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『Rain レイン』 (2003/アメリカ)

   ↑  2011/01/24 (月)  カテゴリー: シリアス、社会派




[DVD] ヴィム・ヴェンダースpresents Rain


↑左は本国アメリカ発売のDVD。右は↑日本版DVDのジャケット。これにつられて、ふわふわとパステルカラーの如く"淡い優しさ"をこの映画に求めると肩透かしに・・・

●原題:THREE DAYS OF RAIN 
●日本リリース時のタイトル:ヴィム・ヴェンダース PRESENTS RAIN/レイン
●監督・脚本:マイケル・メレディス
●出演:ドン・メレディス、ピーター・フォーク、エリック・アヴァリ、ライル・ラヴェット、ペネロープ・アレン、ブライス・ダナー、ロバート・キャラダイン、ヘザー・カフカ、ジェイソン・パトリック 他
●ヴィム・ヴェンダースが製作総指揮を担当し、チェーホフの短編を映画化した群像劇。廃墟のようなビルが建ち並ぶ漠々とした街となったクリーブランドで暮らす6組の人々の物語。ピーター・フォークをはじめ、演技派俳優たちがカメオでも多数出演。因みに2010年2月発表の米誌フォーブスの電子版(www.forbes.com)の調査では、「米国で最も惨めな都市」にオハイオ州クリーブランドが選ばれている。




この映画は、自分の中で何かが終わった時、何かが途切れた時、何かが離れた時、そして何かを失った時、鑑賞に値するピークがやってくるという稀な映画だなと感じました。

ですから・・・
家族は健康、同僚も上司も大好き、妻は美人で夫婦円満、仕事は順調、毎日酒が美味っす、自慢の彼氏がいて化粧ののりもバッチリ、お姑さんも自分も大好きです!という元気一杯の方や、将来の夢や希望に満ち溢れた若い方などは―これらは決して意地悪で言っているのではなく―あまり気持ちが乗らない作品かもしれません。





現代のクリーブランドを舞台として「群像劇」の形をとったこの映画は、様々な人々が登場し各々に関連する出来事が起こるのですが、それらが巧みに交錯していくといった映画的な仕掛けは殆ど見当たりません。ロシアの文豪アントン・チェーホフの幾つかの短編小説をベースにした独立する6つの物語を、タぺストリーのように組み合わせた構成をとっているからです。

チェーホフは短篇小説を山のように書いているので一体どれが原作なのだろうかと探してみたのですが、ネット上では「チェーホフの6つの短編小説を基に」という本当にコピーしただけの紋切り型の言葉が溢れているだけで、タイトルすら探せませんでした。日本では劇場未公開作品なので情報量も少なく仕方ないかなと思い、今度は製作総指揮のヴィム・ヴェンダースやマイケル・メレディス監督のアメリカでのインタビュー記事をざっとチェックしてみましたが・・・なんと状況は全く同じでした。

ですので、これはあくまで私の推測なのですが、この作品は"6つの短編小説をベースにした"のではなく、"幾つかの短編小説から発想を得たメレディス監督が、それらを基に6つの物語を書いた"のではないかな?と思うのです。チェーホフの具体的な作品名が挙がってこないということもそうですし、昨年出版された新訳 チェーホフ短篇集」の中にも、完全ではないにしろこの映画の女性を連想させるようなショートーストーリーが含まれていることに偶然気付いたからでもあるんです。流石にロシア語で探す気力までは私にもありませんでしたので、もし原作のタイトルがお分かりになる方がいらっしゃいましたら、是非ご教示いただきたく思います。






さて、「Three days of rain」という原題からもわかるように、3日間に渡る雨の中で6つの物語や出来事、人物の行動がラジオのジャズ番組の進行とともに流れていきます。

満ち足りていたと思っていた人生の中に、空虚なものがあったことに気が付くこと。
自業自得の弱さを人に付け込まれて、取り返しのつかない道へ堕ちるしかない者。
自分さえも欺くような空言を並べてはその場しのぎを繰り返し、信用も信頼もない姿を晒すしかない老いた父と、それを責めることなく、静かに見守り続ける息子の姿。
仕事の資金繰りも住居もパートナーとの仲さえも失いつつある、八方塞がりのどうしようもない現実を抱えた爆発寸前の日々。
突然息子を亡くして心の拠り所を失い、それでも空白の中を這うようにして進んでいかなければならない日常と客との交流。
その先に起こるであろう最悪の事態を仮に予測できたとしても、社会の歯車から弾かれ居場所を失う腑甲斐なさを自分だけでは処理できない人が決意した一つ行動。


嵐のような暴風雨の中、ニュース・スタンドのおじさんがこんな事を言ってふっと笑うシーンがありました。
「あの雨は、道を洗いながらどこまで行くのかね。あそこの溝を見てると、おもちゃだの写真だの色々流れていく。向こうの木の辺りで渦に巻かれて、その後はわからない。海に行くのか、南の島に行くのか、どこにも行かずに腐るのか。・・・くだらん想像だな」


「こうすればよかったのに」とか「こんな事は愚かすぎる」とか「こんな姿は惨めすぎる」とか、登場人物たちに対してコメントできる言葉の数々は、恐らくどんな人から見たとしても容易に口にできるでしょう。それでもこの映画は、終わりも始まりも、解決も、理由もなく、ただ流れていく雨水のように物事をただ映し出していくだけなのです。

確かに衝撃的なシーンもあるのですが、"困難を乗り越える"などという劇的な出来事は起こらず、"いつかは雨は上がります"という生温かな励ましもなく。人々を客観視しドラマの起こらないドラマを描くチェーホフ作品の特徴通り、雨が上がるのと同時にラジオのジャズ番組も終了し、また映画も幕を閉じるだけなのです。たったそれだけなのに、主要人物でもないスタンドのおじさんが口にした、何気ない会話でのあの言葉がとても心に残りました。


Bob Belden / Three Days Of Rain 輸入盤 【CD】



もしこの映画を観て「退屈だ」と思わず、皆の上に等しく降りつける雨や、止む様子もなく激しく降り続く雨音に心静まった人がいたのなら、それは私も同じです。雨が上がるまで、一緒にクリーヴランドのWLOHから聴こえてくるライル・ラヴェットのJazz番組を聴いていましょう。同じように耳を傾けている人が、きっとどこかにもいるはずです。




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 2014/03/29