お散歩シネマ 映画の世界へ出かけよう!!映画の数だけ、もっと世界は面白くなる! 

このページの記事目次 ( ← 2012年03月 → )

『ソフィーの世界』 (1999/ノルウェー)

   ↑  2012/03/27 (火)  カテゴリー: ロマンス、ドラマ
 【DVD】ソフィの世界
●原題:SOFIES VERDEN / 英題:SOPHIE'S WORLD
●監督:エリック・グスタヴソン
●出演:シルエ・ストルスティン、トーマス・ヴァン・ブロムセン、アンドリン・サザー、ビョルン・フローバルグ、ミンケン・フォシェイム 、エダ・トランダム・グリォサイム 他
●全世界で1500万部以上、日本でも200万部を超えたベストセラー同名原作小説「ソフィーの世界」を映像化。古代ギリシャから今世紀初頭のロシアまで、時空を超える旅を重ねながら“自分探し”をする少女を通し、深淵で哲学的なテーマをファンタジックに綴る。ある日14歳の少女、ソフィー・アムンセンのもとに一通の手紙が届く。「あなたはだれ?」という一文に、不思議な気持ちを掻き立てられるソフィー。やがて彼女はその手紙に触発され、はるかな旅へと出発する・・・。



新装版 ソフィーの世界 上 哲学者からの不思議な手紙 [ ヨースタイン・ゴルデル ]


「哲学アレルギー」のある私からは一番遠いところにある映画にチャレンジ。

興味のないことに対して一切記憶力が働かない私は、高校の倫理の授業の記憶がありません(物理なんかもそう笑)。「哲学史の入門書」「一番やさしい哲学の本」という原作ですが、「生きている意味」「己の存在について」など考える暇もアタマもない私は完全に未読です、本当にスミマセン。で、この映画も観終わった後は「はぁ、そうですか・・・」で放り投げていたのですが、何となく気にかかるところがあって最近少しだけ調べ直していました。原作を読んでいない者から見たこの映画の印象は「どこかぼんやりとメリハリに欠けたものだな」だったのですが、実は今回、私はこの映画のもう一つの"秘密"を知ってしまったのです!

日本他各国でリリースされている『ソフィーの世界』DVDのランタイムは約113分なのですが、ノルウェー本国には英語字幕のついた3時間もある別バージョンのドラマ版があることが分かりました。このバージョンは、下記の4つのエピソードによって分けられています。

 1.episode Mystiske brev :謎の手紙
 2.episode Evolveris :ラテン語で"you're evolving"の意
 3.episode Den mystiske hunden :謎の犬
 4.episode Den tredje tanken :第三の思考(ヘーゲルの弁証法より三つ目の"総合")

 
この【ドラマ版】、物語の基本的な流れは映画版とほぼ同じなのですが、映画館のスクリーンにアルベルト・クノックスが現れたり、女友達ヨールンと一緒に謎の小屋へと訪れたり、"ヒルデ"が"ソフィー"の心配をする、など【映画版】では見られなかった数多くのシーンが追加されています。また、ソフィとクラスメイトのゲオルクとの淡いロマンスや、自分自身の存在が不確かなことに心揺れるシーン等ソフィの内面的な部分をより多く盛り込んだものになっており、映画版に比べれば確かに長時間ではあるのですが私はこちらのバージョンの方がより解りやすく感じました。映画で感じていた"アッサリ感"や"ぶつ切り感"は、きっとこの編集のせいだったのかもしれません。




「あなたは誰?」「世界はどこから来た?」

不思議な手紙に誘われるようにして、ギリシャのソクラテスやプラトンに始まり、ダーウィンやシェイクスピアなど、古代ギリシャから近代哲学、ロシア革命にいたる西洋の主要な哲学者や西洋思想に多大な影響を及ぼした著名人たちが次々に登場するこの映画。

時空を超えた旅をする辺りは、まるで教育番組のようでそれ自体にはさほど大きな興味を持てなかったのですが、ただこれらの背景にあるものは、教会の力や活版印刷技術によって「知識」が広がり→民衆個々人が「考え」を持ち始めて→「思想」の世界が拡大し→時代によって「価値観」が変容していく、という過程がクッキリと浮かび上がっていくものでした。なるほどなぁ・・・

西洋哲学の大まかな歴史の流れを見ると「神が世界を創った」という頑なな思想が出発点だった中世哲学の時代を経た後、近代以降の哲学は「神は死んだ」というニーチェの言葉が表すように「人間の自由」が説かれるようになっていきます。


「ソフィーの世界」が何であったのかを知り、自由・平等・平和の革命や女性の権利等「思想の流れ」を時空を超えた旅によって体感してきたソフィは「決断こそ重要だ」と言ったキルケゴールの言葉に後押しされ、"創造主"から自己を取り戻そうと!決意するのです。




映画の初めの段階でソクラテスは言いました。
「もっとも賢い人は、自分が知らないということを知っている人だ」

私は今、このレビューを書く段階になってやっと「自分が知らなかったこと」を知ることが出来て本当に良かったなと思っています。だって、"知らないこと"を知らなければ、何も始まらなかったわけで・・・まさか自分が西洋哲学について(アウトラインだけであっても)もう一度見直すことになるとは夢にも思わなかったのです。この映画のおかげだ!


現実とフィクションが交錯するこの映画は、その"映画的技法"によって哲学的な考え方を示してくれました。

『ソフィーの世界』は、西洋哲学史をシンプルに学ぶことができ、「自分とは誰なのか?」「この世界はどこから来たのか?」という問いへの出発点を探ることのできる良い"教材映画"だなとも思います。ま、私は日本人ですので東洋哲学、東洋思想、禅や仏教の方が"哲学"に触れる際アプローチしやすいのかな?とも思いましたが、今回のように映画を通して自分の苦手分野に足を踏み入れられたことは、新鮮な"発見"もありました。

世界はどうやって始まったんだろう?宇宙の果てはあるのかな?ワタシはどうして存在しているんだろう?・・・・こんなことを小さな頭で考えていた子どもの頃をちょっと思い出してしまいました。苦手な世界に飛び込んでみるのも、時には楽しいものですね!

ソフィーの世界@映画生活





■この記事に関連する映画制作国、地域 : ノルウェー映画 北欧映画 

FC2共有テーマ : ヨーロッパ映画 (ジャンル : 映画

  2012/03/27 | Comment (0) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit

最近観た『刑事コロンボ』からまとめて3話 ~「死者のメッセージ」「秒読みの殺人」「汚れた超能力」

   ↑  2012/03/22 (木)  カテゴリー: 海外ドラマ
私はもともと「映画選び」がとてつもなく下手でして、それなりに数をこなせばいいのかもしれませんが「こ、これは大ヒットだ!!」と小躍りしたくなるような作品に出会うことがなかなかありません。どうも最近この傾向がますます顕著になってきていて、打率も下がる一方。

【DVD】刑事コロンボ コンプリートDVD-BOX 【DVD】ジェシカおばさんの事件簿【シーズン3 DVD-BOX】 【DVD】シャーロック・ホームズの冒険 完全版 DVD-BOX 【DVD】名探偵ポワロ ニュー・シーズン DVD-BOX 1
そこで、そんな時にいつもやるのが「よく知ったドラマを見る」という方法。最近観ているのは「刑事コロンボ」「ジェシカおばさんの事件簿」「シャーロック・ホームズの冒険」「名探偵ポワロ」といったちょっと古めの米英ドラマです。いつも同じ顔ぶれが出てくるので気が楽ですし、安心感が違いますねー。えぇい、もう映画はやめだー(笑)!!





『刑事コロンボ/死者のメッセージ』 (1977/アメリカ)
刑事コロンボ完全版 DVD-SET 4
●原題:COLUMBO: TRY AND CATCH ME
●監督:ジェームズ・フローリー
●出演:ピーター・フォーク、ルース・ゴードン、マリエット・ハートレイ、チャールズ・フランク 他
●第41話:70歳を超えた今でも第一線で活躍する女流作家アビゲイル・ミッチェルは、最愛の姪フィリスを失ったヨットでの事故が、姪の夫エドモンドによる殺害だったことを見抜き、復讐を計画していた。彼女はニューヨークへ発つ夜、エドモンドを呼び出し、金庫室にエドモンドを閉じ込めたまま空港に向かう・・・。


コロンボドラマ史上、最高齢の犯人。確かに殺人犯ではあるのだけれど、その事件に裏側には切なさや同情を感じる背景があって、ピョンピョン飛び跳ねるようにして元気に走り回るエネルギッシュな女性像は魅力的でした。コロンボが人間として好きになってしまう、と言うのもよーく分かります。その代りというのも何ですが、今回は秘書の女性がなかなかいい度胸しています。

犯人の女流作家を演じたルース・ゴードンは『ハロルドとモード 少年は虹を渡る』の恋する老女役や『ローズマリーの赤ちゃん』といった映画で有名ですが、なんとキャリアが上向いてきたのは60歳くらいからというのでビックリ。小柄で溌剌とした姿を見せてくれたこのエピソードは、年老いてもなお可愛らしくあった彼女の魅力に溢れていました。
【AXNミステリー】刑事コロンボ徹底解説「死者のメッセージ」のトリビアはコチラ





『刑事コロンボ/秒読みの殺人』(1977/アメリカ)
刑事コロンボ 完全版 コンプリートDVD-BOX
●原題:COLUMBO: MAKE ME A PERFECT MURDER
●監督:ジェームズ・フローリー
●出演:ピーター・フォーク、トリッシュ・ヴァン・ディーヴァー、パトリック・オニール、ローレンス・ラッキンビル 他
●第43話:TV局CNCの辣腕プロデューサー、ケイ・フリーストーンは、支局長マークのチーフアシスタントでもあり、彼の恋人だった。ある日、マークにニューヨーク本社への栄転が決定する。ケイも自分のことのように喜んだが、マークはケイを後任に推薦する気もなく、関係も終わらせようとしていることに気付く・・・。


コロンボのシーンから始まる珍しい回。冷徹さとそれに相反するエキセントリックさが同居した美貌のキャリアウーマンという(犯行の手口は穴だらけなのだけれど)犯人役が物凄く印象的。バリバリに働く女性といっても、この時代は意外とフェミニンなファッションをしていたのだなぁと。当時のテレビや撮影現場の舞台裏が面白いです。

大切なものが次々にこぼれ落ちていく。その緊張感が最高潮に達するところでコロンボの映像が乱れて、犯人が精神的に追い詰められていくところなんて異常な凄味があって、ラストに向かって駆け抜けていくプロット、かなり見応え十分でした。「私、負けないわ」なんて犯人だけれど痺れるキメ台詞もスゴイ。トリッシュ・バン・ディーバに圧倒されたエピソードでした。コロンボでのこの緊張感は久々かも。
【AXNミステリー】刑事コロンボ徹底解説「秒読みの殺人」のトリビアはコチラ





『新・刑事コロンボ/汚れた超能力』(1989/アメリカ)
新・刑事コロンボDVD-BOX I
●原題:COLUMBO: COLUMBO GOES TO THE GUILLOTINE
●監督:レオ・ペン
●出演:ピーター・フォーク、アンソニー・アンドリュース、カレン・オースティン、ジェームズ・グリーン、アラン・ファッジ、ダナ・アンダーセン 他
●第46話:アネマン超能力研究所では、国防省とCIAが注目する超能力者エリオット・ブレイクの透視能力について実験が繰り返されていた。エリオットは次々に好成績を出していくが、それは、愛人であり、予算獲得を企む所長のポーラ・ハル博士と協力してねつ造したものだった・・・。別名「刑事コロンボ'90/超魔術への招待」


1978年にいったん終了した「刑事コロンボ」から約11年。コロンボが帰ってきたーッ!!
というわけで再出発の第一話。日本語吹替えの犯人役が野沢那智さんというだけで胡散臭さプンプン(笑)!更にワクワクです。いつもの如く、犯人だと知ってか知らずか飄々と"トリック"の説明を"那智さん"に語るコロンボ。こわいよ~

フィンガーギロチンは私も子供の頃持っていた「手品セット」に入っていて、よく従姉妹たちを怖がらせたものです(笑)。それでもラストはやっぱりドキドキ!成功する確率は高いけれど、やっぱり一か八か。こういう危険過ぎるコロンボの賭けには、毎度わかっていてもヒヤヒヤさせられます。
【AXNミステリー】刑事コロンボ徹底解説「第46話 汚れた超能力」のトリビアはコチラ




■この記事に関連する映画制作国、地域 : アメリカ映画 

FC2共有テーマ : 海外ドラマ (ジャンル : 映画

  2012/03/22 | Comment (2) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit

『明日、陽はふたたび』 (2000/イタリア)

   ↑  2012/03/16 (金)  カテゴリー: シリアス、社会派



[DVD] 明日、陽はふたたび


●原題:DOMANI
●監督、脚本:フランチェスカ・アルキブージ
●出演:マルコ・バリアーニ 、オルネラ・ムーティ、ヴァレリオ・マスタンドレア、イラリア・オッキーニ、パトリツィア・ピッチニーニ、ジェームズ・ピュアフォイ、ダヴィド・ブラッチ、ニッコロ・センニ、マルゲリータ・ポレーナ、ミケーラ・モレッティ、パオロ・タヴィアーニ
●1997年、イタリア中部で実際に起きた大地震をモチーフにした群像劇。アンジェリコの名作壁画「受胎告知」で有名な教会のある古都カキアーノは、地震で大打撃を受ける。家を失った人々は混乱の中、テントでの避難生活を始めるのだったが・・・。苦悩を抱えながら必死に生きる大人たちとたくましく成長する子供たちをやさしく見つめた心温まる人間ドラマ。「かぼちゃ大王」の女流監督フランチェスカ・アルキブジが、実際に被災地に出向き、中学生が書いた文集や現地の人々の話をもとに脚本を書き上げた。




冒頭から激しい地震の場面から始まり、一年前のことを思い出さずにはいられなくなります。あの時、泣き出しそうになった自分の感情をグッと堪えて、昼寝中だった子供を抱き抱えたことを。あれから一年。この映画のことをブログに書き残しておこうと思いました。

地震そのものの怖さや恐ろしさを見せるというリアリティ追及ではなく、震災を機にそこに生きる人々のむき出しにならざるをえない感情や人生を写し取り、群像劇として見せる物語だったから。たとえイタリアという遠い国の話であっても、失い、傷ついた人々がそこから何とか次なる道へと進んでいく物語は自分自身にとっても必要だと思ったから。ただ映画が好きで、映画の持つ力や支えがあってここまでこられた私に出来ることは、この作品のことを少しでも記しておくことだと思いました。





震災によって、それまで当たり前のように営んできた生活や住む場所を失ってしまった古都・カッキアーノ。名産のサラミ工場も機能しなくなり、雇用も失われ、余震に怯える日々。それでも生きていかなくてはいけない村の人々。メチャメチャになった家の中で壊れてしまった音楽プレイヤーを見つけ「泣いては負け。叩けば直るわ」と言う子供の強さ。生活を立て直そうと尽力するも震災後の混乱とストレスからくる親たちの苛立ち。普通ではない状態では綺麗事も通用せず、立ち上がろうと奔走する中で避けては通れない人々の間に起こる衝突。様々な年代や男女の目を通して、それらの小さなエピソードが語られていきます。



少女たちの成長や同級生との恋の芽生え、震災後の復興作業に追われる夫と妻のすれ違い、容姿にコンプレックスを持つ女性教師の恋や、病気を抱えた年配女性と青年の交流など、震災という非日常の中においても見え隠れする繊細な視点が、女性監督らしい表現として随所に散りばめられています。淡々と迎えるラストでも、新たな人間関係が築かれ、彼らが互いに影響しあい、震災以前と変わらずに時は過ぎていくのだということに気づかされて思わずハッとさせられました。とにかく人は生きていくのだ、ということに。

DVDにはフランチェスカ・アルキブージ監督のインタビュー映像が収録されています。

アンジェリコの描いた「受胎告知」を映画のモチーフとして使っています。私はそこに描かれた聖母マリアの表情に惹かれたのです。その絵のマリアは、まるで13、4歳の少女のような表情をしていました。まだ愛も性も知らない年頃の少女が突然妊娠を告げられる―その驚きが、絵の中で表現されているように見えました。私はその少女マリアの驚きを、今回の作品に結び付けたかったのです。

この映画を観ていても「失う」という言葉に本当に胸が詰まります。希望や絆といった安易な言葉もハッピーエンドもなく、これが正しい、何が悪いという道標もない中で"震災"という突然の出来事に人々がどう向き合い、そこからどのように歩んでいくのか。それをずっと思い起こさせ、考えさせてくれる物語でもありました。





生活面における支援が一番必要とされている時に、企業から「子どもたちにバービー人形を!」を大量に送りつけられてくるシーン。地元の「大タコニュース」なるものが真っ先にやってきて震災直後からの人々の生活をユーモラスにメディアにのせようとするところ。


人々の生活の一部であるバールを最初に開けたがるところ。世界的、歴史的文化遺産を誇る国らしく、ともかく修復作業から真っ先に取りかかろうとする国の方針。人々は補償金をマフィアから守らなければならないこと。日本と異なる点があちらこちらに見られ、イタリア映画らしい部分だなぁと感じました。






リヒャルト・シュトラウス作曲の『あした(MORGEN)』(ジョン・ヘンリー・マッケイ詩)というクラシック歌曲があります。難民支援活動などにも力を注いでいるソプラノ歌手バーバラ・ヘンドリックス(Barbara Hendricks)は、N.Y.の同時多発テロが起きた2001年9月11日折しも来日中でした。彼女はコンサートの曲目を変更し、世界平和を祈って犠牲になった人々のためにこの『あした』を歌いました。([Love Italy] 映画「明日、陽はふたたび(Domani)」より(現在リンク切れ))

そしてあした、太陽はふたたび輝くでしょう
(Und morgen wird die Sonne wieder scheinen,)

映画『DOMANI』の邦題「明日、陽はふたたび」は、その歌詞の冒頭の一節から考えられたものだそうです。

明日、陽はふたたび@映画生活




■この記事に関連する映画制作国、地域 : イタリア映画 

FC2共有テーマ : 心に残る映画 (ジャンル : 映画

  2012/03/16 | Comment (0) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit

『運命のボタン』 (2009/アメリカ) 

   ↑  2012/03/09 (金)  カテゴリー: サスペンス、ミステリー



【Blu-ray】運命のボタン/キャメロン・ディアス


●原題:The Box
●監督・製作・脚本:リチャード・ケリー/原作:リチャード・マシスン
●出演:キャメロン・ディアス、ジェームズ・マースデン、フランク・ランジェラ、ジェームズ・レブホーン、ホームズ・オズボーン、サム・オズ・ストーン 他
●ある日の明け方、ノーマとアーサー夫妻のもとに見覚えのない箱が届く。箱の中には赤いボタン付きの装置が入っていた。その日の夕方、スチュワートと名乗る謎の人物がノーマを訪ね、驚くべき提案をする。「このボタンを押せばあなたは1億円を受け取る。ただし見知らぬ誰かが死ぬ・・・」。ノーマとアーサーは道徳的ジレンマに陥るものの生活が苦しいこともあり、結局ボタンを押してしまう。が、それは想像を遥かに超えた事態の始まりだった・・・。



『運命のボタン』の原作小説「Button, Button」は、なぜか宗教色が濃くなっている映画版に比べると非常に簡潔で、日本語翻訳版の文庫本ではなんと15ページしかない短篇です。

運命のボタン [ リチャ-ド・マシスン ]


映画のように"余計なこと"は一切なく、登場人物は若い夫婦とボタンを持ってくる謎の男のみ。そしてそのほとんどは「ボタンを押すか?押さないか?」を巡る夫婦のやり取りです。人の持つ弱さや愚かしさ、傲慢さといった本質的な部分をゾワゾワと滲ませながら、ラストでその業苦を一突きする!というスピーディな展開。正直に言って『運命のボタン』は短編である原作の方がパンチがあってずっとずっと面白いと思います






で、この映画版『運命のボタン』の場合ですが。
(以下、ややネタバレしています)

選択肢が次々と現れる"通常の世界観"ではなく、サルトルの「出口ナシ(No Exit)」という言葉が予感させる通り、ボタンを押した瞬間から苦しみを背負う世界へと否応なく墜ちていくという"地獄"を、「これでもか!」と言わんばかりに執拗に繰り返し表現していましたね。

NASAがどうとか火星がどうとか映画的な背景を描いてはいますが、「罪を犯した者は煉獄で魂を浄化しなさい(プロテスタントだと永遠に地獄行き)」とか、「自己犠牲の精神とか他者への愛を忘れるな」とか。そして、そういったことを思い出さないと「"何か大きなパワー"が人類を滅ぼすぞ!」なんていう宗教的脅しをかけた映画だなぁと。



アメリカ映画を観ていて時々思うのは、「無神論になりつつある現実社会を憂うこと」とか「キリスト教における"地獄"を恐れること」などをテーマにした作品が、まるで啓蒙キャンペーンの如く繰り返し作られているということ。

特にSF映画やサスペンスものでよく目にする題材となっており、"神"を否定する悪魔主義的なものを恐れたり、逆に神への冒涜や罰を極端に表すという形で、この『運命のボタン』もそうなのですが『1408号室』や『シェルター』などを観た時と同様アメリカという社会や、その文化に住まう人々が心のうちで何を怖がっているのか?或いは怖がらせようとしているのか?というものを、毎回この種の映画から感じ取れるような気がします。映画は産業であり、文化であり、そしてその時代や社会が持つ思想や宗教観を掲げる産物でもあります。ハリウッド映画によく見られるこの類の映画は、キリスト教社会の世界観を強く表した作品ともいえるのではないでしょうか。






Button, Button (The Twilight Zone) ↑ボタンのデザインが映画版とよく似ている「新トワイライト・ゾーン」バージョン

因みに原作者であるリチャード・マシスン(Richard Burton Matheson)は「欲望のボタン」というタイトルで同作が「新トワイライト・ゾーン」にて映像化された際、オチが違っていたために、ひどくがっかりしたといいます。「製作スタジオには、他人の脚本をいじってダメにする連中がいる」(「運命のボタン」ハヤカワ文庫 解説より引用)と言っていたとのこと。

というのも「新トワイライト~」版はいわば"因果は巡る"というオチで作られており、それはショートストーリーとしてはギョッとするような結末の面白さはあるのですが、マシスンの原作が持っていた解釈とは本質が全く異なってしまったからなのです。


そうなってくると・・・
マシスンが「Logan Swanson」というペンネームを使用するほどに嫌ったというトワイライトゾーン版のプロットを一部借り受けている映画『運命のボタン』は、それ以上の展開――人間の罪深さや愚かさを描きながら絶望的なこの世の不条理を壮大な宇宙規模、SFベースで表現するという世界観を持ち合わせた"巨大な話"となりました。マシスンは一体どんな感想を抱いたのでしょう?ちょっと気になるところです。




ところで、『運命のボタン』の原作者リチャード・マシスンという人物は、恐らく映画好きの方であれば一度は必ず出会ったことがあるだろうと言えるほど、年代やジャンルを問わずあらゆる映画作品に携わっている小説家、脚本家です。

『地球最後の男』The Last Man on Earth(1954/アメリカ,イタリア)※脚本に参加
『縮みゆく人間』The Incredible Shrinking Man(1957/アメリカ)※脚本に参加
『地球最後の男オメガマン』The Omega Man(1971/アメリカ)※脚本に参加
『激突!』Duel(1972/アメリカ)※脚本に参加
『ヘルハウス』The Legend of Hell House(1973/イギリス)※脚本に参加
『衝撃の懐妊・私は宇宙人の子を宿した』The Strange Within(1974/アメリカ)※脚本に参加
『ある日どこかで』Somewhere in Time(1980/アメリカ) ※脚本に参加
『奇蹟の輝き』What Dreams May Come(1998/アメリカ)
『アイ・アム・レジェンド』I Am Legend(2007/アメリカ)
『運命のボタン』The Box(2009/アメリカ)
『リアル・スティール』Real Steel(2011/アメリカ)

私は1954年の『地球最後の男』と1980年の『ある日どこかで』が大好き!!
映画もそうですが、マシスン作品を読んでいると「トワイライト・ゾーン」や「夜にも奇妙な物語」の世界に入り込んだように夢中になり、ついついページを捲る手が速くなって夜更かししそうになってしまいます。面白くて夢中になりすぎてしまうのも、ちょっと困りものですね。



■この記事に関連する映画制作国、地域 : アメリカ映画 

FC2共有テーマ : アメリカ映画 (ジャンル : 映画

  2012/03/09 | Comment (2) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit