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『譜めくりの女』 (2006/フランス)

   ↑  2013/06/28 (金)  カテゴリー: サスペンス、ミステリー


譜めくりの女 デラックス版 [ カトリーヌ・フロ ]


●原題:LA TOURNEUSE DE PAGES 英題:THE PAGE TURNER
●監督、脚本:ドゥニ・デルクール
●出演:カトリーヌ・フロ、デボラ・フランソワ、パスカル・グレゴリー、グザヴィエ・ドゥ・ギュボン、クロティルド・モレ、クリスティーヌ・シティ、ジャック・ボナフェ、マルティーヌ・シュヴァリエ 他
●物静かな少女メラニーの夢はピアニストになること。その実現に、並々ならぬ情熱を注いできた彼女だったが、コンセルヴァトワールの入学試験で、審査員を務める人気ピアニスト、アリアーヌの無神経な態度に心を乱され、散々な結果に。これによって夢を諦めたメラニー。十数年後、美しく成長した彼女は、アリアーヌとの再会を果たす。2年前に交通事故の被害に遭い心に傷を負ったアリアーヌは、演奏に対する恐怖心を拭えず苦悩していた。やがてメラニーはそんな彼女の信頼を勝ち取り、演奏会での“譜めくり”役に抜擢されるのだが・・・。





主人公メラニーの少女時代。美しいブロンドを飾り気もなくまとめ、透き通るように白い肌を持ち、内気だけれど意志の強そうな眼差し。彼女の行動を追ううちに、その奥底に潜む狂気に気付いて一瞬で凍りついてしまった。「ピアノ」と「肉きり包丁」を交互に映し出すショットは視覚的に怖いけれど、緊張感を煽るような高音のピアノが神経を逆撫でする。少女の中に見え隠れする残忍性、凶暴性。




美しく成長したメラニーがアリアーヌの家へと招かれたその日。それまでシックな白をベースとしていた彼女の装いが、コートを脱いだ瞬間初めて黒になっていることに気が付いた時。真っ白な豪邸の中での対比にドキリとした。

無表情なうえ、何をするか分からない彼女の異様な存在感、研ぎ澄まされた空気感にただただ息を詰めて見てしまう。笑顔すら本物なのかどうかも分からない。家庭の中に入り込む"復讐"としては『ゆりかごを揺らす手』のように、若さと美貌で弁護士の夫を誘惑したり子どもを手なずけるなど精神的ダメージを与える手段は容易に思い浮かぶけれど、メラニーの行動はそのどちらにも向かわなかった。それが女としては、一番怖い。





『譜めくりの女』鑑賞前の情報として「ピアニストへの道を断たれたことによる復讐心」からメラニーの行動が始まったのだとばかり思い込んでいたけれど、メラニーがアリアーヌをじっと見つめる眼差しに浮かぶのは単なる"憎しみ"だけでないという気がして、途中から落ち着かなくなってしまった。

少女時代のメラニーはピアノに対して異常なプライドを見せていた。もしかしたら・・・・彼女は著名なピアニストであったアリアーヌへの憧れを抱いていたのかもしれない。失望、憎悪、嫉妬、憐み、軽蔑など、その対象であるアリアーヌに近づくにつれ「破滅させたい、侮辱したい」という暗く歪んだ欲望が彼女を巣食い、突き動かしていったのではないか?とも。憎しみだけではない、もっともっと深く刻み込まれてきたアンビバレンスな情念によって・・・。

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『趣味の問題』や『スイミングプール』といった心をザワつかせるフランス映画たちを思い起こさせる作品でした。人間の欲望の深淵を覗き込み、女性特有の官能性や、ごく近い人間関係に芽生える残酷性などを描き出す、偽りのない繊細さについ惹かれて観てしまうのです。





■追記
ところで、この映画を観ている間「登場人物たちの感情を、表情からはまったく読み取れない怖さのある映画だなー」とは思っていましたが、それはなんとドゥニ・デルクール監督が日本滞在中に伝統芸能に惹かれ、脚本も日本で執筆したということに影響されていたらしい。
「日本の女性のように演技をして」と言いました。というのは私は2004年に京都に6ヶ月間滞在していて、その時に日本の伝統芸能をいろいろ見たり『世阿弥の花伝書』という本を発見して、そこに非常に深い示唆が含まれているなと思い、特に「間」というものに興味を持ちました。
 (中略)
また、動作をゆっくりすること、早くするよりもゆっくりした方がずっと二人の力が大きく感じると思うのでそういったことも頼みました。それから表情については、例えばデボラのちょっとした微笑。その笑みをどういう笑みにするかということに2ヶ月も費やしました。多すぎても少なすぎてもいけない。そういった決定的な微笑みを見つけるのにとても時間がかかりました。凄く難しいことだったので「日本的、日本的」と言いすぎることに反発もうけましたが(笑)  『譜めくりの女』ドゥニ・デルクール監督 インタビュー

表情が読み取りづらいのは、ニコニコペコペコして愛想のある日本人と、堂々とプライドを持って人と渡り合うフランスとの文化の違いかと思っていたら、そうじゃなかったんだ!
・・・ただですねぇ、監督は"日本の女性のように"と仰ってますが、あそこまで日本人も無表情だとは思えないんだけどなー。あれ、もしかしたら、それは日本人の顔がノッペリと平坦だからそう見えるということなのか?平たい顔族だから(笑)!?

「想像力を刺激された!」という点ではデルクール監督にうまく誘い込まれましたが、その舞台裏を知ってしまうと、日本人女性としてはやはり微妙な気持ちになりますなぁ・・・・

■その他 デルクール監督インタビュー記事:
「譜めくりの女」ドゥニ・デルクール監督インタビュー「間」が想像力をかき立てる
『譜めくりの女』ドゥニ・デルクール監督「日本のいろいろなものに影響された脚本」




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  2013/06/28 | Comment (0) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit

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