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『リトル・ミス・サンシャイン』 (2006/アメリカ)

   ↑  2011/01/27 (木)  カテゴリー: ロマンス、ドラマ


リトル・ミス・サンシャイン【Blu-ray】 [ アビゲイル・ブレスリン ]


●原題:LITTLE MISS SUNSHINE
●監督:ジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファリス
●出演:グレッグ・キニア、トニ・コレット、スティーヴ・カレル、アラン・アーキン、ポール・ダノ、アビゲイル・ブレスリン 他
●アリゾナ州に住むフーヴァー一家は、家族それぞれに問題を抱え、崩壊寸前。パパのリチャードは独自の成功論を振りかざして“負け組”を否定し、長男ドウェーンはそんなパパに反抗して沈黙を続ける。9歳の妹オリーヴはとうてい無謀なミスコン優勝を夢見て、ヘロイン常習のグランパは勝手言いたい放題。さらにはそこへゲイで自殺未遂の伯父フランクまで加わる始末。ママ、シェリルの孤軍奮闘も虚しく家族はバラバラ。そんな時、オリーヴに念願の美少女コンテスト出場のチャンスが訪れる。そこで一家は旅費節約のため、オンボロのミニバスに家族全員で乗り込み、はるばる開催地のカリフォルニア目指して出発するのだったが・・・・。




こういう映画、本当にヨワイんです。大笑いしながら一人でポロポロ泣いてしまった。。。
うーん、これがきっと"狙い通り"というやつですね。でも「家族」をテーマにした、とても素直な作品だなぁと思いました。

まず、真剣そのものの顔でとことんズレまくっているゲイの伯父さん、スティーヴ・カレル。
私は彼が好きすぎて仕方がないのです。『エバン・オールマイティ』(2007/アメリカ)を観た時もそうだったのですが、本人は至って真面目に内なる自分と戦っているんでしょうが、その妙に閉じた感じが醸し出す可笑しさ、というのが私のツボでもありました。彼が出ているだけでも、この映画への好感度ポイントは自然に上昇するのであります。

そういう"イイ人"が自殺未遂をしてしまった理由を、ちゃんとオリーヴちゃんに説明しようとするオープンンなママの姿は、やっぱりアメリカ映画だなぁと思いました。こういうところ、常識的に考えるとどうしても社会的に不都合なことは子どもに隠そうと思ってしまいますから。そして意外とあっさり「変なの、ふーん」と受け止める子どもの方がスゴイのかなとも思いました。





そうそう。子どもといえば、長男のドウェーン。彼は、伯父さんであるフランクに似ているんでしょうね。髪の色がこの二人だけがいきなり濃いめブラウン系ということもあるんだけれど、周りの価値観に左右されない独特の物差しで世の中を見ている感覚。このバラバラな家族の中で一番近いDNAじゃないかなと。


家族の距離が見えるような奇跡的に美しい空と雲のショット。

確かに、自殺未遂も破産も夢を見失うことも人生最悪の事態ですけれど、生きていればまだ立ち上がれるチャンスはあるわけです。家族だったり、友人だったり、或いはもう傍には居ないけれど強く愛された思い出だとか、誰か一人でも思ってくれる人がいれば、きっと大丈夫なんだろうな、と。そんな当たり前のことをこの映画で思い出しました。





勿論、一人で立ち止まって時間に癒されたり、うずくまって「みんな大嫌いだバカヤロー!!」と悪態つくことも必要なんだけれど、最後はやっぱり、人との関わりの中でしか生まれない温もりが必要なんだなぁと。誤解されたり、嫌われたり、傷ついたり、失ったり、間違ったり、本当に本当に面倒くさいのだけれど、そういう頑なな気持ちが一気に溶解していくような温かさを、思いがけなく人から貰ったりすることもあるのですから。

「負け組否定キャラ」のパパは、根拠のない出鱈目な自信過剰さが超絶に傍迷惑な人物でしたが、家族が危機に陥った時、周りが躊躇するような事態を爆発的に突破させる強さを家族の中で発揮しました。

人は年齢を重ねたりそれなりの経験を積んでしまうと、自分の知る範囲だけで世界を決めてしまったり、それ以外がよく見えなくなってしまいがちです。でもそれは「一人」だと欠点にしか映らないものですが、この家族のように1つの目的に向かって集まった時に、絶大なパワーに変わってしまうんですね。こういうのって、一人でいる時にはわからないものです。


米国ドラマ「24」のクロエ・オブライエンがチョイ役で登場!




こうしていよいよ突入していく美少女コンテスト。ダメダメだった家族が一丸となってオリーヴちゃんを守ろうとする姿勢に、私はホロリときてしまったわけです。

このミスコンの価値観自体、これはこれで恐ろしい世界なんですよねぇ。ま、こんなコンテスト対策をおじいちゃん一人に任せていた大人たちが悪いんですけどね、だってあれはヒドすぎるでしょう(笑)!いや、それともおじいちゃん、わざとあんな事をしたのかな。オトナの世界をとことんコケにするために・・・・いやいや、可愛いお孫ちゃんを使ってはそんな事しないか。おじいちゃんの「趣味」だったということにしておきましょう!

お腹ポッコリで可愛いオリーヴちゃんを演じたアビゲイル・ブレスリンは、今や思春期真っ只中のキレイな女の子に。ハリウッドの波に飲み込まれることなく、すくすく成長していってほしいなぁ。


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  2011/01/27 | Comment (0) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit

『マラソン マン』 (1976/アメリカ)

   ↑  2011/01/25 (火)  カテゴリー: サスペンス、ミステリー


【DVD】マラソンマン スペシャル・コレクターズ・エディションダスティン・ホフマン [PHNE-101698]


●原題:MARATHON MAN
●監督:ジョン・シュレシンジャー
●原作・脚本:ウィリアム・ゴールドマン
●出演: ダスティン・ホフマン、ローレンス・オリヴィエ、ロイ・シャイダー、ウィリアム・ディヴェイン 他
●大学院生のベイブはマラソン選手・アベベを崇拝しており、走ることが大好きな青年。彼の兄・ドグは表向きは実業家だったが、裏では政府のある機関で働いていた。ある日、ベイブは図書館で知り合ったエルザという女性とデートをするが、その最中に暴漢に襲われる。それを知ったドグはエルザにある疑いの目を向けるのだが・・・。全米ベストセラーになったウィリアム・ゴールドマンの作品を著者自身が脚色。ユダヤ人とナチスの因縁を元に、二転三転していくスリリングなストーリー展開や衝撃的な拷問シーンなど見どころ満載のサスペンス・スリラー作品となった。



を忍んで言ってしまいますが、私はてっきりダスティン・ホフマンが出ずっぱりで、マラソン選手が主人公のスポーツ・サスペンス(?)なのかとずーっと思っていました。なので、映画が始まってすぐ次々と"何か"が起きていくんだけれど、それが何なのか何が起こってるのかよく分からず、暫くは翻弄されっ放しでした。私が勝手に期待していたダスティン・ホフマンはマラソンが趣味というだけなのか!と分かるまでに随分と時間がかかりました(笑)。ま、この後、彼の脚力が見せ場にはなるのですが。

でも印象的なシーンが満載。
オペラ座で、サッカーボールが暗闇からぽーんと飛んでくる場面は、心底ゾクッときましたねぇ。ほとんど条件反射的に『世にも怪奇な物語』(1967/フランス,イタリア)のフェデリコ・フェリーニ監督が担当した「悪魔の首飾り」を思い出したんです。少女が赤いボールをポーンと放ってくるという・・・思い出すだけでもコワイー。ロイ・シャイダーが身の危険を感じてハッと身構えるんですが、その後何も起こらないのが更に不気味さ倍増で。本当に逃げ出したくなるような恐ろしさに包まれてしまいました。

それと、バルコニーで何者かに襲われるところを、向かいのビルの車椅子の老人が見つけるシーン。言わずもがなアルフレッド・ヒッチコック監督の『裏窓』(1954/アメリカ)の設定を連想してしまいました。これはちょっと面白かったですね。 



ただですねぇ、唯一、私が失敗したなと激しく後悔した点があったのです。
ローレンス・オリビエ公が演じる元ナチスの歯科医が、歯科の道具を使用して拷問をするのですが(しかも、ここは恐らくこの映画での大きな山場、というか見せ場なのだと思うのですが)・・・私にはその痛覚が全くわからなかったのです。

というのも私はこれまで虫歯になったことがなくて、歯科に行ったことがないんですよ(学校の歯科検診と出産前検診はある)。歯が痛いということも痛覚的によくわからない。なので口を開けてキャー!!というその恐怖感がほぼゼロ状態なので、何がコワイのか!?どこが痛いのか!?全く私には伝わってきませんでした。
例えば『ミザリー』(1990/アメリカ)で、脚をゴチーン!!と打たれるシーンがありますよね。あれが「わからない」と言うくらい、私はこの映画鑑賞で非常に大きな損をしたと思うのです。ですから一度虫歯の治療を経験してみて、改めてこの映画を観直してみたいと思っています!


オリビエ公は『ブラジルから来た少年』(1978/イギリス)では一転、復活を目論むナチスを追い詰める側を熱演

過去にユダヤ人たちから奪った財産を巡り、ナチスの残党や子孫たちが争うというものでは「ホルクロフトの盟約」を原作にジョン・フランケンハイマーが監督した『第三帝国の遺産』(1985/アメリカ)という作品もあります。マイケル・ケイン主演で壮大に作り上げたかったのだろう意気込みは伝わってくるものの、ちょっと残念な出来になってしまい日本では劇場未公開となりました。狂気をはらんだ独裁者やその支持者たちが未だどこかに潜み続け復活を目論んでいるのでは!?というテーマは、ユダヤ系が多いハリウッドでもなかなか消えることのない題材なのかもしれません。

因みに『マラソンマン』では、ドラマ「24」シリーズでジャックを大きくヘコませたジェームズ・ヘラー国防長官の、映画界駆け出しの頃のお若い姿を堪能することもできます。

・・・あれ?肝心のダスティン・ホフマンの話があまり出てきませんでしたね(笑)。
ナイフがシューッ!と出てきたりとか色々な意味で見どころの多い映画でしたが、それら1つ1つは濃厚なのに全体的にはどこか散漫な印象を持つ映画だなぁとも感じました。それはもしかしたら、私が拷問シーンで一人置いてけぼりを食ったからだけなのかもしれません。あー、本当にわからなくて残念だったなぁ。




というわけで、ここで「歯科医未経験の私」に朗報です!!(笑)

いつも映画ブログでお世話になっており、そして尊敬しているブロガーさんであるロッカリアさんの【ラジオ・ヒッチコック】様にて、この『マラソン マン』の記事がアップされました!(2011.2.24)
ロッカリアさんは公開時に劇場でもご覧になっていて、当時の思い出を含め、あの拷問シーンがどれほどイタイ!ものだったのか、どれほどオソロシイ!ものだったのかを克明に記事にしてくださっています。映画を観なくてもこれで十分です!というほど痛そうな文章です(笑)。とても参考になりますので、ぜひ一度ご覧になってみてください。

マラソンマン@映画生活



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  2011/01/25 | Comment (0) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit

『Rain レイン』 (2003/アメリカ)

   ↑  2011/01/24 (月)  カテゴリー: シリアス、社会派




[DVD] ヴィム・ヴェンダースpresents Rain


↑左は本国アメリカ発売のDVD。右は↑日本版DVDのジャケット。これにつられて、ふわふわとパステルカラーの如く"淡い優しさ"をこの映画に求めると肩透かしに・・・

●原題:THREE DAYS OF RAIN 
●日本リリース時のタイトル:ヴィム・ヴェンダース PRESENTS RAIN/レイン
●監督・脚本:マイケル・メレディス
●出演:ドン・メレディス、ピーター・フォーク、エリック・アヴァリ、ライル・ラヴェット、ペネロープ・アレン、ブライス・ダナー、ロバート・キャラダイン、ヘザー・カフカ、ジェイソン・パトリック 他
●ヴィム・ヴェンダースが製作総指揮を担当し、チェーホフの短編を映画化した群像劇。廃墟のようなビルが建ち並ぶ漠々とした街となったクリーブランドで暮らす6組の人々の物語。ピーター・フォークをはじめ、演技派俳優たちがカメオでも多数出演。因みに2010年2月発表の米誌フォーブスの電子版(www.forbes.com)の調査では、「米国で最も惨めな都市」にオハイオ州クリーブランドが選ばれている。




この映画は、自分の中で何かが終わった時、何かが途切れた時、何かが離れた時、そして何かを失った時、鑑賞に値するピークがやってくるという稀な映画だなと感じました。

ですから・・・
家族は健康、同僚も上司も大好き、妻は美人で夫婦円満、仕事は順調、毎日酒が美味っす、自慢の彼氏がいて化粧ののりもバッチリ、お姑さんも自分も大好きです!という元気一杯の方や、将来の夢や希望に満ち溢れた若い方などは―これらは決して意地悪で言っているのではなく―あまり気持ちが乗らない作品かもしれません。





現代のクリーブランドを舞台として「群像劇」の形をとったこの映画は、様々な人々が登場し各々に関連する出来事が起こるのですが、それらが巧みに交錯していくといった映画的な仕掛けは殆ど見当たりません。ロシアの文豪アントン・チェーホフの幾つかの短編小説をベースにした独立する6つの物語を、タぺストリーのように組み合わせた構成をとっているからです。

チェーホフは短篇小説を山のように書いているので一体どれが原作なのだろうかと探してみたのですが、ネット上では「チェーホフの6つの短編小説を基に」という本当にコピーしただけの紋切り型の言葉が溢れているだけで、タイトルすら探せませんでした。日本では劇場未公開作品なので情報量も少なく仕方ないかなと思い、今度は製作総指揮のヴィム・ヴェンダースやマイケル・メレディス監督のアメリカでのインタビュー記事をざっとチェックしてみましたが・・・なんと状況は全く同じでした。

ですので、これはあくまで私の推測なのですが、この作品は"6つの短編小説をベースにした"のではなく、"幾つかの短編小説から発想を得たメレディス監督が、それらを基に6つの物語を書いた"のではないかな?と思うのです。チェーホフの具体的な作品名が挙がってこないということもそうですし、昨年出版された新訳 チェーホフ短篇集」の中にも、完全ではないにしろこの映画の女性を連想させるようなショートーストーリーが含まれていることに偶然気付いたからでもあるんです。流石にロシア語で探す気力までは私にもありませんでしたので、もし原作のタイトルがお分かりになる方がいらっしゃいましたら、是非ご教示いただきたく思います。






さて、「Three days of rain」という原題からもわかるように、3日間に渡る雨の中で6つの物語や出来事、人物の行動がラジオのジャズ番組の進行とともに流れていきます。

満ち足りていたと思っていた人生の中に、空虚なものがあったことに気が付くこと。
自業自得の弱さを人に付け込まれて、取り返しのつかない道へ堕ちるしかない者。
自分さえも欺くような空言を並べてはその場しのぎを繰り返し、信用も信頼もない姿を晒すしかない老いた父と、それを責めることなく、静かに見守り続ける息子の姿。
仕事の資金繰りも住居もパートナーとの仲さえも失いつつある、八方塞がりのどうしようもない現実を抱えた爆発寸前の日々。
突然息子を亡くして心の拠り所を失い、それでも空白の中を這うようにして進んでいかなければならない日常と客との交流。
その先に起こるであろう最悪の事態を仮に予測できたとしても、社会の歯車から弾かれ居場所を失う腑甲斐なさを自分だけでは処理できない人が決意した一つ行動。


嵐のような暴風雨の中、ニュース・スタンドのおじさんがこんな事を言ってふっと笑うシーンがありました。
「あの雨は、道を洗いながらどこまで行くのかね。あそこの溝を見てると、おもちゃだの写真だの色々流れていく。向こうの木の辺りで渦に巻かれて、その後はわからない。海に行くのか、南の島に行くのか、どこにも行かずに腐るのか。・・・くだらん想像だな」


「こうすればよかったのに」とか「こんな事は愚かすぎる」とか「こんな姿は惨めすぎる」とか、登場人物たちに対してコメントできる言葉の数々は、恐らくどんな人から見たとしても容易に口にできるでしょう。それでもこの映画は、終わりも始まりも、解決も、理由もなく、ただ流れていく雨水のように物事をただ映し出していくだけなのです。

確かに衝撃的なシーンもあるのですが、"困難を乗り越える"などという劇的な出来事は起こらず、"いつかは雨は上がります"という生温かな励ましもなく。人々を客観視しドラマの起こらないドラマを描くチェーホフ作品の特徴通り、雨が上がるのと同時にラジオのジャズ番組も終了し、また映画も幕を閉じるだけなのです。たったそれだけなのに、主要人物でもないスタンドのおじさんが口にした、何気ない会話でのあの言葉がとても心に残りました。


Bob Belden / Three Days Of Rain 輸入盤 【CD】



もしこの映画を観て「退屈だ」と思わず、皆の上に等しく降りつける雨や、止む様子もなく激しく降り続く雨音に心静まった人がいたのなら、それは私も同じです。雨が上がるまで、一緒にクリーヴランドのWLOHから聴こえてくるライル・ラヴェットのJazz番組を聴いていましょう。同じように耳を傾けている人が、きっとどこかにもいるはずです。




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  2011/01/24 | Comment (0) | Trackback (1) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit

『ソウル・キッチン』 (2009/ドイツ、フランス、イタリア)

   ↑  2011/01/16 (日)  カテゴリー: コメディ




ソウル・キッチン [ アダム・ボウスドウコス ]


●原題:SOUL KITCHEN
●監督・脚本・プロデューサー:ファティ・アキン
●出演:アダム・ボウスドウコス、モーリッツ・ブライブトロイ、ビロル・ユーネル、ウド・キア、アンナ・ベデルケ 他
●ドイツ、ハンブルク。ここでレストラン「ソウル・キッチン」を経営するギリシャ系移民のジノス。恋人が仕事で上海に行ってしまったり、税務署から滞納分の支払いを迫られたり、挙句の果てにはギックリ腰になったりと、上手くいかないことばかり。そんな時、頑固者だが天才的な腕を持つシェフを雇うと彼が作る料理が評判を呼んで店は連日大盛況。ところがある日、兄のイリアスが仮出所の間、店で雇ってほしいとやって来るのだが・・・。




先月の『しあわせの雨傘』に引き続き、またまたGyaoさんのオンライン試写会で当選してしまった!しかしながら今回はどうも回線が不安定なようで、何度か止まりがちになってしまったのが少し残念。ま、近頃めったに新作を観ない私にとっては贅沢なお話ですので文句は言えません、ハイ。




さてさて。
この映画、色々な意味でとっても豪華な映画でした。いやー楽しかった~!!

【魅力その1】
まず何といっても、ギリシャ系、トルコ系、アラブ系などドイツで暮らす移民たちの生活ぶりを本当にさり気なーく、そしてユーモアたっぷりに描写している点でしょう!映画の登場人物たちの中で(恐らく)生粋のドイツ人たちが(表現はちょっとズレるかもしれませんが)大低"金に物言わせるアッパークラスの奴ら"風に描かれているのも移民視点の面白さであり、その皮肉が私は好きでした。

いわゆる"移民"をテーマにした映画というと自分のルーツやアイデンティティを探し求める物語が多いかと思いますが、この作品に関してはそういった迷いや不安等の感情を感じるものはありません。むしろその逆で、自分の魂であるホームグラウンド=「ソウル・キッチン」を守り抜くための、ダメ兄弟二人の人生珍道中といった方がいいかも。

そしてこの映画の多国籍・多民族的な要素は、実際ドイツ映画のみならず、デンマークやトルコ、イタリア、ベルギー、フランス、アメリカ等の映画作品で見かける俳優陣が登場している贅沢さからも伝わってきました。俳優自身も移民だったり、生まれた所と居住地が異なっていたりするわけですから本国ドイツをはじめヨーロッパ中で大ヒット!!というのは、きっと欧州に住む人々からすれば本当に身近な話題が背景となっているからなのかもしれませんねー。



因みに個人的にツボだったのは、トルコでは映画やTVドラマシリーズで有名な俳優Ugur Yücel(ウグル・ユジェル)の登場でしょうか。ほんの数カットなのですが、これがインパクト大!トルコ人若しくはトルコ系の人たちにとってはちょっと複雑でもあり、笑える1シーンともなったことでしょう。

勿論、日本でも配給・公開されている作品の役者さんもいますので、映画好きの方なら彼らの姿を一度は目にしたことがあるのでは・・・!?『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』『ラン・ローラ・ラン』『es[エス]』『サスペリア』『4分間のピアニスト』『エンド・オブ・デイズ』などなど。どの作品の誰が出ているかは、ぜひ映画で確認してみてください!




【魅力その2】

音楽です。とにかくカッコイイです!
監督自身がハンブルグのクラブでDJをやっているということで、特にヒップホップに造詣が深いようです。そのため、ソウル、ロック、R&B、テクノ、ヒップホップ、ギリシャ伝統音楽から「アイ・ウォナ・ビー・ユア・マン」まで、まるで音楽ジャンルのごった煮のようなバックミュージックがめちゃくちゃカッコいい!

ドイツの夜のクラブシーンなんかも楽しめますので、音楽ファンはそれだけでも楽しいかも。ブラームスの生誕地ハンブルクは、クラシック音楽活動も盛んな場所であり、加えてクラブやライブハウスなどのドイツのあらゆる音楽シーンの最先端をいく街なのだそう。街と音楽がセットになったような魅力が、この映画にもそのままふんだんに溢れているんですねぇ。




【魅力その3】

物語の中心が「レストラン」というだけあって、それはそれは美味しそうな料理や調理シーンも多々登場します。

特に、脇役でありながら強烈なインパクトを放っているのが、キレ者で天才シェフのシェイン。途中、ちょっとスゴイ料理を作ってくれますが、それが後で思えば全く無意味ではなく、実は物語にちゃんと活かされていたところに私は感銘を受けました(笑)。シェイン、もっと絡んで欲しかった~!

加えてちょっと面白いなと思ったのは、実はこの映画の舞台となる「ソウル・キッチン」は実在のお店がモデルとなったという点。しかもそのお店のオーナーは、なんとこの映画の主人公ジノスを演じているアダム・ボウスドウコス、彼本人!

ハンブルクのそのギリシャ料理店には、子供時代から付き合いがあったファティ・アキン監督も出入りしていたこともあってこの作品の構想ができたのだそうです。仲間たちが集う楽しげな温もりや親近感は、映画の中の"作り物"だけでは生まれることのない本物の匂いだったんですねぇ。きっと撮影も楽しかったのだろうなぁ、という雰囲気でいっぱいでした。




【魅力その4】
そして、これらの楽しい要素を余すことなく最高のコメディ映画として作り上げた、自身もトルコ系移民の二世であるファティ・アキン監督の素晴らしさは、私が言葉で述べるまでもないでしょう。『太陽に恋して』(2000)、『愛より強く』(2004)、『そして、私たちは愛に帰る』(2007)の三作で、いずれも深みのある丁寧な描写でトルコとドイツの二国間における人間ドラマを綴ってきた、まだ30代の若き監督です。

【DVD】太陽に恋して 【DVD】愛より強く 【DVD】そして、私たちは愛に帰る

その彼が、これまでと同様に移民社会における多民族性の要素を押さえ、そこに集まる多種多様な人々が織りなすドラマを「ソウル・キッチン」という舞台に置き換えて、こんなにワイルドで軽妙そしてハッピーになれるコメディ映画を作ってくれました。なんと彼は、ゴダール、トリュフォーらも成し遂げていないという世界の三大映画祭(ベルリン、カンヌ、ヴェネチア)のコンペティション部門のすべてで受賞したという実力の持ち主。これまで、役者や脚本家としても着実に実績を積んできている人なので、これからの映画界で絶対伸びていくことでしょう!

※因みに、監督の名前、日本では「ファティ・アキン」という呼び名で通っていますが、面白い音だなと思って元々のトルコ語表記を調べてみたら実際は「Fatih Akın」=「ファーティフ・アクン」でした。特に「ı」は「i」とは異なる発音ですがドイツ語や英語表記にする場合は「i」が代用されるため、日本でも「アキン」としているのしょう。


ややキャラクターの書き込みが弱いかなとも思いましたが、それすら補って余りある美味しい料理、音楽、踊れて食べて笑える(そして"オトナの笑い"も満載の)愛すべき映画でした。音楽センスのある監督、エンドロールもめちゃくちゃカッコいいっす!!DVDが出たらまたゆっくりと観てみたいです。今度は映像も止まらないだろうしね(笑)!


『ソウル・キッチン』/2011年1月22日(土)よりシネマライズほか全国順次公開!!
映画『ソウル・キッチン』日本公式サイト



『Kebab Connection』(2004/ドイツ)
アキン監督が脚本を書いた、同じくハンブルクのトルコ系移民のコミュニティにおけるケバブレストランを舞台としたコメディ映画。残念ながら日本では未公開なのですが、異文化間に生じる問題をコメディとして笑って見せる手腕は当時から十分に発揮されていたのでしょう。地元ドイツやトルコだけでなく、オランダ、ルーマニア、スイスといった国々でも評価している感想を見かけました。観たいなぁ観たいな~。




・・・そしてオマケ

この試写を観て、このレビューを書き終わった今。私はやっと「自分がどうして映画を見続けているんだろう?」という、シンプルなようで気づくことがなかった自分なりの疑問がちょっと解決したように思いました。意外と意識していなかったところで「実は観る映画を選んでいた」自分のスタンスが分かったというか。それは、このファティ・アキン監督のインタビュー記事がきっかけでした。でも長くなるので今日はこれでおしまい!またいつか、まとまったら書いてみたいと思います。

ソウル・キッチン@映画生活




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  2011/01/16 | Comment (0) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit

「シネセゾン渋谷」閉館のニュース

   ↑  2011/01/08 (土)  カテゴリー: 映画いろいろ・・・
昨夜、「シネセゾン渋谷が2011年2月27日(日)をもって閉館します」というニュースを目にして、個人的にちょっとガックリきておりました。この映画館は高校生の時からの思い出が詰まっていた場所でもあるため、本当に本当に残念でたまりません。つい昨年末に『キック・アス』 (2010/イギリス・アメリカ)が渋谷シネセゾン他全国順次ロードショー!!なんて元気に書いたばかりだったのに・・・





シネセゾン渋谷公式サイトへ
シネセゾン渋谷が入っていた「ザ・プライム」というビルは、渋谷駅を出てすぐ、道玄坂をちょっと上がった所。以前2Fはぐるーっとフードコートのようになっていたのですが、そこで友人たちとゴハンを食べたり他愛もない事でいつまでも長話をしたりした楽しい思い出も。映画を観終わった後にほっと一息つける場所でもありました。因みに私が高校生の頃の渋谷は「チーマー」という団体さんがですね、たむろしていた時代でもあります。ヤマンバさんが出てくるもっと昔の話ですね。ははは、恐ろしく懐かしい・・・。


このビルの中には、今回閉館が決まったテアトル系のシネセゾン渋谷ともう一つ、松竹系の「渋谷ピカデリー」という映画館も入っていたのですが、こちらも既に2009年に閉館となってしまったんです(跡地はライブハウスとしてリニューアル)。プライムの斜め前には東宝系の「渋東シネタワー」もあって、渋谷にはミニシアターも含めて映画館が沢山あったのですが、この道玄坂の入口付近だけでも映画をかなり選べるという、とても便利な場所でもありました。

それに何と言っても、私は過去にこの「シネセゾン渋谷」さんのスタッフ募集にも行ったこともあったんですよ。大好きな映画のある環境で働けるチャンスだ~!と思って書類審査の後の面接に気軽に行ったんですけど。・・・ですけども。そこには、ものすごく真剣に映画業界で働きたい!!映画を作りたい!!という人たちが、それこそ熱気ムンムンになってやってきていたのです。少しでも映画業界に入れる、近づける足がかりとして、5,6人くらいだったかな・・・とにかく「必死」の思いで集まっていました。そこで私は思ったんですよね。あぁ、私は単純に映画を観ることが好きなだけであって、これを仕事にしたいだなんて思えない、私は完全に場違いだったな、と。それで面接してくださった社員さんに謝罪し、あとは面接抜きで映画についての雑談で終えてもらった・・・というなんとも申し訳ない思い出もあるんです。思えば、私の映画への立ち位置を決定付けたような出来事でもありました。





恵比寿ガーデンシネマ公式サイトへ
そう。さらに悲しいことには、学生時代の真っ只中にオープンして、その後よく通った「恵比寿ガーデンシネマ」も1月29日(土)に休館となってしまうんです。映画館、一体どうしてしまったんだろう。


私が「映画館」と聞いて思い浮かべられる光景というのは、映画好きの人々が次の回に入るために並んでいたり、ロビーの壁にある映画の記事を読んでいたり、パンフレットや前売券を買っていたり、チラシを手に取っていたり・・・とにかく人であふれていたような気がするんですよ。会社勤めの頃も。あぁ、でも・・・・いつの頃かなぁ、シネコンに行くようになって、気が付くと妙に人数が少なくて、ホームシアターかと思うほど静かな上映風景も多くなってきたような気がします。レディースデイに『宇宙戦争』を観に行ったら5人くらいしかいなくて、しかもエンドロールの時は真っ暗闇の中に私一人だった時もあった←これは怖くなってしまったのでよく覚えているんですよ(笑)。





ここ数年、子どもが生まれてから映画館に行っていません。子どもを預けてまで自分で好き勝手ができる状況でもありませんし、何しろ映画館へは本当に心から寛げて楽しめる状況になってからのんびり行ってみたいんですよね。心置きなく。ですので、私が通っていた映画館が今どんな状況なのかは全く分からないのですが、理由はどうであれ映画館に足を運ばなくなった一人として消えていってしまう映画館に対して本当に申し訳ない気持ちにもなるのです。

上映作品がバラエティに富んでいて『ひまわり』や『慕情』なんていう過去の作品も集めて上映してくれるような「新宿武蔵野館」さん、どうか無事でいてください~!

知らない人たちが一堂に会して同じ時間の中で同じ物語を観るという、ちょっとしたドキドキ感。開演時間を知らせるベルの音や、本編が始まる時にするすると開いていく幕の音。自宅で観る時とは違った、スクリーンを見つめる時の心地よい集中力。映画を観るという楽しみに対して商業的に支えていかなくてはいけないのは、映画好き人間の役割でもあるんですよね。シネセゾン渋谷さん、これまで沢山のイベントや、楽しいやら眠いやらのオールナイトショウ、本当に楽しかったです。長い間お疲れさまでした。今後統合されるという「ヒューマントラストシネマ渋谷」さんでいつか絶対お会いしましょう!!本当にありがとうございました。

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  2011/01/08 | Comment (1) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit