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アメドラ記録(その7) 『HOSTAGES ホステージ』 (2013~2014/アメリカ)

   ↑  2014/01/23 (木)  カテゴリー: 海外ドラマ
 
●原題:Hostages
AXN「HOSTAGES ホステージ」サイト
●製作総指揮:ジェリー・ブラッカイマー
●出演:トニ・コレット、ディラン・マクダーモット、テイト・ドノヴァン、リス・コイロ、ビリー・ブラウン、サンドリーヌ・ホルト、ジェームズ・ノートン、クイン・シェファード、メアリー・エリザベス・マストラントニ 他
●ワシントンD.C.のトップ外科医であるエレンは、米国大統領の手術を任されることになる。しかし大統領の命を預かる重大な手術の前日、何者かがエレンの自宅に押し入り、家族を人質にとる。彼らの要求は、大統領の手術に失敗し、殺害すること。医者としての責務と家族の命の狭間で葛藤するエレンだったが・・・。主人公の苦悩と葛藤を描くタイムリミット・サスペンス。暗殺計画までの15日間が、1日1話というペースで描かれる。ロテム・シャミールとオムリ・ギヴォンが企画したイスラエルの同名のテレビドラマをアロン・アラーニャとジェフリー・ナックマノフがリメイク。





ちょっと前までは、ユーモアのセンスがあって正義感溢れるリベラル派の理想的大統領像が描かれたTVドラマ「ザ・ホワイトハウス」や、自ら敵と闘うファイティング系の『エアフォース・ワン』『インデペンデンス・デイ』などがエンタメ界における大統領モノの主流だった気がしますが、いよいよ身内からも「あんな奴、死んで当然だ!」という酷い言われようの合衆国大統領が命を狙われるドラマが出現してしまいました。

ま、奥様からも「顔を見ただけで虫唾が走る!!」とまで言われた「24」のローガン大統領の強烈さは今だ群を抜いているかもしれませんが(笑)。今やアメリカ合衆国大統領は、世界のリーダーでもヒーローでもなくなってしまったんでしょうねぇ。





というわけで、そんな『HOSTAGES ホステージ』というドラマですが、当然"笑い"の要素なんて皆無のシリアス一直線。

全編通してあまりにドヨ~ンとし過ぎな空気が充満していて、ちょっと参ってしまいました。"目的"のために、少しでも関わってしまった周囲の罪もない人々が雪だるま式にバンバン殺されていくんですよ。もうそれが可哀想すぎる・・・・!


いや、『シックス・センス』の悩めるママや『ミュリエルの結婚』出演時の体重増など役者魂のあるトニ・コレットは以前から凄い女優さんだと思っていたし、お金にはいつも困っているけれど熱い血の通ったドネル弁護士役を演じた「ザ・プラクティス~ボストン弁護士ファイル」でのディラン・マクダーモットのイケメンぶりも大好きでした(そうそう、これは「アリー my Love」とのクロスオーバーもあった!懐かしい)

そんな実力派俳優の共演ということで張り切って観ることにしたのでしたが・・・・この主演の面長二人組の顔がどうにもこうにも陰気臭いんですよ。ま、内容が内容なだけに、二人とも苦虫を噛み潰したような顔で出ずっぱりとなるわけですが、この二人の気持ちが近づいたり離れたりしても「ウヘー」となるだけでした(笑)。

それでも何とか最終回まで観ることができたのは、日米(ほぼ)同時放送でそのリアルタイムな新鮮さがあったのと、このドラマでの内容が1日=1話で≪全15話≫というコンパクトさに救われたからかも。最後は主人公たちにとっては良いように終わるのですが、振り返ればそこに残ったのは膨大な死体の山。やっぱり許されるべきじゃありませんもんね。ダンカンと一緒に後ろ暗さを感じて終わってしまったー。

・・・・にもかかわらず製作総指揮のジェリー・ブラッカイマーはシーズン2はもちろん、それ以降のシーズン継続にも早くも言及しているのだそう。い、いや、続編は要らない気がする・・・


あ、でも、色々な意味で凄腕のヴァネッサ・ムーアならまだ見てみたい気も。この美人妹さんは、飛び抜けた異様な存在感があって目が離せなかったですねー。次作はぜひ、彼女が副大統領を目指す方向でお願いしたいと思います(笑)。



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アメドラ記録(その6) 『FRINGE/フリンジ』 (2008~2013/アメリカ)

   ↑  2014/01/23 (木)  カテゴリー: 海外ドラマ


FRINGE/フリンジ<サード>コンプリート・ボックス

FRINGE/フリンジ<フォース>コンプリート・ボックス


●原題:Fringe
Super!dramaTV「FRINGE/フリンジ」サイト
●企画・制作:J・J・エイブラムス、ブライアン・バーク、アレックス・カーツマン、ロベルト・オーチー
●出演:アナ・トーヴ、ジョシュア・ジャクソン、ジョン・ノーブル、ランス・レディック、ブレア・ブラウン、ジャシカ・二コール、セス・ガベル 他
●旅客機627便の乗員・乗客全員の肉体が溶け落ちるという奇怪な事件が起こった。 FBIボストン支局の女性捜査官オリビア・ダナムは、フリンジ・サイエンスの天才科学者のウォルター・ビショップ博士、そして彼の息子でIQ190の天才というピーターと共にこの謎に取り組む。 やがて、彼らは今回の事件は世界中で起きている一連の不可解な現象「パターン」の一端であることを知る。 国土安全保障省のフィリップ・ブロイルズ捜査官の指揮下に編成されたオリビア、ウォルター、ピーターらフリンジ・チームは、その後も次々に起きる「パターン」を調査することになる。 やがてオリビアは「パターン」の背後にある驚愕の事実、「もうひとつの世界」の存在を知る。そして、その世界との戦いが間近に迫っていることと、それにはウォルター、ピーター、そしてオリビア自身が深く関わっていることも・・・。




LOST シーズン6 ファイナル

【輸入版】PERSON of INTEREST


J・J・エイブラムスのTVドラマは、ややブッ飛んだ内容が多いので(たとえば『LOST』)、煩わしい日常をスパ~ッ!と忘れることのできる時間としては、正にうってつけであります。



で、この『FRINGE/フリンジ』はどうだったかと言いますと。
実はスタート時のパイロット版(第1話)を観た限りでは『Xファイル』のようにも思えて「あーまたソレかい、地球外生命体のナンタラという話になったら止めるわ、やめますわー!」と決めていました。しかし、ウォルター・ビショップ博士の息子ピーターに纏わる過去が明らかになってからは、わたしゃすっかり虜になってしまいましたよ。

パラレルワールド、ほんと大好きなんです。

本国アメリカでは全100話第5シーズンにて完結したそうですが、私はやっと第3シーズンまで観終えたところ。最近になって、あのCMブレイク時にポッと現れる様々な形(手形、カエル、リンゴ、煙など)に意味があることを知ってしまい、ますますこのドラマにのめり込んでしまいました。あの光の点滅にも意味があったのか・・・・!






それと、ここまでハマった理由にひとつに、私、主人公のオリヴィア・ダナムを演じるアナ・トーヴの顔が大好き!!というのもあります。

本物の美人というのは化粧のゴマカシだとか気取りだとか、余計な重さがなくていいですねー。とっても気持ちよく彼女の姿を追っていられる幸せがこのドラマにはありますもん。長い期間見続けるTVドラマって、登場人物たちへの好みや愛着も重要な要素になってきますもんね。まずは見た目が大事です(笑)。

しかも彼女は美貌だけでなく、素晴らしい演技力も。第3シーズンでは【こちらの世界のオリヴィア】【もうひとつの世界のオリヴィア(ボリビア)】そして【ベルが乗り移ったオリヴィア】という3パターンの彼女にも惹き込まれてしまいました。

健気に人の目を覗き込むようにして微笑むオリヴィアや、自信に満ち溢れて快活に笑うボリビア、そしてガラガラ声で片方の眉をヒュッと上げて皮肉を言う"おじさんオリビア"(笑)。いや、正確に言うと「オリヴィア」が「ボリヴィア」になりかけている戸惑いの姿だとか、「ボリヴィア」が「オリヴィア」に成りすまそうと画策している姿だとか、もうその微妙な表情がまるで本当に別人のようで、見ているこちらも混乱しそうでした。

二つの世界を守ったピーターは一体どこへ・・・・!? 第4シーズン、はやく追いつこう!!!




そうそう、『フリンジ』ではパラレルワールドだけでなく、過去や未来、はたまたアニメーションなどによる様々な世界が描かれるため、その回の内容によってオープニング映像の色調や形式が変化します。私は、80年代のレトロバージョンが好きだったなぁ。



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『ラッシュ/プライドと友情』 (2013/アメリカ、ドイツ、イギリス)

   ↑  2014/01/16 (木)  カテゴリー: ロマンス、ドラマ
 
●原題:RUSH
●監督:ロン・ハワード
●出演:クリス・ヘムズワース、ダニエル・ブリュール、オリヴィア・ワイルド、アレクサンドラ・マリア・ララ、ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ 他
●1976年、F1黄金時代。人々を夢中にさせたのは、レース運びも人生も頭脳派のニキ・ラウダと、ドライビングテクも私生活も情熱型のジェームス・ハント、二人の天才レーサーだ。何かと衝突を繰り返してきた二人の今シーズンは、ラウダの圧倒的なリードで幕を開ける。ジリジリと迫るハントを制し、ラウダのチャンピオンが確実視されたその時、全てが変わった。“墓場”と呼ばれる世界一危険なサーキット、ドイツのニュルブルクリンクでラウダの車がクラッシュ、400度の炎に包まれたのだった・・・!



公開前にGAGAシアターが大々的にオンライン試写会を展開しているこの作品。←この強力な押し込み加減や≪あなたの、生涯の1本を塗り替える≫といった煽り文句などにはやや引き気味になるところも正直ありますが、せっかく抽選に当たったのでPCから有難く鑑賞させていただきました。

が、この映画、音響だけでも絶対に映画館で右へ左へ聞くべきですよー!

特にフェラーリのエンジン音を聞いただけで血が沸き立つ人は、それはそれは幸福な時間を過ごせることでしょう。地面を這うように疾走するマシンの傍で一瞬にして散っていく草のカットなど、とても印象的。






2014年2月7日(金) TOHOシネマズ 日劇ほか全国公開!!

では正直に映画の感想を書いてみたいと思います。


映画の主役である二人(ジェームス・ハントとニキ・ラウダ)の見せ方の軸が定まらないまま、意外と中盤までは平坦な展開なんです。が、ニュルブルクリンクのレース以降の見せ方は、やはりロン・ハワード監督!ここからこの映画が本気を見せてくれました。ハイ、泣きに泣いてしまいましたよー!


『マイティ・ソー』の神しか知らなかったクリス・ヘムズワースでしたが、彼が演じたジェームス・ハントは、若い頃のブラッド・ピットを彷彿とさせるものがありました。ワイルドで華やかだけれど、繊細なところのある天才肌。時代が時代ならきっとブラピがキャスティングされていただろうなぁ。

一方のニキ・ラウダは、親譲りか商才に長け、ドライで自制心のあるクールな人間であり、そして人付き合い下手。この対照的な二人の関係はレースを離れたところでも絡み合いながら、互いの人生に強く影響していくのです。

実は「あらすじ」をきちんと読まずにニュルブルクリンクでの結果を知らないままで観た私でしたが、これが功を奏したのか「あぁやっぱりそうなるんだ・・・」と心揺さぶられるものがありました。"ドライビング"に対する考え方が異なる二人の生き方が明らかになるラストは、ややアッサリとはしているものの、良い終わり方としてとても優等性的なもの。『ラッシュ/プライドと友情』は、エンターテイメント性を持たせながらもキッチリ手堅く物語を捌いていくロン・ハワード監督の持ち味がまたしても遺憾なく発揮された映画だなぁと思いました。





実は、私が一番感動してしまったのは、オールイングリッシュの映画にはしなかった部分。こういった部分を徹底させているアメリカ映画って、最近ではとても珍しいですよね。


出会いこそ英語で会話を始めたニキと(後に妻となる)マルレーヌでしたが、お互いドイツ語が共通と判明してからはずっとドイツ語で会話していました。その部分はもちろん字幕となるわけですが、外国語や字幕を避けがちな米国映画がよくぞ決断したもの。

映画化にあたって、オーストリア出身というニキのバックボーンを丁寧に扱ったのかもしれませんね。あ、ドイツ人&イタリア人相乗りの車中は面白かったですねー。

そうそう、リチャード・バートンとリズ夫婦の関係をブチ壊した女性が、あのスージーだったのかー!!とここは物凄くビックリしました。この映画を観るまで私知りませんでした。色々な意味で新発見のあった映画となりました。GAGAさん本当にありがとう。


Niki Lauda 'I wish James Hunt could have seen Rush because he would have enjoyed it'【The Telegraph】
かつてのニキ・ラウダとジェームス・ハント
ニキ・ラウダ「ジェームス・ハントにこの映画を観せたかったよ。きっと楽しんだだろうからね。」【The Telegraph】
今日、ここにジェームス・ハントが一緒にいないことが、悲しいです。本当は二人で、この素晴らしい映画を、ビールでも飲みながら観たかったですね。私たちはレーサーで、ライバルだったけれど、お互いをリスペクトしていました。――ニキ・ラウダが来日、映画『ラッシュ プライドと友情』を語る【F1-Gate.com】




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『天使の分け前』 (2012/イギリス、フランス、ベルギー、イタリア)

   ↑  2014/01/07 (火)  カテゴリー: コメディ


天使の分け前[ポール・ブラニガン]


●原題:THE ANGELS' SHARE
●監督:ケン・ローチ
●出演:ポール・ブラニガン、ジョン・ヘンショウ、ガリー・メイトランド、ウィリアム・ルアン、ジャスミン・リギンズ、ロジャー・アラム、シヴォーン・ライリー、チャーリー・マクリーン 他
●長引く不況で若者たちの多くが仕事にあぶれるスコットランドの中心都市グラスゴー。教育もままならない環境に育ち、親の代から続く敵対勢力との凄惨な抗争が日常と化した日々を送る青年ロビー。しかし、恋人との間にできた子どもがそろそろ出産時期を迎えることに免じ、刑務所送りの代わりに社会奉仕活動(community service)をすることになる。まともな生活を送ろうと改心した過程で親身に接してくれるハリーからウイスキーの奥深さを学び、興味を持つようになる。そして、ひょんなことから“テイスティング”の才能に目覚めるロビーだったが・・・。



明けましておめでとうございます。本年も宜しく願いいたします。
・・・で、さっそくなのですが、映画を観た後に「モヤモヤ~」っとしたものが残る作品に久々に出くわしてしまいました。あーこれが新年一本目だというのが余計にツライっす。なぜ「モヤモヤ」が発生してしまったのか。理由は以下の通り。


※この先、映画の内容について触れています。
 予告編でもわかる範囲の内容ですが、未見の方はご注意ください。
     ↓       ↓       ↓



「爽やか!」「痛快!」と宣伝されていた映画でしたが、"盗み"で人生逆転劇だなんて、うーん、これは明らかに更正の道としては間違っているでしょう。情状酌量の余地ありと何とか実刑を免れたのに、彼の行動は愛しい我が子と彼女を裏切ることにはならないのかな、と。


しかも、物語途中に挟まれる、かつて主人公ロビーから凄惨な暴力を受け、身体だけでなく人生も心もボロボロに傷付けられた被害者青年の話。私は彼や彼の家族のことを思うと、あまりに重く圧し掛かってくるものを感じて、その後の展開に心温まるどころじゃなくなってしまった・・・。『天使の分け前』という映画はアメリカの「ワシントン・ポスト」のレビューでも同じように「ロビーは応援するには難しい主役」「心から彼に成功してほしいと思えるでしょうか?」と言われています。


  ケス


レディバード、レディバード


マイ・ネーム・イズ・ジョー


SWEET SIXTEEN



かつてのケン・ローチ監督なら、過酷な環境に育ちながらも何とか這い上がろうとする登場人物に対しても、憎しみの連鎖、理不尽な暴力、荒れ果てた家庭環境、実の子を奪われて希望のない未来・・・といった絶望に近い痛みを課したはず。だから余計に、この映画の"不良青年の更生によるサクセスストーリー"に対して「希望はあるんだよ」とか「人生のやり直しはきくんだよ」とか、そういった単純な話として受け取っていいのか?とかなり戸惑ったのです。






それでモヤモヤを抱えてしまった私はローチ監督の意図が知りたくて、彼のインタビュー記事を読んでいくことにしました。そして少しずつですが『天使の分け前』という映画に対する印象も変わってきました。脚本家ポール・ラヴァティが本作のためのリサーチ過程で出会い、最終的に演技の経験がないにもかかわらず主役に抜擢されたというポール・ブラニガンの存在が大きかったように思います。ブラニガンはこの映画の主人公ロビーと同様に、何代にも続くファミリー間の武力抗争がもとで服役、頬の傷は本物、両親はヘロイン中毒という、グラスゴーにおけるリアルな負のスパイラルの中で生きてきた青年でした。

この映画のエンディングに希望を感じてくれる人がいるけれど、僕にとってはOnly hope is jobなんだ。仕事を持つことで人は自分に誇りを持つことが出来る。これだけの失業者を生み出した今の社会を見るとき、僕は、僕ら年長者の世代が、若者を裏切った気がしている。
    (中略)
ロビーは、父親になろう、親になろう、家族を養うために何か仕事を見付けようともがいている真っ只中で、だけど手始めにどうすればいいかも分からず、そのための道も全く見えていないんだ。アカデミックなプロセスがロビーを素通りしてしまったのは一目瞭然だ。なぜなら彼はついこの前までティーンエイジャーの不良で、しかもそれが当たり前の世界にずっと身を置いていたから。だとすると、どうやってこの世界から抜け出せばいい?ロビーは本気だと言っているが、もし彼のような世界に属し、そこがすべてだとしたら、足を洗うことはとても難しいんだ。
「仕事こそが希望、仕事を持つことで人は自分に誇りを持つことが出来るんだ」ケン・ローチ監督インタビュー【Web DICE】


スコッチ・ウィスキーの故郷であるにもかかわらず、低所得者層の若者は高級ウィスキーなんて飲んだこともない。まるでギャグのように登場するけれど、彼らが反逆と闘いとプライドの象徴であるキルトスカートを「穿いて行こう!」なんて発言するその無邪気さ、たとえ他人様から失敬してきたウィスキーでも、それしか恩人に渡せるものがない、思いつくのは盗みしかない、それしか出来ないという現実。こちらが勝手に期待した「人との出会い&テイスティングの技で未来を切り開くサクセス・ストーリー」は、この映画にはただのファンダジーでしかないわけです。



再度観た時には、彼らが自分たちのことですら「クズだ」「バカだ」「社会奉仕中のチンピラだ」と言うセリフにちょっと涙が滲んでしまいました。自分たちに何かが出来るとは思ってもいない、彼が酷い暴力で若者を傷つけた過去は、あのシーンだけが『天使の分け前』の中で浮くほどヘビーだけれど、実際に彼らを取り巻く悲痛な現実そのままの姿なのだと。そして人を傷つける行為だけは絶対に許されるべきではないと、ロビーにハッキリと向き合わせたものなのだと思います。




リッチな人間が多く住むコネティカットからやって来たアメリカ人が、レッドソックスの野球帽なんかを被って億単位のお金でウィスキーをポンと落札。

カネにもの言わせる奴らを痛い目にあわせてやろう!という映画ではないので、"常識的"に考えればロビーたちの行動に対して最初の「モヤモヤ」が消えることはないのだけれど。けれど、これはグラスゴーの無職で暴力に明け暮れる若者たちの話なのです。高級ウィスキーの"美味の極致"とは対極にある場所。「彼は反省も更生もしていない」「やっていることは以前と同じ」色々と言えることは幾らでもあるけれど、ロビーはこうやってしがらみから抜け出し、家族を守り、仕事を得るしかなかったのだと思う(しかない)。それを日本の生活の中から「爽やかな感動に包まれました!」「痛快な話!」「元気をもらいました!」という著名人の宣伝コメントはちょっと的外れなような気もしました。

「おそらくケン・ローチ監督の論旨は、グラスゴーの過酷な路上生活で生き残るには、中産階級のウイスキースノッブから盗むことは大したことがない、ということでしょう」という身も蓋もないイギリス「サンデータイムズ」のレビューには苦笑するしかないんですけれど、でもそれはそれで酷い現実(幸せを掴むには多少の窃盗は問題ない)を逆説的に見せつけた、新手のケン・ローチ的映画(←観終わった後にどーんと暗い気持ちになる)かもしれませんね(笑)。

本来なら映画だけから全てを感じ取れればいいのかもしれませんが、今回はモヤモヤが発生したおかげでスコットランドのグラスゴーにおける若者の失業率だとか子どもの貧困問題、世代を越えたギャング抗争などを知ることが出来たのでヨカッタと思うことにします。

参考:イギリスの社会的包摂政策:成功と失敗【季刊・社会保障研究】DavidGordon
     Glasgow East by-election: Stark social problems, poverty【World Socialist Web Site】





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ロビーたちが住むグラスゴーのカータイン(Carntyne)から、物語後半の舞台となる北ハイランドのドーノック(Dornoch)にあるバルブレア蒸留所(Balblair Distillery)。彼らにとっては大きな旅だったんだろうなぁ。



分断された格差社会から弾かれ、見放され、報われない者たちの叫びを常に代弁し続けてきたローチ監督。サッチャー元首相が亡くなった時の彼の発言を。
マーガレット・サッチャーは、現代において分断と破壊を引き起こした首相でした。大規模な失業、工場の閉鎖、破壊されていった地域社会、これらは彼女の残した遺産です。
(中略) 彼女の告別式を民営化しましょう。入札を行い一番安い見積もりでやりましょう。それこそ彼女が望んだものなのですから。
Ken Loach wants Thatcher's funeral privatised【YAHOO MOVIES】


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