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『大いなる幻影』 (1937/フランス)

   ↑  2012/12/31 (月)  カテゴリー: ロマンス、ドラマ
2012年も、もう残り数時間。
実はこの映画作品、数か月前に観たものなんですが、長い時間をかけて少しずつ少しずつ調べていたのでレビューを完成させるのにもう半年もかかっていることに!遅すぎるやん!(笑)。いやー、しかしせっかくなので年内中にUPさせたいな~と思い、ここ何日かでラストスパートいたしました。今年最後の思い出です。

来年2013年は、少しペースを落としてゆっくりじっくり腰を据えた年にしていきたいと思います。また、この場から大変失礼いたしますが、当ブログスタート時より温かな言葉をかけていただきました皆様にも深く深く感謝申し上げます。どうか皆さまにとりましても、穏やかで楽しく素敵な一年となりますよう心よりお祈り申し上げます。どうぞ良いお年を!

はなまるこ





『大いなる幻影』 (1937/フランス)




DVD/洋画/大いなる幻影/FRT-172


●原題:LA GRANDE ILLUSION
●監督:ジャン・ルノワール
●出演:ジャン・ギャバン、ピエール・フレネー、エリッヒ・フォン・シュトロハイム、ディタ・パルロ、ジュリアン・カレット、マルセル・ダリオ、ジャン・ダステ 他
●第一次大戦末期。フランス軍大尉ボワルディユと少尉マレシャルは、偵察中にドイツ軍の砲撃を受けて捕虜となる。彼らはユダヤ人のローゼンタールと脱走計画を練るが、収容所所長のラウフェンシュタインは、ボワルディユらを厚遇していた。滅びゆく貴族という同じ立場の二人は、奇妙な友情と尊敬の念で結ばれていく。巨匠ジャン・ルノワールの代表作。




1958年の再公開時に「この映画は、人と人との繋がりについて描いた物語だ」と、ジャン・ルノワール監督自身がトレーラーで力強く述べたことのある『大いなる幻影』。この問題が解決できないなら我々はこの美しい世界にさよならを言わなくてはいけない、とも。それだけにこの作品は、人々への敬意と人生への慈しみに溢れています。



この映画に出てくる人々は皆善意の心を持っていて、彼らは敵国同士や出自や身分階級、人種の違いなどありながらもそこに芽生える友情や愛情を忘れずにいます。しかし、戦時下という状況は彼らの命運を悲劇的に分けることにもなり、そこに生まれてくる反戦的、ヒューマニスティックな人間模様に、観る者は時代を超えて強く心動かされるのではないかと思うのです。





ところで、日本版wikipediaには「撮影編集が済んだ時点で半ばいい加減な形で「大いなる幻影」と決められた」と記されているこの映画ですが実際にはそのようなことは全くなく、フランス語圏や英語圏の資料を見るときちんとした由来があることが分かります。

 【ペーパーバック】The Great Illusion(Europe's Optical Illusion)
第一次世界大戦以前の1909年に発売され以後、国際的ベストセラーとなったイギリスのノーマン・エンジェル(Norman Angell)の著書『The Great Illusion(Europe's Optical Illusion)(大いなる幻想)』のタイトルからとられている、と広く知られているからです。

ノーマン・エンジェルによる「世界各国の貿易や投資といった経済的相互存の深まりが戦争を抑止する」という楽観的主張――戦争は廃れて過去のものになり、貿易と産業が国の繁栄の鍵になる。軍事侵略の莫大なコストから得られるものは何もない。戦争は無益で非合理的なものであるという思想――は、その後第一次世界大戦が勃発したことにより皮肉にもにまさしく「大いなる幻想」となってしまいました。

しかし、エンジェルは国際平和のための長年の活動により、1933年度にはノーベル平和賞受賞者となっています。彼のこの理想主義的理論は、反戦への強い信念や人間への敬意を込めて描いたジャン・ルノワール監督によって生み出された映画『LA GRANDE ILLUSION(大いなる幻影)』というタイトルとして、立派に生きているのです。
■ノーマン・エンジェルについての参考資料:吉川宏 著「ノーマン・エンジェルの国際主義」北大法学論集



そう、この『大いなる幻影』が制作されたのは1937年(昭和14年)ですが、日本で公開されたのはもっと後のことでした。
昭和十三年といえば日本が中国戦線を拡大し、戦果に酔っていた年だ。このような平和的思想の、そして貴族的美意識を織りこんだヒューマニスティックな映画が許可されるはずがない。『大いなる幻影』の日本での上映は1947年(昭和24年)のことになる。
■「映画は人生のお友だち」コピーライターズ・シネマ倶楽部:『夢の美学とその実現』文・朝倉勇 より引用



「捕虜は人道をもって取り扱うべし」と規定されたハーグ陸戦条約(1899年採択)が忠実に守られる、高貴な魂を持つ人間の姿やその尊厳、そして騎士道精神が息づいている戦場での人間同士の絆。この映画を通してずっと語られてきたテーマは、いよいよ国境を越えるか!?というクライマックスシーンでも裏切られることはありません。

武力衝突や紛争の絶えない現代においては、このテーマこそ「大いなる幻影」と映るかもしれません。しかし私は、信念や理想の映画化には意味があると思うのです。ローゼンタールがラストに言う「That's all an illusion」という言葉の重みを、現代に生きる私自身もしっかりと受け止めなくてはならないと思うのです。




さてさて。この映画についての参考文献を読んでいてちょっと興味深い点がありました。『大いなる幻影』で象徴的に流れる曲「IL ÉTAIT UN PETIT NAVIRE (小さなお舟があったとさ)」について。ここに一部引用しておきたいと思います。


あの脱走時に笛で吹かれるメロディでもあり、フランス語圏では良く知られた古くからの童謡(民謡)です。

ド・ボアルディユ大尉が、マレシャルたち二人の脱走を助けようと城壁にのぼってこの曲を吹く。夜の中に、彼はシルエットとして浮かび、幻想の世界だ。フリュートは澄んだ音色で古城に響きわたり、ドイツ兵は意味を図りかねて混乱する。彼は笛を吹きながら高みへとのぼっていく。収容所長の制止もきかずに。「ちっぽけな航海さ」といわんばかりのファンタジックで、シンボリックなシーンだ。二人の脱走も「ちっぽけな航海」だろうし、戦争も、貴族の命運も、人生そのものが「ちっぽけな航海なのさ」といっているのでもある。(中略)この曲は、脱走組にもついてまわる。二人が、難渋しつくす冬の山野でこの曲は歌われ、歌詞が(たしか)字幕に出る。小舟で海に漕ぎ出して行った男の歌詞が、脱走成功の何の保障もなく難行する男たちにかぶさって、ユーモラスな効果をあげる。ジャン・ルノワール監督の映画づくりのみごとさである。
■「映画は人生のお友だち」コピーライターズ・シネマ倶楽部:『夢の美学とその実現』文・朝倉勇 より引用

私が観たDVD版では、脱走時にやけっぱちになって歌うシーンでの歌詞は字幕には出てこなかったのですが、フランス語文化圏の背景が身に付いていない自分にとっては、こういった楽曲の使い方を知ることができてとても新鮮でした。「IL ÉTAIT UN PETIT NAVIRE (小さなお舟があったとさ)」に親しみを持っていたのなら、同じシーンを観た上でのこの映画に対して持ち得る思い(切なさや滑稽さなど)の深さは、随分と違ったものになることでしょう。異文化圏の映画を観る時に、知らなければ知らないままで通り過ぎてしまいそうなことですが・・・。





≪おまけ≫
ところで、この作品はあまりに「名作!」と言われるクラシック映画でしたので一度は観てみたかった作品のひとつだったのですが、さっそくワクワクしながら鑑賞したところ・・・なんだかアレレ??"既視感"が。

        『第十七捕虜収容所』 (1953/アメリカ)
そうそう!これは1953年のアメリカ映画でビリー・ワイルダー監督作品の『第十七捕虜収容所』と似ているのでは!?と、すぐに思い当りました。もちろん、制作順はルノワール監督の『大いなる幻影』が16年も先なのですが・・・

LA GRANDE ILLUSION3 LA GRANDE ILLUSION2
脱走作業で穴を掘った砂を軍服や作業着の下に隠してはとこっそり捨てるシーンや、おどけ役で女装してダンスするコミカルなシーンなど、私でも気づくような小さなエピソードでソックリな点がいくつか見られました。


 【ペーパーバック】Stalag 17, Billy Wilder(著)
それであまりに気になってしまったので、どうしてかな?と思い調べてみたところ『第十七捕虜収容所』の脚本および解説が載った「Stalag 17」に、Jeffrey Meyersによるイントロダクションで以下のような記述が見つかりました。ちょっと引用しておきたいと思います。
The film was also influenced by Jean Renoir's Grande Illusion (1937).
In both pictures prisoners of war dig a tunnel to escape, desperately try to amuse themselves and boredom, and maintain a light-hearted attitude in order to survive. They put on a show (some dressed in women's clothes) and sing a patriotic song to keep up their spirits. They are friendly with the German guard, who is rather comic in his rigid militarism, and even manage to control him. And the intravenous line that hangs down after Boeldieu's death inspired the looped and hanging light cord in Stalag 17.Wilder's film, however, is quite different from Renoir's humanistic, antiwar expression of international brotherhood. He transform the chivalric self-sacrifice of the offer class into a bitter drama of egoism and betrayal.
― Billy Wilder, "Stalag 17" the complete screenplay, with an introduction by Jeffrey Meyers(1999), University of California Press ―

ここに書かれてあることを要約してみると・・・・
両作品に共通しているのは、囚人たちは脱走のための穴を掘り、退屈せず生き残っていくために陽気でいようと努め、時には女装したり、人間性を維持するためにも愛国的な歌を歌い、警備側のドイツ兵とのやり取りなどもコミカルに描かれているという点・・・・つまり、ズバリ『第十七捕虜収容所』はジャン・ルノワールの『大いなる幻影』の影響を受けているということ。そして『大いなる幻影』において、ボワルディユ大尉に付けられた"静脈ライン"は『第十七~』の"ぶら下げ電球のコード"に影響を与えたということ。おぉなるほど~。さらに、ルノワールの描いたヒューマニスティックで国境を越えた人間愛や反戦表現や自己犠牲的な騎士道精神を、ワイルダーは裏切りとエゴイズムのほろ苦いドラマに置き換えた、ということも。なるほど、大納得でした。

もともと1953年の『第十七捕虜収容所』は、ドナルド・ビーヴァンとエドモンド・トルチンスキーによるブロードウェイの舞台劇を原作とした作品でしたで、ビリー・ワイルダー監督は『大いなる幻影』からインスパイアされた彼らしいユーモア(オットー・プレミンジャー演じる収容所所長の風刺など)を織り交ぜた、というわけなんでしょうね。


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  2012/12/31 | Comment (9) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit

『奇人たちの晩餐会』 (1998/フランス)&(2010/アメリカ)

   ↑  2012/12/04 (火)  カテゴリー: コメディ
ここ最近の出来事・・・

数週間前に自分が胃腸炎に罹り、やっと完治したと思ったら今度はこどもが緊急入院。1週間付き添い看護していました。でも今日、おかげさまでやっと退院できたんです ヨカッタヨカッタ。おかげで体重が4キロも減ってお母さん体が軽くなりましたよ笑。で、久々に家に帰ったら急に疲れがドッと出て、無性にオロナミンCが飲みたくなり一気に三本も飲んでしまった・・・・

ま、帰宅後も暫くの間は看護が続くので、書き残しておいたレビューを一つUPしておくことにしました。映画を観られる生活ってホントに幸せなんだなぁ~と、まるで別世界から帰還したかのような気分です。皆さまもどうぞ、お身体だけはお大事に・・・・!!





学生の頃に観たフランスのコメディ映画『奇人たちの晩餐会』のハリウッド・リメイクバージョンを観る機会があったので、思い切って今回は2作品続けて観比べてみました。フランス版の方は、むかしNHK-BSで放映していたものをVHSで録画した代物なので、あまりに酷い画質には懐かしささえ覚えました。あぁ、この頃は一生懸命映画を観ていたんだよなぁ~

●あらすじ:出版業を営むブロシャンには密かな楽しみがあった。それはバカな人間を招待しては仲間で笑い物にするという晩餐会。今回はマッチ棒の工作が趣味という税務局勤めのピニョンという小男を見つけたのだが、当日ギックリ腰になり動けなくなったブロシャンはピニョンと二人きりになってしまうことに・・・。



『奇人たちの晩餐会』 (1998/フランス)


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●原題:Le Dîner de cons / 英題:The Dinner Game
●監督、脚本:フランシス・ヴェベール
●出演:ジャック・ヴィルレ、ティエリー・レルミット、カトリーヌ・フロ、ダニエル・プレヴォスト、フランシス・ユステール、アレクサンドラ・ヴァンダヌート 他 




昔観た時は「バカを笑う」という不愉快な設定にちっとも楽しめなかった・・・という出会いは最悪だった映画でしたが、【USA版】と見比べるために今回恐る恐る再見してみたら・・・あぁそうか!"バカを笑う"なんて悪趣味なことをする奴がいかにイタイ目に遭うか?悪意のない親切がいかに最悪な事態を引き起こすか!?というのを笑い飛ばす、ブラックなオトナのユーモアが映画の肝だったのだなぁとやっと分かりました。あーもう、若かった私は一体何をカリカリして観ていたのだろう!?



もともとフランシス・ヴェベールの同名の舞台劇を原作であり、そのヴェベール自身が今作でも監督を務めていることもあって、「舞台劇」はほとんどそのまま室内劇として無理なく置き換えられています。

つまり、大部分を登場人物どうしの会話にしている点は主題のエスプリを余すことなく引き出していて、この無駄のない面白さには感服するばかり。1998年のセザール賞で脚本賞、主演男優賞、主演女優賞を受賞したというのも大きく頷けるもの。

"バカのピニョン"のせいで、夫婦の危機を引き起こされた上に税務査察官まで家に招き入れることになるという、本当は自分が蒔いた種のくせに、この次から次へと面倒なことを巻き起こされる悲惨過ぎるステップが実に実に洗練されていて、もの凄~く自然に楽しめました。最後にはさり気なくホロリとさせられるセリフも用意されていて、心もホッコリ。観直して本当に良かったなぁ。なんだか大好きな映画になってしまった。
年をとるというのも、決して悪いことばかりじゃないなぁ。






『奇人たちの晩餐会 USA』 (2010/アメリカ)

奇人たちの晩餐会 USA [ スティーヴ・カレル ]


●原題:DINNER FOR SCHMUCKS
●監督:ジェイ・ローチ
●出演:スティーヴ・カレル、ポール・ラッド、ザック・ガリフィナーキス、ジェマイン・クレメント、ジェフ・ダナム、ブルース・グリーンウッド、ロン・リヴィングストン 他 




こちらは今回初見の【USA版】。
大好きなスティーブ・カレルとポール・ラッドが出ていなければ完全にスルーしていた映画です。しかしまぁ、皮肉の効いた前作に比べると(仏版だって十分ドタバタだったのに)、なんとも幼稚なドタバタ&ハートフルストーリーに変わっていたことか!ビートルズの「フール・オン・ザ・ヒル」まで使ってしまうというこの無駄な贅沢さも凄い。金のチカラだろうか・・・

バリーのオバカっぷりというのは、純粋でおっちょこちょいでそそっかしくて忘れっぽくて(まぁ言ってみたら本当にバカモノなんだけど)心根の優しい人、というカレルお得意のキャラクターでもあるので、その点はオリジナルと変わらぬ面白さが(私のようなカレルファン以外にはただ五月蠅いだけなんだろうな)は辛うじて生きています。



ただ、やっぱりオリジナルと大きく展開を変えているんですよねー。

やたら米国コメディアンの見せ場を作って幼稚なお笑い合戦をさせる余計な点と、もう一つ、なんとバリーが晩餐会に出席することになるという・・・うーん、この晩餐会においてハリウッドお得意の大演説と大逆転の感動のフィナーレがやってくるわけなので外せないんだろうなぁ。このあまりに純粋なハリウッドマジックには、カレルがスピーチし始めるところで「来るぞ来るぞ・・・」とお尻もムズムズしてしまった。こ、ここまでされたら逆にもう感心するしかない・・・。エンドロールの最後の最後に、ちょっとしたオチを持ってきているところは粋な感じで好きでしたが。

フランス版の設定を借りた、別物コメディとみたほうがいいかな。『奇人たちの晩餐会 USA』という邦題もなんだか投げやりな感じもしますしね(笑)。



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  2012/12/04 | Comment (10) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit