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『めぐり逢わせのお弁当』 (2013/インド、フランス、ドイツ)

   ↑  2015/08/26 (水)  カテゴリー: ロマンス、ドラマ




めぐり逢わせのお弁当 DVD


●原題:DABBA / 英題:THE LUNCHBOX
●監督、脚本:リテーシュ・バトラ
●出演:イルファン・カーン、ニムラト・カウル、ナワーズッディーン・シッディーキー 他
●ムンバイに暮らす主婦のイラ。すっかり冷めてしまった夫の愛情を取り戻そうと、お弁当作りに精を出す。ところが、その丹精を込めた4段重ねのお弁当が、なぜか早期退職を控えた男やもめ、サージャンのもとに届いてしまう。その日、お弁当箱は、きれいに空っぽになって帰ってきた。それを見て喜ぶイラだったが、ほどなく夫が食べたのではないと気づく。そこで次のお弁当には、きれいに食べてくれた見知らぬ誰かへのお礼の手紙を忍ばせるイラだったが・・・。




ブログをお休みする前に観ていた映画について、少しずつupしていこうと思います。

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いわゆる"コテコテのインド映画"をイメージして「あまり馴染みがないなー」という方や「インド映画を観るのは初めて」「苦手かも・・・」という方でも、この映画はきっと大丈夫。

その国独自の生活を描いているにもかかわらず、この映画から受け取るのは間違いなくグローバル性・普遍性のあるストーリーで、「インド映画」というカテゴリーにありながらも主人公たちの想いが何の違和感もなく、静かに真っ直ぐ響いてくるのです。

それもそのはず。

脚本も手掛けたリテーシュ・バトラ監督はムンバイで生まれ育ち、その後経済学を勉強するためアメリカに渡り、卒業後経営コンサルタントをしたあとニューヨーク映画学校に入学。さらにロバート・レッドフォード主宰の「サンダンス・インスティテュート」に編入した経歴の持ち主なのです。


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この感覚は、以前見たヨルダン映画『キャプテン アブ・ラーイド』ととってもよく似ているな、とも思いました。『アブ・ラーイド』のアミン・マタルカ監督も、ヨルダンからLAへと移住して映画制作の拠点を米国へと移した方でしたから、バトラ監督とバックグラウンドがよく似ているんですね。

懐かしい故郷を内側からと外側、両方の視点から見ることの出来る、あるいは見せることの出来る強みがそこにあるのです。


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しかも『アブ・ラーイド』との共通点は、音楽の使い方にも。
『めぐり逢わせのお弁当』ではボリウッドで製作される「インド映画」の象徴ともいえる派手な音楽の使い方が一切見られません。ストーリーや登場人物たちの感情を音楽に置き換えることなく、生活音がアクセントとして上手く使われており、そこからごく自然に彼らの心の揺れが波紋のように伝わってくるのです。

例えば、今回サウンドデザインはドイツ人にやってもらいましたが、歌って踊ってのボリウッド映画では、楽曲がメインで、サウンドデザインはあまり使われません。
この映画は、曲は全体の10%以下に抑え、14カ所だけです。ほかは自然音をサウンドデザインとして取り入れています。ボリウッドではあまりない技術をほかの国の方に補ってもらいました。
『めぐり逢わせのお弁当』 リテーシュ・バトラ監督インタビュー【CINEMA JOURNAL】







映画の冒頭、主人公の女性イラは子どもがケガをしないか、雨に濡れないかをとても気に掛けて送り出し、何段ものお弁当を追い立てられるように仕上げ、時間通りにやって来る夫の職場へのお弁当配達人(ダッバーワーラー:डब्बावाला)に手渡すという、慌ただしくも孤独と閉塞感に包まれている彼女の日常が映し出されます。

イラの手で手際良く作られた美しいお弁当は、人から人へ、乗り物から乗り物へと次々に乗り継いで"送り主"のもとへと運ばれていく一方で、彼女はいつもマンションの上階から見送るのみ。若く美しいのに服装も装飾品も華美ではなく、お喋りする相手も上階に住むおばさんの声だけ、ということがわかります。そして、イラには目を見て話す相手がいない、ということも。


お弁当が誤配された相手は、妻を亡くし早期退職前の男性サージャン。
人を寄せつけず、孤独で寂しげな佇まいだったサージャンが、まるで子供のように美味しいお弁当を心待ちにしていく姿は可愛らしくもありました。美味しいものって、本当に人の心を開くんですよね。「美味しい」と言って全部食べてくれる相手にも。

メールも携帯も介さず、互いの手紙を読む時間が次第にかけがえのないものになっていることに、イラもサージャンも実はずっと気づいていなかったのかもしれません。でも、少しずつ、少しずつ、そのやり取りの中で二人の心が反響し合っていく過程からは彼らの感情が切実に伝わってきて、その淡い想いと迷いの先に何が起こるのか目が離せなくなってしまうのです。

そして、迎える二人の結末。
観る人それぞれに受け取り方は異なるのかもしれません。

それでも、そこには優しくも確かな希望が込められた風が吹き抜けた気がしました。イラが初めて自分の意志を持って下した決断。孤独の心から一歩前へと踏み出したサージャン。「間違った電車でも、人は時に正しい場所に着く」という印象的なフレーズがこの映画では幾度か繰り返されます。"正しい場所"とは何なのか、今でも時々考えることがあります。



スウェーデンなどヨーロッパの映画のほか、イラン映画にも興味があり、好きな映画監督について聞かれると、「小津安二郎、ルイ・マル、イングマール・ベルイマン、アッバス・キアロスタミ」といった監督の名前を挙げ、「それぞれ素晴らしい才能を持っているにも関わらず、決してそれを見せびらかすような作り方をしない。キャラクターに耳を傾けて、自然な形で物語を紡いでいく。そのような作り方がとても好き」
小津や黒澤にも影響を受けた。『めぐり逢わせのお弁当』のインド人監督が来日【Movie Collection】

そうです、この監督の感覚は、正しく小津映画、イラン映画、ベルイマン。

敢えて派手なアクションを起こさずとも、心の深いところにある想いが紡がれるようにしてデザインされているこの映画は、表立って感情を露わにすることなく内に秘めた情熱や奥ゆかしさなどを感じ取ることのできる日本人の感性に、最も相性が良い作品だと思うのです。







ころで。
「どうしてお弁当を自分で持っていかないのかな?」とか「女性の通勤はどうなっているんだろう??」とか、この映画を観始めてすぐに文化的側面のあれこれで頭が一杯になってしまった私は、実は鑑賞を一時中断して【インドの昼食】について少し調べてからもう一度リスタートしました。だって、この「お弁当制度」って、すごーく気になるでしょう!


エラー率わずか0.00000625%、驚異のインド式昼食配達システム「ダッバーワーラー」


1日20万食ものお弁当箱が、最低6回はダッバーワーラーのリレーによって中継され、配達→自宅に返却されてくるんですって。えー、自分で持って帰ってこないのかい。

インドでは3食とも調理された温かい食事をとるという食文化が根強い国です。その根本には、英領植民地時代まで遡るとイギリス式の食事が合わない、各家庭の宗教によって禁忌に触れるものが異なる、またはインド特有のカースト制度の問題などもあって「家族が調理した食事が一番」という確固たる理由があるのですね。

因みに、ムンバイでは通勤時間が長く、1時間半や2時間かかる人もいるので、時間を節約するために電車の中で野菜を切り、家に帰ってから料理をする女性がたくさんいるのだそう。映画の中でもそんな描写があって冗談かと思いましたけど、あれは本気だったんだ(笑)。食文化って本当に面白いですねぇ。
asicro interview 58 自分で作った物語だから自分の手で監督したい-リテーシュ・バトラ(監督)【ASIAN CROSSING】




そしていつも思うのですが、"食"や"料理"がモチーフとなっている映画というのは、たとえ行ったこともない遠い世界の国のお話であっても「食べ物」を介することで生活感がより身近に感じられる気がして大好きなのです。登場人物たちがお茶を淹れ、料理を取り分け、デザートを口にしながらお喋りする姿は、きっと万国共通。

機能的なインド式お弁当箱は、蓋を開けるとスープや煮込み、炒め物や作りたてのチャパティなどが魔法のように次々と現れ、思わず溜息が出そうになるほど・・・。『めぐり逢わせのお弁当』はアメリカ人の撮影監督とフランス人のカラリストを使っての作品ですが、彼らもきっとスパイシーな香りが漂うインド料理の数々に圧倒されたことでしょうね。


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それからもう一つ、鑑賞中にすごーく気になっていたこと。
IT産業が発達しているハズのインドなのに、どうして事務所にパソコンがないの?どうして定規で線を引っ張ったりして紙書類のペーパーワークの山なの??ということ。これってもう、昭和の「社長シリーズ」のサラリーマンの世界ですもん。

セットにしてはリアルだなぁと思っていましたが、実際に撮影されたのは実在する政府の保険部門のオフィスなのだそう。
「インドはまだマニュアルで事務作業などしている会社は多いです。でもそれはわざとそうしているのですよ。すべてを近代化してしまうと人手がいらなくなるでしょう。そうすると人々の働き口が減ってしまう。だからインドでは人々が仕事を得られるように、わざと近代化を抑えているのです」
歌も踊りもないけど、大共感の感動がある!インド映画『めぐり逢わせのお弁当』の監督に直撃インタビュー


そう、それに職場での会話でも気づいたことが。
「インド映画」なのだから字幕に頼るしかない!と思っていたのですが、サージャンは英語で手紙を書き、会話している→あれ?サージャンの部下シャイクはムスリムだった→亡くなった奥さんの墓地はクリスチャン→そういえばイラはヒンドゥーだ、というさり気ない描写にも目がいくようになりました。

多民族、多言語、多宗教(or 宗派)という様々な文化的要素が凝縮されたインドの巨大なモザイク社会の一端が、こうやって映画の端々に見え隠れしていたのですね。



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れにしても。言うことが一々もっともな"おばさん"との会話は、窓越しで近所中に筒抜けじゃないか!とか思って観ていましたが、実はこれ、私もむかし中東生活の時に隣に住む義姉とやっていたので、なんだか懐かしいシーンでした(笑)。

話したい時は壁をドン!ドン!って叩くんですけどね、義姉の話の内容が「今日はこどもがオネショして大変よー」とか「旦那の靴下がクサイのよー」とか、もうホントどうでもいい話ばっかりで(笑)。女性って世界のどこに行ってもお喋りの内容のレベルは同じなのかもしれないなーなんて思いました。そして今日も、きっと世界のあちこちで女性たちはこうやって日々の鬱憤を晴らしているのでしょうね~!ウフフ



■この記事に関連する映画制作国、地域 : インド映画 

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  2015/08/26 | Comment (0) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit

『ワールド・ウォー Z』 (2013/アメリカ) ※原作&映画版ネタバレ全開でいきます

   ↑  2015/08/20 (木)  カテゴリー: アクション、パニック



ワールド・ウォーZ 3D&2DアルティメットZ・エディション



●原題:WORLD WAR Z
●監督:マーク・フォースター
●出演:ブラッド・ピット、ミレイユ・イーノス、ジェームズ・バッジ・デール、ダニエラ・ケルテス、デヴィッド・モース、ルディ・ボーケン、ファナ・モコエナ、アビゲイル・ハーグローヴ 他
●妻と2人の娘と平穏な日々を送っていた元国連捜査官のジェリー。ある日、家族を乗せた車で渋滞にはまった彼は、謎のウイルス感染によって凶暴なゾンビが瞬く間に増殖する現場に遭遇してしまう。そして必死で家族を守り、間一髪で逃げ延びたジェリーのもとに、現場復帰の要請が入る。いまや謎のウイルスの爆発的な感染拡大で、全世界が崩壊しようとしていた。そこで、かつて伝染病の調査や紛争地域での調停に手腕を発揮してきた彼に、調査隊への協力が求められたのだった。愛する家族の安全と引き換えに、調査への同行を決意したジェリーは、米軍とともに、混乱が拡がる世界各地の感染地域へと向かうのだったが・・・。



※この記事は、2013年のレビュー記事を訂正・加筆→再投稿したものです。

WORLD WAR Z 上 (文春文庫)

WORLD WAR Z 下 (文春文庫)


まずは、これを抜きに映画を語れないわ~!と思ったマックス・ブルックス(メル・ブルックス&アン・バンクロフト夫妻の長男)による原作「WORLD WAR Z」について。

原作では「Z」感染が最初に発見されたのは中国となっていて、それを政府がひた隠しにしたために一気に感染拡大が進んだ・・・という非常にリアルな設定になっていました。しかし映画化にあたっては、やはり今や巨大マーケットとなった中国を無視することは出来なかったとのこと。他にも移民問題とか臓器の違法移殖による原因などもありましたが、Zの起源については大人の事情ということで映画版ではウヤムヤになっていました。

「この世界で実際に起こっている本当に怖いもの・・・911、イラク、アフガニスタン、カトリーナ台風、地球温暖化、世界的な金融危機、鳥インフルエンザ、新型インフルエンザ、SARS・・・そういったものに対して、様々なシステムが崩壊してきているように人々は感じているんじゃないかと思う」
 Max Brooks Is Not Kidding About the Zombie Apocalypse【The New York Times】

ニューヨーク・タイムズで原作者ブルックス自身がこう述べたように、それは現実世界の恐怖を"ゾンビ世界"に落とし込んで描いた世界観ですから、小説版の生々しさは強烈でした。恐ろしいのは「Z」感染そのものだけではなく、背に腹は代えられない追い詰められた人間たちが引き起こす、隠蔽、略奪、内戦、粛清、経済崩壊、難民への爆撃、人間の選別、核戦争など。それはまるで政治社会学のリアルなシミュレーションのよう。

コンテイジョン



むかしからゾンビ映画って人気のあるジャンルですが、ゾンビそのものやその世界観というのは何かの"メタファ"だったりして、実は奥が深かったり。こういった人間の集団心理行動などを見ていると、スティーブン・ソダーバーグ監督の『コンテイジョン』なんかにも相通ずるものを感じます。







で、やっと映画版『ワールド・ウォーZ』の感想を。

「Z」そのものの描写は他の"爆走系ゾンビ"と大した違いはなく、ゴア描写等含め目新しさは感じられませんでしたが、その奇をてらうことのないキッチリとした手堅さが逆にワールドワイドな物語に安定感を出していたのだと思います。さらに、全体的にはシリアス調なわりによかれと思ってやったことが悲惨にも裏目に出るなんていうズレたリアルさが笑いを誘う部分もあって、タイトにまとめられた映画版の中でユニークなテンポを生んでいたと思います。

例えば「自然は弱さを強さに見せようとする(キリッ)」とかカッコいいことを言っていた【人類の希望の星】とまで思われた若きドクターがいきなりスっ転んで自分を撃って死んじゃうとか、夫が心配で携帯かけたら着信音でゾンビが覚醒ちゃって米軍大パニックだとか。これって「このキャラクターは生きるだろうなと思っていた人がいきなり死んだりすると面白いですよね(笑)」という監督の意図そのままだったみたいですね(笑)。

というわけで、独自の構成・展開のためブラピの世界一周双六のようになっていた『ワールド・ウォーZ』でしたが、それでもマーク・フォースター監督いわく
「イスラエルや韓国など、現実の世界でも戦争の火種を抱える地域が映画の舞台に選ばれている。Zと人間の戦いは、現実にある国家同士の戦争の暗喩でもある」
  ※希望とは現実に挑むこと/国家の暗喩?「その通り」 【2013.8.10朝日新聞】
だから映画版も原作のトーンをそれなりに引き継いでいる、というわけなんですね。




ただ、このゾンビ映画。あるシークエンスだけがかなり大きくクローズアップされ、世界各国で政治的に物議を醸すことにもなった映画となりました。

日本では映像的には話題になりましたが)映画版で最も力の入ったあのエピソード、イスラエルでのZ襲撃についてです。


この部分、実は原作では、イスラエルがエルサレムを放棄したことによって国内で内戦が勃発してしまうという展開になっていました。ところが今回の映画版においては、エルサレムを含めイスラエルは巨大な城壁によって守られていたものの、"或る出来事"から壁はゾンビに突破され、侵入を許してしまうという内容へと変更されていました。

これは、内部が調和したにもかかわらず外部からの攻撃で全ては崩壊し全滅するという、パレスチナ・イスラエル問題に過敏に反応する現実の中東情勢から見るとかなり衝撃的なものだったと思われます。和平共存が実るというユートピアを見せたところで、いきなりイスラエルの壁は何の役にも立たず、パレスチナとイスラエルの和平が外側から切り崩されるという・・・映像的にはもちろん大迫力なのですが、それを圧倒的に上回る衝撃の展開でした。

しかも映画では、"壁"建設の正当性を説いていたことなどから「『ワールド・ウォーZ』の"Z"はシオニズム(Zionism)のZなのでは!?」とか「これはイスラエルのプロパガンダ映画で、親イスラエル的作品だ」といった批評やコメントが各国のメディアから噴出し、ツィッターなどでも熱い議論が続きました。

↓各国の大手紙による記事のタイトル&内容の簡単な引用はコチラ
イスラエル【Haaretz.com】:批評家たちは親イスラエル的なプロパガンダ映画として酷評
カタール【GulfNews.com】:『ワールド・ウォーZ』は親イスラエル映画か?・・・世界中の論争を巻き起こした
カタール【Aljazeera】:「Z」はシオニズムの略だ (※アルジャジーラの編集方針ではなく、あくまでも意見・寄稿として)
【The Times of Israel】:トルコではエルサレムのシーンの字幕を「Jerusalem」ではなく「Middle East(中東)」へ変更
【The Times of Israel】:レバノンではエルサレムのシーンには検閲が入り、カットや編集が加えられている
アメリカ【Washington Post】:『ワールド・ウォーZ』のイスラエルの壁が問題を提起する
アメリカ【Los Angeles Times】:『ワールド・ウォーZ』はイスラエルと中東について何を語っているか?


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エルサレムでのシークエンスについて、もう一つ。

日本版Wikipediaを見ると「避難民が歌い始めたイスラムの祈りを大音量のスピーカーで流したため」という記述があるのですが、これは誤り。あれは祈りなどではなくイスラエルでは非常にポピュラーなヘブライ語の“Od yavo shalom aleinu”という歌なんです。


城壁内に入ったパレスチナ人女性が、今や"和平の象徴"となったこの歌をイスラエル人らと共に歌い始めるとその輪が次第に大きくなり、それが皮肉にも"ノイズ"となって「Z」を刺激する引き金となってしまうのですよね(歌詞は以下の通り)。


Ohd yavo shalom aleinu (Peace will come upon us /平和は私たちの上へ)
ve’al kulam        (And upon everyone /すべての人々の上に)
Salaam (Arabic)      (Peace /平和)
Aleinu v’hakol haolam  (Upon us and the whole world /私たちと世界中の上に)
salaam salaam       (Peace, Peace... /平和、平和)


報復と憎しみの歴史を乗り越えた喜びは一瞬で切り崩されました。ハリウッド大作のゾンビ映画として、よくここまで描いたものだと思います。いや、ゾンビ映画だから描けた、ということなのかな。






、結局のところ。
ブラピが実子も養子も抱きしめたり世界を駆け回る国連職員だなんて「コレはアンジーの影響か!?」なんて思いつつも観ていた『ワールド・ウォーZ』でしたが、最後の「君も戦いの準備をしてくれ!」みたいなエンディングは何だかとってつけたようで、うーんちょっと拍子抜けでした。

もちろん原作と映画は別物だと考えても、例えばそれまで親兄弟や知人といった愛する人々が「Z」になった途端、彼らを容赦なく"始末"しなくてはいけない、そういった悲しみや痛み、遣り切れなさなど、人間性や躊躇といった繊細な部分がこの映画ではほぼ木端微塵でしたので。悲哀の色がないと、ゾンビ映画はただのアクション映画になってしまいがちですね。

それと、どーしても突っ込みたくて仕方ないのは「米軍」!!
「コイツ、ゾンビに見向きもされなかったんだぜ♪あっはっは☆」とか言ってないでさっさと上に報告しろー!日本の社会人の常識は【ホウ(報告)・レン(連絡)・ソウ(相談)】だ!ってことですよ、まったくもう。


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  2015/08/20 | Comment (5) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit

『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』 (2015/アメリカ)

   ↑  2015/08/19 (水)  カテゴリー: アクション、パニック




  
●原題:MISSION: IMPOSSIBLE ROGUE NATION
●監督:クリストファー・マッカリー
●出演:トム・クルーズ、ジェレミー・レナー、サイモン・ペッグ、レベッカ・ファーガソン、ヴィング・レイムス、ショーン・ハリス、アレック・ボールドウィン 他
●イーサン・ハントと彼のチーム“IMF”は、各国の元エリート・スパイたちによって結成され、国際的な陰謀をめぐらす謎の組織“シンジケート”を追っていた。しかしその矢先、IMFはCIA長官によって解散を命じられ、メンバーはバラバラに。その後、単身でシンジケートの実体解明を進めていたイーサンは囚われの身となってしまう。その窮地を救ったのは、なんと敵側のスパイと思われた謎の美女イルサだった・・・。





「僕(注:クリストファー・マッカリー監督)が飛行機の模型を見ながら、トムに “君がこの飛行機の機体の外側にいたらどうなるだろう” と冗談のつもりで言ったら “できるよ”って。」
夏の超話題作『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』のクリストファー・マッカリー監督が語る! トム・クルーズの意外な素顔とは?【Pouch】

「できるよ!」って(笑)。ジャングルジムの一番上まで登れるかって話じゃないんですよ。地上約1520メートル、時速450キロで飛ぶ軍用機エアバスA400Mに安全ロープ一本で張り付くんですよ。で、リテイクは8回も!

しかも、これは後で書きますが、トム・クルーズはアルフレッド・ヒッチコック監督の『北北西に進路を取れ』へのオマージュで、絶対に背広を着て撮りたかった!という拘りもあったそうなんですね。でもロンドンはものすごく寒くて、さらに1000フィート上がる毎に3度下がるという極寒のコンディション。

これほど特別なシーン、普通だったら映画のラストにドカンと持ってきたいじゃないですか。それをマッカリー監督&クルーズは、いきなり映画のオープニングで(しかもほぼ無意味に)惜しげもなく披露しちゃうんですね。「どうせ予告編で使われるに決まってるからね!」というインタビュー記事をどこかで見たような・・・(笑)。


そんな風に自らハードルを上げた上で、その後も怒涛のスタントなしアクションが続々と。
酸素ボンベなしで6分以上も息を止めるという潜水シーンなんか、マッカリー監督の「ノーカットで撮りたい」という希望のため、トムは2ヶ月間ものトレーニングを受けてこのシーンを撮影したんだとか・・・どっちもどっちな気がする二人だ(笑)。ま、冷静に考えると、スパイなんだから酸素吸入できる秘密道具なんかを使ってほしかった気もしますけどね、それじゃ盛り上がりに欠けるか!





そして、数々のアクションシーンの中でも、観ているこちらが遠心力で吹っ飛ばされそうになるほど手に汗握ったのが、カサブランカでのカーチェイスと、コーナーに入るたびに「膝が!膝がぁぁ!!」と叫びたくなったバイクチェースシーン。こ れ は ス ゴ カ ッ タ 。


BMWが敵の追撃を受けながら狭い狭い路地を凄いスピードで駆け抜けたり、ドリフトで急回転したり、挙句の果てにはバックで階段を大ジャンプ。

撮影部隊スレスレに突っ込んでいくという、ハラハラさせられるメイキング映像。




「車の場面では僕(注:トム・クルーズ)が運転し彼が助手席だが、サイモンは僕のことを完全に信頼してくれた。 だから、本当は危険な撮影だったが黙っていることにしたよ。 ドリフトで通路を走り抜けるシーンで、壁をこすりながら進み周りはカメラだらけだ。 階段を下りていくのも合成ではなく実写さ。 正直、何度かかなり危険な瞬間があったが、サイモンの演技にはいつも笑わされたよ 会うたびに笑っていたね」
<不可能を可能にする男>トム・クルーズが語る最新作の魅力【Enter tainment Station】

言ってくれよ(笑)!危険だったら最初に言ってくれよ!って感じですが、一方で助手席に乗っていたサイモン・ペッグのインタビューがまたヨカッタ。

(注:サイモン・ペッグ)とトムと2人きりで、スタントマンが僕らの代わりに演じるなんていうことは一切なかった。演技は必要ないよ。だって、トムがカサブランカの街を猛スピードで走り回って、僕が助手席で叫んでいるっていうだけだから(笑)。
危険だと感じたことはなかったよ。彼は安全性をすごく意識している特別なドライバーだからね。でもね、ウェイド・イーストウッドっていう僕たちのスタント・コーディネーターに言わせると「このアクションをやるスタントマンを連れてきても意味はない、だってトムくらいに出来るやつなんていないからな」だってさ。
"Because it was just me and Tom, I don't recall any stunt people coming in for us. It was just… no acting required. Just Tom Cruise haring around Casablanca and me screaming in the passenger seat. I never felt unsafe. He is an extraordinary driver. He’s very safety conscious. But Wade Eastwood, our stunt coordinator, said there’s no point getting a stunt driver in to do this because I don’t have one as good as Tom."
Interview - Simon Pegg for Rogue Nation on stunts Cruise and Star Trek

あぁもう、サイモン・ペッグは彼が演じた"ベンジー"(忠犬で有名)の健気さ並みに、彼はクルーズのことを信じ切っていたんですね。


まるで小型カメラが付いたヘルメットを被せられた"リアクション芸人"みたいだったペッグの演技(?)でしたが、人間ってスゴイ体験をすると思わず笑ってしまうんだなーと妙に感心させられた一連のシークエンスでした。






ま、でもこの映画。こんな大技ばかりではなくて、かの名サスペンス映画『ユージュアル・サスペクツ』で第68回アカデミー賞脚本賞したマッカリー監督の、謎を追いつつもシンプルで分りやすい構成力や、ふとしたところに古典映画を意識した繊細さなど、ヒッチコック映画を思わせるクラシックな雰囲気も素敵だったと思います。

 
   『北北西に進路を取れ』              『知りすぎていた男』
 
冒頭の軍用機シーンでは『北北西~』でケーリー・グラントが身に着けていたのと同じスーツにこだわったり、或いはバーナード・ハーマンのスコアを意識したり、また『知りすぎていた男』でのコンサートホール(シンバルの音に合わせて首相を狙撃しようとする)のシークエンスをマルっと使ってしまうあたりも、「これはヒッチコックへのオマージュであり、ラブレターであり、パロディなんだ」とマッカリー監督が仰る通り、そのヒッチコック愛が正直に伝わってくるんですね。観ていて思わずニヤニヤしてしまうようなハッタリの効いたケレン味たっぷりのこの映画のトーンと、とても良くマッチしていたんだと思います。

そう、そしてヒッチコックと言えば重要なことがもうひとつ。
一番重要なポジションを占める女優さんを最後の最後まで必死になって探していたクルーズとマッカリー監督は、ついに『汚名』の時のイングリッド・バーグマンのような女優、レベッカ・ファーガソンを見出したんですね。あのクール・ビューティ!

ファーガソンが演じた"イルサ"は、『カサブランカ』でのバーグマンが演じた"イルザ"にちなんで命名されたのだそう。そして実際に、あの重要なアクションシーンはカサブランカで撮影されたんですよね。
Mission: Impossible - Rogue Nation': Exploring Easter Eggs, Set Pieces, Stunts, Homages and Other Odds and Ends


そう考えると、ちょっとロマンチックな気も・・・
この映画「わたしを見つけて」という印象的なセリフが何度か繰り返し出てくるんです。究極の状況下で出会った二人は再会しては別れ、また出会っては離れ・・・"You know where to find me."と言って消えてしまうイルサ。

実はこのバーグマン云々の話は映画を観終わった後に知ったことだったのですが、なぜか映画を観ている間、私は『カサブランカ』でバーグマンがボガートをじっと見つめる瞳を思い出していたんです。"カサブランカ"という地名がよっぽど印象に残ったからかもしれませんが。でも、このインタビュー記事を読んだ時にちょっと不思議だなぁと思いました。




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『M:I』作品ってそれぞれが異なる監督でそれぞれに味があって、すっかり人気シリーズになりましたね。せっかくここまで書いたので、歴代のアクションシーンのムチャっぷりも勢いに任せて書き残しておこうと思います。


1996年 『ミッション:インポッシブル』 (監督:ブライアン・デ・パルマ)

香田晋風ヘアカットでの宙吊りアクションは、今やこのシリーズを代表する名シーンに。それと実際に高速で走る列車の屋根にトム本人がしがみついて撮影したという秘話も、今なら大いに納得。それにしてもエマニュエル・ベアールにジャン・レノ、クリスティン・スコット・トーマスやヴァネッサ・レッドグレーヴ、ジョン・ヴォイトといった豪華すぎる布陣の集結には、改めてこの映画への力の入れようがうかがえます。



2000年 『M:I-2』 (監督:ジョン・ウー)

冒頭のロッククライミング・シーンはセーフティーネットなどを一切使わず、ハーネスだけで挑んだ→でもダイナミックなジャンプで肩を負傷→やっぱりトム・クルーズも人間だった!それから鳩を飛ばすのが大好きなジョン・ウー監督ならではの、高速で突っ込み空中で絡み合うという危険なバイクバイクアクションも、何だかよくわからない演出だったけれど凄かった。関係ないですが、この映画のパンフレットがあまりに大きすぎてバッグに入らず手で持ち帰ったという思い出もあったりします。



2006年 『M:i:III』 (監督:J・J・エイブラムス)

この橋のシーン、TVスポットだとか予告編でよく見たものです。スタントマンが体の60%もの火傷するという大怪我を負い、クルーズは肋骨に数本のヒビが・・・!シュワちゃんの『トゥルーライズ』風の爆撃アクションでしたが、マギーQがオレンジ色のランボルギーニ・ガヤルドを爆破するシーンも驚いたもんだ。悪役のフィリップ・シーモア・ホフマン、気持ち悪いくらい最高でした。本当に残念です。



2011年 『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』 (監督:ブラッド・バード)

『ローグネイション』でも写真で見せつけられていましたけれど「クレムリン爆破」とかありましたねぇ(笑)。見どころとしては、やはりドバイのブルジュ・ハリファをハイテク(?)グローブを使って登っていくスタントでしょう!命綱こそあるものの、側面を走ったり飛んだり滑ったり・・・。高所恐怖症の私にとってメイキング映像は狂気の沙汰としか思えません。



2015年 『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』 (監督:クリストファー・マッカリー)

・・・とりあえず、ヘルメットくらい被ってほしいとお母さんは心配しています。
次回作の監督さんは誰になるか今から楽しみ!



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  2015/08/19 | Comment (4) | Trackback (1) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit

2015年 残暑お見舞い申し上げます

   ↑  2015/08/13 (木)  カテゴリー: 雑記φ(..)
暦の上ではもう秋ですが、まだまだ暑さが残る毎日です。
皆さま、いかがお過ごしでしょうか。

8月に入ってやっと「夏休み」らしい日々になった私のここ2週間のイベントといえば・・・

 1、こどもとプール
 2、こどもとプール
 3、こどもとプール


・・・こんなのばっかりでもう既にクタクタです。
ま、でも娘だっていつまで一緒に遊んでくれるかわからないですもんね。今のうちに、いっぱい遊んでもらおう!(笑)





えーとそれから、例年、夏には「スティーヴ・カレル祭」を開催している私ですが、今年の夏はそれどころではなくて、毎晩「STEINS;GATEまつり」を絶賛開催中

STEINS;GATE

最初はアニメ独特の雰囲気に慣れるかどうか心配していましたが、あらあら、よく考えてみたら私は「逃げちゃダメだ!」(by碇シンジくん)の『エヴァンゲリオン』を劇場版まで観に行っていた人間だったのでそんなの無問題でした。というか、毎晩続きが気になって気になってほとんどジャック・バウワー状態。まだ中盤なのに、うわー!って息が止まるかと思うほど見入っているんですが。・・・ちゃんと眠らなくては~





そう!そして『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』も観てきましたよ。
毎回感じていたことなんですが、トム・クルーズって、きっと人が感じる"恐怖"の神経が1,2本くらい抜けているんだと思います(←褒めている)。


↑『MI』シリーズでトム・クルーズが行ってきたノースタント・アクションシーンの数々

トム・クルーズの映画って、もう本人の頭がオカシイとしか思えない(これも褒めている)メイキングが毎回すごく面白いんですよね。猛暑の夏にスッキリさっぱり観られる大娯楽作品でしたので、映画館の爆音の中で観られてよかったよかった。キャストのインタビューなんかも面白かったので、レビューはまた後日書こうかなと思います。

  『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』 (2015/アメリカ)
『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』 (2015/アメリカ)





夏野菜も順調に収穫。
最近はナスとピーマン、オクラの勢いが凄い!です。小松菜とインゲンは、専用の一区画を作ってみたので時期をずらして播種→収獲のループが楽しいです。

  


秋の訪れが心待ちにされる残暑厳しい日々ですが、皆様何卒ご自愛の上お過ごしください。
Have a nice summer vacation!

2015年 晩夏

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  2015/08/13 | Comment (2) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit