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『扉をたたく人』 (2007/アメリカ) ※映画の結末、ラストシーンに触れています!!

   ↑  2013/05/18 (土)  カテゴリー: ロマンス、ドラマ





【DVD】扉をたたく人[リチャード・ジェンキンス]


●原題:THE VISITOR
●監督:トーマス・マッカーシー
●出演:リチャード・ジェンキンス、ヒアム・アッバス、ハーズ・スレイマン、ダナイ・グリラ、マリアン・セルデス、マギー・ムーア 他
●コネティカット州の大学で教鞭を執る62歳の経済学教授ウォルター。愛する妻がこの世を去ってから心を閉ざしたまま孤独に生きてきた彼はある日、学会出席のためニューヨークへ赴く。そして別宅のアパートを訪れると、そこには見ず知らずの若いカップル、シリア出身の移民青年タレクとセネガル出身の恋人ゼイナブが滞在していた。しかし、彼らはこの時はじめて詐欺に遭っていたと知り、グリーンカード(永住許可証)を持たないために警察沙汰などで国外追放になるのを恐れ、素直に去っていく。だが、あてのない2人を見過ごせなかったウォルターは、しばらくの間この部屋に泊めることに・・・。



はぁぁ~ ・・・・・
先月から精神的・体力的にもクッタクタだったのですが、今日でそのヤマもなんとか越えました!映画はその間、自分のテンションを保つ目的で観続けていましたが、感想は手つかず状態。まぁ、いいやいいや(笑)。書いておきたい映画だけは下書きしておいたので(自分が忘れないために)、今月はその中から幾つかピックアップしていきたいと思います。よっこらしょ!っとね。





『扉をたたく人』という映画は、アメリカで封切られた際には僅か4館のみだったにもかかわらず最終的には270館まで拡大したという、世間でもかなり評判の高い作品です。

・・・なのに。
恐れ多くも正直に言ってしまうと、自分の感じた感想とあまりにも桁違いな差があり過ぎて、まずそれに落ち込みました。ま、でもその理由は自分が一番わかっているので、世間の評判と比べてもシカタナイ。自分に合わなかった映画には、やっぱりそれなりに理由があるものです。


まずはともかく、この映画は内容を盛り込み過ぎだな、とかなり冷静に思いました。
「最初は単に、1人の大学教授と若い音楽家との交流、そして友情の物語を作ろうと思っていた。僕はレバノンに何度か旅行したことがあって、この若き音楽家をアラブ系にすることにした。すると、必然的に移民問題や、アラブ系の人々が現代の米国で直面している状況をじっくりと調べることにつながっていった。それはとても興味深いテーマだった。しかし、この映画は政治的な映画ではない。出発点は人々の交流を描くことだったし、その中でいかに観客を引きつけるキャラクターを作り上げるかということが、僕にとっては一番大事なことだった。2009年6月産経新聞 「扉をたたく人」 トム・マッカーシー監督に聞く



生真面目な人が(そのつもりはなくとも)、ふとした時に見せるユーモラスな一面にはクスっとさせられ、また、相手のリズムを聴きながらそれに呼応してくジャンベ(アフリカンドラム)のビートなど、まるで音楽を通した不器用な会話のようで、そのストーリーだけでも上質で光るものを感じました。それなのに、知り合った若者タレクたちとの交流なのか?自分探しの物語なのか?タレクの母親との恋なのか?はたまた移民問題なのか?と、どれもがすべて中途半端になり、あまりに数多くのストーリーが横並びに盛り込まれ過ぎた気がしました。

また、男女の愛情表現も残念に思いました。
ヒアム・アッバス演じるタレクの母親モナの存在感。パレスチナ出身のシリア人という彼女の背景にあるその重さを考えると、役に寄り添うような彼女のリアルな佇まいは非常に素晴らしいものでした。だからこそ!手を握るだけ、そっと予感させるだけでよかったのに・・・・。男女の愛情表現があまりにも説明過剰でアメリカナイズされすぎていて、そのリアリティに欠ける設定に躓いてしまった私は、結局この映画に惹かれることなく置いてけぼりを食らったというわけです。


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さらに思い切って言ってしまうと・・・
不法滞在、移民、強制送還といったハードな問題がいつも自分のすぐ傍にあったため、どうしても現実問題と重なってしまい、かなりドライな感想しか持てないという原因も大きかったと思います。逆に言えば、私はこの映画を観るにしてはあまりに現実的すぎる感覚しか持っておらず、この映画を"ヒューマンドラマ"として澄み切った気持ちで観るには、残念ながら私は"対象外"だったのだと思います。

法と人間。その間に無情に放り込まれれば、誰だって世の中の不条理や自分の無力さに直面して落ち込んでしまうでしょう。でも、現実に甘んじて不法状態を放置してきた母親のマイナス点(少なくとも私にはそう思える)と、国内経済を実質的に支えてきた"労働力"としての不法滞在者たち、生活が根付いてしまった彼らの存在を見て見ぬ振りをしてきたアメリカという国家のシステム、さらに911テロ以降非常に厳しくなった移民たちの厳しい立場・・・・これら総てをこの物語に【不法移民問題】として設定するには、あまりにバランスがとれておらず、これだけの要素を物語の設定に入れた"安易さ"すら感じてしまうのです。






シリアへ強制送還されるタレク。出国を決意してもうアメリカには戻れないモナ。自身も不法滞在者の恋人。彼らの関係、存在、その物語の展開を思うとかなり重いラストです。

この映画は、ジャンベを叩くウォルターの姿で終わらせています。観る者に余韻を持たせる素晴らしいショットで、多くの人たちの心を静かに揺さぶるものなのかもしれません。が、"現実路線"を歩んできた私にとっては「ちょっとあなた!一人でジャンベを叩いている場合ではないですよ」という気持ちになってしまったのです(普通はここでウォルターの心情を思いやったりするんでしょうね)。

私にとって『扉をたたく人』という映画は「アメリカに住む初老の孤独な大学教授ウォルターがアフリカンドラムという新しい世界の扉を開けてもらい、色々な人々と出会い、光のなかった生活に生きる力が湧き、そして苦しい思いもしました」という物語ではなく、不法滞在者たちがどのような背景を持ってアメリカにやって来るか、そこでどのような生活をし、切り捨てられていくのか?という問題の方が重要に思えてしまったのです。制作側の意には沿わないだろう勝手な観方ですが、自分の中でこの映画に対するテーマや重要度がいつの間にか違ってきてしまったんですね。ウォルターはこの後どんな生活を選択するのだろう・・・・思いは様々に巡ります。

【送料無料】正義のゆくえ I.C.E.特別捜査官/ハリソン・フォード[DVD]


移民や不法滞在者たちの生活をテーマに据えたハリソン・フォード主演の『正義のゆくえ I.C.E.特別捜査官』を思い出しました。この問題に関してのストレートなパンチ力は、今でもズッシリ心に残っています。





【追記】
で、上で文句ばかりを並べてしまった私でしたが、実はこの映画の"心の交流"についてはスゴク気に入ってしまていたんです。わたくし決してツンデレではないんですよ。でもやはり批評家からも評判が良いだけあって、セリフではなく人物や風景の描写を丁寧に重ねていくことによる物語の構成は(イーストウッド作品のようで)とても好感が持てました。

そこで、今回の『扉をたたく人』のレビューを書いたあとに「やっぱりトーマス・マッカーシー監督の他の作品も観てみたい!!」と思い立った・・・・ところまではヨカッタのですが、なんと(これまた批評家にも大好評だった)前作『The Station Agent』が日本では未公開&ソフト化もされていないというじゃありませんか!!うーん、どうしても私は観たいんだ、観たいんだよなー、というかこの目で確認しないと気が済まないんだよー、という心の声に従うことにして思い切ってAmazonで購入。観てしまいました。
    『The Station Agent』(2003/アメリカ)
 レビューはコチラから:『The Station Agent』(2003/アメリカ)

えー、正直に申しますと『The Station Agent』という作品、大変大変気に入ってしまいまして「な~んだマッカーシー監督、やっぱり素敵じゃないの♪」と一人で感動しているところです(笑)。『扉をたたく人』との出会いは無駄ではなかった!ヨカッタヨカッタ






【さらに追記】
『扉をたたく人』を観た後、ボストンで爆破テロが引き起こされました。容疑者とされた兄弟はチェチェンからの移民でした。彼らは合法的に米国に入国し、弟は2011年に市民権も獲得していました。つまり彼らは"不法移民"ではなかったんですね。しかし共和党保守派は【移民法改正法案】(必要な滞在証明書類を持たない移民に「暫定的な法的地位」を付与して就労等を認める一方、国境警備を強化してこれ以上違法入国者を許さないこと)の審議に異を唱え始めました。今回の"移民"によるテロという衝撃がその理由となったのは間違いありません。


思えば『扉をたたく人』という映画がつくられた当時、時代背景からいうとこの映画は2007年共和党ブッシュ政権下での作品ということになります。ちょうど【不法移民の在留資格獲得に道を開く移民制度改革法案】(アメリカ・メキシコ国境の警備を強化する一方で、すでに入国した不法移民に罰金支払いや身元審査を条件に就労の合法化や永住権取得に道を開く包括的な改革)が否決された年でもありました。

この移民法改革は、第1期オバマ政権時代には【大統領令】として「親に連れられて入国し、アメリカで育った若者が一定の条件を満たした場合は、不法入国者であっても一時的な在留資格を与えるというもの」と整備され、さらに2期目に入った今年2013年2月の一般教書においては「不法移民に合法的な滞在資格を与えることなどを柱とした移民制度改革案」として発表されたところでした。『扉をたたく人』制作当時より少しずつ改革が進んできた米国の移民法ですが、ここにきてボストンマラソン爆破テロという厳しい現実が、ただでさえ感情論となりやすい移民問題の前に突き付けられた形となってしまいました。




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  2013/05/18 | Comment (2) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit

Comment


こんにちは♪
わたしも観ました。
はなまるこさんが”良く知っているから”入り込めなかったのと逆で、難しすぎてよくわからなかったです(笑)
最初は音楽を通しての友情を描いた心温まる作品かと思っていたら、どんどん話が別の方向に行って、最後には一体何を伝えたかったのかわからなくて、もやもやしてしまいました。
監督自身も方向転換しながら撮った作品だったんですね。

観終わってから、ウォルターと結婚しても息子は助けられなかったのかと、アメリカの移民制度をネットで調べたりもしたんですよ。それすらも調べないとわからない状態で、たぶん日本人には難しいんだろうと思っていたら評判がよくて驚きました。不勉強が身に染みます!

でも、この映画のおかげで、ボストンテロ事件を知った時に「ああ、これでまた苦しむ移民が…」と考える事が出来ました。これを観なければ、ただ怖いとしか思わなかったかも…。
それに、はなまるこさんと同じでウォルターと彼らの交流の描写は良かったし、『The Station Agent』もいつか機会があったら観てみたいです!

宵乃 |  2013/05/18 (土) 15:09 [ 編集 ] No.117


はなまるこより

宵乃さん、こんにちは♪
わぁ~、宵乃さんと似たような感想を持っていたんだとは!!う、嬉しかった・・・
実はこの記事、あまりに大評判の映画だったためUPするのをかなり躊躇していました。

>最初は音楽を通しての友情を描いた心温まる作品かと思っていたら、どんどん話が別の方向に行って、最後には一体何を伝えたかったのかわからなくて、もやもやしてしまいました。

そうなんですよ、そうなんですよ!!これ、本当にそう思っていました。
「良い話だなー」と思っていたら、中盤からあれもこれもと話が入ってきて
物語がブレてしまった残念な気持ちで観終わってしまいました。
で、調べてみると、ネット上ではものすごい感動の嵐で(笑)。

それに移民制度や不法滞在に関して、宵乃さんのように調べていくと
本当にもっとモヤモヤ感が残るような気もするんです。
宵乃さんの仰る通り、もしかしたら"戦う道"はまだあったように思いますし、
ウォルターの行動もかなり甘くて(それも内に籠った大学教授の"哀しさ"の表れでしょうかi-201)
でも監督も"政治的な映画ではない"と言ってますし
それで【感動!!】といわれても、なんだかほんと困ってしまいました。。。

前作の『The Station Agent』、これは『扉をたたく人』にくらべて
とても小さな個人的なお話だったので、監督の良さが十分に詰まった温かな映画でした♪
いつかNHKなどで放映してくれないかなぁ~!機会がありましたらゼヒ!
宵乃さん、コメントをありがとうございました☆

宵乃さんへ★ |  2013/05/19 (日) 07:13 [ 編集 ] No.118

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