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【エリック・ロメール映画】1本目 『飛行士の妻』 (1980/フランス)

   ↑  2013/11/05 (火)  カテゴリー: ロマンス、ドラマ
私には「お、これぞフランスの街並み!愛の言葉!」と感じる自分なりの【フランス映画】に対する"原風景"のようなものがあります。あ、もっとも私はフランスに行ったこともないので、かなり偏りのある"イメージ"ということなんですが。

思えばその"原体験"は、アラン・ドロンアやカトリーヌ・ドヌーヴ、ジャンヌ・モローやジャン・ギャバンといったフランスを代表するような名優たちからではなく、どこか素人のような雰囲気を持つ役者たちを使ったエリック・ロメール監督作品から醸し出される、独特の"空気感"から生まれたものだったように思います。

特に私が好きなのは"お散歩系"の2作品『飛行士の妻』と『パリのランデブー』。飾り気のない日常生活の一部をそのまま切り取ったかのような素朴さを持ちつつも、チクっとするような意地悪さや毒気も漂っていたりして。ほんと、何ということのない物語なのに、まるで自分がフランスの街中をぶらぶらと散歩して見かけてきたようなお話だわ!と錯覚してしまいそうな不思議な余韻を残すのです。

六つの本心の話


で、先日図書館で探し物をしていた時、なぜか膨大な数の背表紙の中に「ロメール」の文字が見えた気がして思わず二度見して「六つの本心の話」が置いてあるのを偶然発見してしまいました。"無意識"という素晴らしい脳の働きに感謝!結局、目的の本そっちのけで読んでしまった・・・。といわけで、今日は久々に観た私の好きな懐かしきロメール作品のひとつを書き残しておこうと思います。自分だけのロメール繋がりだ~




『飛行士の妻』 (1980/フランス)

飛行士の妻 (エリック・ロメール コレクション) [DVD]



●原題:La femme de l'aviateur / 英題:The Aviator's Wife
●脚本、監督:エリック・ロメール
●出演:フィリップ・マルロー、マリー・リヴィエール、アンヌ・ロール・ムーリー、マチュー・カリエール、ファブリス・ルキーニ 他
●法律を勉強している20歳の学生フランソワには、秘書の仕事をしている25歳の恋人アンヌがいる。だが、アンヌは不倫相手だったパイロットのクリスチャンに未練があり、しつこいフランソワにはうんざり気味。一方フランソワも、リシューという年下の女の子に出会うのだが・・・。エリック・ロメール監督の「喜劇と格言劇」シリーズ6作の第1作。自然体に映るパリの街角や街並みの風景は、オールロケ&同時録音による撮影によるもの。16ミリから35ミリへのブローアップ。『パリは私を魅了した』を歌うのはアリエル・ドンバル。



15年くらい前でしょうか「シネフィル・イマジカ」時代にエリック・ロメール特集があって、その他の作品と一緒に放映されたんですけれど、この映画だけが一番身近に感じられた覚えがあるんです。ロメールらしく恋する者の身勝手さばかりが、本当に何ということもなく描かれているんだけれど、一見我が儘勝手に人を振り回すようなアンヌには、泣きたくなるほどの彼女なりの"ポリシー"が強烈に感じられて、多分当時の私としてはそんな彼女の気持ちから目を離せなくなったんだろうなぁ。


パリの街角の風景と恋する普通の男女の会話をそのまま切り取ってきた、まるでスケッチ画のような小さな物語。たった1日の話。人生、愛、奇跡、孤独。何が解決されるというわけではなく。ほとんどずっと喋り通しの痴話喧嘩に付き合わされたようなもの。未練たらたら男に、不倫破れた情緒不安定な不機嫌女。「構うな」と怒ったり「一緒にいてちょうだい」とお願いしてみたり。惚れた弱みなんでしょうが、ほんと勝手にやってくれ~!と言いたくなるような会話劇が終盤に繰り広げられます。・・・正直私にはどうでもいい話なんですが(笑)。

なにしろ神経質そうで不機嫌で、いちいち突っかかってくるアンヌを見ていると、人を罵倒しながら泣くくらいなら1人で勝手に泣いて立ち直れ~、パンツでウロウロ歩くんじゃありませーん!と常識的な私は思ってしまうわけです。ですが、ですが。一方で、飛行士のクリスチャン、アンヌ、フランソワ、リュシー、と幾重にも重なった"愛"の形はそれぞれに自由で、束縛はされず、不器用に迷いながらも人の愛し方は自分で選びたい、というフランス流の恋愛模様が浮き上がってくるものだから、次はどんな主張をされんるんだ!?と怖いもの見たさ状態に。自由な割に、みんな辛そうだとは思うけど。恋人たちよ、まずは睡眠をしっかりとろう。話はそれからだ!

20歳の学生フランソワと15歳(フランスの女子学生って大人っぽいのね・・・)のリュシーの尾行ごっこや謎解きごっこ、それにアンヌのアパルトマンでの会話など、膨大なセリフの一つ一つをごく自然な会話として見せてしまうロメール独特の技法に強ーく惹き付けられる映画でもあります。劇的なことは何も起こらないし、万事解決、人生順調!のような映画ではないけれど、ラストのフランソワ君を見ていると「人生いろいろあるけれど、まぁ、頑張っていこうじゃないかね!君!」と声をかけてあげたくなってしまう、どこか不思議な温かさを感じてしまう映画です。これがクセになるんだよなぁ~



↑今やフランス映画界で独特の存在感を放つベテラン俳優となった、ロメール作品常連のファブリス・ルキーニ。ほんの数秒、オイオイ何てこと言うんだ~と見事に女性を凹ませる「バカ男」なんて言われる役で出ています。こんな何気ない描写も、ちょっとリアルで面白い。




で、こんな風に今まで本当に何となく、雰囲気だけで観ていたようなロメール作品だったけれど、youtubeで『飛行士の妻』に関するロメール監督のインタビュー動画を見てみたら、新発見がたくさんあった!以下は要約の箇条書き(つまり、かなり大雑把!)。


Extracts from an interview to Claude-Jean Philippe for "The cinema of filmmakers" (Le cinéma des cinéastes) broadcasted on France Culture in March 22, 1981.

これはマルセル・カルネへのオマージュ的作品であること(ヌーヴェルヴァーグのカイエ・デュ・シネマ派はマルセル・カルネを嫌っていたけれど、彼の映画を見た時に彼がパリを愛していることがわかったから)。

自然を再構築し人工的に作るという試みをした公園【ビュット・ショーモン公園Parc des Buttes Chaumont】でロケをした理由。15年前にも撮った「Nadja à Paris(パリのナジャ)」という13分のドキュメンタリー映画(ベルグラード生まれでアメリカ国籍を持つナジャは、パリの国際大学都市に住む。パリの様々な界隈を散歩しながら、この街の印象を語っていく)で、この場所における映画的価値を発見したこと。

予定外に雨に降られ、公園を出てから弁護士事務所の入るビルやカフェを決めたこと。

クローズアップが好きではないこと(もし撮るとしたら役者に動きがない時)。アンヌ役のマリー・リヴィエールはフォトジェニックな顔立ちで美しい瞳を持っているけれど、彼女がベッドの上で枕やシーツ、金魚などとどう関わり合うのかを見たい。セットと人物の関係を壊すのが嫌いなこと。

雨や雪などの天候を自然のままに受け入れ、また一方では、撮影前には路上でも構わず何度もリハーサルを行う・・・そんな"リアルさ"と"計算された綿密さ"が同居するロメールワールド。ますます好きになってしまいました。いつか【エリック・ロメール映画】2本目として、3話構成のオムニバス形式でこれまた恋愛の風景を描いた1994年の『パリのランデブー』を書いておきたいなぁ。


■追記(2014年9月)
【エリック・ロメール映画】久々の2本目 『パリのランデブー』 (1994/フランス)
というわけで、やっと『パリのランデブー』を再見してみました!
【エリック・ロメール映画】久々の2本目 『パリのランデブー』 (1994/フランス)


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