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『ローズランド』 (1977/アメリカ)

   ↑  2012/06/10 (日)  カテゴリー: ロマンス、ドラマ



ローズランド VHS


●原題:ROSELAND
●監督:ジェームズ・アイヴォリー
●出演:テレサ・ライト、ジェラルディン・チャップリン、クリストファー・ウォーケン、ヘレン・ギャラガー、ジョーン・コープランド、デヴィッド・トーマス、リリア・スカラ、コンラッド・ジャニス、ドン・デ・ナテイル 他
●ニューヨーク東52番街のダンスホール“ローズランド”に集う人々の人間模様を「ワルツ」「ハッスル」「ピーバディ」の3つのエピソードで綴ったヒューマンドラマ。



ダンスホール「ローズランド」を舞台にした映画とはいえ、飛び上がりたくなるようなウキウキした作品ではなく、老いや死を見つめたエピソードが3つ。

正直、枯れたお話だな~と思ったのですが、今や名匠と言われるジェームズ・アイヴォリー監督が活動拠点をイギリスへ移す前のアメリカ映画作品と知って、この映画に対するイメージもガラリ。ジェームズ・アイヴォリー監督ってイギリス人じゃなかったんですねぇ。

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だって『眺めのいい部屋』(1986年)とか『モーリス』(1987年)とか『ハワーズ・エンド』(1992年)、『日の名残り』(1993年)なんていう【ザ・イギリス映画】作品で、ヘレナ・ボナム=カーターやヒュー・グラント、アンソニー・ホプキンス、エマ・トンプソンなんていう【ザ・英国人俳優】を使い放題のイメージがあったので、勝手にイギリス人だと思い込んでいましたが、カリフォルニア生まれの米国人でした(父親がアイルランド系)。






1978年の『ディア・ハンター』でブレイクする直前の美しすぎるクリストファ・ウォーケン(但しヒモ役)が、女性たちの心をかき乱してくれます。"細やかな気遣いができる"という彼の心の揺れを、ポーリーンはどこまでわかっていたんだろう?彼を一番必要としているのは自分、贅沢が身に付いた彼が自分から離れては生きていけないことも知った上で。年老いて孤独と向き合う女性の不安を強烈に感じさせてくれたエピソード「ハッスル」。



『ある日どこかで』でも見せてくれたテレサ・ライトの、年を重ねても輝く純粋な美しさと無邪気さに思わずホットするエピソード「ワルツ」。追憶にひたるメイと彼女に寄り添うスタンの二人の歩みという1クッションがあって、この映画に柔らかな光が灯る。

そして老いと死について綴られる最終エピソード「ピーボディ」。『野のユリ』で厳格なシスターを演じたリリア・スカラが、キンチョーのCMで見るような関西のオバチャンみたいでびっくりしたけれど、このローザという女性のように、どんなにお腹が出て胸が垂れて二の腕がプルプルしていても、一緒に踊りきれる相手がいるっていいなと。ただそれは「ステキ~」なんていう軟な感情ではなく、ドイツ訛りが強いこの女性が「死」と最後まで踊り切る強さを持っていたことに平伏するばかり。彼女のパートナーだったアーサーは幸福だったと思う。




1970年代のニューヨークは市の財政危機による不況、治安の悪化や警察の腐敗、大停電など・・・ベトナム戦争の収拾とウォーターゲート事件による混乱という国家の政治状況とも重なって荒れに荒れており「最悪の時代」とも呼ばれていました。『ローズランド』米国公開翌年の1978年には、赤軍派に所属するグループが英国からの交換留学生をこのローズランドから誘拐、薬漬けにして殺害するという痛ましい事件も起こっています。



■1959年の米国映画『夜を楽しく(PILLOW TALK)』(ロック・ハドソン&ドリス・デイ共演)から1シーン

 
■左:1970年代はディスコブームに。ローズランドも例外ではなかった 
■右:2011年8月“4 INTIMATE NIGHTS WITH BEYONCÉ” キャパが僅か2500人というでチケットは22秒で売り切れたという


だからこそ、老舗のダンスホールに集い、過ぎ去りし"古き良き日々"の思い出の中で踊りたいと願う彼女たちの思いは、そんな時代性を考えると何とも切なくなってしまいます。

この映画は、ニューヨークという大都市の老舗ローズランド・ボールルームを舞台としながら、どこか移り変わりゆくアメリカの一つの時代の終わりを感じさせるものがあります。それは、時代背景のせいなのかもしれませんし、もしかしたらアメリカを離れるアイヴォリー監督の「別れ」の視点なのかもしれません。その中に、当時流行しつつあった「女性の自立」という新しい光をアイヴォリー監督はジェラルディン・チャップリンに託していったところに、私は少しだけホッとできました。だって"哀愁"だけでは、やはり寂しすぎますもんね。

ローズランド@映画生活




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  2012/06/10 | Comment (2) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit

Comment


『眺めのいい部屋』の記事とかあるかな~と探してみたら、こちらの作品を見つけました!

この監督さんは、わたしも漠然とイギリス人だと思ってましたよ~。イメージ変わりました。そうか、アメリカ人だったのか…。子供の頃からイギリス映画が好きだったり?

>美しすぎるクリストファ・ウォーケン(但しヒモ役)

ごめんなさい…つるっとした若い優男って苦手なんですよね。
最近のちょっと変わったおじさんなウォーケンさんの方が好きです
(笑)

>年老いて孤独と向き合う女性の不安を強烈に感じさせてくれたエピソード「ハッスル」。

そうですよね、わたしもこういう目線で見れば映画として楽しめたかも。ヒモは嫌い!という目で見てしまったからなぁ。

>『野のユリ』で厳格なシスターを演じたリリア・スカラが

えぇ~!!!
あのローザとシスターが同じ役者さん!?
これが一番ビックリしました。この作品でこのエピソードが最も印象に残ってます。ホント、アーサーは彼女といられて幸せだったと思います。

>老舗のダンスホールに集い、過ぎ去りし"古き良き日々"の思い出の中で踊りたいと願う彼女たちの思い~

う~ん、公開当時のアメリカはそんな時代だったんですね。
確かに、そんな時代背景を考慮してみると、ますます彼女たちの想いが迫ってきそうです。
アイヴォリー監督にとってのアメリカ最後の作品というのもぜんぜん知りませんでした。
映画ってちょっと視点を変えると違った側面が見えてきて面白いです♪

宵乃 |  2014/11/27 (木) 13:19 [ 編集 ] No.320


はなまるこより

宵乃さんこんにちは♪コメントありがとうございました。

> この監督さんは、わたしも漠然とイギリス人だと思ってましたよ~。イメージ変わりました。そうか、アメリカ人だったのか…。子供の頃からイギリス映画が好きだったり?
本当に。私もイギリス人だとばかり思っていたのでビックリでした!ま、お父さんがアイルランド系ということで多少ルーツはあるのでしょうが、お母さんはフランス系で、本人が生まれ育ったのがアメリカで、さらに40年以上ともに映画を作り続けてきたのがインド人パートナーという・・・何色にでも染まれる環境ではあったのかもしれませんね。

> ごめんなさい…つるっとした若い優男って苦手なんですよね。
> 最近のちょっと変わったおじさんなウォーケンさんの方が好きです(笑)

これすっごくわかります(笑)ツルっとしてる・・・・・(笑)!!
私も"ヘン路線"にいってからのウォーケン様好きです。
意外なコメディとか、平気なお顔でお出になっているところがカッコイイですよね!

> えぇ~!!!
> あのローザとシスターが同じ役者さん!?

女優ってほんとスゴイですよねぇぇ。二作品とも、或る意味強烈なキャラクターを演じているのもスゴイですよね!私もそんなことを全く知らずにこの映画を観ていたので、意外なところで「野のユリ」が出てきてビックリしました(笑)

> 確かに、そんな時代背景を考慮してみると、ますます彼女たちの想いが迫ってきそうです。
宵乃さん、私学生時代はアメリカの政治史を専攻していたんです。でもね、映画と重ねて観るようになってからは、"知識"だけで考えていた歴史と、普通の人々(ま、映画の中のお話ですけど)がその時代にどんな風に生きていたのかは、また全く別の話なんだなぁと思うようになりました。"荒れに荒れた酷い時代だった"とテキストで習って勝手に暗い時代だと思い込んでいら、こうやってダンスホールで踊っていた人の気持ちなどには考えも及びませんもんねi-201

私もいろいろな面から観た時の面白さに気が付けて、映画って有難いなーと思います♪

宵乃さんへ★ |  2014/11/28 (金) 08:15 [ 編集 ] No.321

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