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『運動靴と赤い金魚』 (1997/イラン)

   ↑  2010/07/17 (土)  カテゴリー: ロマンス、ドラマ






運動靴と赤い金魚 【BLU-RAY DISC】


●原題:بچههای آسمان‎(BACHEHA-YE ASEMAN) / CHILDREN OF HEAVEN
●監督:マジッド・マジディ
●出演:ミル=ファロク・ハシェミアン、バハレ・セッデキ、アミル・ナジ 他
●修理したばかりの妹の靴をなくしてしまった兄は、家が貧しく両親にもそのことを言い出せない。そこで自分のたった一足だけの運動靴を妹と交替で履いて登校することにする。そんなある日、3等の商品が運動靴という小学生のマラソン大会が開催されることを知った兄は、妹のために出場して3等になるよう懸命に走るのだが・・・。





お父ちゃんが、ジュマ(金曜礼拝)で振舞われるチャイの準備をしながら、イマーム(モスクの先生、お坊様のような人)のクルアーンに耳を傾けて嗚咽する・・・

『運動靴と赤い金魚』に出てくるこのシーンを観ると、いつも私は胸を締め付けられるような思いがします。

経済的には決して恵まれないお父ちゃんは、恐らく学はないのでしょうが、とても信心深くてとても素直で、そして温かい。トルコ語が聞こえてくることから、そこはトルコ系移民が集まるモスクなのだと思うのですが、互いを思いやり、子供たちは当たり前のように親の手伝いをし、年長者を敬う・・・。





私の義父母が住む実家周辺は敬虔なムスリムが住む地方で、同じような風景を滞在中に何度か目にたことがありました。義母がキッチンで涙ぐんでいるのを初めて見た時は、何か悲しいことがあったのかと思い驚いたのですが、実はラジオから流れてくるクルアーン朗唱に聴き入って涙していたのだと分かり、私は何か純粋なものに触れたような気がして、その光景に衝撃を受けました。

義母たちが「このモスクは神様が向きを変えられたのよ」とか「この洞窟に蜘蛛の巣を張って預言者様を守られたのよ」とか、いわゆる「伝承」や「伝説」ではなく心から神様を信じている、神様に守られている、と感じていることに気づき、正直返答に困ったこともありました。

何しろ私は「ダーウィンの進化論」を教育された人間なので、神様が土から人間を作ったんだと今更言われてももうどうしようもないのですが、それでも彼らの「信じている」という尊い姿を見るたび、心揺さぶられるような思いがしたものでした。






「赤い金魚」の意味すること・・・

『運動靴と赤い金魚』では、クルドやイランに残る風習「幸せの象徴」=赤い金魚が、妹のために一生懸命走ったお兄ちゃんの足の周りに慈しむように集まってくる、忘れえぬ美しいシーンがあります。

原題の直訳は「天国(楽園)のこどもたち」となるのですが、「天国」というと日本ではどちらかというと"死"のイメージがあるため、『運動靴と・・・』という邦題にした、という話を耳にしたことがあります。一方、イスラームの世界観としては、天国は人々にとって最高の場所、楽園であり、そこに住まう子どもたちは汚れのない純粋な美しいものとして捉えられます。マジッド・マジディ監督自身は「運動靴と赤い金魚」というタイトルを付けたわけではありませんので、ここから彼が何かを意図しようとか主題にしようとしたわけではないんですね。あくまで"邦題"ですので、直接的な意味をここから掬うことは難しいでしょう。

しかし、イランでは「赤色」は再生や蘇りなどのシンボルカラーであり、「金魚」は縁起の良いものとしてお正月飾りで必ず見られるポピュラーな物です。また、所変わって中国では、真っ赤な飾り付けが施される春節の際にやはり「赤い金魚」が登場します。そして日本でも、女の子の無病息災などを祈願する雛祭りで、「吊るし雛」の飾りとして同様の「赤い金魚」を目にされることもあるでしょう。



つまり、赤い金魚の映る清らかな映像を見ていると、どこか幸福感に包まれるような思いがするのは皆さん同じではないでしょうか。

違いばかりが際立って目に付きやすい世の中ですが、本当は教育や信仰などは異なれど、私達は世界のどこかで、遠い歴史の中できっと繋がっているのだなぁと、この映画を観るたびにいつも私は思うのです。
清らかで優しい余韻を観る者に残す、とても大好きなイラン映画です。





そう、これは余談なのですが・・・
トルコ語と日本語は、助詞や疑問文などを難しく考える必要がないほど、文法から単語まで驚くほど似ています。大雑把に言ってしまうと、日本語と同じ構成で単語を繋げていけば意味が通じてしまうんですよ!

Kitaplarin  eline  gecmesine  ben de   cok  sevdim.
 (本が)   (手に)  (入って)  (私) (も) (とても) (嬉しいです)

ペルシャからシルクロードを渡って、遠いアジア、日本にも同じような風習や文化があることに、なんだか感動してしまうのです。


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  2010/07/17 | Comment (2) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit

Comment


わたしも大好きな作品です!
でも、お父さんが嗚咽するシーンはすっかり忘れてました。意味がわかってなかったのかも?
世の中には本当に信心深い方がいるんですね~。心の底から信じられるものがあるって素晴らしいと思います。
この作品を観て心が洗われる様な気がするのも、根底にあるのが純粋な心だからなのかな~。

そして、赤い色と金魚の意味も詳しく解説されていて勉強になりました!
日本でも同じように愛されている金魚。こういう繋がりを感じるのも大切ですね。
ますますこの作品が好きになりました♪
わたしも”違い”にばかり目が行ってしまっていたので、これからは”同じ”にも目を向けたいです。

それにしても、トルコ語は単語さえ覚えてしまえば通じてしまうなんて素晴らしい!
学校で英語の代わりにトルコ語を教えればいいのに!!(笑)

宵乃 |  2013/08/21 (水) 11:10 [ 編集 ] No.155


はなまるこより

宵乃さん、こんばんは~i-179いつもコメントをありがとうございます☆
イラン映画って、アメリカなどメジャー映画に比べると日本での配給率は遥かに少ないですが
それでもこの映画が大好きだ!というかた、とっても多いですよね。
日本人の感覚にも、近くて馴染みやすいからかもしれませんね!

お父ちゃんがオイオイ泣きながらお砂糖を割っているシーン、ほんの数秒なんですi-229
あまりに何気ないカットなので、初見の時には私もほとんど気にしていなかったのですが
ムスリムの人たちと生活していた時に「あぁこういう気持ちだったのか」と
急に映画の1シーンが胸の奥にストンと入ってきたという・・・思い出の映画でもあります。

>この作品を観て心が洗われる様な気がするのも、根底にあるのが純粋な心だからなのかな~。
本当にそうですね!この映画では子どもが主役なのでなおさらなのかもしれませんが
中東生活中には、その純粋さに泣きたくなるほど心打たれたことが多くありました。
(対して、自分の心の汚れ加減にも泣きたくなることもありました笑)。
そういえばあのキラキラした水の中で泳ぐ金魚たちも、"純真"の象徴のように綺麗でしたね~i-189

そうそう!トルコ語は本当に日本人向きの外国語だなーと感動ものでした♪
>学校で英語の代わりにトルコ語を教えればいいのに!!(笑)
あははは!そうなると、きっと習得率が格段にUPするでしょうね!すごいアイディア☆
でも・・・ほとんどトルコでしか通じない言葉なので不便といえば不便ですね(笑)i-237アハハ

宵乃さんへ★ |  2013/08/21 (水) 22:17 [ 編集 ] No.156

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