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『プリデスティネーション』 (2014/オーストラリア)

   ↑  2015/11/27 (金)  カテゴリー: サスペンス、ミステリー




プリデスティネーション[Blu-ray]


●原題:PREDESTINATION
●監督:マイケル・スピエリッグ、ピーター・スピエリッグ(ザ・スピエリッグ・ブラザーズ)
●出演:イーサン・ホーク、セーラ・スヌーク、ノア・テイラー、クリストファー・カービイ、クリス・ソマーズ 他
●SFの巨匠ロバート・A・ハインラインの短編『輪廻の蛇』を映画化したタイムパラドックス・サスペンス。凶悪犯罪を未然に食い止めるべく、過去に戻って犯罪者と対峙するエージェントだったが、神出鬼没の連続爆弾魔フィルズ・ボマーとの時を超えた因縁の対決にも終止符が打たれようとしていた。壮大なタイムトラベルの最中に次々と明らかになる信じがたい因果関係、そして彼が知ることになる自らの"宿命"とは・・・。





私の好きな【タイムトラベル】【タイムパラドックス】もの。

※今日はネタバレなしでいきます。
言葉で書いても、グルグルと回り続ける物語には追いつけないですからね。



"過去"に手を加えると"未来"に変化が生じて矛盾が生まれる「タイムパラドックス」を扱った映画といえば『バック・トゥ・ザ・フューチャー』『ターミネーター』『バタフライ・エフェクト』『オール・ユー・ニード・イズ・キル』、そうそう、夏に観た『シュタインズ・ゲート』などが思い浮かびますが、この『プリデスティネーション』ほど過去に手を加えまくっている物語は他に観たことがないかも!

プロデューサーのパディ・マクドナルドが説明する。
「観る人によって違う映画になるだろう。学術、哲学、神学の要素を取り入れ、それらにさらなる遊びを加えているからね。これまでにない語り口のタイムトラベル映画だ」。
※『プリデスティネーション』公式サイト







いやもう、とにかく映画の前半は、場末のバーに現われた青年がバーテンダーに自らの数奇な身の上を語って聞かせるというタイムトラベルに至るまでの助走が長いの長くないのっていやホント長いのね←でも後から考えると、この構成で合っているんだけど。。。

しかも、この作品は"映画慣れ"している人ほど、冒頭から違和感やらカラクリやらに色々と気づいてしまうかも。カメラワークや、ショット、俳優の使い方などに「あれ?」「これって・・・」「もしかしたら」「やっぱりね!」と。そういった"分かりやすさ"があからさま過ぎて、全体的にチープな雰囲気を漂わせている点は否めないんです。


、2度目に観て気が付いたんですよねー。
この『プリデスティネーション』という映画は、「タイムパラドックス」の構造そのものをクローズアップしているのではなく、そのカラクリを知った上で登場人物たちの立ち位置をもう一度再確認しつつ、彼ら/彼女らの行動が「自由意志」なのか?「運命」なのか?それを見極めていくのが一番の醍醐味なんじゃないかと。






映画の原題「Predestination」の意味は、運命予定説・宿命論
→「この世のすべての事は神の予定による」とする考えで→つまり「運命は生まれる前から既に決められていて、人間の努力では変えられない」というものです。

※因みに、これってキリスト教だけの考え方でなくて、よく考えたらイスラームの世界でも常日頃から何かと口にする「إن شاء الل」('in šā' allāh=インシャーアッラー)という言葉がそうなんだなーと思いました。「神の望みであるなら」という、個人の力ではどうにもならないことを運命に委ねている、という感じ。宗教や哲学のフィールドに入ると込み入ってくるので、ここはサラッといきましょう(笑)。




どんなに過去を改変しようと思っても、それすら既に宿命として定められていることなのか?
"それ"を決定付けているのは、本人の意思なのか?逃れられない運命なのか?


"All You Zombies―": Five Classic Stories by Robert A. Heinlein (English Edition)

輪廻の蛇 (ハヤカワ文庫SF)



ロバート・A・ハインラインの原作小説のタイトルは「All You Zombies—」。
ラスト間際に、映画の中でもこの「ゾンビ」という言葉が使われます。

"I know where I come from, but where did all you zombies come from?"

死者であるのにズルズルと地を這いずり回るゾンビ。
または運命に引き回され、生きることも死ぬこともできないでいるゾンビ。


この映画は、ぜひ2回観ることをオススメいたします。

一度目の時は"嫌悪感"もあって「まぁこんなものか」と思いましたが、二度目に観た時はなんだか切なくなってしまった。"愛する人"を想う限り、"彼"はメビウスの輪から抜け出すことはできないのかな・・・



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  2015/11/27 | Comment (0) | Trackback (1) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit

Maroon5「Sugar」 の"サプライズ・ライブ"はガチなんですよ ※あら、大事な"追記"を忘れたわ

   ↑  2015/11/13 (金)  カテゴリー: ドキュメンタリー、アニメ
今年も残すところあと1ヶ月半。
ちょっと早いですが、今年1年を振り返ってみようかと。
ですが、まだ『007 スペクター』なんかも残っているので映画についてはまた後日・・・

今日は、今年最も印象的だったMVを2つ残しておこうと思います。






1つ目は、なんと言っても今年話題になった"結婚式ライブ"で皆をビックリさせてくれたマルーン5の「Sugar」。



マルーン5のメンバーがLAの一般の人たちの結婚式を回って、サプライズで現れては突然ライブを始める!という、ほぼドキュメンタリービデオ。

実は新郎側にだけ予め知らせてあったようですが、新婦側は絶叫、茫然、酸欠、狂喜乱舞に。だってそりゃそうですよ、 フロントマンのアダム・レヴィーンは米誌『People』の“最もセクシーな男”に選ばれたことのある人なんですもん。その人がタキシード姿で目の前に現れて「sugar 君なしじゃボクはいられないよ」なんてセクシービームを光らせて甘~い歌を歌うんですもん。(うーん、ま、米国人好みのこの魅力、私にはよくわからんが)

こんな素敵なウェディングシンガーが来てくれるなんて、出席者側も一生の思い出になったでしょうね。どの会場でも「オーマイガーッ!!!」なんて絶叫に次ぐ絶叫の嵐なんですが、出てくる皆が幸せそうな表情をしているのがホント印象的。







もう1つは、これはもうハリウッドの「アクション映画」に分類されていいと思うテイラー・スイフトの「Bad Blood」



ジェシカ・アルバ、カーラ・デルヴィーニュ、シンディ・クロフォード、セレーナ・ゴメスなどなど、「テイラー軍団」ともいわれるハリウッド女優や人気シンガー、モデルたちを総動員させた錚々たる顔ぶれにも驚きですが、思いっきりハリウッド映画そのもののアクションで確執を疑われるケイティ・ペリーを総攻撃している(らしい)ところがスゴイ。女ってコワイ。


Taylor Swift's 'Bad Blood' music video will star her BFFs【ELLE】
ポスターの雰囲気も、これはまるでロドリゲス監督の『シン・シティ』。ジェシカ・アルバが出てましたもんね。

一転、新曲「Wildest Dream」では50年代のハリウッド映画女優を演じ、クリントン・イーストウッドの息子で俳優のスコット・イーストウッドが恋人役に抜擢されています。テイラーは、普段からも50年代の可愛いレトロファッションで水着のパンツもオヘソまで隠します!という可愛いお嬢さんなので、このMVに何の違和感もありません。見目麗しい二人がステキです。






さ、今週もお仕事、勉強、就活、婚活おつかれさまでした。
私はシフト制なのでもうひと踏ん張り。
寒暖の差で体調を崩す方も増えてきているようです。
温かいものを食べて飲んでグッスリ眠って・・・くれぐれもご自愛くださいね






■追記(2015/11/14)

ワタシとしたことが!
千原ジュニアがネタでやっているのか!と思ったMVを忘れていた。
超・王道過ぎるファンクサウンドを炸裂させたブルーノ・マーズの「アップタウン・ファンク」。笑ったら負け!的なノリでやられました。



今年前半、一番ハマったかもしれないです。
小林克也さんなら「ご機嫌なナンバー」と紹介してくれるハズ(死語)!!
いつの時代だよ~と笑ってしまうほどジェームス・ブラウン的なノリが、今の時代には強烈な斬新さに変わってしまうから面白いものです。

しかし、ホント何度見てもジュニアさんにしか見えない点については「いつか誰かに言いたい!!」と思っていたので、今日これでやっとスッキリしました。
ハァこれで気持ちよく新しい年を迎えられそうだわ~。アレ?まだ早いか。



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  2015/11/13 | Comment (0) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit

『恋人たちの予感』 (1989/アメリカ) で、ちょっとアンケートをとってみた

   ↑  2015/11/07 (土)  カテゴリー: コメディ





●原題:WHEN HARRY MET SALLY...
●監督:ロブ・ライナー
●出演:ビリー・クリスタル、メグ・ライアン 、キャリー・フィッシャー、ブルーノ・カービイ 他
●初対面でお互いに最悪の印象を抱いたハリーとサリー。だが、その5年後と10年後にそれぞれ空港と本屋で偶然に再会し、いつしか本音を言い合える友人として付き合うように。そして、出会ってから11年の歳月を経てふたりがたどり着いた場所は・・・。「男女の間に友情は成立するか?」 いつの時代でも取り上げられる男女の永遠のテーマに迫った、コメディ満載のラブストーリー。





80年代の映画で古めなんですけれどね、大好きな作品です。
テーマは「男女間に友情は成立するか?」きっと誰でも一度は考えたことがあるんじゃないかな。



これって結論から言うと、半分【Yes】で半分【No】だと思うんですよねー。
そもそも「恋じゃないよ、"友情"だよ」といっても、相手に感心を持ったり相応の魅力を感じなければ、親しい友人として継続するお付き合いもないでしょうし、この時点で既に相手に対して好意はあるんでしょうね。"情"というくらいですもんね。



tapelinepink.jpg

ちょうど先月、学生時代からの音楽仲間である友人と話していて、この話題が出たんです。
それで、その場にいた恋愛現役世代である10~30代の独身男性8人(全員恋愛に関してはストレート)にアンケートをとってみました。サンプル少ないですけどね!


Q1 あなたには親しい女性の友達がいますか? 
   Yes:3人   No:2人  その他:3人
※[Yes]のうち、彼女持ちが1人。 [その他]内訳:「親しいと言えるか微妙」2人 「そもそも友達がいない」1人←オイオイ

Q2 (Q1でYesと答えた人対象に)その女性の友達に、友情以外の恋愛感情を抱いたことはありますか?
   Yes:0人   No:2人  その他:1人
※[その他]:「少し揺れたことがある」

Q3 今後、その女性の友達が恋愛の対象になることがあると思いますか?
   Yes:1人   No:2人
※[Yes]:「絶対ないとは言えない」  [No]:「自分には彼女がいるので」「女友達には彼氏がいるので」



個々に抱える恋愛事情を知っている人もいる中で、皆さんかなり素直に答えてくれました。
これだけでも、なんとなくオトコ心が透けて見えるようで興味深かったです。
【親しい女友達】というラインがちょっと微妙だったかな。2人で買い物に行ったり、ゴハン食べたり、相談にのったり・・・だけど恋愛感情はないよ、という関係。この辺りは個人の判断になるのかな。




で、上の問いについてみんなで話していて、いよいよ〆か!という時になって「ま、結局男は"あわよくば"というのがあるからなー」「うんうん」「そうかもそうかも」とまとめ始めたんですよ、やつらは!↑映画の中でもハリーが同じこと主張していた!

「あわよくば」
意味:うまくゆけば。好機に会えば。(三省堂 大辞林より)
英語:if there is a chance,   if things go well (研究社 新和英中辞典より)


まったく何だよ、チャンスって!(笑)
もちろん、私くらいの年齢になってきて長年築いてきた家族同然の親しみの感情や、何でも話せる気軽さ、或いは尊敬の念などを持っての"鉄壁の友情"もあるとは思います。ま、少なくともどちらかにストッパーがかかっていて「友情を保とう!」という気力があれば、男女間の友情というのは作れるものなんでしょう。

でも、そこから万が一何らかのスイッチが入ってバランスが崩れた時、或いはタイミングが合った時、その友情はいわゆる「恋に落ちる」状態に移行してしまうんでしょうね。たぶん、相手を「自分だけのものにしたい」と思ったらその時点でアウト!かな。








ハリーとサリーは、最初から互いに「面倒な女だな」とか「本当にイヤなヤツ!」と率直に言い合っていたんですが、よく考えてみると壁をまったく作らずに、気取らず遠慮なく話せる間柄って、どんな関係にせよ貴重なんですよね。相手の良いところもイヤなところも、興味深く受け入れられる関係。

相手がピンチになったら夜でも駆けつけたり、失恋したサリーや離婚したハリーを互いに気遣って電話でグチに付き合ったり。二人が心から相手のことを心配しているという面がよく伝わってきて、観ていてなんだか心が温かくなります。

だから、ハリーとサリーの二人がお互いを思い合って一緒に年を重ねていく姿が自然なのは、それが友情であろうと恋心であろうと、互いにきちんと向き合う勇気を持つことのできる、人生で本当に必要な存在だったからなのかも。






「1日の最後におしゃべりしたいのは君なんだ」
“And I love that you are the last person I wanna talk to before I go to sleep at night”

「男女間に友情は成立するか?」なんて、結局は愚問なんでしょうね。
恋愛感情とは別の正直な気持ちでいられる、バランスの良いちょっと素敵な関係。

だいたい、人生の中で並行して何年も一緒に過ごすことの出来る人なんて、実はほんの数人しかいないんですよね。ましてや"一生"かけて続けていける関係のある人なんて、それよりもっともっと少ない。沢山の、本当に数えきれないくらい沢山の人たちと出会っているはずなのに、そのほとんどは隕石がぶつかるような勢いで、ただ一瞬で通り過ぎていくだけ。

もしそんな関係の人がいたらそれは本当に貴重。大事にしていかなくちゃいけませんね。
年賀状の準備を始める季節だし、もう一度友達の数を数え直してみようかな!





因みに、心理学的には「愛情」は3要素で成り立っているといいます。

アメリカの心理学者 ロバート・J. スターンバーグが提唱した「愛の三角理論(triangular theory of love)」における情熱(Passion)、親密さ(Intimacy)、献身(Commitment)。

 情熱:常に相手と一緒にいたいと願う強い思い
 親密:好意や尊敬の念、相手を近くに感じる気持ち
 献身:相手との関係を長期的に維持しようという決意

この3つが揃っていれば間違いなく絆の強い「完全な愛」と言えるのですが、ライフステージによって「愛」の形も様々に変化していくもの。また、どの要素が強いかで自分のもっている「愛情」が刹那的な愛なのか、友愛的なものなのか、或いは契約だけの虚無の形なのかといった"愛情のタイプ"を理解することもできます。

もちろん、どれにも当てはまらなければそれは「無関心」ということで、つまり「愛情はない」ということです(笑)。


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  2015/11/07 | Comment (2) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit

『誓いの休暇』 (1959/ソ連)

   ↑  2015/11/03 (火)  カテゴリー: ロマンス、ドラマ



誓いの休暇【デジタル完全復元盤】 [DVD]



●原題:БАЛЛАДА О СОЛДАТЕ/ BALLADA O SOLDATE / BALLAD OF A SOLDIER
●監督:グリゴーリ・チュフライ
●出演:ウラジミール・イワショフ、ジャンナ・プロホレンコ、アントニーナ・マクシーモア ニコライ・クリュチコフ 他
●ナチスがロシアに攻めこみ、戦争がもっとも苦しかった頃。19歳のアリョーシャは戦場で2台の敵戦車を炎上させた勲功により、6日間の休暇をもらった。アリョーシャの心は故郷へとはやるが、戦火の道中は一層長い。途中、空襲にあったり、妻のもとに復員する傷病兵を助けたりしているうちに休暇はまたたく間に過ぎ去っていく。そしてやっと乗り継いだ軍用貨物列車のなかで、アリョーシャは少女シューラと出会った。




先月、シネマヴェーラ渋谷で「映画は旅である ロード・ムーヴィーの世界」特集の一作品として、この『誓いの休暇』がリバイバル上映されました。行けなかったけれど、一度でいいからこの作品をスクリーンで観たかったなぁ。

最近コメントをいただいたので、ちょうど良い機会と思い再見してみましたが、本当にまたひとりで泣いてしまった。「反戦映画」とも言われるこの作品ですが、観終わった後は悲しみというよりももっと温かなものを感じて・・・今思い出してもまた泣けてしまいます。。。

それが初恋だと気づく間もないまま別れの時が迫るアリョーシャとシューラの出会いや、戦禍の中でも優しさや思いやりを忘れない人々。古い映画で傑作!と言われる作品だとどうしても腰が引けてくるものですが、この映画がどれほど多くの人々の心を惹きつけて止まなかったか、改めて胸に残りました。本当に、いい映画です。






※この記事は、2011年のレビュー記事を再見・加筆→再投稿したものです。

昔、映画館で観たことのあった父が「もう一度だけ観たいなぁ」と言っていたのを聞いて、DVDをプレゼントしたのがこの映画を観るきっかけでした。

きっと良い作品に違いない!と思ったので。




デジタルリマスター版のDVDには、監督が当時を振り返るインタビュー映像や、ソ連時代の1941年に赤の広場で行われた軍事パレードのドキュメント・フィルムも収録されているのですが、あわせてソ連史などの資料も見てみました。

制作当時の社会的背景や国家事情、歴史などを考えると染み込むように深い印象を残す映画に出会うことがあります。この『誓いの休暇』もそういった作品のひとつだなぁと思ったのです。この映画を思い返すたび、淡く美しい映像とともに、胸が締め付けられるような哀しくて切ない思いに駆られるのです。




『誓いの休暇』が制作されたのは、イデオロギーの対立から核戦争への恐怖で東西に緊張が走っていく戦後の時代でした。

アメリカと強硬対立していたソ連では、反体制的人物には粛清を行うような強力なプロパガンダのもと最高指導者(=独裁者)としてスターリンが国内を恐怖によって支配していました。芸術家たちにとっても非常に厳しい時代でした。

しかしスターリンが死去した1953年から始まって、フルシチョフの「スターリン批判演説」があった1956年以降は、東西関係のみならず、ソ連邦内でも緩やかながらも文化的緊張緩和がもたらされた【雪解けの時代】が到来するのです(それでもその後のアメリカ/ケネディ政権期においては、ベルリンの壁建設やキューバ危機など、再び冷戦の緊張感は最高レベルにまで達してしまうのですが) 。






『誓いの休暇』のグリゴーリ・チュフライ監督は、このような激動の時代において世界各国、数々の映画祭で高い評価を受けた作品を残した【ロシア映画界の巨匠】と言われる人物です。

ですが、それだけにソ連邦内で映画を作るということの苦しみや葛藤も並々ならぬものがあったことを、雑誌におけるインタビューなどからも強烈に窺い知ることができます。

■59年、監督がかってスターリングラードの戦場で構想を得たという19才の少年兵の淡い青春を描く「誓いの体暇」を撮り、カンヌ他 海外の多数の国際映画祭で受賞、国内でも主人公に表現された若いソビエト兵士の資質こそ新しいモラルと高い評価を受け、チュフライ監督の名は内外に知れ渡った。

61年には、独軍の捕虜となったもとソビエト兵士を暖かい共感のなかで描いたセルゲイ・ボングルチュク監督の「人間の運命」(59)のテーマをさらに深めたと言われる「晴れた空」を完成、スターリン体制下、故郷に生還したもと捕虜の兵士を襲った政治的・社会的差別を暴くと同時に、ここでもそうした試練にさらされた高遇で純粋な愛を描いて、モスクフ国際映画祭グランプリ他を受賞するが、人間としての社会的モラルにかかわるテーマを追究した「おじいさんとおばあさんが住んでいました」以降は、この監督もまた、いわゆる映画官僚との軋轢に悩まされ、それがその後の創作活動に影を落とすことになる。・・・[解説より]

■・・・「"ためになる良い映画"ばかりを作ってきた人々にとって、我々の作品は危険と映ったのです。芸術作品を絶対的に評価することがいかに危険であるかを私はこの時知りました。(中略)『誓いの休暇』が原因で私が党を除名された時、群集は一斉に私を踏みつけにかかりました」・・・[インタビューより]
※(株)日本海『グリゴーリー・チュフライの世界』より一部抜粋


この映画は、脚本の段階から党の芸術委員会から批判されるなど企画は難航し、許可が下りて撮影が始まってからも監督が入院するほどの大きな事故が起こったり、撮影再開後には委員会に承認された主演キャストの変更を監督の強い要望で決行したり、はたまた照明器具による事故が起こるなど・・・とにかく驚くほどありとあらゆる"災難"が頻発していました。

しかも作品完成後においては、党中央委員会から「反ソ的、反人民的で軍を批判している」とされ、チュフライ監督は党から除名されてしまいます。

もちろん映画も公開禁止となるのですが、どういうわけか1ヶ月後には委員会から許可が下りて(ソ連・各共和国の首都、大都市での公開が禁止という条件付き)農村部などで公開され、さらに再び委員会からの命令で今度はカンヌ映画祭へ出品、1960年の「ユース賞(海外作品)」「ベスト・セレクション」を獲得するという快挙を成し遂げることになるのです。






数奇な運命を辿った映画作品とも言えますが、このチュフライ監督が全身全霊を捧げた固い決意が成し遂げた結果でもありました。

しかし、それではなぜ監督は、あのソ連時代の自身の地位すらも危うくなるような環境の中、ここまでして『誓いの休暇』を作りたかったのでしょうか?何が監督をそこまで突き動かしたのでしょうか?


「この映画は、男女の出会いと別れを描いた幼稚なテーマだと委員会から批判された」と監督は述べていましたが、その底辺に流れているのは、戦争によって引き裂かれる親子や夫婦、恋人たちといった様々な人々に起こる悲劇と、そしてそれでも決して消えることのない優しさや強さでした。


「勲章を貰うよりも母親の元に帰って屋根を修理してあげたい」というまだ幼さの残るアリョーシャに対し、親子ほど年の離れた将軍は2日、4日では無理だろうと6日間の休暇を与えてくれました。軍事物資用の輸送車にコッソリと乗り込んだアリョーシャは、偶然乗り込んできた少女のシューラを守るため哨兵から追い出されそうになるのですが上官の中尉が事情を察して見逃してくれました。

また、配給で貴重だった石鹸を「家に残る妻にプレゼントしたい」と見知らぬ兵士に頼まれたアリョーシャは、シューラと共に道中寄るのですが、その奥さんに"裏切られた"ため避難所に暮らす兵士の父親に渡しに行くことにします。そこでアリョーシャはその父親に"優しい嘘"をついて、兵士の帰りを待つ人々を安堵させてあげるのです。

戦争に翻弄される人々との出会いの中で、アリョーシャは労を惜しまず人々に手を差し伸べ、また助けられながら故郷へと向かいます。

ささやかな幸せな時間をシューラと分かち合うアリョーシャでしたが、それが初恋だと気付く幸福を噛み締める時間もないまま、彼女との別れも迫っていきます。出会った人々のために多くの時間を費やしたアリョーシャには、故郷で母親と過ごすことのできる時間は僅かしかありませんでした。それでも彼は、それが生きている証だというかのように全力で母親の元へ走り続けるのです。






チュフライ監督は、この映画への思いをこのように述べていました。
「私の人生に関わるものだから、撮らなくてはならない。戦争中に亡くなった私の友人達に纏わる本当の話なのだから。彼らについて物語る映画を 撮る義務が私にはあるのだ」

「私にとって、この映画は現代のものだと私は言った。戦場で受けた私の傷はまだ完治していない。夫や子を失った女たちの涙は、まだ乾いていないのだ」
※DVD『誓いの休暇』当時を語る 監督グリゴリー・チュフライより




この映画に出てくるのは、戦争を経験した名もなき人々の姿そのものだったのでしょう。

本来なら瑞々しい青春を謳歌したり、家族と笑いあったり、赤ん坊を抱き締めたり、老いた親の背をさすり、その手を握って生きていたであろう人々です。

反政府的立場となる危険をも恐れず、委員会からの激しい抗議にも一歩も引くことなく、この映画の存在意義を固く信じたチュフライ監督がいたからこそ、反戦をテーマにロシア映画史上最も美しくヒューマニズムに溢れた映画といわれる作品――『誓いの休暇』がここに出来上がったのです。






天地が一転する自在なカメラワークや、走る人物のスピード感を画面いっぱいに捉える躍動感など技巧を凝らした各ショットは、今見ても素晴らしいものです(撮影中に何度も怪我人が出ただけあります・・・)。

また映画の構成においても、映画をいったん観終わった後にもう一度冒頭のシーンを見直すと、年老いた母親が見つめる先にある一本道と、カットが変わり若い頃の母親が見つめる先に"何が"あるものかわかった時には不覚にも涙がこぼれそうになりました。

やはり、多くの人の心の奥深いところにずっと刻まれていると言われる、本当に素晴らしい作品だと思います。私も、父がもう一度観たかったという気持ちがよくわかりました。このレビューを書いている今でも、アリョーシャの経験を通じて描き出された戦時下の悲しみだけでなく、彼の青春の柔らかく眩しい一時が心のどこかに焼きついて離れることがありません。






■追記
この映画の制作時代を思うと、外国映画のリメイクとはいえ『ニュースメーカーズ』のような、警察批判を表立って皮肉ることができるような時代がくるなんて、当時では考えられなかったことでしょう!


■続・追記
前ブログ掲載時に、ブログ【畑ニ居リマス・田舎暮らしPHOTO日記】様より畑のカエル様からいただいたコメントで、「ソ連映画「人間の運命」(1959年)・ソロコフとワーニャ」という記事をご紹介いただきました。←当記事は[旧ブログ]からの転載のため、以前いただいたコメントが消えております。旧ソ連の時代背景など大変参考になり勉強させていただきました。私にとっても大切な記事となりましたので、ここにリンクさせていただきます。



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  2015/11/03 | Comment (4) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit