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『死刑台のメロディ』 (1971/イタリア・フランス)

   ↑  2010/05/08 (土)  カテゴリー: シリアス、社会派




死刑台のメロディ [DVD]


●原題:SACCO E VANZETTI / SACCO AND VONZETTI(英題)
●監督:ジュリアーノ・モンタルド
●出演:ジャン・マリア、ヴォロンテリカルド・クッチョーラ、ミロ・オーシャ、シリル・キューザック、ロザンナ・フラテッロ 他
●「アメリカ史における汚点的冤罪事件」として語られる「サッコ=ヴァンゼッティ事件」を描いた社会派ドラマ。1920年のアメリカ マサチューセッツ。イタリア移民のサッコとバンゼッティは、ある日、製靴工場が襲撃された強盗殺人事件の容疑者として逮捕される。まったく身に覚えのない二人は無罪を主張するが、裁判は偏見と敵意に満ち、無実を示す証拠も次々と却下されていくのだった・・・。



先日、1930年代のアメリカ シカゴを舞台にイタリアンマフィアとの戦いを描いた『アンタッチャブル』の記事をupしましたが、ロバート・デ・ニーロが演じたアル・カポネ(実在した人物:1899年-1947年)はナポリからの移民でした。そして「イタリア系マフィア」と聞いて真っ先に思い出す映画『ゴッドファーザー』シリーズのヴィトー・コルレオーネ(フィクション:1892年-1955年)はシチリア移民でした。

まさにこの2人が生きた20世紀初頭前後の時代というのは、イタリア南部の貧しい人々が新しい生活を夢見て大挙してアメリカへ押し寄せていた時期です。が、彼らの生活はアメリカ移住後も困難なものだったといいます。英語をうまく話せない人々は肉体労働など社会の低層で働くしかなく、そのため働き口を世話してもらったり生活や仕事など(たとえそれが不法であったとしても)生きる手段を守ってもらうために、同郷であるマフィアの力がそこにうまく組み込まれていったのです。それは、時に結束として或いは搾取というスタイルになったとしても、アメリカの裏社会でイタリア系マフィアが勢力を拡大していく大きな構造となっていきました。





さて、前置きが長くなりましたが、映画『アンタッチャブル』の「イタリア系」と「エンニオ・モリコーネ」に関連して、私はこの映画を思い出しました。1920年アメリカで生活するイタリア系移民がある日突然無実の罪で投獄され、死刑を宣告された「サッコ=ヴァンゼッティ事件」に基づいた社会派ドラマです。作中時代当時、アメリカでは共産主義者への赤狩りや、アナーキストたちを排除しようとする保守的な世論が高まり始め、1919年の禁酒法や移民の数を制限する移民法が1924年に成立するなど、アメリカ出生主義やWASPなどアングロサクソン系中心の徹底的なナショナリズムの風が吹き荒れた時期でした。そんな中で投獄されたこの二人は、この時代の格好の餌食にされたとも言えるのです。

初めてこの映画を見た時は、その重厚感に押され、口を聞くことが出来ないくらいグッタリした覚えがあります。その時の緊張感や、あまりにも静かなラストの衝撃を、私は決して忘れることができませんでした。そしてその後、私は2004年のエンニオ・モリコーネ初来日コンサートで「The ballade of Sacco and Vanzetti」を耳にすることになったのですが、その時の衝撃、体中に走った戦慄は・・・本当に言葉では表し難いものでした。今でも曲を聴くと鳥肌が立つ思いです。



演奏中、気がつくと私はいつの間にか流していた涙を拭うことも出来ないほど体の震えが止まらず、ただその慟哭しそうになる体を必死におさえていました。それは決して「感動」などという生温かなものではなく恐怖にも近いような、凍りつくほどの体験でした。音楽を聴いてここまで戦慄を覚えたのは、生まれて初めてです。それはたぶん、映画で見た疑似体験の記憶と、目の前で歌い上げられた臨場感がシンクロして、不条理な差別で事実を覆い隠されたまま亡くなっていったサッコとヴァンゼッティの恐怖や絶望感が、そして最後まで人間としての尊厳を決して忘れたくないと語った彼らの静かな叫びが映画の迫力を思い出させ、あまりに残酷な荘厳さがダイレクトに私を揺さぶったのだと思っています。"邦題"の意味を、そこで私は体感したのでした。


【DVD】アリーナ・コンチェルト/エンニオ・モリコーネ [WPBR-90292] エンニオ・モリコーネ


●生誕75周年を迎えたエンニオ・モリコーネの音楽世界を堪能できるコンサート映像。イタリアのヴェローナ公演の模様を収録。
●収録曲:ニュー・シネマ・パラダイス/ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ/海の上のピアニスト/続・夕陽のガンマン/ウエスタン/夕陽のギャングたち/続・夕陽のガンマン(エクスタシー・オブ・ゴールド)/ジ・エンド・オブ・ア・ミステリー/アルジェの戦い/死刑台のメロディ/殺人捜査/供述によるとペレイラは…/労働階級は天国に入る/カジュアリティーズ/ケマダの戦い/タタール人の砂漠/リチャード3世/タタール人の砂漠/ミッション


エンニオ・モリコーネは、私が映画を想うのと同じくらいに重要な位置を占めるマエストロです。時に映画の細かな内容は思い出せなくとも、氏の映画音楽だけは鮮明にはっきりと心に響くことがあります。高齢でもあるため、もう再来日は望めないかもしれませんが、私は2004年6月のあの日のコンサートを決して忘れることはありません。私の中で「映画」が目の前に現れ、それに“直に”触れることができた奇跡のような時間を、映画とともにある限り、私は忘れることはないのです。




【追記 2010年5月10日】
ロッカリアさん発信の【ラジオ・ヒッチコック】さんでも 「で、やっぱり休日はサントラなんですよ。」の記事で『死刑台のメロディ』が出ています。EP盤ジャケットが見られます!


死刑台のメロディ@映画生活



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