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『刑事ジョン・ブック/目撃者』 (1985/アメリカ) ※ネタバレにご注意を ラストに触れています

   ↑  2013/08/20 (火)  カテゴリー: ロマンス、ドラマ





【DVD】刑事ジョン・ブック 目撃者/ハリソン・フォード


●原題:WITNESS
●監督:ピーター・ウィアー 
●出演:ハリソン・フォード、ケリー・マクギリス、ルーカス・ハース、ダニー・グローヴァー、ジョセフ・ソマー、アレクサンダー・ゴドノフ、ジャン・ルーブス、パティ・ルポーン、ヴィゴ・モーテンセン 他
●ペンシルヴァニア州の田舎で文明社会から離れた生活を送る“アーミッシュ”の未亡人レイチェルと息子サミュエル。偶然、駅でトイレに入ったサミュエルが殺人事件を目撃してしまう。フィラデルフィア警察の刑事ジョン・ブックに事情を聞かれたサミュエルは、麻薬課長マクフィーの写真記事を指差し「彼が犯人だ」とジョンに告げる。その後アパートに戻ったジョンはマクフィーに急襲され負傷するのだったが・・・。現代アメリカで独自の文化を育む宗教集団“アーミッシュ”の共同体を舞台に描く犯罪サスペンス。



※この記事は、2008年以前のレビュー記事より映画を再見→再投稿したものです


映画冒頭から、まるで宗教画のように美しい映像とモーリス・ジャールの透明感溢れるメロディラインに惹き込まれるのですが、今回改めて観直してみると、シンセサイザーの音が掛け合うように重なり合っていくこの音楽は、アーミッシュの人々のゆったりとした生活の営みと町の喧騒とを表しているようだなぁと感じました。

アクションシーンが多くあるにも関わらず、余計なセリフが排除され、ぐっと静かで力強いインパクトを残すこの『刑事ジョン・ブック/目撃者』。時代感覚を忘れさせるようなアーミッシュの人々の共同生活を目にした直後、それが途端に暴力と騒音の中でのサスペンスドラマへと変わり、しっとりとした大人のラブロマンスへと変化していきます。

肝心な部分でセリフを言わず、見つめあわずにはいられない男女の強い引力を繊細に描き出し、環境の異なる人間どうしが強く惹かれ合い、そして別れていく過程を静かに見守った見応え十分な「大人の映画」です。いつ観ても惹き込まれずにはいられません。





ハリソン・フォード主演の映画作品は数多くあります。

彼はこれまで、ハン・ソロ、インディアナ・ジョーンズ、リック・デッカード、ジャック・ライアン、リチャード・キンブル医師といった、名前を聞けばどの映画かすぐ思い浮かべることのできるほど有名な役どころを演じてきました。ジョン・ブック刑事もその一つでしょう。


通常あまりに有名な作品に出演すると、俳優たちはその"イメージ脱却"に苦しむと言われています。が、フォードの場合、そういった"色"が付くことはありませんでした。思い返してみれば、キャラクターごとの風貌など"演じ分け"にそれほど強烈な差がないことも珍しいことだと思います。

『刑事ジョン・ブック/目撃者』へ出演するにあたって、ハリソン・フォードはフィラデルフィア警察殺人課へ実際に潜入し、現職刑事に同行して夜間の捜査活動に参加した(DVD収録「ピーター・ウィアー監督インタビュー」より)そうですが、彼の演技からは所謂"なりきり臭さ"が感じられません。

これはあくまでも私のイメージなのですが・・・ハリソン・フォードという役者は、自分を無理に役へと近づけるタイプではなく、役を自分に引き寄せてその中にある彼自身を表現するタイプの俳優なのだろうなと思います。

そういった意味で、実際に大工を生業としていたフォードが『刑事ジョン・ブック/目撃者』において見事なカーペンターぶりを披露したことは、彼の肉体的な実在感やそこから発せられる人間的な温かみが、アーミッシュ総出で納屋を建てるという印象的かつ象徴的なシークエンスを更に生き生きとしたダイナミックなシーンへと昇華させた気がするのです。






ところで、この映画に出てくる「アーミッシュ」とは、近代的な生活を一切排除した質素な生活を保持しているキリスト教の一派であり、アメリカではペンシルバニアなどに数万人居住しているといわれています。

映画の冒頭とお終いに「英国人には気を付けろ(You be careful out among the English.)」というセリフが出てくるのですが、このイングリッシュと は、アーミッシュが非アーミッシュのアメリカ人を指す呼称と言われており、この言葉からもわかるように、彼らは「アーミッシュ」と「アーミッシュではない人」との間に自ら一線を引いています。もちろん【非暴力】を実践するアーミッシュの人々と「銃」という暴力をもって土足で踏み込んでくる【力】とを見せつけられるこの映画では、どちらが平和的であるかは一目瞭然です。



ただ、再見時にちょっと興味深いなと思ったのは『刑事ジョン・ブック/目撃者』ではアーミッシュを単なる牧歌的でのどかな共同体のようには描いていないところなんです。

「非アーミッシュ」であるブックに惹かれつつあるレイチェルが「汚れ者になるな」と釘を刺されるシーンがあります。"汚れ者"は同じ食卓に座れず、手から何も与えられず、教会へ行くことも許されないという過酷な掟(Ordnung)によるShunning(規範に反したメンバーを集団で排斥することを指す共同絶交のこと)がある、というインパクトの強い描写を挟んでいます。

アーミッシュ指導者に禁錮15年、対立する信者への襲撃で【AFPBB News】
実際今年2013年2月、アメリカのオハイオ州にある小さなアーミッシュの共同体の中でも"平和的ではない"事件が起きています。

一方で、汚職に手を染め、ブックの居所を知ろうと彼の相棒に詰め寄るシェイファー本部長は自嘲気味にこう言うのです。「俺たち警察もアーミッシュみたいなもんだな。信者の集まりで、掟を持ったクラブだ。ブックは、俺たちのルールを破ったんだ("We're like the Amish. We're a cult too. Well...a club. With our own rules. John has broken those rules.")。


アーミッシュの"掟"を破ろうとまで決意するレイチェル。そして刑事仲間の"ルール"に従うことなく正義を貫こうとするブック。二人は生きる環境や立場、文化的な背景などは違えど、人間として互いに共鳴する部分が多かったのではないでしょうか。





≪※ネタバレ注意です≫
因みに、DVD収録の監督インタビューによると、当初はラストで二人が別れるシーンにはセリフが台本2ページ分もあった(!!)といいますが、言葉なしでも感情が伝わるはずだとしてセリフはすべて省略されたのだそうです。あのシーンで二人がベラベラと喋るなんて、今となってはとても信じられませんよね(笑)。そして、最後にアレクサンダー・ゴドノフ演じるダニエルがブックと入れ違いに道を歩いてやってくるシーン。これは、この物語のとるべき自然な結末として、やがてダニエルとレイチェルが結ばれることを示唆しているのだそうです。エンディングに最も悩んだというウィアー監督、お見事でした!




グリーン・カード

トゥルーマン・ショー

ピクニック at ハンギング・ロック


『グリーン・カード』ではアメリカ永住権取得問題を、『トゥルーマン・ショー』では現代メディアの在り方を、何気ないような、でも本当は誰もが社会問題として気づいている点を独特の観点&エンターテイメント力で描くピーター・ウィアー監督。オーストラリア時代に撮った1975年作品『ピクニック at ハンギング・ロック』の恐ろしいほどの優美さ、眩暈するほどの映像美、忘れられません。



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  2013/08/20 | Comment (6) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit

Comment


こんにちわ

はなまるこさんがおっしゃるように、ハリソン・フォードは色んなキャラを演じ分けてますよね…。

この映画、懐かしい♪
この頃のサスペンス映画は傑作揃いでした☆
久しぶりに再見したくなりました\(^-^)/



ケータイからなので、短いコメントでごめんなさいm(_ _)m

mia☆mia |  2013/08/23 (金) 15:48 No.157


はなまるこより

mia☆miaさ~ん!
携帯からわざわざご訪問いただき、コメントまで残していただきまして
本当にありがとうございました!!お手数でしたでしょうに・・・・i-201感激です~i-237
(あ、ここで言うのもなんですが私もガラケーなんですよ(笑)ウフフi-178)
mia☆miaさんのPCが早く良くなりますよーにi-190

>この頃のサスペンス映画は傑作揃いでした☆
mia☆miaさんも以前書かれていましたが、80年代の「シー・オブ・ラブ」なんかも大好きです。
80年代のサンスペンスもの、ムードとか色気があっていいんですよねぇぇ。
30年近く前の映画になってしまうのか!と思うと卒倒しそうになりますが・・・(笑)

mia☆miaさんへ★ |  2013/08/23 (金) 19:57 [ 編集 ] No.158


こんにちは!

なにかの映画の本のインタビュー記事で読んだの
ですが、たしかハリソン・フォードって、そもそも
映画にはあまり興味がないらしんですよね、映画は
別に好きではなかったけど、お金が(大工より)
いいからあくまで
職業としてやっているみたいな(笑)

だからあくまでハリソン・フォードは、ハリソン・フォード
なのかな~と作品を観ていて思うことがあります、
大工じゃなくて、宇宙の密輸業だった、ハリソン・フォード、
大工じゃなくて、考古学者になった、ハリソン・フォード。
と、どれも結局ハリソンなんですよね。ただ、そこがいいんですよねきっと。

タマジロー |  2013/08/24 (土) 09:52 No.159


はなまるこより

タマジローさん、こんばんは~!

そうそう、ハリソン・フォードっていつ見ても「ハリソン・フォード」なんですよねぇi-179
でこれが"悪い意味ではない"という俳優さんって、ほんと珍しいなぁと思います。

>お金が(大工より) いいからあくまで 職業としてやっているみたいな(笑)
あははは!確かに大工よりは良いギャラでしょうね(笑)!
でも映画にそれほど興味がなくてもこれだけビッグな映画を連発できているなんて
やっぱり彼の性格や運なんでしょうねぇ!スゴイ!
納得のいく映画の撮影以外ではずっと農場住まいをしているというのもいいですよねぇ。
最近は不自然に若返ることなく、年を重ねた枯れた感じが
いい味になっているなぁ~と思いますi-189

タマジローさんへ★ |  2013/08/24 (土) 21:55 [ 編集 ] No.160


アーミッシュについて

より知ることができました。
納屋を建てるシーンはホント、自分たちでやるんだぁと一瞬時代がわからなくなったほどで。すぐそばに便利な生活を送る”英国人”がいるのに、自分たちの生活や信仰を守るのは尋常なことではないですよね。
”汚れ者”の意味や実際に起こったという事件も、そういう無理からくるものなんでしょうか。そう考えると、自然な男女のありかたにどうしようもなく惹かれてしまうのは当然かもしれません。
セリフなしで語るラストシーンも監督の手腕が光ってました!

宵乃 |  2017/07/07 (金) 12:45 [ 編集 ] No.468


はなまるこより

宵乃さんこんばんは!
こちらにまでお越しいただき、ありがとうございました。
暑さに負けてパソコンを開くまでに至りませんでした・・・・ゴメンナサイ!!!

キリスト教もですねぇ、色々ありますよねー。アーミッシュは近代文明を一切排除するという"異質さ"が際立っていますね。そこに生まれれば、きっとそれが当たり前として思えるのかもしれませんが、でも外部との接触を完全に断ち切っているわけではないので、成長して外の世界を見た時にどう感じるんでしょうね・・・

そこは"信仰心"といった私には理解し難い世界の話になるのかもしれませんが、やはり「汚れもの」として罰するなど閉鎖的な世界に生きていくにはそれなりの覚悟はいるかもしれませんね。それだけに、レイチェルの想いは偽ることのできない本物だったのだろうなぁと感じます。この映画、一応サスペンス映画なのでしょうけれど、ロマンスものとしても素敵でしたね!

宵乃さんへ★ |  2017/07/09 (日) 22:05 [ 編集 ] No.471

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