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『海の上のピアニスト』 (1999/イタリア、アメリカ) ジュゼッペ・トルナトーレ監督についてあれこれ①

   ↑  2011/09/23 (金)  カテゴリー: ロマンス、ドラマ






【DVD】海の上のピアニストティム・ロス [10003-30721]


●原題:THE LEGEND OF 1900 / La leggenda del pianista sull'oceano
●監督:ジュゼッペ・トルナトーレ
●出演:ティム・ロス、プルイット・テイラー・ヴィンス、メラニー・ティエリー、クラレンス・ウィリアムズ三世、ビル・ナン 他
●第二次世界大戦の終戦直後。マックス・トゥーニーは愛用のトランペットを金に換えるために楽器屋を訪れた。彼はトランペットを売った後になって、店主にもう一度だけトランペットを吹かせて欲しいと頼む。彼の演奏を聴いた店主は、同じ曲がピアノで刻まれたレコードを持ち出し、曲と演奏者の名前を尋ねた。すると彼は、「1900 (ナインティーン・ハンドレッド)」と呼ばれた男の物語を語り始めるのだった・・・。



・・・実は、私はずっとジュゼッペ・トルナトーレ監督が苦手でした。

『ニュー・シネマ・パラダイス』の登場により、それまで低迷気味だったイタリア映画界に再び輝きを取り戻したイタリア屈指の名監督という高評価があることは、勿論納得できることです。あの映画で涙を流した人、大好きな映画として心に残っている人は多いでしょう。しかし、世界を感動で包んだと言われる名作『ニュー・シネマ・パラダイス』でなぜかそこまで心動かされなかった自分の感覚に違和感を覚えたのがそもそもの始まりで、続いて『みんな元気』『マレーナ』『題名のない子守唄』まで観て、私の勝手な苦手意識が"決定打"となってしまったのです。どこかが、何かが合わない・・・と。自分の感覚にずっと自信がなく、鑑賞を避けてきた映画監督さんだったのです。

ところが、私が全幅の信頼を寄せているブロガーさんが『海の上のピアニスト』のレビューを書かれていたじゃないですか。うーん、これはもう一度"自分の映画に対する感度"を確かめるチャンスかもしれない!と突然思った私は、ずんがずんが歩いて200歩しかない近所のレンタル店(近すぎる!)で早速借りてきました。このことが、まさかのジュゼッペ・トルナトーレ監督を追う長い旅になろうとは・・・(笑)





率直にズバリ言えば、私個人にとってこの映画は、特に何か大きく感情を揺さぶられるような作品ではありませんでした・・・スミマセン。本当に私はズレているんだろうな。それどころか、それまでドーンと私の中に大きくあった"苦手意識"のようなものすら感じませんでした。・・・逆に、トルナトーレ監督作品の中で一番"らしくない"作品だなぁとも感じました。いつにも増して(目を閉じていても理解できそうなくらい)モリコーネ節が威勢よく雄弁に物語っている気もしました。

トルナトーレ監督の作品が「ハリウッドで通用する」ということは、ボーダーレスで偏りのない映画作りが出来ているということなのでしょう。誰にとっても見やすく巧い映画作家だという点はよく解りました。主人公1900の出生秘話をポンポンとリズムよく寓話的に描く点など、とても面白いですよね。大袈裟だとも思うけれど、映像も相変わらず美しいです。



トルナトーレ監督にとっては「初の英語映画」ということでした。
アメリカでの批評は概ね好評でしたが「最高に美しい映画」と言われる一方「感傷が鼻にツク大袈裟な映画」という批評家のレビューもちらほら目にしました。【寓話】と【リアリティ】のバランスがうまく取れていないせいかもしれない、だから観る人によって感じ方が真っ二つに分かれてしまうのかもしれない、と私は感じました。

もしこの物語が完全に寓話に徹して、たとえばヴァージニア・ウルフ原作でティルダ・スウィントン主演の『オルランド』のように数世紀にも渡って生き続ける伝説の人が主人公だったとしたら・・・モリコーネの音楽、トルナトーレ監督の映像と相まって最高に美しいお話になったかもしれません。逆に「伝説」を信じたくなるようなリアリティに徹したのであれば、もっと1900の人物像をしっかり描きこむ必要があったかもしれません。いずれにしても、この作品はそれが中途半端なように思えました。

それとこれは個人的な話なのですが、私はティム・ロスという俳優さんが苦手なのです。
そのせいでこの物語に入り込めなかったという言い訳もあります。顔がいつも同じ"演技"をしているように見えるんです。それでちっとも感情移入ができないので、女性用船室に潜り込むシーンなどは気味悪ささえ感じました。ファンの方本当にスミマセン!(1900の生い立ちや性格、女性への初恋やその想いなど理解してあげられる描写ではありますが、でもちょっとあれだけは本当に勘弁してほしかった・・・笑)

だた、「俳優が苦手だから」という子供じみた理由でこの映画が好きじゃないのよね、という単純な話ではない気が自分の中で直観的にしたのです。もしこれだけの理由なら「好きじゃなかったですオシマイ」と言えるはずなのに、どうしてもトルナトーレ監督の作風が、私が昔から気になっている理由がどこかに隠れている気がしたのです。




私はしばらく考えていました。

以前からトルナトーレ監督が苦手だったこと、この映画が引っ掛かること、それはどうも出演俳優や物語のせいでもなさそうなこと。そうなってくると、やはり最後に残るのは「ジュゼッペ・トルナトーレ監督の性質」にかかってくるのだろうということ。

トルナトーレ監督は「イタリア人」と言われますが、それは大雑把なカテゴリーであり、やはり彼は出身地「シチリア」の血を濃く感じさせる何かがあります。一般的に言われる「明るい太陽」「人生を愛する陽気な人々」といった"陽"のイタリアのイメージは所謂「ナポリ人」の気質から来ているものですが、トルナトーレ監督の場合はその明るい太陽の中に潜む部分・・・侵略や破壊、異民族による支配など、まるでシチリアが辿ってきた残酷な運命のようなもの。イタリア映画の"暗部"に通じるところ。恐怖、挫折、憎しみや暗く深い死生観など、彼の映画に接すると私はそんな"暗さ"がいつも気になるのです。


1986:『“教授”と呼ばれた男』<未> (監督/脚本) 
1989:『ニュー・シネマ・パラダイス/3時間完全オリジナル版』(監督/脚本)  
1989:『ニュー・シネマ・パラダイス』 (監督/脚本)  
1990:『みんな元気』 (監督/脚本)  
1991:『夜ごとの夢/イタリア幻想譚』 (監督)
1994:『記憶の扉』 (監督/脚本)  
1995:『明日を夢見て』 (監督/脚本)  
1999:『海の上のピアニスト』 (監督/脚本)  
2000:『マレーナ』 (監督/脚本)  
2000:『トルナトーレのシシリアで見た夢』<未> (出演)  
2006:『マルチェロ・マストロヤンニ 甘い追憶』 (出演)  
2006:『題名のない子守唄』 (2006) (監督/脚本)  
2009:『シチリア!シチリア!』 (監督/脚本)  






【中古】【DVD】【レンタル版】教授と呼ばれた男


それは、彼のフィルモグラフィを眺めていて気が付いたことでした。
彼は『ニュー・シネマ~』以前に初の長編映画デビュー作として、ナポリとその近郊を支配したマフィア、カモッラの首領の話である『教授と呼ばれた男(IL CAMORRISTA)』を撮っていたんですね。それで私は急いでレンタルしてきて確認したのですが・・・・観ていて本当に辛くなるほどの暴力の連鎖を描いた物語であり(これが実話に基づいているというから怖いのです)、そして凄惨なまでの描写でリンチや拷問、容赦のない痛々しいまでの復讐劇が繰り広げられるこのバイオレンス映画こそが、トルナトーレ監督の原点ではないのかと思ったのです。

誤解を恐れずに言えば、「あの『ニュー・シネマ~』を撮った人が『題名のない子守唄』のような映画を撮るなんて・・・」という、まるでトルナトーレ監督がヒューマンドラマの名手のように言われていること自体にずっと違和感を覚えてきた自分の感覚に、このことが真っ直ぐ繋がったのです。むしろ、その逆ではないのかと。彼の持つ、どこか攻撃的な部分はどこからきているのだろう、そう思いました。


ニュー・シネマ・パラダイス 完全オリジナル版 [ フィリップ・ノワレ ]


明日を夢見て [ セルジオ・カステリット ]


『ニュー・シネマ・パラダイス』同様【シチリア&映画への熱い思い】という「2点セット」を描いたという『明日を夢見て』は、レンタル店でも見つからず残念ながら未見状態なのですが、彼の映画製作において繰り返し現れるシチリアという舞台、そしてそれに込められるシチリア人たちへ想いは、彼がどれだけかの土地を愛しているのか(「愛」という言葉で足りるのかわかりませんが)、そのDNAによって強く深く刻み込まれたシチリアの血でトルナトーレ監督作品が隅々まで満たされていることには明らかなのでしょう。

彼の映画を読み解くヒントは、やはり「シチリア」でした。

そこで私は、2009年の『シチリア!シチリア!』でジュゼッペ・トルナトーレ監督が一体何を描いていたのか強烈に知りたくなりました

そこでまた私はずんがずんが200歩かけてレンタルしてきたわけですが・・・うーん、ここでなんと私はトルナトーレ監督の"変化"を感じ、生まれて初めて彼の作品にピピッとアンテナが動いてしまったのです。151分という長編、評価は祖国イタリアでも真っ二つ。それでも私は3回観て、全力で『シチリア!シチリア!』を擁護したい気持ちでいっぱいになりました。

というわけで、また長くなりそうですのでこの続きは『シチリア!シチリア!』 (2009/イタリア、フランス) ジュゼッペ・トルナトーレ監督についてあれこれ②で。

海の上のピアニスト@ぴあ映画生活




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