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『サハラ戦車隊』 (1943/アメリカ)

   ↑  2013/01/18 (金)  カテゴリー: アクション、パニック





サハラ戦車隊 [ ハンフリー・ボガート ]


●原題:SAHARA
●監督:ゾルタン・コルダ
●出演:出演:ハンフリー・ボガート、ブルース・ベネット、ロイド・ブリッジス、レックス・イングラム 他
●北アフリカ戦線で、部隊からとり残された戦車があった。生存していた三人の兵士は、活路を求めてトブルクへ向かう。そして行軍途中、英兵を拾い、更にはイタリア兵、ドイツ兵までも収容した彼らは、やがて水のある廃墟にたどり着く。しかしそこは、ドイツ軍が間近にひかえる場所だった・・・!ソ連映画劇「十三人」の挿話よりフィリップ・マクドナルドが構成、ジョン・ハワード・ロウソンが「ジャングル・ブック(1942)」のゾルタン・コルダ監督と協同脚色した1943年作品。




※この記事は、2008年以前のレビュー記事より映画を再見→再投稿したものです。
ハンフリー・ボガートが「強いアメリカ」としてのヒーローを演じた、いわゆる戦争アクションもの。初見は2008年5月でしたが「これは掘り出し物だった!」と大喜びしていた当時の適当な感想文(笑)。これを今回再投稿するにあたって、いいチャンスなので再度観直してみました(2013年1月)。やっぱり面白い~!ジェフ・ブリッジスのお父ちゃん、ロイド・ブリッジスも見られます。




まずは時代背景から。
世界規模の戦いが繰り広げられた第二次世界大戦。モンロー主義が色濃く参戦には消極的だったルーズベルト政権下のアメリカは、1941年の日本軍による真珠湾攻撃後に国内世論は一気に参戦へと傾き、その後連合国の一員として正式に参戦。1942年11月にはアメリカ・イギリス連合軍がフランス領 北アフリカに上陸し、枢軸国軍(イタリア+ドイツアフリカ軍団)と砂漠での熾烈な戦いを繰り広げました。

1943年5月には枢軸国軍がアフリカで連合国軍に降伏し、アフリカ戦線はこれにて終結することになるわけですが・・・この『サハラ戦車隊』はまさにココ、1943年製作の映画作品なんですね。戦中ど真ん中じゃないですか。スゴイ!

そのため映画の冒頭でも紹介されていますが、制作には本物のアメリカ陸軍第4機甲部隊が全面協力しており、本物の兵士がエキストラとして参加しています。また、ガン軍曹が「ルル・ベル」と呼んで愛してやまないM3中戦車は、第二次大戦の中期まで米軍の主力となった戦車なのだそう。私は、残念ながら銃も戦車も軍服に対しても何の知識のないのですが、こういう映画を観る時にはそういった知識のある楽しみ方っていいなぁと羨ましく思います。

因みに、撮影場所はアリゾナ州やメキシコを堺としたカリフォルニア州のアンザ・ボレゴ砂漠州立公園(東京都の面積より大きい!)。モノクロで映し出される砂嵐のシーンなどは、やはり死と隣り合わせという本物の広大な砂漠の怖さを併せ持った迫力の映像です。




さて。物語の舞台は1942年6月。
砂漠の狐と呼ばれたあのエルヴィン・ロンメルが指揮する大攻勢に晒されたアメリカ軍は、全軍撤退を発令。しかしM3中戦車「ルル・ベル」号はエンジンの故障により落伍、乗員である戦車長ジョー・ガン軍曹、ジミー・ドイル、ウェイコ・ホイトの3名は本隊から逸れてしまう・・・。そんなシーンから映画は始まります。


行軍途中に彼らは様々なメンバーをピックアップしていくことに。ジェイソン・ハリディ軍医大尉をはじめとするイギリス軍人5名と、自由フランス軍のフレンチー。スーダン軍のタンブール曹長とイタリア軍捕虜ジュセッペ。そして最後にドイツ空軍捕虜のフォン・シュレットウ大尉。

第二次世界大戦下では数多くのプロパガンダ的作品が製作されましたが、この映画もそれに該当するものでしょう。ハンフリー・ボガート扮するガン軍曹は情に厚く、決断力があり、(軍曹という地位でありながらも)その強いリーダーシップで皆を一致団結させチームとして統率していきます。そう、彼らの乗る戦車は【連合国軍】の縮図なんですね。冷酷で残虐なナチスを倒すには【強いアメリカ】が必要だ!と。

もちろんこれは戦時中のアメリカ映画ですから、アメリカから見た主張が物語のど真ん中を通っています。中でも、イタリア軍捕虜のジュセッペのキャラクターは際立っていました。同じ枢軸軍捕虜だったものの、ドイツ軍のフォン・シュレットウ大尉と対峙し言い争う時の強烈な台詞(抜粋)は以下のようなものでした。

「イタリア人は違う。軍服は着ても魂は売らん。我々は泥棒や詐欺師に成り下がっても魂は売り渡さん。ムッソリーニとえいども、我々の良心をヒトラーの十戒で汚す事などできない。"隣人から奪え 隣人を欺け 隣人を殺せ" ・・・イカレ男を崇拝するほどバカではない。祖国を強制収容所と化し、我々を奴隷扱いするそんな男のご機嫌取りはご免こうむる!ヒトラーのために戦うなんてまっぴらだ。この世を地獄にした男だ!」

北アフリカ戦線でのイタリア軍の敗北も色濃くなり、ファシズム体制に対する批判がイタリア国内でも高まり始めムッソリーニも失脚。休戦→降伏。そんな時代背景が、このようなイタリア人像を描き出したのかもしれません。因みに祖国イタリアを深く愛するジュゼッペ役のJ・キャロル・ネイシュはN.Y.生まれのアメリカ人であり、この役でアカデミー賞助演男優賞にもノミネートされました。アメリカによるアメリカの映画ですもんね(笑)。
※余談ですが、このJ・キャロル・ネイシュ(J. Carrol Naish)という俳優さんはとてもユニークな人で、国籍不明なその風貌を活かしてイタリア人以外にも中国人やネイティヴ・アメリカンなどを演じ「ハリウッドの"一人国連"」なんてあだ名も付いたのだそう笑





言語はもちろん人生観、宗教観、政治観から料理や家族の思い出など。多国籍の彼らが、ほんの束の間の安らぎの時に話す話題は、互いに共感し、心通い合う一時となります。これに対して、人間性のかけらもなく冷徹・残酷なドイツ兵や、水を求めてゾンビ化したナチス軍の描写はスゴイもの。あからさまに嫌悪と悪意を持たせていますね。

ただ、こういったステレオタイプであることで人物描写はわかりやすくなり、また勧善懲悪にも似たシンプルな物語には高揚感さえも抱きます。そういった点からしてもこの『サハラ戦車隊』という映画は、たとえ時代背景のことなど知らずに出会ったとしても、非常に面白く十分に楽しめる内容なのかもしれません。・・・確かに、2008年当時に私が観た時の感想も「面白かったー!ボガート超かっこいー!」でしたから(笑)





最後に。
この『サハラ戦車隊』を書いた脚本家は、あのジョン・ハワード・ローソン。ハリウッド・テン(Hollywood Ten)の一人です。1940年代後半から吹き荒れたマッカーシズムによる赤狩り旋風。その中心的機関であった非米活動調査委員会の取り調べで、彼はあらゆる質問に答えることを拒否したと言います。強い意志の持ち主でした。

Film in the Battle of Ideas [ハードカバー] John Howard Lawson (著)
後にロウソンは「Film in the Battle of Ideas」(1953年出版)という著書の中で、「米国の支配者は映画をプロパガンダの道具として取り入れている」「ハリウッド映画の影響は、労働者階級の心に毒を入れるために利用されている」と強く主張しました。信念を持った脚本家であり作家であったのです。彼は赤狩りにより事実上ハリウッドを追放されることになるのですが、このような気骨のある才能にあふれた作家を失うことは結局ハリウッド映画界にとっても損失だったことでしょう。今回この『サハラ戦車隊』を再見して感じたもう一つは、このプロパガンダ映画の後に彼が書いていったであろう作品をもっとたくさん観たかったなぁ、ということでした。ハリウッド黄金期と言われた50年代以降、彼は時代をどう捉えていたのでしょうか。ロウソンの著書をもう少し追いかけてみたいと思います。

サハラ戦車隊@映画生活





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