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『吸血鬼ノスフェラトゥ 恐怖の交響曲』 (1922/ドイツ)

   ↑  2011/10/06 (木)  カテゴリー: サスペンス、ミステリー



吸血鬼ノスフェラトゥ [IVCクラシックフィルムコレクション] <2004/9/24>


●原題:Nosferatu – Eine Symphonie des Grauens
●監督:F・W・ムルナウ
●出演:マックス・シュレック、アレクサンダー・グラナック、グスタフ・フォン・ワンゲンハイム、グレタ・シュレーダー 他
●ブレーメンで妻エレンと幸福な結婚生活を送っているフッターは、ある日トランシルヴァニアのオルロック伯爵という人物のもとへ館の売買契約を結ぶために派遣されることに。亡霊の地とも呼ばれるトランシルヴァニアへ行くフッターの身を案じるエレンだったが、彼は何も心配することはないと旅立ってしまう・・・。



字幕を追いながら、あるいは活弁士の声を聴きながら観る無声映画。"動く絵本"を読んでもらっているようなイメージがあるので贅沢なまでにワクワクと楽しく、久々でとても新鮮でした。もっとも、私が映画を観始めた初期の時代(中高生の頃)に観たフリッツ・ラング監督のドイツ映画『メトロポリス』の衝撃は、未だ忘れられるものではありません。

今回レビューを書く『吸血鬼ノスフェラトゥ』は、BS-NHKがドイツのムルナウ財団所有のオリジナル完全版を放映してくれました。屋外ロケによる大胆な構図と迫力が素晴らしいこの作品をハイビジョンのクリアな映像で観ることができて感動!受信料払っていて良かったなぁ。『吸血鬼ノスフェラトゥ』はドイツ表現主義作品として映画史上に君臨する名作といわれています。ドイツ表現主義の定義や解説については様々なサイトや書籍などで専門的な説明がなされていますので、ここでは割愛させていただきます(「ドイツ表現主義―映像」wikipedia)




この映画が制作された1922年というのは日本でいえば大正11年。翌年、日本では関東大震災が起こったという時代です。1920年代はサイレント映画全盛期というわけで、サスペンスフルなストーリーはもとよりロングショットの中を斜めに横切っていく役者の動きや、微生物を細部まで映し出す接写など、作品全体の構図が非常に洗練されています。役者の声やセリフ、効果音などに全く頼ることが出来ない無声映画だからこその「映像」による徹底されたテクニックなのでしょう。ムルナウ監督の美学を感じさせる、計算し尽されたカメラワークに圧倒されます。


例えば、映画の冒頭、まだ物語が始まる以前の段階で夫フッターから花束をプレゼントされた妻エレンが「きれいなお花なのに、どうして命を摘み取ってしまったの?」と悲しげな表情を見せる場面や、挨拶もそこそこに通りを急ぎ足でいくフッターに「そう慌てなさんな、お若いの。急いだところで運命は変わらんよ」と話しかける老人。二度目に観た時に気づいたのですが、まるでこれから起こる悲劇を暗示、連想させるようなやり取りを何気なく入れているんですね。構成力にも唸らされてしまいます。



また、迫りくる悪夢のような"恐怖描写"は「不気味」の一言では片づけられないような幻想的な印象すらありました。フッターよりも先にトランシルヴァニアを発った吸血鬼オルロック伯爵がヴィスボルクの街へと近づいていくにつれ徐々に行動に異常をきたすエレンの状態は、これ以降の吸血鬼の物語に漂うある種の官能的な雰囲気を感じさせるものがあります。

ゆっくりと近づいていくオルロック伯爵と恐怖に怯えるエレンとをカットバックで交互に映し出すゾッとするような映像は、人間が原始から持つ"恐怖心"というものををジリジリと煽るホラー映画の原点なのかもしれませんね。





オルロック伯爵が眠る棺を載せた帆船が海原を進んでいくという、何気なく挟まれるほんの20秒ほどのワンカット。これが現代の映画なら何ということのないシーンなのですが、この時代の作品にしてこういった"ド迫力"の映像が撮れること、表現できることの、優雅にしてエネルギッシュ、クールでいて力強い表現力の豊かさに恐れ入ってしまうばかりの93分です。

昨今流行している3D映画よりも、素晴らしい出来のサイレント映画の方がずっとずっとリアルな感じがするのは何故なのだろうと思いました。不思議です。

吸血鬼ノスフェラトゥ@映画生活





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  2011/10/06 | Comment (2) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit

Comment


こんにちは!

>昨今流行している3D映画よりも、素晴らしい出来のサイレント映画の方がずっとずっとリアルな感じがする

ホントそう思います。昔は”今あるもので、いかに見せるか”を考えに考えて作っていそうですが、今は色んな技術が溢れていて何でも出来るから、それ以上の事を考えなくなってしまったのかもしれません。
現在も、ハリウッド作品より、新興国の作品の方が力強かったりしますもんね~。

>迫りくる悪夢のような"恐怖描写"は「不気味」の一言では片づけられないような幻想的な印象すらありました。

この作品は今観ても強烈で、当時観た子供たちは大丈夫だったろうかと心配になってしまいました。子供の頃に初めて観た映画がこれだったりした日には、毎日悪夢にうなされてしまいますよね~。
こういう作品を取り上げてくれるから、BSプレミアム大好きです!(笑)

宵乃 |  2013/12/27 (金) 16:37 [ 編集 ] No.214


はなまるこより

宵乃さん、こんばんは!コメントありがとうございました♪

>昔は”今あるもので、いかに見せるか”を考えに考えて作っていそうですが、今は色んな技術が溢れていて何でも出来るから、それ以上の事を考えなくなってしまったのかもしれません。
あぁ!本当にその通りですね。時々目にする20年代、30年代の無声映画には本当にハッ!!とさせられるんです。一方、作り物とは思えないほど、まるで本物のように映像を作り上げることが可能になった現代では、映像が退屈に思えてくることが多くなってきましたよねぇ。

>この作品は今観ても強烈で、当時観た子供たちは大丈夫だったろうかと心配になってしまいました。子供の頃に初めて観た映画がこれだったりした日には、毎日悪夢にうなされてしまいますよね~。
うわー、これは考えたことなかったです(笑)!確かに"映画"というものを観慣れていない子どもが、当時もし観てしまったとしたら・・・・それこそトラウマものでしょうねi-282i-201

こういう作品を取り上げてくれるから、BSプレミアム大好きです!(笑)
ほんと、ほんとに同感です!!
私の映画生活というのは、もともとNHK-BSの映画番組に育てられたようなものですので( 衛星映画劇場とかミッドナイト映画劇場などi-237)、今もBSプレミアムには大変お世話になっておりますi-179おかげで「出されたものは食べる」的に映画を観るようになりました(笑)

宵乃さんへ★ |  2013/12/27 (金) 22:05 [ 編集 ] No.215

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