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『トト・ザ・ヒーロー』 (1991/ベルギー、フランス、ドイツ)

   ↑  2011/04/24 (日)  カテゴリー: ロマンス、ドラマ





【DVD】トト・ザ・ヒーローミシェル・ブーケ [ACBF-90855]


●原題:TOTO LE HEROS
●監督:ジャコ・ヴァン・ドルマル
●出演:ミシェル・ブーケ、トマ・ゴデ、クラウス・シンドラー、サンドリーヌ・ブランク、ミレーユ・ペリエ 他
●ベルギー出身の新人J・V・ドルマルが、1991年カンヌ映画祭でカメラドールを受賞し、センセーショナルなデビューを飾った初監督作品。とある老人ホームの一室。トマ老人は自分の生涯をふり返りながら“復讐“を決意する。少年時代、大好きだったパパと愛する姉アリスの悲しい死。青年時代、アリスの面影を漂わせた人妻エヴリーヌとの悲しい恋。“それもこれもみんな隣家の息子アルフレッドのせいだ“。そう思い続けて生きてきたトマ。そして彼はピストルを手に、アルフレッドの家へと向かうのだった・・・。



日本ではDVD化されていないので以前からなんとなく探していた一本なのですが、某大手レンタルショップでやっと見つけましたよ、VHSテープ。聞いてみるもんですね。
■2012年11月16日追記■
(※2012年10月26日よりDVDが発売されました。この復刻にて2012年12月7日からはTSUTAYA店頭の発掘良品コーナーにも並ぶそうです)

※以下ラストに触れています。ラストが冒頭にくる映画構成ですが、未見の方、これから鑑賞予定で詳細を好まれない方は、閲覧をお控えいただくことをおすすめします。




いろいろ映画を観続けていると、自分が感じた思いと世間との評判とがあまりに異なる時があって、ほとんどの場合「おぉ、そういう見方があったのか!」と感動したり自分の見聞の狭さを嘆いたりするものですが、今回ばかりはちょっと落ち込みました。というのも、どのレビューサイトを見て回っても「感動した」「泣いた」「こんな優しい映画はない」という絶賛の嵐だったのです。が、(・・・ここで正直に書きますが) 私はそんな甘い感情を露とも感じることが出来なかったのです。


勿論それは、この映画を大切に思っている人や、その気持ちを否定するものなんかじゃありません。私はただ、現状を否定し続け、人を羨み、妬み、憎み続けることを生きる糧にしてきた主人公トマに、どうしても心を寄せることが出来ず辛かったのです。そして、そういった彼の根幹を覆すほどの「人生の決着」を「死で完結させる」という出来事は、私にとっては冗談じゃない!という遣り切れない思いでいっぱいにさせるものでした。

それでふと思ったんですよね。

そういう「弱さ」・・・すべてを受け止められるような「優しさ」こそが、私には欠けているのではないのか、と。強さや理想論ばかりを追いかけられない人間もいることを感受できないほど、私は心根が曲がっていて、どこかで人を突っぱねているのかもしれないなぁ、あぁみんな優しいのだなぁ・・・と。まぁ、映画の登場人物に対してそうムキになることもないかな、とか。とにかく、この映画の素晴らしさというものを私が掬い取りきれなかったのは、本心から言っても残念でした。たぶん、見るべき点がきっとズレてしまったのだと思います(映画にしても現実世界にしてもそうですが、何が幸か不幸かは他人が決めることではないですしね)。

この映画で際立っているのは、女たちの方が余程強いということ。
姉のアリスは、トマへの愛の証に火を放つ。母親は、食べるために肉の血を流す。アリスの面影を残すエヴリーヌは、トマに会えずにいた後も再婚して立派に年老いている。同情すらもかなぐり捨てて言ってしまえば、自分勝手に積み上げてきた「都合」で死ぬことは決着ではないと思っているし、それが美しいとも思わない。トマの行為がもし「誰かのために死ぬ」ということを指しているのなら、死ぬ前にやるべきこと、伝えるべきことが沢山あったはずだと思ってしまうんです。たとえ、トマがアルフレッドになり替わることを切望していたのだとしても。・・・厳しい見方なんだろうな。


家族が幸せだった時代。アリスとの甘い記憶。エヴリーヌと愛し合った思い出。大切に抱いて歩いていけるチャンスは余りあるほどあったはずなのに。

私はトマに生きてほしかった。アルフレッドと語り合ってほしかった。そうすれば、もっと高く飛べたはずなのに。愛する人、愛してくれた人たちにもっと近づけたはずなのに。光が降り注ぐ美しい花々の上を憧れの飛行機で駆け抜けることは、「死」で可能になるわけじゃない。

・・・ただ一方では、そういう生き方を望んだんじゃない、そういう理想論だけじゃないとは頭ではわかってはいるつもりなのだけれど。だけれど、それでもやはり、目の前にあったはずの沢山の愛をトマに見せてあげたかったなと思う。でもそれはきっと、苦難との格闘の上、終焉の幕下で安堵の思いに横たわる人を叩き起こすような行為なんだろうな。

で、そんなことをグルグルと考えていたら、自分が「絶対に諦めるなー!」と叫んでいる松岡修造のようにも思えてきました。もちろん修造は、こんな人生は望んではいないだろうけれど、でもこの映画を観たら何を思うだろうか。私と同じように「トマ、だめだ!生きるんだ!人生はまだまだ捨てたもんじゃない!捨てちゃだめなんだ!生きるんだー!」と叫んでくれたら、私は嬉しいな。

トト・ザ・ヒーロー@映画生活




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  2011/04/24 | Comment (0) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit

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