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『大人の見る絵本 生まれてはみたけれど』 (1932/日本)

   ↑  2013/02/27 (水)  カテゴリー: コメディ


大人の見る繪本 生れてはみたけれど [DVD]


●監督、原案:小津安二郎
●出演:斎藤達雄、吉川満子、菅原秀雄、突貫小僧(青木 富夫)、坂本武、早見照代、加藤清一、小藤田正一 他
●東京の郊外に引っ越してきたサラリーマンの一家。近くには父親の上司の家もある。さっそく子どもたちは近所のガキ大将になり、その上司の息子も手なずける。ところが、父親はなぜか上司相手に卑屈な態度をとっていた。子どもたちにはそんな父の姿がたまらなく我慢ならなく・・・。子供の素直な視点から、肩書きに振り回されるサラリーマン社会の悲哀をユーモアを織り交ぜ描く。小津安二郎が28歳の時に撮ったサイレント映画作品。




隣りで一緒に座っていた子どもが画面をジーっと見て「あれ?聴こえないねぇ。音大きくしようか」と言ったので笑ってしまった。子どもはまだ漢字が読めないのでト書きが出ると「今なんて書いてあった!?」といちいち聞いてきてもう大変。昭和7年、小津安二郎監督のサイレント期を代表する映画を幼児とワァワァ言いながら観ました。



でも、就学前の子どもだからこそなのかな、無声映画の内容(ただしコメディパート部分だけど)をちゃんと理解して笑えるんだなーと思いました。音声に頼ることの出来ない部分を"画"で見て理解するという、サイレント映画ならではのわかりやすさなんででしょうね。

そう、「大人の見る繪本」というサブタイトルがありますが、本当に絵本みたい!
軽快な音楽を聞きながら口元をみてセリフが多少わかったりするのも、日本の映画ならではの有難さですね。

ヤンチャ坊主たちが喧嘩したり小突きあったりしながら、上手に年功序列のグループを作って遊ぶ「こどもたちの世界」を描いた前半部分は本当に可笑しくて「オナカヲ コワシテイマスカラ ナニモ ヤラナイデ下サイ」って(笑)、こんな大らかさがいいなぁと思いました。子どもたちもみんな純真で、ホント可愛いもんです。





「偉い人になりなさい」「ぼくは偉くなるんだ」

こんなセリフが幾度となく出てきますが、むかしの日本の映画や小説で言う「偉い人」というのは今の感覚よりもずっと純粋ですね。


家長として家族の柱であるお父さんの存在や、そんなお父さんを尊敬している子供たち、控え目ながらいつも家族のことを考えて優しく見守ってくれるお母さん。

こどもたちにとって当たり前だったそんな風景が「大人」と「こども」の世界が交差した"現実"の世界を前にして揺らいでしまう。大きくて強かったお父さんが、一人の人間として見えてくる。着替え途中のおとうさんの靴下がずり落ちているのを微妙な気持ちで見てしまう、こどものちょっと困惑したショットなど。そんな瞬間を『生まれてはみたけれど』という映画では、ほろ苦く、そして温かな視線で見つめています。

子どもの世界にも順列があるように、大人の世界にはそれ以上に確固たる上下関係があることを知ってしまい、ぼくたちの"強い"お父さんが"弱い側"にいることに我慢ならない、そしてそれがどうにもならないことが悔しくてならない。お父さんは強いはずなのに。ぼくはお父さんのようにはならない、絶対偉くなってみせる。そんなこどもの気持ち。

理不尽な現実をこどもに指摘されてお父さんは激怒してしまうものの、その後に込み上げてきた感情は、きっとこどもを落胆させてしまった寂しさと、そしてこどもが立派に成長していることを嬉しく思う気持ちだったんだろうなと思います。涙の跡を残して眠る我が子の寝顔を見つめる両親の表情は本当に切ないものです。



お父さんと一緒に食べたおむすびはどんな味がしたんだろう。いつかこのおむすびのことを思い出す日がくるんだろうな。そして「お父さんは本当に立派な人だったんだ」とわかる日がきっとくるんだろうな。

物語の最後の最後、上司の家の子どもに「本当は君の家の方がえらいんだよ」と言ったこどもの表情を見たら、なんだかホロッときてしまいました。こどもが大人に追いついた瞬間なのだなぁと。



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自転車泥棒 [ ランベルト・マジョラーニ ]


ふと1948年のイタリア映画でヴィットリオ・デ・シーカ監督の『自転車泥棒』という作品を思い出してしまいました。

敗戦直後のローマを舞台にした時代も国も異なる物語ですが、こちらも父と息子の小さなドラマです。ラスト、こどもが自分の涙を拭い、無言のまま父親の手を取り、寄り添って歩くシーン。セリフはありませんが子どもが父親をかばい、理解し、そして追いつく瞬間です。子育て子育てというけれど、本当は親が思うよりずっと早く、子どもはいつの間にか成長しているんだろうなと思うのです。切ないなぁ・・・・



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  2013/02/27 | Comment (0) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit

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