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『リード・マイ・リップス』 (2001/フランス)

   ↑  2016/09/30 (金)  カテゴリー: サスペンス、ミステリー





リード・マイ・リップス [DVD]



●原題:SUR MES LEVRES / 英題:READ MY LIPS
●監督:ジャック・オーディアール
●出演:ヴァンサン・カッセル、エマニュエル・ドゥヴォス、オリヴィエ・グルメ 他
●土地開発会社で多忙な日々を送る難聴のカルラ。刑務所帰りで保護観察中のポールという男性アシスタントを雇うことになるのだが、彼と接するうちに彼女の生活も徐々に変化していくように。やがてポールはある犯罪を企て、カルラも否応がなしに手を貸していくことになる・・・。仏国内で最も権威ある「セザール賞」で、2002年『アメリ』のオドレイ・トトゥが有力と言われた中、エマニュエル・ドゥヴォスが『リード・マイ・リップス』で主演女優賞を獲得した作品。





久々に、ゾクゾクっときた映画。

物語全体に漂うこの独特の色気は、もしかしたらちょっとした"マニア向け"なのかもしれませんが。決して美男美女とは言えない男女2人が放つギリギリの官能性と、「フィルム・ノワール」のハードボイルドな硬質さを併せ持つ、このほの暗さといったら・・・!

しかもね、実はこの映画、今回"再見"なんです。
それなのに、これだけ心揺さ振られてしまったということは・・・・以前の私はこの映画の一体何を見ていたのかしら。 いや・・・当時の私には見えなかった、見えていなかったのかも。

あぁ映画って、本当に出会うタイミング・観るタイミングが大切ですね。







日常生活に氾濫する、耳を塞ぎたくなるような他人の話や興味のない耳障りな騒音。そんな時、カルラは「補聴器」を切って周囲から自身をシャットアウトします。難聴故に、彼女は音に惑わされない。

一方で、彼女は知りたい情報を密かに手に入れるため、離れた場所の人々の唇を読んで会話を盗み聞くこともできる・・・。彼女が孤独なのは単に「難聴だから」なのではなく、周囲の人々との間に通常は見ることのできない隙間や溝を見抜くことができるからかもしれません。

そして、"普通"や"慎ましさ"を装いながらも、心の奥底では昂るような刺激を求め、抑えきれないほどに溢れ出す大胆さに惹かれている。

そう、彼女は"強か"なのです。




ヴァンサン・カッセル演じるポールがじわじわと発する危険な色気と、それに抗えなくなっていくカルラとの抜き差しならない関係。

振り子が大きく揺れるように行ったり来たりする最悪としか思えない状況の中で、最終的にどう決着をつけるのか(再見なのに!)息を詰めて見守っている自分がいました。


誰にも言ってはいけない秘密と、極限の危機的状況を共有した二人。



 「真夜中のピアニスト」

   「預言者」

  「君と歩く世界」



他人には見せたくない生々しさを感じさせるリアリズムの中で、人間の弱さや孤独を描くことに定評のあるジャック・オーディアール監督は、主人公カルラを弱者どころか「力のある女」として描きました。

『リード・マイ・リップス』は、この手の「フランス映画」のラブストーリーとして見ると意外とも思えるラストだと思うのですが、それは『預言者』のように乾いた叙情を得意としながらも、暗闇を照らすような優しさを見せてくれるオーディアール監督からの"愛情"のようにも思えました。

10年前とはまた違う感想です。




■この記事に関連する映画制作国、地域 : フランス映画 

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  2016/09/30 | Comment (2) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit

『ファインディング・ドリー』 (2016/アメリカ)

   ↑  2016/09/16 (金)  カテゴリー: ドキュメンタリー、アニメ





●原題:FINDING DORY
●監督、脚本:アンドリュー・スタントン
●製作総指揮:ジョン・ラセター
●声の出演:ドリー(エレン・デジェネレス/室井滋)、ニモ(ヘイデン・ロレンス/菊地慶)、マーリン(アルバート・ブルックス/木梨憲武)、ハンク(エド・オニール/上川隆也)、デスティニー(ケイトリン・オルソン/中村アン)、ベイリー(タイ・バーレル/多田野曜平)、クラッシュ(アンドリュー・スタントン/小山力也)、シガーニー・ウィーヴァー(シガーニー・ウィーヴァー/八代亜紀)、ギル(ウィレム・デフォー) 他
●カクレクマノミのニモは故郷のグレート・バリア・リーフで、心配性の父マーリンと大親友のドリーと楽しい毎日を送っていた。そんなある日、何でもすぐに忘れてしまうドリーが、ひょんなことから幼い頃の記憶を取り戻す。それは離ればなれになってしまった家族との思い出。すぐに会いに行かなきゃと、いても立てもいられないドリー。わずかな手がかりを頼りにカリフォルニアの海へと旅立つのだったが・・・。





「ドリーは誰の目にもわかるような障害を持っています。しかし、彼女は発見するのです。自分の強さは、その独特な脳の中にあるということを。」
(アンガス・マクレーン監督)は言います。「そんな強さが見える人もいるでしょうし、隠れていて見えない人もいるでしょう。」
How 'Finding Dory' could change the conversation around disabilities
“Dory has an obvious disability, but she finds out what her strengths are in her particular brain," he says. "For some people, those strengths are visible and for some might be hidden."(co-director Angus MacLane)



ピクサーが"障がい"をモチーフに映画を作ったことに驚いた!しかも軽やかに!

うーん、なにしろ私も"人の親"というものになって今年でやっと8年ですが、それは障がいを抱える子どもと共に成長してきた8年でもあったりするわけなのです。

我が家の娘、チビハナさんは生まれながらに脳機能の発達に偏りがあるため、"独特"な記憶力を持つ発達障害を抱えています。そのため、時々ものすごくビックリさせられたり、或いは本人共々戸惑ってしまうこともあったりするのですが、本当にありがたいことに周囲の方々に恵まれて娘はスクスクと育ってくれています。
 
そんなチビハナさんと一緒に映画館で鑑賞。







この映画の主人公、ドリーはチビハナさんとは逆なのですが、やはり脳に記憶障がいを持っています。

短期間しか記憶が持続せず、何でも忘れてしまうんですね。チビハナさんのように偏りがあるものの事細かに覚えているのも脳にとっては大変な負担なのですが、逆に"覚えていられない"というのも非常に辛いでしょう・・・

だから、ドリーの両親の懸命な子育てを見ていたら過去の自分を見ているようで胸がギュっと締め付けられました。

ドリーの将来を思ってママがこっそりと泣いていたり、お友達とのコミュニケーションのための"訓練"を遊びの中で一生懸命行っているパパの姿。お魚さんのお話なのに、私、この辺りでもう泣きそうでした。





でもね、結局、親が心配して心配して心配して心配して、心配したりないくらい心が押し潰されるほど(勝手に)悩んでいても、実は子どもって自分でどんどん世界を切り開いていってしまんですよね。



障がいって本当に不思議なもので、それが得意分野だと「個性」になって、不得意なものだと「障がい」と言われる面があります。そして、その人自身の性格によって、周囲の人たちの捉え方も変わってきます。これは私が子育てをしている中でなんとなく感じていることなので、誰にでもあてはまるわけではないかもしれませんが・・・


ドリーは明るく朗らかで、楽しいことが大好き。
忘れてしまうことがあっても「あれ、ごめんね!」なんて言って笑い飛ばしてしまう。
困ったことや出来ないことがあったら「助けてください」と言える勇気がある(障がいを持つ子にとって、これが最初の訓練になります)。

普通、人が「できない」と思うことでも「やってみよう!」とチャレンジしていく強さがある。無謀とも言います。でも、他の人には想像もつかないような奇抜なアイディアを思いついたりもする。←で、これが驚愕のラストとなるわけですが(笑)。


だからこの映画では、ドリーの「障がい」は「個性」として活き活きと描かれているのではないかな、と思うのです。






他のキャラクターも考えてみたらみな同じ。
タコのハンクは足が7本しかなく、ニモは片方のヒレが生まれつき小さかったりします。


それに、この2頭だってそう!

弱視のためになかなか勇気を持てないジンベエザメのデスティニーと、エコロケーションという最高の能力を持っているのに「自分には出来ない」と思い込んでいるシロイルカのベイリー。でも2頭が一緒になれば、視野も世界もぐんと広がるのです。

1人だと困ってしまうこと、出来ないこと、苦手なことがあったとしても、それぞれのかけがえのない個性が集まれば想像を超える化学反応を起こす。X-MENだってそうだし、名探偵のモンクさんだってポワロさんだってそうでしょう(笑)。程度の差こそあれ、皆ちょっと人から見るとヘンテコなところがあるはず。

チビハナさんは、「ニモ」の時より「ドリー」の方が好きなんだそう。親しみがわくのかな。







因みに、ピクサーも「障がいあっても素敵!がんばれる!」なんてヤボなことは言わず、意地悪なアシカのフルーク&ラダーというキャラクターも登場させています。

ちょっとトボけたアシカくんが、この2頭に意地悪されて邪魔者扱いされているシーンが繰り返されるのですが、彼もなかなか根性がありますので3頭ひっくるめていいトリオなのかも。こういうことは実社会でもありますからね。

「お友達と順番!仲良くしようね!」的なことは、しまじろう先生に任せておけばよいでしょう。最後に勝つのは"強かさ"ですから(笑)。








↑コチラは同時上映された短篇『ひな鳥の冒険』。

浜辺に寄せる波、ひな鳥の柔らかな毛並み、なんという画の美しさ!
「かわいい子には旅をさせよ」と云いますが、こうやって子どもは大きな世界を知っていくのでしょうねぇ。親って難しいな。



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  2016/09/16 | Comment (0) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit