お散歩シネマ 映画の世界へ出かけよう!!映画の数だけ、もっと世界は面白くなる! 

『やわらかい手』 (2007年/ベルギー、ルクセンブルク、イギリス、ドイツ、フランス)

   ↑  2011/06/11 (土)  カテゴリー: ロマンス、ドラマ


【送料無料】やわらかい手 スペシャル・エディション/マリアンヌ・フェイスフル[DVD]


●原題:IRINA PALM
●監督:サム・ガルバルスキ
●出演:マリアンヌ・フェイスフル、ミキ・マノイロヴィッチ、ケヴィン・ビショップ、シヴォーン・ヒューレット、ドルカ・グリルシュ、ジェニー・アガター、コーリー・バーク 他
●ロンドン郊外で平凡な人生を送ってきた主婦マギーは、最愛の孫の手術費用の工面に奔走していた。ローンも借りられず、仕事も見つからない。絶望の中ふらふらと迷い込んだのは歓楽街のソーホー地区。偶然目にした「接客係募集・高給」の貼り紙に思わず飛びついて面接に行ったものの、なんとそこは性風俗店だった。驚きあわてて逃げ出すマギー。だが、残された道はない。覚悟を決めたマギーは「手」を使う仕事を始めることになるのだが・・・。



手というのは、その人自身をよく表すものかもしれません。
ゴツゴツとした働き者の手、手指に構っていられなくてパサパサした味気ない手、仕事で使う薬品にまけてしまった手、料理や水仕事を避けた生活をしている手、美容や化粧品は気にかけても年齢は誤魔化せない手。


映画の冒頭でマギーの息子やそのお嫁さんと上手くいっていない様子がアリアリと伝わってくるものの、それを耐えて難病に苦しむ孫のために懸命に尽くす姿などはまるで一昔前の日本女性のようでもあり、そんな彼女の生き方に切ない思いがしました。だからこそ、夫を亡くした後も慎ましく暮らしてきたマギーが「やわらかい手」をしていたのは、きっと彼女が自分自身にも周囲の人にも、丁寧に丁寧に生きてきたからなんだろうなぁ・・・。

セクシュアリティから最も遠い存在のような"おばあちゃん"の手が「ゴッドハンド」に変身して、性風俗店のナンバー1の売れっ子になってしまう・・・・こんなプロットだけを見ると、一歩間違えればどぎついブラックジョークか滑稽な(あるいは悲愴な)話になりそうなものですが、それが一人の女性の「心の旅」を映し出す、しっとりと優しく温かなヒューマンドラマに仕上がっているところが何とも言えず味わい深いのです。


「仕事場」に、家から持ってきた小さな額縁の絵を飾って少しでも和んでみたり、お弁当と水筒を持ってくる堅実なマギー。泣かせるやら笑っていいのやら・・・懸命に「仕事」をこなす彼女の誠実な人となりに惹かれるところでもあります。



そして、息子夫婦や孫に対する献身的、自己犠牲的ともいえる決死の思いで始めたマギーのこの「仕事」は、だんだんと彼女の「手」の人気が高まるに連れて彼女自身にも少しずつ新たな変化をもたらし始めるのです。


ひとつは、この店の店長ミキとの淡い心の通い合い。
ミキは東欧からの移民でもあり、忍び寄る老いや孤独の影を持つ二人は次第に距離を縮めていきます。はじめは孫息子の手術資金を工面ができたら仕事をやめる約束でしたが、ゆっくりと、ゆっくりとしたマギーの歩調のように、仕事の内容とは対照的に互いを思いやるようなプラトニックな(・・・まぁ"お試し"はあるんですが 笑)関係へと・・・。この映画の内容にして、ハートフルなラブロマンスとは・・・素敵です!

そして、もう一つは周囲の不躾な詮索にめげることのないマギーの姿勢。
噂もすぐ広まるような小さなコミュニティで、自分たちの価値観と合わない人間を徹底的に攻撃して排除しようとする女性たちを相手に、堂々と振舞うラストの彼女の姿には胸のすく思いがします。あらゆることを内に秘め、じっと耐えて生きてきたマギーが切る啖呵は、何よりも真実味がある強烈なパンチなのですから。そして、この開き直ったオンナの強さは、息子のお嫁さんにもきちんと通じるもの。つまり、この映画で最も甲斐性がなくて情けないマギーの息子が、一番悲惨な思いをするのです。良い映画だなぁ(笑)。まぁ、男の人にとってはやはり"衝撃の体験"ですもんね。




で、おばあちゃん、おばあちゃんと書いてしまいましたが、おばあちゃんだって若い頃はこんなに美しかったわけで。ミック・ジャガーの恋人として世の男性たちを魅了し、アラン・ドロンの『あの胸にもういちど』では儚げでセクシーなバイカーを演じて人々の目を釘付けにし、ヤク中・アル中・自殺未遂と波乱万丈の人生を送ったおばあちゃんは、あのマリアンヌ・フェイスフルだったわけで。

この映画が、どこか心の深いところにある女性の繊細な思いを映し出すことに成功しているのならば、それはきっと、彼女がこれまで背負ってきた人生の重みや痛み、或いは失ったものまでもを表現してくれているからかもしれません。マリアンヌ・フェイスフルだったからこそ完結できた映画なのかもしれません。すごいことですね。

やわらかい手@映画生活



関連記事

■この記事に関連する映画制作国、地域 : ベルギー映画 

FC2共有テーマ : ヨーロッパ映画 (ジャンル : 映画

  2011/06/11 | Comment (1) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit

Comment


管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

 |  2011/06/12 (日) 15:05 No.82

コメントを投稿する 記事: 『やわらかい手』 (2007年/ベルギー、ルクセンブルク、イギリス、ドイツ、フランス)


  任意 : 後から修正や削除ができます。
  非公開コメントとして投稿する。(管理人にのみ公開)
 

Trackback