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『ザ・ホークス ~ハワード・ヒューズを売った男』 (2006/アメリカ)

   ↑  2011/04/27 (水)  カテゴリー: サスペンス、ミステリー





ザ・ホークス ハワード・ヒューズを売った男 [ リチャード・ギア ]


●原題:THE HOAX
●監督:ラッセ・ハルストレム
●出演:リチャード・ギア、アルフレッド・モリナ、マーシャ・ゲイ・ハーデン、ホープ・デイヴィス、ジュリー・デルピー、スタンリー・トゥッチ 他
●映画監督にして伝説の大富豪ハワード・ヒューズの自伝を捏造し、出版社を手玉に取った世紀の詐欺事件を巡る驚きの顛末を、事件の張本人であるクリフォード・アーヴィング(Clifford Irving)の回顧録を基に映画化。嘘がバレぬよう様々な手口で危機を切り抜けながらも、綱渡りの連続の末追いつめられていく彼の姿と、その嘘が予想を遥かに超えて大きな影響をもたらしていく様をスリリングに描き出す。





今回も【オンライン試写会】にて鑑賞です。Gyaoさん、いつもありがとう!!]

・・・でもこの映画、今週末から日本公開なのですが、なんとアメリカでは2006年制作、2007年公開だった!!今までDVDスルーにもならずよくここまで温めたものですねー。






一般人を慌ただしくビルからを追い出し、床からゴミを除去してカーペットを敷き、電話やテーブルの消毒に追われる社員たち・・・。このオープニングは、まさしく「潔癖症」で「変人」とまで言われたハワード・ヒューズの登場を期待させるシーンそのもの!

ビル上空に現れるヘリコプターを仰ぎ見るこの滑り出しは、「クリフォード・アーヴィング(リチャード・ギア)は、一体何をやらかしてくれたのだろう!?」と、この映画への期待を大いに膨らませてくれるものです。



原題の【Hoax】とは「でっちあげ、インチキ、悪ふざけ」といった意味

原作者であり、この事件の首謀者であるクリフォード・アーヴィングという人物は、超が100個くらい付くような大物の、しかもまだ生きている人間の伝記を勝手にでっち上げて出版を目論むような「THE」インチキ人間ではあるのですが・・・。

ラッセ・ハルストレム監督は、このアーヴィングの虚構に満ちた人生を炙り出す人間ドラマに併せ、1970年代アメリカの【黒歴史】を思い起こさせる政治的・社会的背景を巧みに絡めるという面白い切り口で『ザ・ホークス ~ハワード・ヒューズを売った男』を作り上げてくれました。






この【インチキ人間】アーヴィングのように、人を騙す手腕に長けている人物というのは、周りからは非常に魅力的に映るものです。人を惹き付ける会話や表情、気遣いがあったりするからです。

大概常識のある人は【常識の壁】を乗り越えられないものなので、アーヴィングのような突飛な行動も「まさかそんな事はしないだろう」という壁に守られて、真実を見抜くことが出来ません。

『ザ・ホークス』の中でも、アーヴィングがライフ・マガジン社で「プルーンの話」を披露するシークエンスがありますが、これは思わず前のめりになって、その場で彼の話に聴き入っているような錯覚を起こすほど。抜群のストーリーテラーなんですね。

ですからこの映画の前半は、彼が出版社の人間を欺く時、公文書を盗み撮りする時、ペンタゴンに侵入して書類を盗み出す時など、ノリの良い音楽に合わせてテンポよく物語が進んでいくため、こちらも思わず「うまくいきますように!」なんて、手に汗握って一緒に見入ってしまったりするのです。






しかし、次第に嘘が綻び始めて危機が何度も何度も訪れる後半からは、だんだんと彼の中の闇の部分も現れ始めてきます。

アーヴィングは、大切にしている妻へ「自分の浮気」についてウソをつくことは「嘘をつくと頭痛がする」と言って頭を抱えて悩むのですが、ハワード・ヒューズの伝記をでっち上げることについては、最初から何の罪の意識もありませんでした(頭痛を起こすどころか、逆に生き生きとしていた)。

ところが「ハワード・ヒューズという人物」と「ハワード・ヒューズに成り替わっている自分」との境界が曖昧になっていくことから、彼の中に混乱が生じてきます。ヒューズのスタイルや口真似から始まって、「自分の言葉はヒューズの言葉だ」とまで言い出すようになり、それを自身でも信じ込み自分にパワーがあるかのように振舞い出すアーヴィング・・・。


事実を繋ぎあわせて虚構を生み出す嘘に、彼の精神状態は次第に耐え切れなくなっていきます。長年の友人を繋ぎ止めるやり方も、人間の後ろ暗い部分を見せつけられるような冷たい感触がして悲しいもの。彼はどうなってしまうのでしょうか・・・!?






更にこの映画は、アーヴィングの詐欺行為に併せて、もう一つの面白い視点をプラスすることで多重的な面白さを見せてくれます。それは、アメリカ政治の舞台裏を歴史と並行させて巧みに物語に絡めている点。

私は原作を読んでいないので、クリフォード・アーヴィングという人物がどこまでを「原作」とし、そしてハルストレム監督はどこからを映画の「脚色」によるものにしたのか?興味津々でした。そこでそのあたりの情報をNewsweekから少し引用させていただきます(和訳は日本版より)。

ウィリアム・ウィーラーによる巧妙な脚本は、複数の詐欺容疑で服役したアービングが出所後に出版した大胆な回顧録に基づいている。アービングの回顧録を忠実に映画化しただけでも極上のサスペンスになっただろうが、ハルストレムとウィーラーは、信用度ゼロの詐欺男が明かした「事実」に頼るだけでは満足できなかった。彼らはヒューズとニクソン政権の関係を調べるとともに、事実にいくつかの脚色を加えて、挑発的でブラックユーモアに満ちた物語を作り上げた。スクリーンでのアービングは、自らでっち上げた虚構のストーリーよりもずっと壮大で複雑な陰謀に翻弄されていく。


そうなんです!

この映画の中でアーヴィングが書いた「偽」の伝記が当時のリチャード・ニクソン政権の「何か」を揺さぶり、「何か」を仕掛けてしまうことになる(つまりウォーターゲート事件ですね)・・・という運びや、ハワード・ヒューズからニクソンへの違法献金の金を資金洗浄した人物として「ビーブ・レボゾ」の名前を出してくるなど・・・この映画ですら虚実綯い交ぜの状態なのです!これが私にはとても面白かった。

一体何が真実なのか。そんなことをあれこれ想像しながら鑑賞するのも、この映画の楽しみ方の一つかもしれませんね。






ハヤカワ文庫 【ザ・ホークス(上)世界を騙した世紀の詐欺事件】 クリフォード・アーヴィング 著 / 三角和代 訳 (早川書房) ハヤカワ文庫 【ザ・ホークス(上)世界を騙した世紀の詐欺事件】 クリフォード・アーヴィング 著 / 三角和代 訳 (早川書房)
■ハヤカワ文庫【ザ・ホークス(上・下)世界を騙した世紀の詐欺事件】
 クリフォード・アーヴィング 著 / 三角和代 訳 (早川書房)



ちょうとこの時代のアメリカというのは、ベトナム戦争泥沼化へとまっしぐらに突き進んでいました。ベトナムにおけるアメリカの勝利(コントロール)は見えておらず、国内での反戦運動も激化。保守共和党ニクソン政権は、人種差別問題や失業、治安、公民権運動などの不安定な要素を山のように抱えており、アメリカ国内は一触即発の状態でした。ものの価値観や政治的情勢も、右に左に大きく揺れ動いて対立する時代。

そんな風の中でアーヴィングは、大胆奇抜な行動が可能だったのかもしれません。

彼の行動に合わせて劇中でかかる音楽 ――クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル(略してCCR)の「Up Around the Bend」「Down On The Corner」をはじめ、デイヴ・メイスンの「Only You Know and I Know」、ビートルズ(というかジョージ・ハリスン)の「Here Comes The Sun」(のアレンジ)―― などなど、【ザ・70年代音楽】が時代の空気とマッチして、とても心地よかったりもしました。

何といってもハルストレム監督は、ABBAの映画を作った人でもありますしね!







この映画が迎えるラストは「事実」そのものです。

諦めや寂しさと、ほんの少しの安堵感が漂う一方で、やはりタダでは起きないアーヴィングのしぶとさには、私も思わず笑ってしまいました。

よく考えてみるとこの映画の冒頭、アーヴィングが出版社にて原稿を売り込み、二人の編集者が「私は衝撃的で怖かったわ」「いや、俺は怖いどころか面白くて笑えたよ」と感想を述べているシーンがありました。このセリフこそが、この映画への、そしてクリフォード・アーヴィングという人物への私の感想そのものかもしれません。


そうそう、この映画、映画館でご覧になる方はどうか最後まで席を立ちませんように!エンドロールの最後の最後にかかる歌がスゴイのです(笑)。笑いました!!どうぞお楽しみに。

※2011年4月30日(土)より、シアターN渋谷ほか全国順次公開!!



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  2011/04/27 | Comment (1) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit

突然ですが「第76回(2003年度)アカデミー賞授賞式」を振り返ってみた!

   ↑  2011/04/25 (月)  カテゴリー: 映画いろいろ・・・
今回はなんと7年前の「第76回アカデミー賞授賞式(2004年2月29日)」を心ゆくまで一人で振り返ってみようと思います。なぜこの年なのかと申しますと、家に録画のDVDがあったから!それだけです。気の済むまでやってみようと思いますので「ついていけんわ!」という方、どうぞ遠くから生温かく眺めていてください。ハハハ






というわけで、この年の司会はこの方、3年ぶり(なんと)8回目のビリー・クリスタル。
歌にダンスに話芸に、ホント芸達者です。会場を楽しませるコツを熟知していらっしゃる。



そして、この年のオープニングのパロディ映画は『パイレーツ・オブ・カリビアン』『ラスト サムライ』『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』などの豪華ノミネート作品。もちろん、ビリー・クリスタルが全編に渡って登場してきます。
毎回思うのですが、これ、一体どうやって撮影しているんでしょう。こんなことが可能なら映画の全編撮影後「俳優を丸ごと差替え」とか違和感なく出来てしまいそうでコワイですね。





【助演男優賞】

(左上段から。■が受賞)
□『The Cooler』 アレック・ボールドウィン
□『21グラム』 ベニチオ・デル・トロ
□『イン・アメリカ/三つの小さな願いごと』
          ジャイモン・フンスー
■『ミスティック・リバー』 ティム・ロビンス
□『ラスト サムライ』 渡辺謙
(プレゼンターはキャサリン・ゼタ=ジョーンズ)




そうそう、この年は『ラスト サムライ』の渡辺謙さんが大健闘されました。
しかしながら受賞は『ミスティック・リバー』のティム・ロビンスへ。

政治的発言が多い彼が壇上で何を言うかドキドキでしたが、無事に終了。「この映画で、私は虐待を受けた役を演じましたが、そのような人は勇気を出して助けを求めてください」と付け加えていました。当時おしどり夫婦(結婚はしていない)として有名だったスーザン・サランドン(写真右)への感謝も忘れず(2009年には破局してしまったそうでザンネン)。昔はツルツルぴかぴかな感じだったのに、すっかり風格が出ていました。





【助演女優賞】


(左上段から。■が受賞)
□『砂と霧の家』 ショーレ・アグダシュルー  
□『エイプリルの七面鳥』 パトリシア・クラークソン  
□『ミスティック・リバー』 マーシャ・ゲイ・ハーデン  
□『サーティーン あの頃欲しかった愛のこと』ホリー・ハンター
■『コールド マウンテン』 レニー・ゼルウィガー



助演女優賞は、マシュマロのように可愛いらしいレニー・ゼルウィガー。
次作『ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうなわたしの12か月』の撮影をしていたのか終わっていたのか・・・またまたプクプクになっていて可愛かったです。
「駆け出しの頃に親切にしてくれた」というトム・クルーズにまで感謝の言葉を述べてました。心のこもったスピーチがとても感動的でした。





【コッポラ親子】

ここで、あのコッポラ父娘が「脚色賞」のプレゼンターとして登場(写真左)。
「やっと家業を引き継いでくれたな」と嬉しそうなコッポラお父さん。
(ちなみに、イタリア語でCoppolaとはシチリア人が被るベレー帽のこと。Coppola Stortaでマフィアのメンバーという意味。私の先生もコッポラ先生だったので、最初聞いたときはビビッてしまった(笑)

この年は、娘ソフィアが『ロスト・イン・トランスレーション』でアメリカ映画史上初 女性による「監督賞」ノミネート(意外だ)と、「オリジナル脚本賞」受賞ということもあり、周りが引き気味になるほど父ちゃん&従兄弟のニコラス・ケイジが大喜び。発表の瞬間も座席から飛び上がらんばかりでした(写真右)。巨匠とはいえ親バカさんには変わりなく、本当に娘が可愛いくて仕方ないんでしょうねー。

それとは対照的に娘ソフィアといえば、マイペースなのか元来肝が据わっているのか、生まれながらのセレブなコッポラ一族だけあってか器が違うんです。この方は、壇上に上がってもスカートの上から脚をぼりぼり掻いてました。全く飄々としたご様子。本物のセレブは違います。





【主演男優賞】

(左上段から。■が受賞)
□『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』
                ジョニー・デップ
□『砂と霧の家』 ベン・キングズレー
□『コールド マウンテン』 ジュード・ロウ
□『ロスト・イン・トランスレーション』 ビル・マーレイ
■『ミスティック・リバー』 ショーン・ペン
(プレゼンターはニコール・キッドマン)



発表の瞬間というのは普通、誰もがお祝いムードとなるものですが、苦虫を噛み潰したような顔で微動だせず横を向いてガン飛ばしまくっていたのがビル・マーレイ。この方、気難しいそうで。チャーリーの天使たちも撮影中タイヘンだったらしいですね。
会場はスタンディングオベーション(写真が見づらくてすみません)。



左:クリント・イーストウッド御大
中:ジュリア・ロバーツ、ジョニー・デップ&ヴァネッサ・パラディ、ジュリアン・ムーア
右:出ました!ボールドウィン兄弟



左:ベニシオ・デル・トロ様、ナオミ・ワッツ&故ヒース・レジャー
中:レニー・ゼルウィガー、ジュード・ロウ、オプラ・ウィンフリー
右:完全武装のダイアン・キートン



実は愛されキャラだった、ショーン・ペン。

『アイ・アム・サム』や『デッドマン・ウォーキング』の時は「アカデミー賞だ?演技は競うもんじゃねぇ!」とか何とかで突っ張ってましたが、今回は出席してちゃっかりオスカーまで貰ってやっぱり嬉しそう。昔マドンナと結婚していた頃は、パパラッチ相手の暴力沙汰だとかムショ入りなども果たして【映画界の悪童】とまで言われていましたが、この頃から快進撃が続いております(2008年には『ミルク』でも再び主演男優賞受賞)。
で、今、そんな彼と熱愛中なのがスカーレット・ヨハンソン。色々な意味ですごいカップルです。現在個人的に注目中。





【主演女優賞】


(左上段から。■が受賞)
□『クジラの島の少女』ケイシャ・キャッスル=ヒューズ
□『恋愛適齢期』ダイアン・キートン
□『イン・アメリカ/三つの小さな願いごと』サマンサ・モートン
■『モンスター』シャーリーズ・セロン
□『21グラム』ナオミ・ワッツ




プレゼンターは、前年『戦場のピアニスト』で「主演男優賞」を獲得したエイドリアン・ブロディ。彼はその受賞時、喜びのあまりプレゼンターだったハル・ベリーに「ぶっちゅぅぅぅうぅ~!」と凄いキスして会場をどん引きさせるという≪事件≫を起こしていました。

その彼が、今年はマウス・ウォッシュで準備万端、主演女優賞の女優さんを待ち構えるという自虐的演出を見事に行いました。選ばれたいような、選ばれたくないような表情でウケているノミネーターたち(写真左)。でも、ダイアン・キートンは心配しなくてもいいかなと思いました。

そして、受賞は南アフリカ出身の美女シャーリーズ・セロン。彼女は子供の頃、暴力的だった父親からセロンの身を守るために母親が夫を射殺する・・・という辛い事件に遭遇しており、苦労を積んできた人でもありました。そのため、スピーチでは母親への感謝の言葉で母親が号泣。とても感動的でした。





その他は簡単に。
この年は『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』が役者部門以外の11部門(作品、監督、脚色、作曲、歌曲、美術、衣装デザイン、メイクアップ、視覚効果、音響、編集)を総ナメ受賞状態でした。また「外国語映画賞」では、山田洋次監督の『たそがれ清兵衛(英題:THE TWILIGHT SAMURAI)』がノミネートされていましたが、惜しくも受賞ならず。




・・・・というわけでやってはみたものの、ここまで書いたらやっぱり疲れた~
次回は(次があるのか)、さらに時代を遡ってみたいと思います。
またまたお付き合いいただいた方、いらっしゃいましたら本当にありがとうございました。
次回は「第68回アカデミー賞」(1996年)です!いつ書くかは不明です!(笑)



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  2011/04/25 | Comment (0) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit

『トト・ザ・ヒーロー』 (1991/ベルギー、フランス、ドイツ)

   ↑  2011/04/24 (日)  カテゴリー: ロマンス、ドラマ





【DVD】トト・ザ・ヒーローミシェル・ブーケ [ACBF-90855]


●原題:TOTO LE HEROS
●監督:ジャコ・ヴァン・ドルマル
●出演:ミシェル・ブーケ、トマ・ゴデ、クラウス・シンドラー、サンドリーヌ・ブランク、ミレーユ・ペリエ 他
●ベルギー出身の新人J・V・ドルマルが、1991年カンヌ映画祭でカメラドールを受賞し、センセーショナルなデビューを飾った初監督作品。とある老人ホームの一室。トマ老人は自分の生涯をふり返りながら“復讐“を決意する。少年時代、大好きだったパパと愛する姉アリスの悲しい死。青年時代、アリスの面影を漂わせた人妻エヴリーヌとの悲しい恋。“それもこれもみんな隣家の息子アルフレッドのせいだ“。そう思い続けて生きてきたトマ。そして彼はピストルを手に、アルフレッドの家へと向かうのだった・・・。



日本ではDVD化されていないので以前からなんとなく探していた一本なのですが、某大手レンタルショップでやっと見つけましたよ、VHSテープ。聞いてみるもんですね。
■2012年11月16日追記■
(※2012年10月26日よりDVDが発売されました。この復刻にて2012年12月7日からはTSUTAYA店頭の発掘良品コーナーにも並ぶそうです)

※以下ラストに触れています。ラストが冒頭にくる映画構成ですが、未見の方、これから鑑賞予定で詳細を好まれない方は、閲覧をお控えいただくことをおすすめします。




いろいろ映画を観続けていると、自分が感じた思いと世間との評判とがあまりに異なる時があって、ほとんどの場合「おぉ、そういう見方があったのか!」と感動したり自分の見聞の狭さを嘆いたりするものですが、今回ばかりはちょっと落ち込みました。というのも、どのレビューサイトを見て回っても「感動した」「泣いた」「こんな優しい映画はない」という絶賛の嵐だったのです。が、(・・・ここで正直に書きますが) 私はそんな甘い感情を露とも感じることが出来なかったのです。


勿論それは、この映画を大切に思っている人や、その気持ちを否定するものなんかじゃありません。私はただ、現状を否定し続け、人を羨み、妬み、憎み続けることを生きる糧にしてきた主人公トマに、どうしても心を寄せることが出来ず辛かったのです。そして、そういった彼の根幹を覆すほどの「人生の決着」を「死で完結させる」という出来事は、私にとっては冗談じゃない!という遣り切れない思いでいっぱいにさせるものでした。

それでふと思ったんですよね。

そういう「弱さ」・・・すべてを受け止められるような「優しさ」こそが、私には欠けているのではないのか、と。強さや理想論ばかりを追いかけられない人間もいることを感受できないほど、私は心根が曲がっていて、どこかで人を突っぱねているのかもしれないなぁ、あぁみんな優しいのだなぁ・・・と。まぁ、映画の登場人物に対してそうムキになることもないかな、とか。とにかく、この映画の素晴らしさというものを私が掬い取りきれなかったのは、本心から言っても残念でした。たぶん、見るべき点がきっとズレてしまったのだと思います(映画にしても現実世界にしてもそうですが、何が幸か不幸かは他人が決めることではないですしね)。

この映画で際立っているのは、女たちの方が余程強いということ。
姉のアリスは、トマへの愛の証に火を放つ。母親は、食べるために肉の血を流す。アリスの面影を残すエヴリーヌは、トマに会えずにいた後も再婚して立派に年老いている。同情すらもかなぐり捨てて言ってしまえば、自分勝手に積み上げてきた「都合」で死ぬことは決着ではないと思っているし、それが美しいとも思わない。トマの行為がもし「誰かのために死ぬ」ということを指しているのなら、死ぬ前にやるべきこと、伝えるべきことが沢山あったはずだと思ってしまうんです。たとえ、トマがアルフレッドになり替わることを切望していたのだとしても。・・・厳しい見方なんだろうな。


家族が幸せだった時代。アリスとの甘い記憶。エヴリーヌと愛し合った思い出。大切に抱いて歩いていけるチャンスは余りあるほどあったはずなのに。

私はトマに生きてほしかった。アルフレッドと語り合ってほしかった。そうすれば、もっと高く飛べたはずなのに。愛する人、愛してくれた人たちにもっと近づけたはずなのに。光が降り注ぐ美しい花々の上を憧れの飛行機で駆け抜けることは、「死」で可能になるわけじゃない。

・・・ただ一方では、そういう生き方を望んだんじゃない、そういう理想論だけじゃないとは頭ではわかってはいるつもりなのだけれど。だけれど、それでもやはり、目の前にあったはずの沢山の愛をトマに見せてあげたかったなと思う。でもそれはきっと、苦難との格闘の上、終焉の幕下で安堵の思いに横たわる人を叩き起こすような行為なんだろうな。

で、そんなことをグルグルと考えていたら、自分が「絶対に諦めるなー!」と叫んでいる松岡修造のようにも思えてきました。もちろん修造は、こんな人生は望んではいないだろうけれど、でもこの映画を観たら何を思うだろうか。私と同じように「トマ、だめだ!生きるんだ!人生はまだまだ捨てたもんじゃない!捨てちゃだめなんだ!生きるんだー!」と叫んでくれたら、私は嬉しいな。

トト・ザ・ヒーロー@映画生活




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  2011/04/24 | Comment (0) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit

「第83回(2010年度)アカデミー賞授賞式」を、やっと振り返る

   ↑  2011/04/21 (木)  カテゴリー: 映画いろいろ・・・
今年のアカデミー賞授賞式のダイジェスト版を、やっと最近見ることができました。

毎年欠かさず見るようにはしていたのですが、震災の影響もあってかそんな気分にもなれず。最近ドッと疲れが・・・。いやいや、私がシッカリせねば。→そう、それで好きなことをして気を晴らしましょう!と。見ましたよ見ましたよ!楽しかったです。






今年のホストは、ヤングなお二人。ジェームズ・フランコとお人形さんのようなアン・ハサウェイ。彼女すごく張り切って頑張っていました。対してフランコは『127時間』で主演男優賞にノミネートされていたというのに「やる気はありますか~!?」と思うほどテレンコテレンコしてました。まったくもうシャキッとしなさい!とおかあさんは思うわけです。

若年層を狙ってのことでしょうが、全体的に学芸会で頑張っている学生を見守る保護者の気分でした。こんな中途半端よりも、しゃべくりに慣れていて笑いのセンスもあるスタンダップコメディアンとか、サタデー・ナイト・ライブ組に任せていた時の方が安定感はありますね。

さて。話題作に司会者を投入するオープニングのパロディ映画、年々技術が上がっていることには目を見張るばかりです。ハリウッド映画の遊び心もMAXに感じられて楽しいもの。違和感が全くないことにビックリさせられます。舞台装置も、ここ数年ますます美しくなっています。いや、日本の紅白歌合戦だってスゴイですけれどね!





音響・視覚効果・撮影賞などの技術系は『インセプション』が獲得しましたが、役者陣については主に「ドラマ映画」がキレイに持っていった感があります。その中で『ザ・ファイター』は、助演女優賞(メリッサ・レオ/左)と助演男優賞(クリスチャン・ベール/右)がW受賞。


クリスチャン・ベールにはいつも驚かされるんですが、この人見るたびにいつも別人じゃないですか!細面のイケメンだったり、筋肉マッチョだったり、骨皮の不眠男だったり、ヤク中ボクサーだったり。スピーチも見たのですが、もう喋る喋る!カリスマ性のある人ですねぇ。授賞式後のインタビューもまたブッ飛んだ感じでした。

「自分は演劇学校を出たわけじゃないから、感じたままに演じるんだ。特に影響を受けたのはジミ・ヘンドリックスだ。彼はスゴイ才能の持ち主だよ。指から血を流しても演奏を続けるんだ。その姿を見て、俺はこれだと思ったね。役作りのためなら何でもするよ。でも宣伝行為とは思われたくないな。わかるだろ?数年前までは俺は何でもできると思っていたけど、もう年を感じるよ。無理をしちゃダメだな。子どももいるからね。これからの役作りには十分気を付けようと思ってる」

なんてことを機関銃のように喋りまくっていました。
アクの強い人でした。奥さん、きっと大変そう・・・・






そんな中、微妙な感じの主演マーク・ウォールバーグ(写真左)。

なななんと、アカデミー賞ではノミネートもされていなかったんですよね。彼女役だったエイミー・アダムスでさえ、受賞したメリッサ・レオと一緒にノミネートされていたというのに!

しかも、授賞式の初っ端、司会のフランコのおばあちゃんから「マーキー・マークを見たわよ」とまで言われる始末(←説明しよう!マーキー・マークとは、昔「ニュー・キッズ・オン・ザ・ブロック」というアイドルグループが流行っていた頃、メンバーのドニーとは別に「ワル」のイメージでラップグループをやったり、カルヴァン・クラインのパンツを見せたりしていた時代があったマーク・ウォールバーグの別名である。彼はそんな時代を忘れたがっている!!)。なのに、こんな時に【マーキー・マーク】の名前を出すオバアチャンの破壊力はスゴかった。マーク撃沈。

『ザ・ファイター』の兄貴役のモデルとなった本物のディッキー・エクランド(写真右)も大喜び。映画の通り目立ちたがり屋さんでした。







『英国王のスピーチ』は、主演男優賞・作品賞・監督賞・脚本賞を手堅く受賞。

トム・フーパー監督(写真左)はオックスフォード大学で英文学を学んだという人物らしく、穏やかでスマートな雰囲気。コリン・ファース(写真右)、ジェフリー・ラッシュ、ヘレナ・ボナム=カーターという、えらく扱いが難しそうな3人組を上手くまとめられたものだなぁと思いました。こういう人の方が監督業には向いているのかな。
この映画はあとで絶対観ようと思います!



そして、主演女優賞は『ブラック・スワン』のナタリー・ポートマン。
この映画で知り合ったフランス人振付師と婚約→妊娠ということで、本当に幸せそう。でも才色兼備すぎてつまらないのでコメントはこのへんで。だって、もう言うことないですもんね!(笑)







個人的に嬉しかったのは、『トイ・ストーリー』シリーズ通して3回とも主題歌賞などでノミネートされてきたランディ・ニューマンおじさんが、遂に『3』の“We Belong Together(邦題:僕らはひとつ)”で歌曲賞を受賞したこと。

お茶目なランディおじさんは「つくづく皆んなに愛されているのだなぁ」というキャラクターで、私も大好き!!



それでは、『1』の時のライル・ラベットとデュエットした「You've Got A Friend In Me」(アスペクト比が残念ですが雰囲気がよく出ているので・・・)を貼ってこの辺で御開きに。



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  2011/04/21 | Comment (0) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit

最近、子どもと一緒に歌っている映画音楽は・・・・ 『天使にラブ・ソングを 2』

   ↑  2011/04/16 (土)  カテゴリー: 映画いろいろ・・・


天使にラブ・ソングを2 [Blu-ray] / 洋画


●原題:SISTER ACT 2: BACK IN THE HABIT
●監督:ビル・デューク
●出演:ウーピー・ゴールドバーグ、マギー・スミス、キャシー・ナジミー、ウェンディ・マッケナ、メアリー・ウィックス、バーナード・ヒューズ、ジェームズ・コバーン、ローリン・ヒル、ジェニファー・ラヴ・ヒューイット 他
●かつて殺人事件に巻き込まれたことから修道院と関わりを持ちつつも、今は再びショービス世界に舞い戻っていた歌手のデロリスは、シスターたちの要請によって、不良学生の巣窟でもある高校へと派遣された。やがて彼女は悪ガキたちの音楽的才能を認めてコーラス・グループを結成させ、音楽活動を開始する。




『天使にラブ・ソングを』シリーズは、地上波でも時々放映される人気の作品です。気取らないパワフルな魅力のウーピー・ゴールドバーグと、劇中歌われる様々な音楽との相乗効果で、文句なく元気になれる映画作品の1つでもあります。

我が家でも私がよくへたな歌を歌っているので、子どもが喜んでマネをします。『野のユリ』の「Amen」にしても「ママ、エイメンしよう!」とノリノリで持ちかけられたりします。最近ではこの『天使にラブ・ソングを2』の「Oh Happy Day」と「Joyful, Joyful」が流行りだったりします。確かにゴスペルソングというのは、歌詞の繰り返しが多くてリズムもいいので、子どもの耳に覚えやすいのかもしれません。





そんな中で、今日は、我が子のお気に入りでもあり来日公演もしたことのあるイギリスのLondon Community Gospel Choir「Joyful, Joyful」と、カナダのGospel Célébration de Québec「Oh Happy Day」をご紹介します(リンクは2つとも公式サイト)。



アレンジが『天使にラブ・ソングを2』そのままです!



映画のものとはまた違った「本場」の迫力はやっぱり違いますね~

もちろん映画を観たことがなくても、見ているだけで元気が出ます。
歌うともっともっと元気が出ます。最近はこんな感じで元気を出しています。


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  2011/04/16 | Comment (0) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit