お散歩シネマ 映画の世界へ出かけよう!!映画の数だけ、もっと世界は面白くなる! 

『レクイエム ~ミカエラの肖像』 (2005/ドイツ)

   ↑  2012/05/03 (木)  カテゴリー: シリアス、社会派

●監督:ハンス=クリスティアン・シュミット
●出演:サンドラ・フラー、ブルクハルト・クラウスナー、Imogen Kogge、Anna Blomeier、Nicholas Reinke、Walter Schmidinger、Jens Harzer 他
●南ドイツの小さな町。信心深い両親のもとで育ったミカエラは、意識障害の持病を抱える内気な少女だった。大学進学を機に青春を謳歌し始めた彼女を病魔が襲う。原因は自分の罪のせいだと考えたミカエラは牧師に救いを求め・・・。監督のハンス=クリスティアン・シュミットは、ドイツ映画界でいま最も評価の高い若手の一人。主演のS・ヒューラーは、映画デビューである本作でベルリン映画祭最優秀女優賞を受賞した。




1976年、ドイツで実際に起きたアンネリーゼ・ミシェルという少女が悪魔祓い実施中に栄養失調等が理由で死亡した事件。アメリカ映画『エミリー・ローズ』でも同様の事件をモチーフにしていた覚えが。

ショッキングなテーマを扱っているだけに、この『レクイエム~ミカエラの肖像』というドイツ映画も「サイコスリラー」というジャンルに分けられがちだけれど、実際は少女の短い人生の心の内を浮き彫りにした繊細で悲しいドラマだとなと感じました。

キリスト教の「原罪」という思考に加えて悪魔を道連れに殉教した聖者への憧れが重なり、ミカエラの身体にてんかんと思われる発作が重く圧し掛かっていくにつれ彼女の心が壊れていく過程を、映画は客観的に静かに映し出していきます。厳格過ぎる母親からの自立、両親の愛情を確認したかったミカエラ。宗教よって縛られた心は、殉教という死の形でミカエラに安らぎを与えましたが、"神の思し召しで苦しみを受け入れる"という、真っ直ぐ死へと伸びていく世界からは誰も彼女を連れ戻すことが出来ませんでした。心の支えとなってくれるはずの宗教が、なぜ彼女を死へと導いてしまったのか?「宗教」を心の拠り所にしている人々は世界中に沢山いるはずのに・・・


てんかんの発作で将来への不安でいっぱいだったミカエラには、実際心から頼れるものがなかったのかもしれない。一番近い存在であるはずの両親は大学進学を拒む存在であり、発作については隠し通さなければならないから。本当は助けてほしい相手から「ロザリオ」を渡されるミカエラ。恐れ憎み、それでも手を伸ばしたい存在である母親からもらったロザリオに触れられない・・・・ここから彼女の中の崩壊が加速していくことに。「憎悪」をぶつける理由が「悪魔」となって現れ、乗り移った時だけ「本音」という恐ろしい言葉が吐き出されていた気がしました。

悪魔の声はミカエラ自身の心からの叫びだったのかもしれない。助けて欲しい、見捨てないでほしい、と。映画の中でミカエラはこの言葉を発するのだけれど、それは両親へではなくエクソシストの神父へと向けられたものでした。とても悲しい。





父親に抱えられて自宅に運ばれるシーン。母親にお風呂に入れてもらうシーン。

ほんの僅かな時間だったけれど、ここで私は不覚にも涙がこぼれてしまいました。自分の子どもがこれほどまでに消耗し切った身体になっていたことに、どれほど衝撃を受けたでしょう。そのあまりの軽さに戸惑いの表情を見せる父親。「ママ、迷惑をかけてごめんね」「いいのよ、もう休みなさい」――母親がミカエラをお風呂に入れて体を流してあげるシーンは、まるで彼女は小さな子供のようでした。こうやって甘えること、スキンシップをとることを彼女は望んでいたのではないかと。そう思わずにはいられませんでした。

いつ治るのかも分からない、辛く耐えがたい発作の連続。身体の不安は恐怖となって、彼女の心をも閉ざしてしまいました。もし発作について両親が献身的に彼女を支えてくれていたら。大学進学や将来への不安も、ともに見つめてくれていたら。ミカエラから死を追い払ってくれたかもしれない、彼女は神に死を望まなかったかもしれない。そう思ってしまう。ミカエラの崇拝した神様は、生の道を照らし続けてくれたのではないかと。



実在したアンネリーゼ・ミシェルの死亡時の体重は、わずか31㎏しかなかったといいます。自分の子どもを抱きしめ、抱え上げる瞬間に感じる大切な大切な重み。ミカエラが自ら死を選び、衰弱して亡くなっていったことに泣けて仕方ありませんでした。


関連記事

■この記事に関連する映画制作国、地域 : ドイツ映画 

FC2共有テーマ : 映画を見て、思ったこと (ジャンル : 映画

  2012/05/03 | Comment (0) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit

Comment

コメントを投稿する 記事: 『レクイエム ~ミカエラの肖像』 (2005/ドイツ)


  任意 : 後から修正や削除ができます。
  非公開コメントとして投稿する。(管理人にのみ公開)
 

Trackback