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『運命の逆転』 (1990/アメリカ)

   ↑  2013/05/02 (木)  カテゴリー: サスペンス、ミステリー




運命の逆転 [DVD]


●原題:REVERSAL OF FORTUNE
●監督:バーベット・シュローダー
●出演:ジェレミー・アイアンズ、グレン・クローズ、ロン・シルヴァー、アナベラ・シオラ 他
●病院のベッドに横たわる昏睡状態の女性がストーリーテラーとなり、ある“事件”を語り始める。裁判の様子を織り交ぜながら、事件の発端となるフォン・ビューロー夫妻の過去を辿っていく。事件の“真実”はどこにあるのか?米国で実際に起きた「クラウス・フォン・ビューロー事件」の弁護士、アラン・ダーショウィッツの原作を元に映画化。



※この記事は、2008年以前のレビュー記事より映画を再見→再投稿したものです。
初めて観た時は「法廷ものとして見事なサスペンス映画!構成も面白いなぁ」という"お気に入り映画"程度だったのですが、今回久々に観て感じたのは、高名なハーヴァード大学教授兼弁護士でロン・シルヴァー演じるアラン・ダーショウィッツが繰り広げる「なぜこのケース(訴訟)を受けたのか?」という熱のこもったのやり取り。これにずいぶん時間を割いていたことに、とても強い印象を受けました。実はこの『運命の逆転』という映画の主題ではないかな?とも思ったくらい。


アラン・ダーショウィッツ。
原作小説でもそうだけれど、彼は依頼人であるクラウス・フォン・ビューローの無実を心から信じて事件を受けたというわけではなく、【司法制度への挑戦】として受けた印象が強い。なにしろこの物語の結末は「真相は闇の中」という印象しか持たせないほどだから。彼は弁護士としては完璧に仕事を遣り遂げたけれど、一個人、一人の人間としてはクラウスを暗に非難しているほどでした。少なくとも映画ではそのような構成をとっています。




ハーバード・ロースクール アラン・ダーショウィッツ教授のロイヤーメンタリング


なぜ悪人(と言われる人)を弁護するのか?ダーショウィッツの著書「ロイヤーメンタリング」では、このテーマに関しての全てが簡潔、率直に答えられています。この書の中でダーショウィッツは、ラーニッド・ハンド判事の言葉を引用し「自由の精神とは、あるものが正しいということに確信を持ち過ぎない精神だ」と言い、「たとえば私は黒人を弁護した後、今度は酷い人種差別者を弁護するかもしれません。"弁護士としての自分"と"プライベートの自分"は違いますから」という発言をしてみせます。

そう、彼は強烈すぎるほど正直で、そして並みの人物ではないのです。高名な法律家という立場から離れれば、親イスラエル急先鋒の過激派としかみえないほど、その立場は偏りに偏っています。

ホロコースト産業 同胞の苦しみを「売り物」にするユダヤ人エリートたち / ノーマン・G・フィンケルスタイン



  チョムスキー「ダーショウィッツはフィンケルスタインへの聖戦を始めた」【Democracy Now!】

たとえば、ノーマン・フィンケルシュタインとの騒動。
フィンケルシュタインは、自身の両親がユダヤ人強制収容所の生存者である一方で「イスラエルはホロコースト犠牲者の立場を濫用している」と真っ向からシオニズムを批判し、またヨーロッパを騒然とさせた『ホロコースト産業』の著者であり、この主張を巡ってダーショウィッツに猛攻撃された人物。・・・で、先日このフィンケルシュタインに関する動画を見ていたら、ハワード・ジン(Howard Zinn ボストン大学名誉教授。アメリカで最も読まれている歴史学者。彼の古典的名著は『民衆のアメリカ史』)フィンケルシュタインを擁護しているものを見つけてしまった。

・・・あぁ、こうなると話は山ほど出てくるユダヤ人問題になって話が逸れてしまうのでここでストップ!ま、でもそれだけこのダーショウィッツという人物には様々な話題が付いて回る"信念の人"というわけなのです。





1990年アカデミー賞主演男優賞部門では、ケヴィン・コスナー(『ダンス・ウィズ・ウルブス』)や、ロバート・デ・ニーロ(『レナードの朝』)といった"名作俳優"たちが居並ぶ中、この『運命の逆転』で殺人事件の容疑者クラウス・フォン・ビューローを演じたジェレミー・アイアンズが、見事にオスカーを勝ち獲りました。

ドイツ系貴族の血を引く、まるで熱を感じられないほど冷たく気取った、そしてどこか胡散臭ささえ漂わせるクラウス・フォン・ビューロー。そのあまりに異質で完璧なキャラクターを演じたアイアンズの存在感と貫禄は見応え十分です。でもやはりこの映画の主役は、ダーショウィッツなんですよね。彼が「悪人」(と世間で言われる人)を弁護する理由、弁護士とはどのような職業なのか?アメリカの司法、裁判制度とはどのようなものなのか?これらを主張したダーショウィッツによる映画なのだから。

昔観た時と本当に感想が変わってしまったなぁ、観る視点も変わってしまったなぁ、そんなことを思いながら再見した一時でした。あ、これは1990年代の映画ですが、今観ても古さはまったく感じられません。映画の冒頭、まるで生身の人間からの視点ではないような、流れるような空撮俯瞰ショットに吸い込まれ、この"事件"に否応なく惹き込まれていくのです。そして観終わった後は、極上のリーガルサスペンス映画を観られた!という満足感と、一方でこれが実話に基づいた物語なのだという、どこか心の奥底がヒンヤリと凍るような寒さとをいっぺんに感じるのです。何度観ても非常に面白い映画だと思います。




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