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『愛と哀しみの旅路』 (1999/アメリカ)

   ↑  2011/08/15 (月)  カテゴリー: シリアス、社会派








【DVD】愛と哀しみの旅路 [ デニス・クエイド ]


●原題:COME SEE THE PARADISE
●監督:アラン・パーカー
●出演:デニス・クエイド、タムリン・トミタ、サブ・シモノー、シズコ・ホシ、スタン・エギ、ロナルド・ヤマモト 他
●第2次大戦下の在米日系人隔離政策を背景に、日系ニ世の女性とアメリカ人青年の愛のゆくえを実話を基に描ドラマ。1936年、ロサンゼルスで日本人向け映画館を営む日系一世、ヒロシ・カワムラの娘リリーは、映画館で働く元労働活動家のジャック・マクガーンと恋に落ち、両親の猛反対にもかかわらず、移民と米国市民の結婚を禁じた当時のカリフォルニア州法を避けるためシアトルに駆け落ちしてまで式を挙げたのだったが・・・。




私の曽祖父母たちは20世紀初頭にアメリカに移民として渡り、その後二世として生まれた祖母らとともに、真珠湾攻撃開始後から始まった日系アメリカ人強制収容を経験しました。一方で日本に残っていた親戚たちは、アメリカ軍によるヒロシマへの原子爆弾投下による被害を受けました。二つの国が引き起こした戦争は、私のほんの数世代前の家族間を切り裂き、命をも奪っていきました。

それでも、日本や日本語を愛し、大切にしていた祖父母らの口からは、戦争によって受けた悲しみや憎しみの言葉を私は聞いたことがありませんでした。強く照りつける太陽やオレンジのこと、日本語が出来ずに泣いた話などを朗らかに話してくれていた祖母は、私に負の感情の連鎖を負わせずにいてくれたのだと思います。






『愛と哀しみの旅路』は、タムリン・トミタ演じる日系二世のリリーとデニス・クエイド演じる米国人青年ジャックの愛の行方を中心に物語は進んでいきますが、特にリリーの家族に起こる強制収容された日系人たちの苦しみを凝縮したかのような悲劇は、戦争から引き起こされた差別とはいえあまりに酷いものです。

同じ日本という国にルーツを持つ者どうしの間で(この映画の中では家族間で)引き裂かれる悲しみが、ほんの2,3世代前にあったことなのかと思うと遣り切れない思いです。


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この映画の原題「Come See the Paradise」は、ロシアの詩人Anna Akhmatovaのある一節からきているといいます。イギリス人でこの作品の脚本も手掛けたアラン・パーカー監督は、自身でこの映画への詩を書いています。

We all dream our American dreams
When we're awake and when we sleep
So much hope that grief belies
Far beyond the lies and sighs
Because dreams are free
And so are we
Come See the Paradise

 ※Come See the Paradise 【Wikipedia】より引用

この詩を初めて読んだとき、ふと思うことがありました。

私はこれまで、この映画は日系アメリカ人に起こったことのみを描いた作品だとずっと思っていたのですが、それは強調されている一面でしかないのかもしれません。

1920年に実際に起こったイタリア系移民への不当な裁判を描いた『死刑台のメロディ』という映画もありましたが、実は『愛と哀しみの旅路』という作品は「アメリカ」を描いた物語でもあり、アメリカ人への問いを投げかけている作品なのかもしれない、と今回改めて観た時に感じたのです。

デニス・クエイド演じるジャックはアイルランドからの移民であり、当時の米国における彼の左翼的な政治思想、立場は微妙なものでした。この映画に出てくる人々は皆「アメリカ人」ですが、何らかの理由によって迫害、差別、攻撃を受けるのです。それは人種だったり、政治的理念であったり、思想であったり・・・自由・平等の国アメリカで、細切れにされていくのです。人々は、防衛本能から簡単に排他的傾向に走るのかもしれません。

皆、"パラダイス"に行き着こうと夢見ている同じ人間であるのに。







『愛と哀しみの旅路』は、"アメリカ史において米国市民権最悪の剥奪違反"をおこなった日系人強制収容の事実を、イギリス人であるパーカー監督は、恐らく外国人の目から誠実に描いています。

アメリカ側から見れば、パールハーバーの陰に隠れるシリアスな題材なだけになかなか大きな評価を得ていない作品かもしれません。しかし、日米両国に起こった戦時下の情熱的なロマンスを題材に、人間の尊厳や家族の絆など丁寧かつドラマチックに描いた力作だと思います。日本ではDVD化されておらず(VHSのみ)、大変残念です(→※注)

上の動画はほんの30秒の作品紹介ですが、映像から生み出されるその力強い思いは十分伝わってくるものだと思います。

あらゆる戦争、紛争において命を落とす人々、家族を失う悲しみを背負う人々がこれ以上増えることがありませんように。私に書くことのできる終戦記念日の映画レビューとして、ここに残そうと思います。



(※注):このレビュー後、20世紀フォックスホームエンターテイメントジャパンより2012年5月11日にDVDが発売されました!!



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