お散歩シネマ 映画の世界へ出かけよう!!映画の数だけ、もっと世界は面白くなる! 

レビューを書けないままの映画・・・(テオ・アンゲロプロス監督『エレニの旅』『シテール島への船出』)

   ↑  2011/09/12 (月)  カテゴリー: シリアス、社会派
私はいつも映画のレビューを書く際、作品の感想をなるべく思ったままに書こうと思っていますが、観たのだけれどもレビューを書いていない作品というのも幾つかあります。ま、大抵は「(良し悪しは別にして)自分の中に大きく残るものを感じられなかった・・・」と思うケースがほとんどなのですが・・・

ところが今年も後半戦に入って暫く経ちますが、何一つ言葉が見つからず半年以上何も言えないままでいる作品が二つ残っているのです。ギリシャ出身のテオ・アンゲロプロス監督作品です。どうしてもどうしても書いておきたい映画作品なのに、レビューを書くための言葉が見つからず、映画を観た感情の表現方法が全く見つからなかったのです。


テオ・アンゲロプロス監督インタビュー 毎日新聞8月
そんな矢先、アンゲロプロス監督のインタビュー記事を新聞で目にしました。

御年76歳になられるこの巨匠は、激動のギリシャにおいてすでに次回作に取り掛かっているというではないですか。あぁこんなところで立ち止まっている間に、私は監督にも時代にも取り残されていく~!と強く思いまして・・・思いついたのは「"レビューを書くことが出来ない"というレビューを残しておこう!」という方法でした。情けない話ですが、今の私にはこのくらいのコトでしか表現出来そうにありません。




今回はレビューが書けないなりに、アンゲロプロス監督の主なフィルモグラフィと監督の作風、それと映画感想メモだけをまとめておこうと思ます。

【テオ・アンゲロプロス映画祭】
※写真は【テオ・アンゲロプロス映画祭】サイトより

【現代史三部作】『1936年の日々』『旅芸人の記録』『狩人』
第二次世界大戦を挟んだギリシアの歴史を描いたもの。トルコからの侵略、ナチスの侵攻、イギリスの進出と圧政、そして大戦後の左右両派による内戦と右派軍事独裁体制、という複雑な歴史を描き、共産主義を一つの理想と捉えた"ユートピア思想"的なもの。

【国境三部作】『シテール島への船出』『こうのとり、たちずさんで』『ユリシーズの瞳』
世界的な共産主義の退潮と独裁体制の崩壊に伴い「20世紀最大の理想の一つである共産主義」に別れを告げ、「国境」に視点を移す。

【20世紀三部作】『エレニの旅』『第三の翼』(日本未公開)
20世紀を通して描く1本の長編『トリロジア』の上映時間が膨大になりすぎるため、3部作として製作されることとなったのが本三部作。第三部は『今日か明日』となる予定であり、「3つの大陸、7つの国(トスカーナ、ウズベキスタン、ベルリン、ニューヨークなど)にまたがる映画となる」とのこと(「エレニの旅」テオ・アンゲロプロス監督来日記者会見【FUN!FUN!MOVIE】より)

【作風】
長大な長回しが話題にされる。彼の真骨頂は、思想を如何にして映画表現として実現するかと挑戦し続けていることにある。彼の特徴的な、長回し、同一シークエンス(カット)内における時間の転移、人物のストップモーション的な利用、360度パン、クローズアップの不使用、などは、彼のその挑戦と大きく結びつく。

(中略)テーマ、表現手段(手法)共に峻厳である余り難解さや退屈さを指摘されることも少なくない。だが、映画に対する挑戦意識と到達した地点は、現存する中ではもっとも高い作家の一人である。

ギリシャでは、しばしば「子供が寝付かないで困るときはアンゲロプロスを見せろ」と言う。長回し、少ない台詞などに関して言われる冗談である。
wikipedia[テオ・アンゲロプロス]より一部抜粋


1970年代に制作された【現代史三部作】は未見なのですが、1980~90年代の【国境三部作】のうち『こうのとり、たちずさんで』だけは大好きなマルチェロ・マストロヤンニの出演作品を追っていて鑑賞したことがありました。民族紛争の絶えないバルカン半島における"国境"をテーマにした作品です。

そしてちょうどその頃、やはり同じバルカン半島のマケドニアを舞台とした『ビフォア・ザ・レイン』(1994/マケドニア、フランス、イギリス)という、戦争による悲劇をまるでメヴィウスの輪のように時空を超えたプロットで描いた作品を観て強い衝撃を受けたこともあり、学生なりに深く考えさせられた思い出の作品でもあります。

【VHS】キング・オブ・フィルム 巨匠たちの60秒 [KINGS OF FILMS]【字幕】■(1995) 未公開■


それからこれは私の宝物のような映画なのですが『キング・オブ・フィルム/巨匠たちの60秒』という作品にもアンゲロプロス監督は出演されています。その名の通り、泣く子も黙る映画界の巨匠たち40名による驚くべき夢の短編映画集なのですが、ここでも監督は独特の映像美で「オデュッセイア」の一文"奇妙な島に流れ着いたものだ"を52秒で描き込んでいます。

    ・
    ・
    ・
    ・
    ・
    ・

それでは以下に、今年鑑賞してまったく言葉にならなかった作品2つのメモを、未完成ながら正直にそのまま書き記しておこうと思います。




『エレニの旅』(2004年/フランス、ギリシャ、イタリア)





【Blu-ray】エレニの旅(Blu-ray Disc)/アレクサンドラ・アイディニ [KKBS-34] アレクサンドラ・アイデイニ


●原題:Τριλογία 1: Το Λιβάδι που δακρύζει/ TRILOGIA I: TO LIVADI POU DAKRYZEI
●出演:アレクサンドラ・アイディニ、ニコス・プルサディニス、ヴァシリス・コロヴォス、ヨルゴス・アルメニス、エヴァ・コタマニドゥ 他
●1919年から30年間のギリシャの歴史を、ヒロイン、エレニの人生に重ねた、巨匠テオ・アンゲロプロスの一大叙事詩。ロシア革命によってオデッサを追われたギリシャ人難民のなかに、孤児のエレニがいた。彼女は、引き取られた家の息子アレクシスと結ばれ、双子を出産。しかしアレクシスの父がエレニを妻にしようとし、エレニとアレクシスは過酷な運命に翻弄されていく・・・。


【20世紀三部作】の第一作目
構想2年、撮影2年、上映時間2時間50分。ギリシャ現代史を一枚の絵巻物に仕上げたような悲しく美しい映画。20世紀における一人の女性の運命と愛情の物語を、遥か遠い国の遠い歴史かと思いきや、徐々に第二次世界大戦、アメリカ軍の沖縄上陸、と確実に私の近くにも忍び寄ってくるのを感じる。

長回し1ショットの映像は動かぬ一枚の絵画のようでもあり、生活の一部を切り取ったかのようなリアルさもあり、本当に本当にため息の出るような素晴らしさだった。映像が、ただただ胸に染み入ってくるようだった。これが本当に「映画」なのか。戦争の歴史に翻弄されるエレニの健気な強さも、最後の絶叫には引き裂かれる思いがした。

≪これほどにも完璧に、あふれる情熱で、リアルで叙情的な映画をつくる作家はいない≫
【イタリア、スタンパ紙】


≪デジタルとコンピューターの時代にアンゲロプロスは映画の原型をうちだした≫
【ドイツ、ディー・ウェルト誌】


※イントロダクションやスト-リーの詳細・解説は「エレニの旅」日本公式サイト





『シテール島への船出』(1983年/ギリシャ、イタリア)



シテール島への船出(Blu-ray Disc)/アキス・カレグリス【RCP】


●原題:Ταξίδι στα Κύθηρα / TAXIDI STA KITHIRA / VOYAGE TO CYTHERA
●出演:ジュリオ・ブロージ、ヨルゴス・ネゾス、マノス・カトラキス、ドーラ・バラナキ 他
●『シテール島への船出』を準備している映画監督の身辺を「現実」と「映画中映画」の二重構造で描く。現代の都会。朝、映画監督のアレクサンドロスは撮影所に向かう。おりから、彼の作品の主役になる俳優のオーディションが行なわれているが、彼の気に入る者はいない。そんな矢先、ラヴェンダーの花を売る老人を見かけたアレクサンドロスは「この老人こそイメージに描く老俳優だ」と直感し、老人を追って地下鉄に乗り港へ行く。埠頭まで追ったところで彼は老人を見失ってしまう・・・。同じ場面のまま映画中映画になり、彼は妹と二人で、32年前にロシアに亡命した父の帰国を待っている・・・。





【国境三部作】の第一作目
言葉が見つからない。言葉を失う、とはこのことかもしれない。
「エゴイメ(私だ)」というセリフが繰り返される中で、現実が徐々にシンクロするように劇中劇と交錯するシーンに眩暈のような感覚を覚えた。芸術的な美しさに圧倒されているというのも勿論あるのだけれど、かつて家族を捨ててまでソ連へと亡命した父を迎える家族の姿。皆年老いて、希望もなく、何もない世界に取り残されたような孤独を抱きながらも、再会した妻が寄り添う想いは・・・。

ただ静かに、静かに進む物語のラストシーンの美しさは、幻想的であり、切なさ、遣り切れなさが残る。このシーンだけあれば他に何もいらないと思えるほど、これほど心に焼き付く映画のワンシーンを私は観たことがないかもしれない。


関連記事

■この記事に関連する映画制作国、地域 : ギリシャ映画 フランス映画 イタリア映画 

FC2共有テーマ : 心に残る映画 (ジャンル : 映画

  2011/09/12 | Comment (2) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit

Comment


アンゲロプロス監督の作品は本当になんと言ったらいいのかわかりませんよね。正直、ちょっと難しすぎて敬遠ぎみです。
ただ、彼が描く情緒ある美しい風景は大好きです。
こんな風景をいつか描いてみたい!!

もう理解する事は放棄してしまったわたしなんですが(笑)、はなまるこさんの「"レビューを書くことが出来ない"というレビューを残しておこう!」というこの作品への強い想いに感動しました。
この先の人生、たくさんの映画を観て、この作品も繰り返し観て、いつか自分の気持ちをすらすら書ける日が来るといいですね♪

あと、ここ
>ギリシャでは、しばしば「子供が寝付かないで困るときはアンゲロプロスを見せろ」と言う。

さすが名匠です(笑)

宵乃 |  2013/10/01 (火) 11:48 [ 編集 ] No.179


はなまるこより

宵乃さん、こんばんは!コメントをありがとうございます^^

あぁ~宵乃さん、私もなんです。そうなんです、アンゲロプロス監督作品を"理解"なんてできないんだー!と分かってしまいましたi-202それだけでも進歩なんですが・・・i-241

私は世界史を学校で勉強する機会が極端になかったので(引っ越しのためカリキュラムがズレてしまって)、バルカン半島、ギリシャ、ソ連など紛争が絶えなかった地域の歴史を少しずつ映画からも吸収していきましたが、生身の人間が発する歴史の哀しみや重みは、まったくをもって"言葉"にはできないものなのだなぁと思いました。情けない話ですがi-201

>この先の人生、たくさんの映画を観て、この作品も繰り返し観て、いつか自分の気持ちをすらすら書ける日が来るといいですね♪
うわぁそうですね、いつか自分の言葉で、これらの作品のことや "映画"という概念を吹き飛ばしてくれたアンゲロプロス監督への想いが書けたらどんなにいいだろう!!と思います。そして、そのアンゲロプロス作品を絵に描くなんて遠い世界のことにように思える私にとって、宵乃さんのように絵を描く方なんて、これはもう"芸術家"以外のナニモノでもないです!!これからも、たくさんの映画に出会っていきたいですねi-179

そう、それと眠れない時は、アンゲロプロス監督作品に限りますね(笑)!

宵乃さんへ★ |  2013/10/01 (火) 22:32 [ 編集 ] No.180

コメントを投稿する 記事: レビューを書けないままの映画・・・(テオ・アンゲロプロス監督『エレニの旅』『シテール島への船出』)


  任意 : 後から修正や削除ができます。
  非公開コメントとして投稿する。(管理人にのみ公開)
 

Trackback