お散歩シネマ 映画の世界へ出かけよう!!映画の数だけ、もっと世界は面白くなる! 

『宇宙人王(ワン)さんとの遭遇』 (2011/イタリア)

   ↑  2013/06/07 (金)  カテゴリー: SF、宇宙、怪獣





宇宙人王さんとの遭遇 [ フランチェスカ・クティカ ]


●原題:L'ARRIVO DI WANG / 英題:THE ARRIVAL OF WANG
●監督:アントニオ・マネッティ、マルコ・マネッティ
●出演:エンニオ・ファンタスティキーニ、フランチェスカ・クティカ、ジュリエット・エセイ・ジョセフ、アントネット・モローニ 他
●イタリア、ローマ。中国語翻訳家のガイアのもとに中国語の同時通訳を依頼する緊急の電話がかかってくる。仕事の内容はおろか場所さえも機密にされ、目隠しで連れてこられたのは真っ暗な地下室。何も見えない中、尋問者の厳しい質問と、それに対する王(ワン)さんと呼ばれる中国語を話す男性の奇妙な回答を通訳していくガイアだったが・・・。



ベネチア国際映画祭で「創造産業賞」(というのがあるんだ!)を受賞するなど、各国映画祭で称賛を集めた異色のSF作品。もしかしたら私、"イタリア映画でSFもの"って実は初めて観たかもしれないなー。

タイトルはどことなくユーモアがあるし、ちょっと話題にもなっていたしで、とてつもなくワクワクして観てみたら「・・・これはもしかしたら、けっこうヤバイのではないか!?」という感想しか浮かばず焦りました。だってこの『宇宙人王さんとの遭遇』でのラストのセリフ、私、正直受け止めきれてませんよ、この映画、政治的に大丈夫なのか!?





・・・どれだけこの映画が波紋を呼んだかについては、以下の通り。
この映画に対し最初に反応したのは、アメリカ【ウォール・ストリート・ジャーナル】。
記事の中で「この映画は中国の経済力と世界における影響力が強まり、西側に困惑と誤解をもたらしたことを示している」 と評論。※New Film Explores Distrust of China

これに対し、北京の夕刊 『法制晩報』 が反応。
「ストーリーには象徴的な意味がある。 通訳は王さんの到来を平和目的だと理解するが、中国語や宇宙語がわからない政府の役人たちは、王さんを侵略者だと決めつけた。(中略) そして安全を理由に王さんを暗室に閉じ込める。 秘密警察はこの宇宙人をもともと理解したくなかったのだ」 とし、映画に中国人の外国進出を重ね合わせた【ウォール・ストリート・ジャーナル】への反論ともとれる主張を載せる。

これに多様な媒体が「台頭する中国への西側社会の不信」「中国人差別を助長する」「できるものなら中国で公開してみたらいい」などと追随、論戦は国際問題にまで発展する。
『宇宙人王(ワン)さんとの遭遇』公式サイトより一部引用



監督は「人は隣人をどれだけ信頼すべきか、偏見とは何か、といった道徳的・倫理的問題を探求したかった。」 と語ったそうですが、いやーそれ以上の意図的なものを感じますよ、ねぇ。いやいや、もしかしたら受け止める側の方がピンポイント攻撃されているのかな。それが狙いなのかな?

今や中国の経済成長力とその影響力は世界各国にまで行き渡り、中国人がいない地域はないんじゃないか?と思えるほど。世界的なあらゆる問題(政治、経済、環境、軍事、人権など)として話題にならない日はありません。それだけに「友好的な態度でやって来た中国語を話す宇宙人」という前提に対して、観る人は(もちろん私も含め)過剰に反応してしまうのでしょうね。どこかこう、笑ってはすまされない、ビターとかシニカルといった表現さえも通り越した、今まさに突き付けられている現実問題として。





イタリアの移民問題はかねてより深刻であり、イタリア人に脅威を感じさせるほど移民人口も彼らの経済活動も増しています。移民の増加が深刻な社会問題を引き起こしているのではないか?治安悪化を招いているのではないか?という懸念はイタリア社会の亀裂を生み出し、更なる悪循環をもたらしていると言えるでしょう。

ただ、それを国家間レベルではなく"個人レベルの物語"として紡いだイタリア映画『ある海辺の詩人—小さなヴェニスで—』(2011年制作)という作品も、今年日本で公開されました。社会学の研究者でもあり10年以上にわたり移民問題についての調査・研究に取り組んでいるアンドレア・セグレ監督によるインタビュー記事のリンクも、参考までに残したいと思います。
『ある海辺の詩人—小さなヴェニスで—』 アンドレア・セグレ監督インタビュー:イタリアにおける“移民”現象は、問題を超えた現実

マタニティ時代から仲良くしている中国出身のママ友がいる私にとっては、やはり『宇宙人王(ワン)さんとの遭遇』とい映画には困惑させられました。"中国"という"国家"に対する感情は分かり過ぎるくらい分かるのですが・・・難しい問題だなぁ。






えー、最後に映画的な話をしますと、この『宇宙人王(ワン)さんとの遭遇』では、『あしたのパスタはアルデンテ』でインパクトのあるお父さん役を演じたイタリア映画界随一の名脇役エンニオ・ファンタスティキーニが、拷問を仕掛ける鬼の局長役として、この過激なイタリアンSF映画を見事に支えてくれています。凄い量の台詞なんですが、私が観る限り机の上に置いた紙を見ながら話しているような気もします(笑)。

それとちょっと気になったのが、主人公の翻訳家の自宅兼職場の様子。
"仕事道具"というべき辞書たちが、なんの書き込みも折れも汚れもなく、パリッパリに綺麗な状態で置かれているのはちょっといただけませんでした。あと、それほど簡単に知らない車には乗らないだろう!とか。出だしにほんの少しで良いから"リアリティ"が欲しかったな~とも思いました。・・・いや、もしかしたらこれはあくまでフィクションなんですよという監督の意図なのかもしれませんけどね。



関連記事

■この記事に関連する映画制作国、地域 : イタリア映画 

FC2共有テーマ : ★イタリア映画★ (ジャンル : 映画

  2013/06/07 | Comment (2) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit

Comment


こんばんは

実は私もラストがショックで、同じような感想を書いている人はいないかと調べてたどり着きました。
そういえば記事があるのは知ってたはずなのに〜。うっかり見逃すところでした。

この作品は「風刺が効いてる」と言われてるけど、これってただの偏見ですよね〜。
ヒロインの行動も、機関側の行動も、感情任せなだけなのに、偶然彼の予想が当たったからって、ヒロインだけがあんな言われよう…。
彼女だけじゃなく、彼女を含む全員に対してならわかるんですが。

>イタリアの移民問題

そこまで大きな問題になってるとは知りませんでした。色々不安があって、こういう映画が生まれたということなんですね!

>主人公の翻訳家の自宅

おぉ、ぜんぜん気付きませんでした。確かに綺麗だったような気がします。そういう細かなところが結構重要だったりしますよね。
リアリティにこだわってリメイクとかしたら、思いっきり重い作品になりそうです(笑)

宵乃 |  2015/07/16 (木) 22:17 [ 編集 ] No.361


はなまるこより

宵乃さん、ご無沙汰しております。
素晴らしいタイミングでコメントいただき、ありがとうございました(笑)!
王さんの映画、放映されていたのですね・・・i-282
(ここ2か月は映画を"封印"していたので全く知りませんでしたi-202)

>この作品は「風刺が効いてる」と言われてるけど、これってただの偏見ですよね〜。
風刺か偏見か、これはイスラム対西欧世界の構造とも似ていて、今一番摩擦が起こりやすい問題でもありますよねi-201 

>ヒロインの行動も、機関側の行動も、感情任せなだけなのに
本当にそうでしたねぇ・・・。この映画も個人対個人の道徳観や偏見を問題にしているというよりも、今現在の「中国」という国に対するメッセージとしかとれなくて、なんだか観終わった後にザラっとした苦い思いだけが残りました。

イタリアは特に移民や難民といった社会問題で大きく揺れており(仕事を奪われるとかコミュニティ問題が起こるとか)、こういった"思い"が映画となったのかもしれませんが、個人の問題と社会の問題は切り離して語るべきだと思うんですよねーi-6
リメイクなんかしたら大変なことになりそうですよねi-282コワイ
そんな人たちがどうか出てきませんように・・・!

宵乃さんへ★ |  2015/07/19 (日) 21:08 [ 編集 ] No.363

コメントを投稿する 記事: 『宇宙人王(ワン)さんとの遭遇』 (2011/イタリア)


  任意 : 後から修正や削除ができます。
  非公開コメントとして投稿する。(管理人にのみ公開)
 

Trackback