お散歩シネマ 映画の世界へ出かけよう!!映画の数だけ、もっと世界は面白くなる! 

『大逆転』 (1983/アメリカ)

   ↑  2011/05/28 (土)  カテゴリー: コメディ




ハッピー・ザ・ベスト!::大逆転 [ ダン・エイクロイド ]


●原題:TRADING PLACES
●監督:ジョン・ランディス
●出演:ダン・エイクロイド、エディ・マーフィ、デンホルム・エリオット、ジェイミー・リー・カーティス、ラルフ・ベラミー、ドン・アメチー 他
●大金持ちの老紳士兄弟が、人格形成に重要なのは「環境か?素養か?」の賭けをする。その犠牲になったのがハーバード大学出身のエリート、ウィンソープと貧しい黒人バレンタイン。フィラデルフィアの商品仲介会社を舞台に2人の立場が入れかわる痛快コメディ。





この映画が公開された1980年代前半――米国は、レーガン政権のもと「強いアメリカ」としての経済政策(レーガノミクス)を打ち出して推し進めていった、自信に満ち溢れた時代だったと言われます。

詳しく分析したわけではないのですが、この【80年代ハリウッド映画】というのは比較的安定・成長した時代でもあったためか、数多くの娯楽作品が生まれた楽しい時期であったように思います。そして、(一部の特例を除いて)それまで麻薬密売人などの"悪脇役"が多かったアフリカ系アメリカ人の俳優たちがいよいよスクリーンの中心へと躍り出て、映画界においても"市民権"を獲得していった!という過渡期だったのでは・・・と思うのです。

アメリカでは、1960年代から【アファーマティブ・アクション(積極的差別是正措置)が置かれ、映画界でもアフリカ系やヒスパニック、アジア系など"マイノリティ"と言われる人たちを配役するような働きかけはありましたが、黒人でも映画で主役が張れるか?となるとそれは別の話でした。1970年代に流行した【ブラックスプロイテーション・フィルム(黒人客だけをターゲットにした映画)を除けば、ハリウッド映画のようにメジャーな世界では観客は白人層が多く占めていたからなんですね。

ですから、アフリカ系の俳優を主演に据えて収益が見込めるようになった時代―1980年代というのは、経済成長によって比較的人々に余裕が生まれた影響も大きかったのではないかな、と思うのです。


line.png


そして、この華やかなるアフリカ系米国人の牽引役こそ、この映画の主人公の一人、エディ・マーフィーでした(女性であれば、ウーピー・ゴールドバーグかな?)。

TV番組「サタデー・ナイト・ライブ」で大人気だったエディは、『48時間』(1982)でニック・ノルティと、今回の『大逆転』(1983)ではダン・エイクロイドとコンビを組み、そして『ビバリーヒルズ・コップ』(1984)で、遂に初の単独主演を果たしました。

その後も『星の王子ニューヨークへ行く』や『ビバリー~』などの人気シリーズでボックス・オフィスも賑わせるなど、ハリウッドの人気俳優としての座を不動のものとし、本人にとってもアフリカ系アメリカ人にとっても、本当に大大大躍進の時代となったのです。






『大逆転』は、私がまだ学生の頃にテレビ放映されていたのをビデオに録って、なんとなく繰り返し観ていた作品でもありました。文無しホームレスのバレンタインことエディと、アッパークラスで何一つ不自由のないダン・エイクロイドが大富豪の老人たちのツマラナイ遊び心から立場を入れ替えられ、最後には二人力を合わせて老人たちに逆襲する!という話が、単純にわはははと面白かったんですよねー。

加えて、先物取引を題材にしたコメディというちょっと風変わりな設定が、NY市場米経済の仕組みを理解するのに丁度いい映画だったんです。劇中、バレンタインが説明する「クリスマスの日の豚肉の売り・買い」の話は、私、何か経済のテストの時に丸々書いた覚えがあるほどで、本当に役に立ちました(笑)。

白人社会を小馬鹿にして、紙と数字で右往左往する人々を笑い飛ばしてはいるものの、「富=幸福」の枠組みから外れることのない躊躇いのなさは、当時のアメリカの揺るぎないパワーとダイナミックな世界観を感じさせるものでもあります。


line.png



ただ今回、本当に久しぶりに観直してみたら、「この後にはマーティン・ローレンスやウィル・スミスが出てきたんだよなぁ~」とか、当時は何も思わなかったのですが「微妙に人種問題をくすぐっている"時代感覚"が見え隠れするなぁ」とか、「場立ちのトレーダーたちがワァ~!!と紙吹雪を撒き散らす米国商品先物市場のド迫力を久々に見たなぁ」とか。直接映画には関係のないことばかりが頭に多く浮かんできました。

なんとなくですが、自分の中で見えるものが違ってきたように感じられて、これもまた面白い体験だなぁと思い、この映画のことを書き残しておくことにしました。





  
 『セイ・エニシング』(1989/アメリカ)
そうそう、この映画を観ていて、1989年のキャメロン・クロウ監督の『セイ・エニシング』をふと思い出しました。キック・ボクシングに打ち込む高校を卒業したばかりのロイド(ジョン・キューザック)が、ガールフレンドの父親に将来のことを聞かれて、こんな風に答えるシーンがありました。

「売ったり買ったり、商品化はしません。商品化されたり、買ったものも売らず、買ったり、売られたものの商品化もしません」
"I don't want to sell anything, buy anything, or process anything as a career.I don't want to sell anything bought or processed, or buy anything sold or processed, or process anything sold, bought, or processed, or repair anything sold, bought, or processed."



華やかだった80年代も後半に入り、いつしかアメリカはレーガノミクスによって史上最大の債務国に転落、ニューヨーク株式市場は【ブラック・マンデー】を迎え、生産業を軽視した市場原理重視の政策は人々の生活にも少しずつ暗い影を落としていくことになります。


 『Rain レイン』(2003/アメリカ)   『ザ・ファイター』(2010/アメリカ)

産業都市としての発展から外れ、衰退していくクリーブランドの街並みを映し出した『Rain レイン』(2003/アメリカ)や、失業者があふれた町で荒んだ魂を再生させていくボクサーを描いた『ザ・ファイター』(2010/アメリカ)などの映画も思い浮かんできます。

変化していく時代の空気感が各年代の作品からも見て取れるようで、こうして比較しながら観てみると、アメリカ映画もなかなか興味深いものですね。




関連記事

■この記事に関連する映画制作国、地域 : アメリカ映画 

FC2共有テーマ : アメリカ映画 (ジャンル : 映画

  2011/05/28 | Comment (0) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit

Comment

コメントを投稿する 記事: 『大逆転』 (1983/アメリカ)


  任意 : 後から修正や削除ができます。
  非公開コメントとして投稿する。(管理人にのみ公開)
 

Trackback