、取り乱したり、何かを憎んだりする様を一度たりとも見せないんですね。与えられた生活の中を淡々と生き、重要な決断をする時は、自然の中で1人凛と佇む。自身の力では到底及ばない運命に巻き込まれようとも、バベットの揺るぎない生き方は決して失われてはいません。

このバベットの毅然とした姿が物語の中心をスッと通っているからこそ、牧師の娘姉妹や彼女らを取り巻く人々の堅固でいて温かな心を一層確かなものに引き立てているのではないかと思うのです。





マーチーネと士官ローレンス、フィリパとオペラ歌手アシール・パパン。

皆、淡い想いを胸にそっと秘めてそれぞれの道で生きていくことを選択します。賭け事や享楽に染まった生き方をしていたローレンスが牧師の家での集会でそれを悟るシーンがとても素晴らしい。また、神を讃える賛美歌ではなく男女の愛を歌うということに当惑するフィリパの慎み深い思い。

生きる道を選ぶということ。さだめられたものを知ること。温かなユーモアで寓話的に描かれるこの映画において、唯一力強い視点がここにあるのです。





「プロテスタント」と「カトリック」の違いは、バベットの開く晩餐会においても重要な要素となっています。

質素な暮らしに疑問を抱いたこともない人々は、見たことも触れたこともないフランス料理=魔女の饗宴に魂をとられるのでは・・・と恐れをなし、これまでお互い年をとって気難しくなり諍いばかりだった態度から一致団結、飲酒などの享楽的な食事を拒否して信仰を守ることを誓い合います。


そして、今や将軍となったローレンスを迎えて始まる晩餐会。

ここからの出来事は、映画の中でじっくりと味わうことにしましょう。
ただ言えるのは、バベットの一世一代のこの晩餐会は、将軍も平凡な市民もわけ隔てなく料理の前でひとつにさせ、平等に至福の時を与えたということ

それはそう、まるで神の御前のように・・・。

バベットだから出来たことなのだと、今になって私は強く思うのです。






【2016年3月10日 さらに追記】

牧師様の生誕100年のお祝いの晩餐会で出されたメニューは・・・

食前酒は辛口のシェリー、アモンティヤード。
つき出しには、シュー皮の生地にチーズ混ぜ焼いた「グジェール」を。
姉妹が悪夢にうなされたフランス料理の極上の珍味「ウミガメのスープ」。
シャンパンは1860年の「ヴーヴ・クリコ」。
ブリニスにサワークリームとたっぷりのロシア産キャビアをのせた「ドミドフ風」。
そして将軍が若い頃に一度だけ食べて忘れられなかった「うずらのフォアグラ詰めパイケース入りソースペリグルディーヌ」。
チーズのあとに出されるデザートはドライフルーツで飾られた「ババのラム酒風味」。
そして最後は厳選されたフルーツを。


本格的なフランス料理のフルコースで使われるおびただしい食器の数々、冷蔵のない時代なのでシャンパンを冷やす氷の山、フランスからの輸送費などなど・・・

バベットが宝くじで当てたという1万フランは、今でいうと500万から1千万円という大変な金額です。これをお金ではかるというわけではありませんが、姉妹と村の人々のために開かれた晩餐会のために1万フランすべてを使い切ったバベットの想いは、どれほど深いものだったのでしょう。


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  2010/06/20 | Comment (2) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit

「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭」

   ↑  2010/06/11 (金)  カテゴリー: 映画いろいろ・・・

17歳の肖像(Blu-ray Disc)

第1回(2004)長編部門最優秀作品賞受賞、ロネ・シェルフィグ監督(デンマーク)の最新作

2004年より埼玉県にて開催されている「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭(IDCF)」は、アメリカの映画業界紙「VARIETY」で「世界の見逃せない50の映画祭」に日本で唯一選ばれるなど、世界からも注目を集めつつある映画祭です。

実際、上記のロネ・シェルフィグ監督のように過去にこの映画祭で受賞した監督たちの作品や最新作などが、後にアカデミー賞やカンヌ映画祭などでノミネートや受賞するなどして、日本のマーケットでも供給されるようになっているんです。
→つまり、海外で評価されてから、やっと日本でも観られるっていうワケですね。

デジタルツールにより、クリエイターの表現は年齢や経験、国境をも越え、新しい広がりを見せるとともに、デジタル配信や3Dなど、映画業界におけるデジタル化も着実に進んでいます。SKIPシティ国際Dシネマ映画祭は、フィルムを使用せず、デジタルで撮影・制作された作品のみにフォーカスした世界でもユニークな国際コンペティション映画祭です。(公式サイトより抜粋)





私がこの映画祭を観に行くきっかけとなったのは、やはり普段日本ではなかなか公開されることのない各国の"今"の映画を観たいなぁ、という理由からでした。

確かに豪華な俳優&莫大な予算をかけた最新技術大盛りのエンタテイメント作品が楽しくないわけではないのですが、語られるべき物語がないまま作られ続けている最近のハリウッド目線の映画には少し食傷気味。セルビアや南アフリカやチェコ、デンマーク、中国の作品だって、自分で観たい物を選んでみたい!!そういうところからでした。

今年度の上映スケジュールなどはまだ発表されていないようですが(※2010/6/11現在)、毎年、上映後に行われる監督やプロデューサー、審査委員たちとのトークセッションやQ&Aも非常に興味深く楽しい時間です。観たばかりの映画の感想や、疑問、解釈などを直接聞けてしまうんですもんね。

時間ができたらまた行きたいなぁ。
今、一番注目している映画祭のお話でした!

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  2010/06/11 | Comment (0) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit

『パリ、ジュテーム』 (2006/フランス、リヒテンシュタイン、スイス)

   ↑  2010/06/08 (火)  カテゴリー: ロマンス、ドラマ



【DVD】パリ、ジュテーム プレミアム・エディションナタリー・ポートマン [GNBF-7374]


●原題:PARIS, JE T'AIME
●パリの様々な場所で撮り上げられた1編およそ5分、全18編からなるオムニバス・ムービー。世界中の名だたる映画監督や俳優たちが集結し、パリ20区のうち18の区を舞台にしてそれぞれの「愛」を描き出す。



正直に言ってしまうと、途中で観るのを何度やめようと思ったことか・・・!「次こそは"アタリ"か!?」なんて期待を抱きつつなんとか最後まで完走。18編休みナシのわんこそば状態。持久力勝負の作品なので、映画に対する基礎体力と忍耐強さが問われるところであります。

「この脚本甘過ぎる」「まるで趣味じゃない」とか、もう勝手放題・愚痴三昧だった"幾つかの"作品たち。ところが。観終わって1時間ほどたった頃でしょうか、まるでアクが抜けたように良い部分だけがフワリと心の中に浮かんできて、最終的には楽しかった思い出だけを感じるようになっていました。不思議でしょう。ね、でもこれってちょっと人生や日常なんかと似ていませんか?

ツライ思い出も時間とともに少しずつ変化して許せるようになったり、宥められるようになったり、或いはもうネタにしちゃって笑い飛ばせるようになったり。様々な出来事(作品)を集めて出来上がった人生(映画)のモザイク画を、少し離れた所から眺めて見たような優しい感覚。オムニバス形式ならではの味わいということろでしょうか。



※各エピソードのタイトルと監督、主な出演者は下記の通り。

「モンマルトル」
●監督:ブリュノ・ポダリデス ●出演:ブリュノ・ポダリデス、フロランス・ミューレル

「セーヌ河岸」
●監督:グリンダ・チャーダ  ●出演:レイラ・ベクティ、シリル・デクール

「マレ地区」
●監督:ガス・ヴァン・サント
●出演:マリアンヌ・フェイスフル、イライアス・マッコネル、ギャスパー・ウリエル

「チュイルリー」
●監督:ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン  ●出演:スティーヴ・ブシェミ、ジュリー・バタイユ

「16区から遠く離れて」
●監督:ウォルター・サレス 、ダニエラ・トマス ●出演:カタリーナ・サンディノ・モレノ

「ショワジー門」
●監督:クリストファー・ドイル ●出演:バーベット・シュローダー  

「バスティーユ」
●監督:イザベル・コイシェ
●出演:セルジオ・カステリット、ミランダ・リチャードソン、レオノール・ワトリング

「ヴィクトワール広場」
●監督:諏訪敦彦 ●出演:ジュリエット・ビノシュ、ウィレム・デフォー、イポリット・ジラルド

「エッフェル塔」
●監督:シルヴァン・ショメ ●出演:ヨランド・モロー、ポール・パトナー

「モンソー公園」
●監督:アルフォンソ・キュアロン ●出演:ニック・ノルティ、リュディヴィーヌ・サニエ

「デ・ザンファン・ルージュ地区」
●監督:オリヴィエ・アサイヤス
●出演:マギー・ギレンホール、リオネル・ドレー、ジョアンナ・プレイス

「お祭り広場」
●監督:オリヴァー・シュミッツ ●出演:セイドゥ・ボロ、アイサ・マイガ

「ピガール」
●監督:リチャード・ラグラヴェネーズ ●出演:ファニー・アルダン、ボブ・ホスキンス

「マドレーヌ界隈」
●監督:ヴィンチェンゾ・ナタリ ●出演:イライジャ・ウッド、オルガ・キュリレンコ、ウェス・クレイヴン

「ペール・ラシェーズ墓地」
●監督:ウェス・クレイヴン
●出演:エミリー・モーティマー、ルーファス・シーウェル、アレクサンダー・ペイン

「フォブール・サ・ドニ」
●監督:トム・ティクヴァ ●出演:ナタリー・ポートマン、メルキオール・ベスロン

「カルチェラタン」
●監督:フレデリック・オービュルタン、ジェラール・ドパルデュー
●出演:ジーナ・ローランズ、ベン・ギャザラ、ジェラール・ドパルデュー

「14区」
●監督:アレクサンダー・ペイン ●出演:マーゴ・マーティンデイル





個人的な感想でいえば「14区」は自分自身の思い出のように切なく、まるで日記を読んでいるかのような懐かしさで胸がいっぱいに・・・。その温かさでこれまでの総てのエピソードたちを優しく包み込んでくれる最高の6分間。ラストを締めくくるに相応しいお話です。他にも、オチに座布団一枚!の「モンソー公園」や、これ一本でモトとれます!の「カルチェラタン」などお気に入りも数本。・・・うん、人生もホントこんな感じだなぁ。

パリ、ジュテーム@映画生活





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  2010/06/08 | Comment (0) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit

『ラ・ジュテ』 (1962/フランス)

   ↑  2010/06/04 (金)  カテゴリー: SF、宇宙、怪獣




ラ・ジュテ -HDニューマスター版ー [ エレーヌ・シャトラン ]


●原題:LA JETEE
●監督:クリス・マルケル
●出演:エレーヌ・シャトラン、ジャック・ルドー、ダフォ・アニシ 他
●第三次世界大戦後のパリ。人類が絶滅する危機を救うため、[未来]の世界から人類を救うことができるエネルギーを持ち帰らなくてはならない。そこで、[過去]についての強烈なイメージを持つ男が選ばれた。彼は子供時代、家族で出かけたオルリー空港で見かけたある光景を未だに忘れられずにいた。見知らぬ女性が自分を見つめているというその光景は・・・。1996年の『12モンキーズ』の原案となった全編スチールカットの29分のSF映画。



「フォトロマン」という何枚かの写真をつないで構成されるSF物語(フォトストーリー)。実験的色合いが非常に強い作品だが、「時間」と「記憶」が絶妙に交錯する物語の余分なものを全て削ぎ落とした「29分」という短時間で一気に見せる、この有無を言わせぬ力強い演出力に惹き付けられた。

それに何といっても次々に切り替わっていくイマジネーション溢れる映像が、連続して流れていく動画とは異なる印象を観る側にジワリと残していく。




作者のクリス・マルケルは1921年7月29日生まれ。第二次世界大戦にレジスタンスとして参加。小説家、エッセイスト、写真家、ジャーナリストとしての顔も持つ。写真家としてのセンスは抜群だったのではないかと思うシーンをこの映画で見つけることができる。

ウィズ・ザ・ビートルズ

これは、1962年にデビューしたビートルズが63年に発表した2枚目のアルバム「With The Beatles」のジャケット。

この、人物の片側から光を当てて影を作るというこの手法は「ハーフシャドウ」と呼ばれ、当時は画期的(アイドルのポップミュージックなのにモノクロでアーティスティック)と言われていた。このあまりに有名な手法が『ラ・ジュテ』でもそのまま、まったくこのままの構図で使われていたので、正直ドキっとしてしまった。しかも未来人の描写として。


年代的に映画も1962年製作なので同時期ではある。すぐにネットで調べてみたものの、当時アルバムのジャケット撮影をしたロバート・フリーマン、アイデアを出したアストリッド・キルヒヘルとの関連性を見つけることは出来なかった。

当時画期的と言われたこの手法を『ラ・ジュテ』でも見事に取り入れた鋭敏な時代感覚。テリー・ギリアム監督をも魅了したストーリーテラーとしての才能。全く以って痺れてしまう29分だった。

ラ・ジュテ@映画生活




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  2010/06/04 | Comment (8) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit