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『しあわせの雨傘』 (2010/フランス)

   ↑  2010/12/30 (木)  カテゴリー: コメディ



【Blu-ray】しあわせの雨傘 コレクターズ・エディション(Blu-ray Disc)/カトリーヌ・ドヌーヴ


●原題:POTICHE
●監督、脚本: フランソワ・オゾン
●原作:ピエール・バリエ、ジャン=ピエール・グレディ
●出演:カトリーヌ・ドヌーヴ、ジェラール・ドパルデュー、ファブリス・ルキーニ、カリン・ヴィアール、ジュディット・ゴドレーシュ、ジェレミー・レニエ 他
●スザンヌ・プジョー(カトリーヌ・ドヌーヴ)は60歳。朝のジョギングを日課とする幸せなブルジョワ妻。亭主関白で雨傘工場を運営する夫ロバートが、ある日心臓発作で倒れてしまう。そこで、なんの経験もないままスザンヌが雨傘工場を切り盛りすることに・・・。涙あり笑いありの人生讃歌!




オンライン試写会よ、今宵も本当にありがとう!!!

というわけでフランソワ・オゾン監督の最新作です。
「映画」というものを観る楽しみをワンサカかき立ててくれる大好きな監督なので、予告編を見た時から絶対観たい!!と思っていました。で、私、この映画を制限時間の24時間で3回観たんです(試写会なのに3回も笑)。




一度目
70年代風のファッションや音楽、編集に到るまで、憎いほど素敵で洗練されたコメディ映画だと思いました。沈黙が一瞬たりともないほど、皆唾を飛ばしまくって喋る喋る!それに1970年代のベルボトムのパンツやピタピタのハイネック、女性の外巻きフワフワのヘアスタイルもとっても可愛い!カトリーヌ・ドヌーブが雨傘工場のブルジョワ奥様というのも、かつての『シェルブールの雨傘』を思い起こさせてくれるこの設定自体が素敵!・・・などなど。

しかし、鑑賞後どうもスッキリしなかったんですね。映画鑑賞においてこれはよくあることなのですが、理由はいつも大抵2通りあります。
 ①自分の知識や経験不足、文化に対する理解不足などで消化不良
 ②単に自分の感覚・趣味に合わない

今回は明らかに①だな、とこれはスグにわかりました。

まず、私はフランス語が解らない。フランス人の友達と1年近く一緒に居たのに、本当に本当に!フランス語の発音も聞き取れず発音もできず・・・お恥ずかしい限り。それに、フランス史も苦手。フランス映画自体、その感覚は面白く興味はあるのでいつも果敢に挑戦しているのですが・・・実はあまり解っていない・・・。それで、公式サイトの【プロダクションノート】を読んで、再チャレンジしてみました。






二度目
おかげで、この映画はブールバール劇というフランスの大衆向けの娯楽劇分野で大人気だった『ポティッシュ』というコメディが原作だということ、この映画の時代的背景(1970年代におけるブルジョワジーと共産主義の対立)や、劇中扱われている楽曲の歌詞や意味合い、などがよーく理解できましたので、一度目とは違った軽妙な味わいに思わず笑いが漏れました(←ここでちょっと余裕が出た)。

それとフランス在住の方の感想を読んでみたところ、登場人物たちのセリフには、サルコジ大統領をはじめ現在のフランスの政治家の暴言や迷言が織り込まれていることも判明。つまり、70年代を舞台としながら、現代の政治や社会的風潮に対する皮肉が効かせてあるわけなんですね。こういうスパイス、フランス人には面白いだろうなぁ。

しかし、ですね。まだシックリこないんです。
「理解」は出来たんですが何かオカシイ・・・・・
中盤に描かれるドヌーブによる雨傘工場の経営改善の様子!なんかを、オゾン流の捌き方でもうちょっと見たかったなぁ~、なんだか(私の中での)盛り上がり具合がイマイチ良くないなぁ~・・・と、何かもっと違う理由で腑に落ちない感覚が残りました。

それで、私はまた考えてみました(私はシツコイのです)。
そして思い当たる要因が1つだけありました。
以前、『マルタのやさしい刺繍』(2006/スイス)を観た時に感じた理由とまったく同じでした。そう、邦題とプロモーション方法に原因を見つけたのです。

カトリーヌ・ドヌーブ主演『しあわせの雨傘』
お飾りだった妻が、心臓発作で倒れた夫の代わりに雨傘工場を任されたことで意外な才覚を発揮し、自分の生きる道を得る!色とりどりの傘があれば、人生の雨もまた楽しい。

こんなPRやコピーから映画に対するイメージや期待がまず出来上がり、すっかりその気になってこの映画を観たのです。でもこれ、どうも様子が違うようなんです。確かに表面的な意味合いで見たら半分は合っているんです。でも実は、このあらすじは原作の演劇のものであって、今回の映画化にあたってオゾン監督は更にこの先(後半部分)を描き足して、ドヌーブ演じるスザンヌの人生の奥行をうーんと広げていたのです。

しかも、原題は『POTICHE』=「花瓶」
字幕では「飾り壺」と呼ばれていましたが、このポティッシュというのは、暖炉の上に飾られる贅沢で豪華なものの、実用性のない花瓶や壺のことであり、転じて、美しいけれど夫の陰に隠れて自分のアイデンティティを持たない女性に対して軽蔑的に用いられる言葉なのだそう。



つまり、この映画は「しあわせの雨傘がうんたらかんたら~」とか「幸せの雨傘工場でドヌーブがうんたらかんたら~」とか、もちろん幸せな雨傘が~(笑)とかいう話ではないのです。雨傘の話は第一段階。きっかけ。物語の過程。しかも、しあわせ♪ってほどの雨傘の話が出てくるワケではないんです。

ぶっちゃけて言ってしまうと、予告編にあるような雨傘工場でドヌーブが手腕を発揮する!というステキなお話はほんの一瞬ほどしか出てこないんです。以前私が感じた「マルタの刺繍の話はどこいったー!」という心の叫び、再来です(笑)。

それでも「ドヌーブだし!」「雨傘だし!」という"オマージュ"を思わず全面に出して鑑賞者の気を引きたかったのであろう日本の配給会社の思惑も分からなくはありません。が、それはちょっとした「隠し味」のまま、映画を観る時のほんのりとした楽しみにさせて欲しかったな、と思うのです。その設定に「あらまぁうふふふ」と映画心を心地よくくすぐられる程度に。だって何しろそのせいで、映画を観る前から(勝手に)主軸がズレてしまうのですから。ま、私が単純なだけなのかもしれませんが・・・

その代り、ストーリーは予想もつかない方向へと突き進み、観る側が思わず描いてしまうような安易な展開へはそう簡単には向かないのです。このあたりはさすが変幻自在なオゾン監督!ストーリーの転がり具合が絶妙で、いつも本当に「映画」を楽しませてくれますね!

そんなことを考え、そして楽しみながら、私は三回観たというわけです。




三度目
全くもって、本当に、とっても楽しかったです。終盤の予想もつかない新展開は、ただもう、一体どこからがドヌーブで、どこまでがスザンヌという役なのか全くわからなくなるほど。気が付けば夫もジェラール・ドパルデューも蹴散らかして、これはもう「女性万歳!」というよりはドヌーブ様万歳!映画と化していきます。

公開前なのでネタバレはしませんが、劇中、男性たちが勝手に想像していた「か弱きスザンヌ」が俺を裏切った!と一方的に思い込み、社会的権力で彼女を制しようとします。二度も。しかし、それに屈することなく、それどころか「我が道を得たり!」とばかりに突き進む逞しき いや美しきドヌーブよ。どっしり構えた腰まわり いや美しきフランスの母親よ!あぁ、やっぱりこれはオゾン監督による「ドヌーブ万歳映画」なのです。フランスが大好き!という方にとっては必見の映画でしょう。お見逃しなく!

2011年 正月第2弾、TOHOシネマズ シャンテ、新宿ピカデリー他全国順次ロードショー!



【輸入盤】 Potiche [ しあわせの雨傘 ]

【曲目リスト】1.Ouverture / Philippe Rombi/2.Emmene-Moi Danser Ce Soir / Michele Torr/3.Viens Faire Un Tour Sous La Pluie / Il Etait Une Fois/4.Parlez-vous Francais ? / Baccara/5.Qu’est-ce Qui Fait Pleurer Les Blondes ? / Sylvie Vartan/6.J’ai Oublie De Vivre / Johnny Hallyday/7.More Than A Woman / Bee Gees/8.Sunny / Boney M/9.123 / Catherine Ferry/10.C’est Beau La Vie / Catherine Deneuve/11.Generique d’Aujourd’hui Madame / Jo Moutet/12.Le Transistor / Philippe Rombi/13.Teen Ager Cha Cha Cha / Stelvio Cipriani/14.Slow Giradschi / Stelvio Cipriani/15.Mon Ami L’Ecureuil / Philippe Rombi/16.La Rose Du Matin / Philippe Rombi/17.L’Usine / Philippe Rombi/18.Pujol Sequestre / Philippe Rombi/19.Les Souvenirs De Suzanne / Philippe Rombi/20.Flashback Suzanne et Maurice / Dialogue du film/21.Sur La Route De Saint-Amand / Philippe Rombi/22.Suzanne et Maurice / Philippe Rombi/23.De Pere En Fille / Philippe Rombi/24.Secretaire / Dialogue du film/25.Suzanne Candidate / Philippe Rombi/26.Valse Des Votes / Philippe Rombi/27.Theme de Suzanne / Philippe Rombi/28.Bonus Track:C’est Beau La Vie / Catherine Deneuve & Benjamin Biolay




■追記[2011.01.12]
YHOO!ブログで【猫と薔薇、演劇、旅ファン】という素敵なブログを書かれていらっしゃるhitomiさんが、この記事を素晴らしく生き返らせてくださいました♪ぜひご覧ください!
記事はコチラ→ 「傑作ドヌーブの「幸せの雨傘」♪」



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  2010/12/30 | Comment (2) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit

『M』 (1931/ドイツ)

   ↑  2010/12/28 (火)  カテゴリー: サスペンス、ミステリー




フリッツ・ラング コレクション::M [ ローレ ペーター ]


●原題:M
●監督:フリッツ・ラング
●出演:ペーター・ローレ、オットー・ベルニッケ、グスタフ・グリュントゲンス、エレン・ウィドマン、インゲ・ランドグット、フリッツ・グノス 他
●1920年代、ドイツを震撼させた連続殺人鬼“デュッセルドルフの吸血鬼”ことペーター・キュルテンに材を採ったF・ラング初のトーキー作品。幼い少女が次々と惨殺される事件が発生。警察当局の懸命な捜査にも関わらず犯人の見当は全くつかず、やがて暗黒街にまで捜査の輪は広げられる。これを機に暗黒街の面々は独自で犯人探しを開始、浮浪者や娼婦まで動員し憎き少女殺しを追い求める。やがて盲目の老人の証言が有力な手掛かりとなっていくのだが・・・。



むかし、偶然にも同時期に観た『未来世紀ブラジル』(1985/英・米)とフリッツ・ラング監督の『メトロポリス』(1926/独)。あれ以来、私はずーっと「映画」というものを夢中になって追い続けて気がします。そして、いつか観たい観たいと思っていたラング作品を、今日やっと「淀川さん解説DVD」で観ることができました。やった~

今日はその中から、サスペンス映画『M』を。





帰りの遅い子ども。不気味な口笛(劇音楽『ペール・ギュント』から「山の魔王の宮殿にて」)。母親の悲痛な呼び声をバックに、無限に続くかのような階段、人影のない物干場、娘が昼食をとるはずだったテーブル、力なく地面に転がるボール、ゆらゆらと電線に引っ掛かるバルーン・・・

開始からものの10分程度で、簡潔かつ印象的に事件を捌いて見せる数々の驚くようなカメラワークやショットは、映画について学んだことも専門知識もない私のような人間から観ても、まさしく映画の教科書のよう。父親が建築家であり、またラング本人も美術学校や科学技術学校で建築と絵画を学んだというその資質が、映画の構成をより確かなものにしているのだと思います。

しかも、これら古典的映像美が、今見てもスタイリッシュだと感心させられるのと同じように、扱われているテーマも製作時の1930年という時代性なんていう言葉を軽々と飛び越えて、今日この日本でも問われている他人事ではすまない普遍的な問題ばかり。

1世紀近い年月が経つというのに、人は同じことを繰り返し、答えを求め続けているのかもしれません。


幼い少女ばかりを狙った誘拐殺人事件の犯人を捕えるため、三つ巴(警察、規制された街に苛立つ暗黒街の面々、逃げる犯人)の戦いが繰り広げられるというプロットは、きっと今のハリウッド映画が手がけたなら一大クライム・アクション映画やコメディ映画にさえなりそうなもの。それがフリッツ・ラングの手に掛かると、そんな生易しい娯楽映画には落ち着かないのですねぇ。

この映画製作時は、正にヒトラー政権が成立する直前。ユダヤ人であるラングは1934年にドイツからフランスへ亡命しているのですが、ここにこの映画が作られたことの意味が成されているようです。

犯人と間違えられた男が民衆に囲まれ袋叩きのように非難されるシーンも、街を牛耳る悪党たちが会議を開いて「我々と犯人は明確に線引きされなくては!哀れみなどいらず化け物は殺すべきた!」と演説するシーンも鬼気迫るものがあり、この後実際に台頭してくるナチスドイツの姿を思い浮かべずにはいられません。この映画には、集団ヒステリーに立ち合ったような、ヒヤリとした冷たく嫌な感触があちこちに感じられます。

単に「犯人」を追って捕まえるという犯罪映画で終わるのではなく、その焦点は「何処にでも潜んでいるであろう犯罪者」と「それを裁くという行為」について視点が移っているような気がするのです。強い力で圧され突き進んでいるような、そのような時代の空気を、この映画は確かに纏って生まれたのでしょう。




因みにこの映画の製作国(ドイツ)における代替タイトルは『Eine Stadt sucht einen Mörder(街が殺人者を追う)』、暫定タイトルは『Mörder unter uns(殺人者は我らのうちに)』。フランス語タイトルは『M le maudit(M 呪われし者)』とのこと(「映画タイトルの修辞学II」東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所 小田 淳一氏の論文より)。確かに両国、両方の視点・解釈も納得のいくものですが、ドイツで付けられたタイトルにはこの映画から聞こえる真の思いが込められているような気がしてなりません。





・・・ふと思ったのですが、この後フリッツ・ラング監督(1890~1976)は渡米後、ハリウッドの量産システムに埋もれがちになり、私の好きなエルンスト・ルビッチ監督(1892~1947)は55歳で急逝してしまいました。しかし、それに比べて同時代出身のアルフレッド・ヒッチコック監督(1899~1980)は、なんと長生きで多くの人気作品を生み出していったことか!

長生きといえば、この少し後に位置するビリー・ワイルダー監督(1906~2002)もいらっしゃいますが、そう、挙げていったら全くきりがないのですが、考えてみたら私はこの時代の監督作品が大好きなのでした。ハリウッド黄金期!まだまだ観たい古典映画もたくさんあるのですが・・・今日はこのへんで。



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  2010/12/28 | Comment (0) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit

映画『プライベート・ライアン』の【オマハビーチ上陸作戦】の再現を再現だ!

   ↑  2010/12/18 (土)  カテゴリー: 映画いろいろ・・・
今日は映画日記をちょっとお休みしまして、私の好きな動画をupしてみたいと思います。

映画『プライベート・ライアン』の冒頭に登場する「オマハビーチ上陸」シーンをBBCの番組が、たった3人の出演者&4日間で再現させた【Richard Hammond presents Bloody Omaha (The Graphics)】です。



2:30辺りからは「映画ってなんなのよー」と鳥肌が立ってしまいます。





そして、そして。
続けて観ていただきたいのが、更にこのBBCの再現作品にオマージュを捧げた"Bloody Yodo"。日本人クリエーターの作品です!


よ、淀川がエライことになっている・・・!!

映画を観る楽しみ、作る楽しみ、遊ぶ楽しみ・・・全て詰まった愛情のある作品ですよね。
大好き!


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  2010/12/18 | Comment (0) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit

『僕たちのキックオフ』 (2008/イラク・クルディスタン地域、日本)

   ↑  2010/12/17 (金)  カテゴリー: シリアス、社会派

●原題:KICK OFF/A Little Ground for Play
●監督、脚本:シャウキャット・アミン・コルキ
●出演:スワン・アテュフ、ゴワール・アンワル、ロジャン・ハマジャザ 他
●イラク北部の都市キルクーク。家を失ったクルド人たちがスタジアムの中に仮住まいを作って住んでいる。若い娘ヘリンに淡い恋心を抱く青年アスーは、子供たちのために「少年サッカー大会」を開こうと計画する。試合当日、クルド人少年のチームとアラブ人少年のチームのゲームは混戦模様になるが・・・。





まずは、この作品の社会的背景を。

イラクのクルド人は、サッダーム・フセイン政権下(1979~2003)の苛烈な弾圧や虐殺により土地や財産を奪われ行き場を失いました。

イランと同盟を組んだクルド人勢力による武力闘争が激しかったイラク北部のキルクーク(この映画の舞台)は、フセイン政権時代にアラブ人を外部から移住させてクルド人を追い出した【アラブ化政策】がとられた町です。



大きな地図で見る


同政権の崩壊後にイラク軍はキルクークを放棄したため、イラン国境に近い東部のスレイマニヤなどのクルド人自治区の人々が押し寄せ、前政権下で家を追われたり家族を殺された者たちによる裁判が多数起こされたり、また、アラブ人・クルド人・トルクメン人らの支配権争いによる民族対立から自爆テロも頻発するようになったのです。







この映画は、こうした現実的な背景のほとんどの要素が一体どこまでが映画なのか分からないほどに映し込まれています。モノトーンに近い暗く沈みこんだ独特の色彩感はまるで閉塞感そのもののようで、とても哀しい印象を受けました。



住居を追われたクルド人らが身を寄せて暮らすキルクークの荒廃した競技場。

給水車も決められた日に来ることもなく食糧も配給に頼る不安定な日々。それでも人々は、僅かな水でウドゥー(礼拝前の浄め)を行ったり、恋をしたり、イタズラをして怒られたり、ささやかな日常生活を営んでいます。

そんな中、民族対立の根深いこの地域で、こどもたちによるサッカー大会を開催しようと青年アスーは計画します。職もなく、未来への展望もなく、さらにはサッカー場の住居でさえ役人から立ち退きを迫られる日々。その"キックオフ"こそが、若者や子供たちにとって僅かな光となるはずでした・・・





ドラマチックな展開もなく、また声高に何かを叫ぶことなく終始抑えたトーンで淡々と描かれるこの映画の手法は時にドキュメンタリーにも近いものがあり、監督いわく「"戦後"という似た状況があるからかもしれない」という言葉の通り、イタリア映画で起こった【ネオ・レアリスモ】を彷彿させるものです。

ややもすれば希望も幸福も探すことのできない不条理で悲痛な映画とも捉えられそうですが、これが現実であり、この作品にこれ以上の"何か"を求めることは観る者の勝手な都合でしかないでしょう。

現実の社会問題を真正面から捉えたこの映画は、制作途中に何度も脅迫にあったといいます。この映画の価値は、まずそれらに屈せず完成まで漕ぎつけたという、毅然とした存在感なのだと強く感じ入りました。




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  2010/12/17 | Comment (0) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit

『キック・アス』 (2010/アメリカ、イギリス)

   ↑  2010/12/15 (水)  カテゴリー: コメディ


キック・アス【Blu-ray】 [ アーロン・ジョンソン ]


●原題:KICK-ASS
●監督:マシュー・ヴォーン
●製作:マシュー・ヴォーン、ブラッド・ピット 他
●出演:アーロン・ジョンソン、クリストファー・ミンツ=プラッセ、マーク・ストロング、クロエ・グレース・モレッツ、ニコラス・ケイジ 他
●同名人気コミックをブラット・ピットの「プランB・エンターテイメント」が製作、イギリス生まれのマシュー・ボーンが製作・脚本・監督を務め映画化したアクション・コメディ。ニューヨークに住む少年デイブは「誰もがスーパーヒーローを好きなのに、なぜ、誰もスーパーヒーローになりたがらない?」と思い立ち、ひとりコスチュームを着て街で活動を始める。何の能力も持たない彼はあっさり犯罪者にやられるも、捨て身の活動がネット上に動画で流され、“キック・アス”の名で一躍有名になってしまう。そんなある日、デイブの前に同じ稼業の「ビッグ・ダディ」と「ヒット・ガール」が現れる・・・!




というわけで、オンライン試写会にて鑑賞。Gyaoさんありがとう!

イケてないオタク君が一応主人公のアメコミ原作映画ですが、物語の別軸には、映画でアクション・ヒーロー役を演じつつリアルで熱烈"アメコミおたく"であるニコラス・ケイジが登場。無謀にもその程度の前情報&ポスターイメージから「おバカ映画」だと勝手に思い込んでいたので、アメコミベースの"ややグロ"描写があることに気付くも時既に遅し!うーん、これは・・・と頭のスイッチを『キル・ビル』モードに変換して何とか落ち着きました。ふーアブナイあぶない。

一応、主人公はオタク君の「キック・アス」なんですけれど、存在がギャグ寸前のニコラスケイジをも差し置いて、この映画で最も目が離せないのがクロエ・グレース・モレッツ演じるヒット・ガール!・・・調べてみたらクロエちゃん、1997年生まれですって・・・・






罠にはまった父親と無念の死を遂げた母親の復讐をはらすため、殺人マシーンとして悪者どもをブッた切るのが、このまだ幼気な少女であります。まぁこの辺は、オトコが描く話だなぁとぽやーんと観ておりました。だって復讐の片棒を自分の娘に担がせるわけですよ、どんなに性格の捻じ曲がったお嬢さんになることでしょうよ。私だったらヤダヤダ、自分で復讐に立ち上がる設定にするわ!


と、コミックにイチャモンつけても仕方ないのですが、【少女の復讐】+【キル・ビル モード】で思い出したのが、1974年のスウェーデン映画『ゼイ・コール・ハー・ワン・アイ~血まみれの天使~』

ゼイ・コール・ハー・ワン・アイ

主演のクリスチナ・リンドバーグが脱ぎまくるバイオレンス映画なんですけれど(彼女が演じる片目の復讐者フリッガは『キル・ビルVol.2』のダリル・ハンナが演じたエル・ドライバーの元ネタになっています)、やっぱり復讐心を煮えたぎらせる女ならこのくらいの怨念がないと!映画版『キックアス』ではこの辺りかなりライトでしたが、原作ではもっとドロドロしているのかな。




ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ COLLECTOR'S EDITION [ アーロン・ジョンソン ]


あ、そうそうすっかり忘れていましたが、主人公の"キック・アス"君。
欧米人のわりに地味でアッサリした顔立ちがジョン・レノンぽいなぁと思っていたら、このかた、本当に『ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ』でジョンを演じていたアーロン・ジョンソンという俳優さんなんですね。しかも本当はものすごいイケメンなうえに、奥様が23歳年上って一体どういうことなんですか。いやー何もかもに衝撃(笑)。





で、『キック・アス』の感想ですが・・・
正直、山場がちょっと微妙でもあり、ありえない展開に苦笑するか!?コウフンするか!?で観る人を選ぶ作品かとは思います。が、通販で買ったコスチュームを着て街を勝手にヒーローとしてパトロールする姿に大笑いしたり、オタク君の妄想炸裂ストーリーにツッコミなしの心で乗っていければ楽しめるかと思います。

因みに字幕監修には「ファビュラス・バーカー・ボーイズ」ウェイン町山こと、町山智浩氏。今回は字幕で観たけれど、これ吹き替えだったら「ぴー」ばっかりになっちゃうんだろうな(笑)



12月18日(土)より、渋谷シネセゾン他全国順次ロードショー!


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  2010/12/15 | Comment (2) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit