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『ソウル・キッチン』 (2009/ドイツ、フランス、イタリア)

   ↑  2011/01/16 (日)  カテゴリー: コメディ




ソウル・キッチン [ アダム・ボウスドウコス ]


●原題:SOUL KITCHEN
●監督・脚本・プロデューサー:ファティ・アキン
●出演:アダム・ボウスドウコス、モーリッツ・ブライブトロイ、ビロル・ユーネル、ウド・キア、アンナ・ベデルケ 他
●ドイツ、ハンブルク。ここでレストラン「ソウル・キッチン」を経営するギリシャ系移民のジノス。恋人が仕事で上海に行ってしまったり、税務署から滞納分の支払いを迫られたり、挙句の果てにはギックリ腰になったりと、上手くいかないことばかり。そんな時、頑固者だが天才的な腕を持つシェフを雇うと彼が作る料理が評判を呼んで店は連日大盛況。ところがある日、兄のイリアスが仮出所の間、店で雇ってほしいとやって来るのだが・・・。




先月の『しあわせの雨傘』に引き続き、またまたGyaoさんのオンライン試写会で当選してしまった!しかしながら今回はどうも回線が不安定なようで、何度か止まりがちになってしまったのが少し残念。ま、近頃めったに新作を観ない私にとっては贅沢なお話ですので文句は言えません、ハイ。




さてさて。
この映画、色々な意味でとっても豪華な映画でした。いやー楽しかった~!!

【魅力その1】
まず何といっても、ギリシャ系、トルコ系、アラブ系などドイツで暮らす移民たちの生活ぶりを本当にさり気なーく、そしてユーモアたっぷりに描写している点でしょう!映画の登場人物たちの中で(恐らく)生粋のドイツ人たちが(表現はちょっとズレるかもしれませんが)大低"金に物言わせるアッパークラスの奴ら"風に描かれているのも移民視点の面白さであり、その皮肉が私は好きでした。

いわゆる"移民"をテーマにした映画というと自分のルーツやアイデンティティを探し求める物語が多いかと思いますが、この作品に関してはそういった迷いや不安等の感情を感じるものはありません。むしろその逆で、自分の魂であるホームグラウンド=「ソウル・キッチン」を守り抜くための、ダメ兄弟二人の人生珍道中といった方がいいかも。

そしてこの映画の多国籍・多民族的な要素は、実際ドイツ映画のみならず、デンマークやトルコ、イタリア、ベルギー、フランス、アメリカ等の映画作品で見かける俳優陣が登場している贅沢さからも伝わってきました。俳優自身も移民だったり、生まれた所と居住地が異なっていたりするわけですから本国ドイツをはじめヨーロッパ中で大ヒット!!というのは、きっと欧州に住む人々からすれば本当に身近な話題が背景となっているからなのかもしれませんねー。



因みに個人的にツボだったのは、トルコでは映画やTVドラマシリーズで有名な俳優Ugur Yücel(ウグル・ユジェル)の登場でしょうか。ほんの数カットなのですが、これがインパクト大!トルコ人若しくはトルコ系の人たちにとってはちょっと複雑でもあり、笑える1シーンともなったことでしょう。

勿論、日本でも配給・公開されている作品の役者さんもいますので、映画好きの方なら彼らの姿を一度は目にしたことがあるのでは・・・!?『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』『ラン・ローラ・ラン』『es[エス]』『サスペリア』『4分間のピアニスト』『エンド・オブ・デイズ』などなど。どの作品の誰が出ているかは、ぜひ映画で確認してみてください!




【魅力その2】

音楽です。とにかくカッコイイです!
監督自身がハンブルグのクラブでDJをやっているということで、特にヒップホップに造詣が深いようです。そのため、ソウル、ロック、R&B、テクノ、ヒップホップ、ギリシャ伝統音楽から「アイ・ウォナ・ビー・ユア・マン」まで、まるで音楽ジャンルのごった煮のようなバックミュージックがめちゃくちゃカッコいい!

ドイツの夜のクラブシーンなんかも楽しめますので、音楽ファンはそれだけでも楽しいかも。ブラームスの生誕地ハンブルクは、クラシック音楽活動も盛んな場所であり、加えてクラブやライブハウスなどのドイツのあらゆる音楽シーンの最先端をいく街なのだそう。街と音楽がセットになったような魅力が、この映画にもそのままふんだんに溢れているんですねぇ。




【魅力その3】

物語の中心が「レストラン」というだけあって、それはそれは美味しそうな料理や調理シーンも多々登場します。

特に、脇役でありながら強烈なインパクトを放っているのが、キレ者で天才シェフのシェイン。途中、ちょっとスゴイ料理を作ってくれますが、それが後で思えば全く無意味ではなく、実は物語にちゃんと活かされていたところに私は感銘を受けました(笑)。シェイン、もっと絡んで欲しかった~!

加えてちょっと面白いなと思ったのは、実はこの映画の舞台となる「ソウル・キッチン」は実在のお店がモデルとなったという点。しかもそのお店のオーナーは、なんとこの映画の主人公ジノスを演じているアダム・ボウスドウコス、彼本人!

ハンブルクのそのギリシャ料理店には、子供時代から付き合いがあったファティ・アキン監督も出入りしていたこともあってこの作品の構想ができたのだそうです。仲間たちが集う楽しげな温もりや親近感は、映画の中の"作り物"だけでは生まれることのない本物の匂いだったんですねぇ。きっと撮影も楽しかったのだろうなぁ、という雰囲気でいっぱいでした。




【魅力その4】
そして、これらの楽しい要素を余すことなく最高のコメディ映画として作り上げた、自身もトルコ系移民の二世であるファティ・アキン監督の素晴らしさは、私が言葉で述べるまでもないでしょう。『太陽に恋して』(2000)、『愛より強く』(2004)、『そして、私たちは愛に帰る』(2007)の三作で、いずれも深みのある丁寧な描写でトルコとドイツの二国間における人間ドラマを綴ってきた、まだ30代の若き監督です。

【DVD】太陽に恋して 【DVD】愛より強く 【DVD】そして、私たちは愛に帰る

その彼が、これまでと同様に移民社会における多民族性の要素を押さえ、そこに集まる多種多様な人々が織りなすドラマを「ソウル・キッチン」という舞台に置き換えて、こんなにワイルドで軽妙そしてハッピーになれるコメディ映画を作ってくれました。なんと彼は、ゴダール、トリュフォーらも成し遂げていないという世界の三大映画祭(ベルリン、カンヌ、ヴェネチア)のコンペティション部門のすべてで受賞したという実力の持ち主。これまで、役者や脚本家としても着実に実績を積んできている人なので、これからの映画界で絶対伸びていくことでしょう!

※因みに、監督の名前、日本では「ファティ・アキン」という呼び名で通っていますが、面白い音だなと思って元々のトルコ語表記を調べてみたら実際は「Fatih Akın」=「ファーティフ・アクン」でした。特に「ı」は「i」とは異なる発音ですがドイツ語や英語表記にする場合は「i」が代用されるため、日本でも「アキン」としているのしょう。


ややキャラクターの書き込みが弱いかなとも思いましたが、それすら補って余りある美味しい料理、音楽、踊れて食べて笑える(そして"オトナの笑い"も満載の)愛すべき映画でした。音楽センスのある監督、エンドロールもめちゃくちゃカッコいいっす!!DVDが出たらまたゆっくりと観てみたいです。今度は映像も止まらないだろうしね(笑)!


『ソウル・キッチン』/2011年1月22日(土)よりシネマライズほか全国順次公開!!
映画『ソウル・キッチン』日本公式サイト



『Kebab Connection』(2004/ドイツ)
アキン監督が脚本を書いた、同じくハンブルクのトルコ系移民のコミュニティにおけるケバブレストランを舞台としたコメディ映画。残念ながら日本では未公開なのですが、異文化間に生じる問題をコメディとして笑って見せる手腕は当時から十分に発揮されていたのでしょう。地元ドイツやトルコだけでなく、オランダ、ルーマニア、スイスといった国々でも評価している感想を見かけました。観たいなぁ観たいな~。




・・・そしてオマケ

この試写を観て、このレビューを書き終わった今。私はやっと「自分がどうして映画を見続けているんだろう?」という、シンプルなようで気づくことがなかった自分なりの疑問がちょっと解決したように思いました。意外と意識していなかったところで「実は観る映画を選んでいた」自分のスタンスが分かったというか。それは、このファティ・アキン監督のインタビュー記事がきっかけでした。でも長くなるので今日はこれでおしまい!またいつか、まとまったら書いてみたいと思います。

ソウル・キッチン@映画生活




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