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『ゴースト・イン・ザ・シェル』 (2017/アメリカ)

   ↑  2017/04/23 (日)  カテゴリー: SF、宇宙、怪獣








●原題:GHOST IN THE SHELL
●原作:士郎正宗『攻殻機動隊』
●監督:ルパート・サンダーズ
●出演:スカーレット・ヨハンソン、ビートたけし、マイケル・カルメン・ピット、ピルー・アスベック、チン・ハン、ジュリエット・ビノシュ、桃井かおり 他
●電脳ネットワークと肉体の義体化が高度に発達した近未来。世界最強の捜査官、少佐。悲惨な事故から生還した彼女の体は、脳の一部を除いて全身が義体化されていた。少佐はタフで有能な精鋭メンバーを擁する公安9課を率いて、凶悪なサイバーテロ犯罪に立ち向かっていた。ある時、ハンカ・ロボティックス社の関係者が何者かに襲われる事件が発生。捜査を進める少佐の前に、クゼという凄腕のハッカーの存在が浮かび上がってくる。事件の真相を追ってクゼに迫っていく中、いつしか自分の脳に残るわずかな記憶に疑念を抱くようになっていく少佐だったが・・・。



GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊 [Blu-ray]


原作や元ネタを知っていると「ここはあのシーンだな!」とか「さらっと流したもんだなー」とか色々思いめぐらすこともありましょうが、今作につきましてはワタクシ、原作コミックは未読で、おまけに押井守監督の「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」も未見なんです。

なんだか本当にスミマセン・・・


熱烈な原作ファンが多いということで「私は知らないんです」と無防備に言い難い雰囲気がネット上には充満しており、なんとなく居辛い・・・。すみません。

「めざましテレビ」でスカヨハとたけしさんのインタビューを目にして初めてこの「攻殻機動隊」という世界観を知ったほどでしで、これまで一切触れたこともありませんでした。というわけで、原作に縛られることのない完全なフリーダム状態。今作品一本勝負で観て参りました。

じゃあそこまでしてどうして観に行ったかといいますとね、チケットが当たったのですよー!それで、子どもの新学期が始まってから公開6日目のシネコンへ行ってきたのですが・・・・なんと、私と他のおじさんの計3名しかいませんでした。おまけにエンドロールが終わって明かりがついたら、広い劇場内にいたのは私1人だけ!平日午前中の映画館ってこんな感じだったのか。







“自分のアイデンティティーを探す旅”に見えました。
1927年のドイツ映画『メトロポリス』に始まって、『ブレードランナー』『未来世危機ブラジル』『マトリックス』など近未来ものに浸ってきた私にとってはこの『ゴースト・イン・ザ・シェル』という映画、ものすごーくオーソドックスでシンプル、とても解り易いお話に感じました。「原作知らないので意味不明だったらどうしよう」とか「敷居が高すぎて意味不明だったらどうしよう」とか「キャラクター知らないから意味不(略)」とか心配ご無用でした。逆に拍子抜けしてしまったほど。

機械(シェル)に覆われた義体の中において、唯一人間のパーツである脳(=ゴースト)を残した少佐が、自分の心や魂、記憶を探りながら人間と機械との狭間で感じる孤独や葛藤・・・・的なことは何か言っていたような気もしますが、それほどガンガン刺さってくるほどでもなく「笑わないスカヨもいいんじゃな~い?」くらいにしか感じられませんでした。

思うに、恐らく原作が持つストーリー性やメッセージ性よりも映像の方に比重が置かれているからなんだろうなと感じました。それとやっぱりハリウッド的に非常に解り易く作られたから、ということもあるでしょうね。




アジア的近未来風景は、本当に美しかったです。
この映像に併せて、あの「ビョンビョンビョンミョンミョ~ン」と鳴り響く音楽なんて『ブレードランナー』そのもので、初めて観たというのにどこか懐かしい気分にも。

黒澤明監督の『酔いどれ天使』とリドリー・スコットの『ブレードランナー』を合わせたような世界観を作り上げたというルパート・サンダーズ監督の言葉通りでした。残念ながら原作との比較はできないのですが、きっと実写化にあたってはかなり丁寧に映像化されたのだろうと感じられました。

雛人形が出てくるシーンが2度ほどあるのですが、私このカットがとても好きでした。それまで隠すように置いていた雛人形のカバーを外すというほんの僅かなシーンなのですが、これってきっと日本の文化を知らなければこの嬉しさは伝わらないだろうなと。ハリウッド映画でこういった繊細な表現を織り込んでくれたことが、とても嬉しかったです。







で、結局のところ【公安9課】というところのチームワークというのもはサッパリ解らなかったのですが、この映画は"少佐の魂の旅"を描いたものなのだと思えばこんな感じなのかな。

そう!あと、北野たけしさんの髪型が「世界まる見え!テレビ特捜部」と同じなので、登場するたびに「なんだコノヤロウ!」ってピコピコハンマー出してきそうでかなり集中力が途切れました。・・・・・それとですねぇ、大変申し訳ないのですがたけしさんが喋っている日本語のセリフが聞き取りづらくて、ここだけは英語字幕があってギリギリ助かりました。日本語を聞きながら字幕を読むというシュールな展開。


そうだ!思い切ってついでに言ってしまうとですね、スカーレット・ヨハンソンの髪型もすきバサミを入れるのに失敗したシャギーカットにしか見えなくてちょっとムズムズでした。おまけにどうしてなんとなくズングリムックリしているんだろう??と、観ている間ずーっと疑問でした。言ってしまった!(笑)

あ、でもいいんですよ、スカヨハだってお母さんなんですから別にどんな体型でも構いません!私だって人の体型のことをとやかく言える立場じゃございませんが、でもさでもさ「日本のアニメだから日本人体型にしたんだろうか?」とか「もともとあんな衣装(?)なのかな?」とか一人悶々と思い悩んでいました。が、さっき検索してみたら、なんだアニメ版の素子さんなんて超ナイスバディじゃないですか。いったいこれってどういうこと!?どういう実写化なんだ??

もちろん【アニメ体型】なんてとてもあり得ませんが、でも日本の女優さんがナチュラルに演じられば一番よかったのかもしれませんね。あ、でもそれだと世界規模で展開しなければならないマーケットではきっと売り込みが掛けられないんだろうなぁ。そう、だからこそそんな中でよくぞ日本発のアニメを実写化してくれた!というところに落ち着くのかな。きっと、オトナの事情がいろいろと渦巻いているんでしょうね(笑)。



■この記事に関連する映画制作国、地域 : アメリカ映画 

  2017/04/23 | Comment (0) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit

『イレブン・ミニッツ』 (2015/ポーランド、アイルランド)

   ↑  2017/04/04 (火)  カテゴリー: サスペンス、ミステリー








イレブン・ミニッツ [Blu-ray]


●原題:11 MINUT / 英題:11 MINUTES
●脚本、監督:イエジー・スコリモフスキ
●出演:リチャード・ドーマー、パウリナ・ハプコ、ヴォイチェフ・メツファルドフスキ、アンジェイ・ヒラ、ダヴィッド・オグロドニック、アガタ・ブゼク、ピョートル・グロヴァツキ、ヤン・ノヴィツキ 他
●午後5時から5時11分までの「11分間」という限られた時間に焦点を絞り、様々な登場人物たちが繰り広げるありふれた日常の一コマ一コマが、やがて思いも寄らぬ結末へと収斂していくさまをモザイク状に描いた実験精神あふれる群像サスペンス。街に午後5時を告げる鐘が鳴る中、一人の男が慌てて家を飛び出し妻のもとへと向かう。その妻は女優で、優雅なホテルの一室で下心ミエミエの映画監督と一対一の面接に臨もうとしていたが・・・。







この『11 MINUTES』という映画は「アタマにきた!金返せ!」VS.「さすが巨匠!なんという傑作!」と、公開当時から批評家や世の映画好きの皆さんを真っ二つに分けていた作品でしたので、「さぁ~!私は一体どっち派なんでしょう!?」なんて観る前から変なとことでワクワクしていました。

面白い!にしても、面白くない!にしても、「私はどうしてそう思ったんだろう?」って一人でうじうじ考えるのが楽しいものですから。やることが暗いですね(笑)。それでですねぇ・・・・・"観客誰もが想像しえない驚愕のラスト・シーン"というヤツを目にした後、私のアタマにポッと浮かんだのは

「人生は寄りで見ると悲劇、引きで見ると喜劇」という言葉、これそのもの。なんじゃこら!私は笑ってしまいましたよ。

強烈なニヒリズム、それから悪夢としか言いようのない「壮大なる悲劇のピタゴラ装置」を目の当たりにして「監督、きっとお好きなようにやっちまったんですね!」と言いたくなりました。・・・ただ、問題はその後でして、モヤモヤ~っとした空気が一気に心の中に充満してきました。一気にですよ~


バラバラに見えていた多くの登場人物が複雑に入り組み、交錯したりすれ違ったり、巧みに錯綜しならがもラストに向かって一気に収束していく・・・という物語なら、パズルがカチっとはまった瞬間には爽快感やら達成感が湧き上がってくるはずなのですが、この映画はその類とはベクトルが真逆!もう、爽快感なんてバコーン!「それ見たことか!」と突き飛ばされたような幕の下ろし方。


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この"モヤモヤ~っとした感情"は一体どこから湧いてくるものなのかな?と考えてみると、やはりそれは「ポーランド」という国と、イエジー・スコリモフスキ監督の(良くも悪くも強烈に感じさせられる)存在感があるからなのかなぁとまず思いました。これは先入観と言うのかなぁ。でも、切っても切り離せない気がするんですよね。映画作品が生まれた土壌、って。


破壊、占領、分割、虐殺、消滅、復活という激動の時代を辿ってきたポーランド。
ソ連とナチスドイツからの占領、アウシュビッツ強制収容所、ワルシャワ蜂起、戦後は社会主義体制の崩壊という複雑で波乱に満ちた歴史を背景に、現在ではEU内で拡大するポピュリズムやナショナリズムの渦中ど真ん中。

そして、このポーランド映画界の"反逆児"と言われたイエジー・スコリモフスキ監督。彼の大胆不敵で型破りな存在感。過去の作品が「スターリン批判」「反体制的」とみなされ上映禁止→ならば、と映画製作の舞台を国外へと移し、祖国ポーランドを出て"亡命映画作家"として流浪の人生を送ったという監督の持つ人生観。



まるでカトリックにおける7つの大罪(傲慢、憤怒、嫉妬、怠惰、強欲、暴食、色欲)を思わせるような登場人物たちが織りなす人生の交差(があったり、なかったり)。そして、複数のジャンルの映画が入り乱れるような奇怪な展開、緊張感、不条理さ。ポーランドという国や監督の生きざま、人生観、歴史観、世界観、宗教観。そういったものに静かに囁かれている気がしたのは、こんなところからなのかもしれません。


それから、もう一つ。
異様な不安感。緊張感。それはやはり「5:11」という数字にも表れている気がします。







この「11分」という数字について、スコリモフスキ監督は「適切な長さになるためには10分程度と考えた上で、12だと"十二使徒""十二人の怒れる男"といった意味が出てくるのでダメ。13は不吉な数字なので却下。審美的にも良いと思ったのが11だった」とインタビューでと仰っています。
 To get to the proper length of the film it should be around ten minutes, but ten is such a round figure...twelve has the connotation of the twelve apostles, 12 Angry Men . Thirteen is [ makes dismissive gesture ]. So eleven! It is a very nice figure, aesthetically speaking.
From Zen to Chaos- An Interview with Jerzy Skolimowski 【Notebook】


そして、この「5:11」というのは9/11からインスピレーションを受けた訳ではなく、今の時代の典型の一つ "不安の象徴" として置き換えたのだ、ということも。
Cineaste: I have heard interpretations that 11 Minutes was inspired by the events of 9/11. From your perspective as the storyteller, was this a conscious source of inspiration?
Skolimowski: No, that’s not true. No, no, no. I adapted this image as one of the archetypes of our time. The story, of course, doesn’t have any relation to the 9/11 events, but the image is used as a symbol of the anxiety of our times.

To Be Aesthetic and Not Boring: An Interview with Jerzy Skolimowski 【CINEASTE】


9/11は直接的には関係ないとしながらも、劇中繰り返し現れるのは、爆音を響かせて驚くほどの低空飛行で高層ビルの間を不安定に飛ぶ飛行機。「5:11」という時刻までのカウントダウン。この物語の中にいる間中、否が応でも心はずっとざわつき、ただただ嫌な予感しかしない感じられないのは確かです。



きっとこの世界で起こっている、そしてこれから起こるであろうあらゆる事件、悲劇、惨事などはどんなに恐ろしく悲しみに満ちたことであっても、結局は遠くから見たらまるでモニタのドット抜けの「黒い点」程度のものでしかなく、そんな中で怒りや憎しみを爆発させて右往左往しているちっぽけで陳腐な人間たちはバカみたいに無力なものなんだ・・・・って、うーん身も蓋もない言い方ですが、でもそんな風に思い切り突き放されたような印象をドカンと受けました。


私は人生において非常にたくさんの悲劇を経験しました。それが私の創作に反映しないわけがありません。(中略) もちろん楽しいことや楽観的な瞬間もありますが、最後の最後には、あまりいい結末にはならないものです。(中略) 我々は薄氷の上や奈落のふちを歩いているんです。あらゆる曲がり角には、不測の事態、想像を絶する事態が潜んでいます。確かなことなど何ひとつとしてなく、次の日、次の一時間、次の一分間でさえも不確かで、全く予期せぬかたちですべてが不意に終わってしまうかもしれないと思います。
Interview:『イレブン・ミニッツ』イエジー・スコリモフスキ(Jerzy Skolimowski)監督 【Z POLSKI】


※補足として
スコリモフスキ監督は、この映画製作以前にご自身の次男と元妻を亡くされていて、その頃とても陰鬱な考えに取り憑かれて暗い内容の夢ばかりを見るようになってしまったとのこと。そこからこの映画の"悪夢"が出来上がったのだそうです。
イエジー・スコリモフスキ『イレブン・ミニッツ』インタヴュー 【OUTSIDE IN TOKYO】


夢 [DVD]


そういえば、晩年の黒澤明監督が『夢』という映画を撮られましたが、これもかなりレベルの高い映像を魅惑的・幻想的に見せてくれたオムニバス形式の作品だったことを、上記インタビューを読んで思い出しました。

年をとると、その人の死生観みたいなものが強く投影されてくるのかなぁとも思いました。黒澤監督も画家を志していたというだけあってのかなりの腕前でしたので、絵コンテなんてそれだけでド迫力のアートでしたものね。絵心がある点でも、スコリモフスキ監督と似ているのかも・・・・



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「よい耳を持った映画作家」と評されるだけあって緊迫感を煽る挑戦的でインパクトのある音楽の使い方。メタファや予兆を散りばめ、技法や構図に囚われることのない自由で繊細で大胆な映像の数々。

元ジャズドラマーで、詩人で、画家で、映像作家の78歳。これも人生、とイエジー・スコリモフスキ監督に言われた気がします。



■この記事に関連する映画制作国、地域 : ポーランド映画 

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  2017/04/04 | Comment (0) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit