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『リンカーン弁護士』 (2011/アメリカ) ※全力でネタバレしています!!

   ↑  2013/03/14 (木)  カテゴリー: サスペンス、ミステリー



リンカーン弁護士 [マシュー・マコノヒー]


●原題:THE LINCOLN LAWYER
●監督:ブラッド・ファーマン
●出演:マシュー・マコノヒー、マリサ・トメイ、ライアン・フィリップ、ジョシュ・ルーカス、ジョン・レグイザモ、マイケル・ペーニャ、フランシス・フィッシャー、ボブ・ガントン、ウィリアム・H・メイシー、ブライアン・クランストン、ミカエラ・コンリン 他
●高級車リンカーン・コンチネンタルの後部座席を事務所代わりにLAを忙しく駆け回り、"司法取引"を最大限に利用して軽い刑で収める得意の戦略で依頼人の利益を守るやり手弁護士、ミック・ハラー。ある時、資産家の御曹司ルイスの弁護というおいしい話が舞い込む。事件はルイスが女性を殴打し重傷を負わせたとされるもので、いつものように司法取引をまとめるだけで高額の報酬が舞い込むはずだった。ところが頑なに無実を訴えるルイスは司法取引を拒否し、ミックの戦略に狂いが生じ始める・・・。アメリカを代表するハードボイルド&ミステリー小説の巨匠マイクル・コナリーの同名ベストセラー小説の映画化。



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その昔、ジョン・グリシャム原作の法廷サスペンス『評決のとき』で人種問題に毅然として挑んでいく新米弁護士役が印象深かった"あのマシュー・マコノヒー"が、出だしこそ"軽めでいい加減なチョイワル弁護士"なんていう役柄を飄々と演じているのを見て、ホント引っ繰り返りそうになりました。

大学時代、実際に弁護士を志望していたというマコノヒー。アメリカ映画の十八番ジャンルともいえるリーガル・サスペンスにおいて、新たなマコノヒーのアタリ役となったのでは!?それくらい、彼はこの主人公にリアルな命を吹き込んでいて、私は最後までまったく目が離せませんでした。この『リンカーン弁護士』、一見軽めな滑り出しですが、次第に事件の絡繰りが見えてくる中盤からはかなりハードな法廷劇に突入します。この映画は、スゴイ。







主人公ミック・ハラーの描き方がすごくいいんですよねぇ。
とある事件によって追い詰められていくハラーが、以前自分が担当した凶悪殺人犯に対して検察側が未解決殺人事件のぶんまで加えて証拠をでっち上げていたことを怒り、「司法制度ってのはそんなもんじゃないだろう!」と検察と警察官を激しく批判するシーンがあるんですが、あぁ彼なりの弁護士としての在り方、法との向き合い方に信念があったのだなぁ、と。しかも、それは単なるキレイ事などではなく、裏社会の力をも利用する根性や図太さなんかもあるわけで、ある意味ドス黒いまでの凄味を感じさせる強烈な弁護士像が見事に描かれています。

また、検事で元妻のマギーと離婚している→けれども娘も含め愛情をいまだ抱いている、という設定だけでも彼の弁護士としての生き様や過去が透けて見えるよう。マギー曰く「私は社会のゴミを捕まえるけれど、あなたは弁護士で彼等を野放しにする」




マリサ・トメイ(すごく素敵な歳の重ね方をしている!)以外にも、胡散臭さいっぱいのジョン・レグイザモや、今回は男くささプンプンでビックリのウィリアム・H・メイシー、そしてライアン・フィリップのサイコっぷりも素晴らしい。あ、「BONES」のアンジェラ(ミカエラ・コンリン)も出ていて嬉しかったですねぇ!






撮影技法的にはドキュメンタリータッチで撮られているため長回しも多く見られ、カメラがぶれ過ぎるのがちょっと技巧的すぎるかな?と気にはなりましたが、セリフを言う人物の顔をまるで食い入るようにぐっとアップにする効果はすごく効いていて、思わず身を乗り出して観てしまいました。

幾重にも重なった、そして畳み掛けるようなサスペンスの連続にもドキドキです。最後まで観たあとに再度オープニングから見直すと、きれいに張られた伏線の数々に感動!見た目は軽めだけれど、なかなか高難度の映画で最後の最後まで良い意味でキレイに裏切られました。人間ドラマ、サスペンス、アメリカの司法制度について・・・・と、二度三度観ても楽しめる映画でした。音楽もめちゃくちゃ恰好よくて、ほんと大好き!

そして本国アメリカでも『リンカーン弁護士』はかなりのヒットだったようで、TVシリーズの制作や映画続編の話が着々と進んでいる様子。もちろんマコノヒーも映画続編での続投を大いに望んでいるとこのと。これは嬉しい!不敵なミック・ハラーにまたぜひ会いたいなぁ。



※それでは最後に『リンカーン弁護士』でキーワードとなる"秘匿特権"について。
以下は『リンカーン弁護士』のネタバレ、内容に深く関わりますので、未見の方やこれからこの映画を観よう!と思われる方はお控えいただくことを強くオススメいたします。



           ↓  かなりネタバレ注意  ↓




           ↓  かなりネタバレ注意  ↓




ハラーが過去に担当したドナ殺害事件の真相(マルティネスは無実で真犯人はルイス)を明らかにしたくても、現在の依頼人であるルイスを告発することはできないし、もしそれを検察側に言えば弁護士資格を失ってしまう。「秘匿特権」があるため証拠も開示出来ない。しかもマルティネスの無実を信じなかったのは自分。このままだとルイスはまた無罪に、マルティネスは冤罪を被ったままになってしまう・・・。

そこでハラーの大逆転劇、検察がコーリスという反証人を立てることを利用して、
①このコーリスの証言から警察には過去のルイスの悪事(ドナ事件)を気付かせ、
②さらに本件の検察側ミントンにはタレコミ屋のコーリスという"汚い手段"=偽証の疑いをかけさせ、ルイスを「暴行容疑」としては再訴不可能な控訴棄却という形で「無罪」とし、新たに「殺人容疑」で逮捕させるという・・・・うーん、書いてみるとヤヤコシイですが、これは素晴らしい一発逆転劇。


ですが、この「秘匿特権」とはなんだ!?
■Attorney Client Privilege(弁護士・依頼者間の秘匿特権)
法律上の助言を求めるにさいし、attorney (弁護士)とclient (依頼者)との間で交わされたコミュニケイションは、それに関する証拠提出やdiscovery (開示手続)での開示を拒否することができるというprivilege (特権).
【参考】英米法辞典(東大出版会)より

日本で言うなら「守秘義務」みたいなものでしょうが、アメリカの民事訴訟では「ディスカバリー」という証拠開示手続き(原告及び被告が相手方に証言や証拠の開示を要求することができる)があり、トライアル(正式事実審理)に先立って訴訟の争点を明確にし、隠し事なく争点整理が出来るという合理性があります。その際、この秘匿特権が適用されるものは開示しなくていいわけなんですね。つまり、ルイスがハラーの前で「あの事件はおれがやった」と言ってもハラーは誰にも言えない・・・


※ただし、弁護士が依頼人の告白を秘匿するこのルールには例外があるそうなんです。(*注1)
「弁護士自身がこの知識によって危険にさらされる場合」あるいは「計画中でまだ実行されていない犯罪に関する知識を得た場合」には、依頼人に不利な"告白"でも当局に通報せねばならない。他にも「クライアントが弁護士との会話で違法行為や犯罪行為を認めたり、弁護士に弁護士倫理規定違反行為を強いたりした場合」は、弁護士はこの会話を秘匿特権として扱う義務はない。
これ、どれかルイスの行為に当てはまらないのかなぁと思わず考えてしまいました。


そう、『リンカーン弁護士』では秘匿特権というのも一つのキーワードになっていますが、今回このレビューを書いていてもう一つ感じたのは「大事なのは"契約を結んだ"ということだ」というハラーの言葉。サインを交わした以上存在する法の重さは、訴訟社会、弁護士社会ともいえるアメリカの厳しい一面を表しています。弁護士の役割とは依頼人の"利益"を第一にすること。ハラーはルイス・ルーレと交わした契約を、本件に関しては「無罪」として遂行しました。しかし、ここに法と現実の間にある恐ろしい矛盾が生じるため、ハラーの苦悩が生まれ、これがスリルとサスペンスとなりこの映画の緊張感を生み出しています。

映画パンフレットによると
主人公ミックと容疑者ルイスの対決シーンについて、マシュー・マコノヒーは「すべてリハーサルなしで臨んだ」と語り、その理由は「その場その場でお互いの演技にキャラクターとして反応することが重要だと思った」からとしている。また、出来については「とてもうまくいったと思っている」と述べている。
とのこと。エンターテイメント性もある映画でしたが、どこか生々しさが漂う雰囲気は、彼らによる迫真の演技によるものが大きかったのですね。納得!!






*注1:秘匿特権の例外について

アメリカドラマ「LAW & ORDER:犯罪心理捜査班」のシーズン2-第4話「不釣合いな夫婦」というエピソード。主人公のゴーレン刑事が、"秘匿特権"を盾に証言を拒む弁護士に対し【Rule 1.6 of the ABA】という言葉を持ち出して「この場合は話す義務があるのではないか?」と迫ります。 (「ABA」とは"American Bar Association"の略でアメリカ法曹協会のこと)

「でもこの場合、AB-A行動規範 1.6が適用される。弁護士は倫理に従い行動しなければならない。"機密"を優先するとしたら、人命にかかわる事件に協力を拒否したことになる」

弁護士とクライアントとの関係は「秘匿特権」があるとはいえ、そこはなかなか一筋縄ではいかないことも多そうですね・・・



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  2013/03/14 | Comment (4) | Trackback (1) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit

Comment


早速おじゃまさまです

さすが!ここまでレビューが書ける方ははなまるこさん以外に居ない!
レビュー通り越して、やぱ論文の域です!!
すごく勉強になりましたぁ。
でも、とことんまで理解はできない秘匿特権。難しいデス@
この法律を上手く脚本に使ってましたよね。

マコノヒー。いぃわぁ。
この映画では惚れ込みました。
メイシーのキューティクルにも惚れましたけど・・・。

映像の雰囲気も好きでした^^

mia☆mia |  2013/03/15 (金) 16:38 No.104


はなまるこより

mia☆miaさん♪さっそくのご訪問をありがとうございました☆
感謝感謝です~i-178

>とことんまで理解はできない秘匿特権。難しいデス@

そうなんですよぉi-201
日本の弁護士さんの解説を読んでみたりもしたのですが
日本の司法制度にはないものでもあり、
秘匿特権については色々と難しいことが多いみたいです。
でもこれが、まさにmia☆miaさんの仰る通り、脚本の中でうまく活かされていましたよね♪
アメリカの司法制度の映画なので日本では解りづらいから未公開・・・とかにならなくて
本当にヨカッタ!!続編、楽しみですよね♪

>メイシーのキューティクルにも惚れましたけど・・・。

v-411いや、ほんと(笑)それを見るだけでも価値のある映画でした!!

mia☆miaさんへ★ |  2013/03/15 (金) 20:34 [ 編集 ] No.105


こんにちは!
久しぶりに手に汗握る法廷劇を見ることができました。はなまるこさんの大好きな作品という事で楽しみにしていたけど、期待を上回る面白さでしたよ~。

>「司法制度ってのはそんなもんじゃないだろう!」と検察と警察官を激しく批判するシーン

わたしもここで痺れました!
マコノヒーのファンになりそうです(笑)

秘匿特権などは難しくて全部理解できたか自信ありませんが、詳しい解説に頭の中を整理する事ができました。
法廷でのハラーの逆転劇は本当に素晴らしかったですね。ここで終わっても満足なくらい。
結局、法廷外でもやりあう事になったのが個人的に残念でしたが…。

でも、見終わっての充足感はかなりのもの!
見られて良かったです♪

宵乃 |  2014/12/29 (月) 14:46 [ 編集 ] No.332


はなまるこより

宵乃さん、こんばんは!

>久しぶりに手に汗握る法廷劇を見ることができました。
宵乃さんも手に汗握りましたか!そうですよねー、これ本当に最後まで目が離せない一級品のリーガルサスペンスでした!!Gyaoもいい仕事しますね☆(笑)

>わたしもここで痺れました!
>マコノヒーのファンになりそうです(笑)

あのセリフ、宵乃さんも痺れましたか~i-190
もうこうなったら、躊躇せずに大ファンになっていいと思いますよ(笑)!

そういえばマシュー・マコノヒーって、長い間ちょっとした二枚目のヘラヘラした感じの俳優だと思っていたのですが、この「リンカーン弁護士」の後くらいから「ダラス・バイヤーズクラブ」でのオスカー受賞だとか、TVドラマ「TRUE DETECTIVE」での高評価など、人気が急上昇している気がします。この映画を観れば、その理由もわかる気がしますよね!

>法廷でのハラーの逆転劇は本当に素晴らしかったですね。ここで終わっても満足なくらい。
>結局、法廷外でもやりあう事になったのが個人的に残念でしたが…。

あーなるほど。確かに法廷で決着をつけておしまい!という形でも綺麗に終わりましたもんね!あそこで「場外戦」に突入するところが、ヤクザな弁護士って感じでちょっと後を引きますね(笑)。

私は、偶然たまたまこの映画を鑑賞したのですが、こうやってドーン!とくる作品に出会えると幸せですよね!宵乃さんのイラストを見られるのも幸せです☆

宵乃さんへ★ |  2014/12/29 (月) 23:29 [ 編集 ] No.334

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