お散歩シネマ 映画の世界へ出かけよう!!映画の数だけ、もっと世界は面白くなる! 

『インド・マレガオンのスーパーマン』 (2008/インド)

   ↑  2013/07/04 (木)  カテゴリー: ドキュメンタリー、アニメ
Supermen of Malegaon インド・マレガオンのスーパーマン【NHK 国際共同制作 発掘アジアドキュメンタリー】
●原題:Supermen of Malegaon
●監督:ファイザ・アハマッド・カーン
●出演:シャキール・バーラティー、ファローグ・ジャーファリー、アクラム・カーン、シャフィーク、ナジール・シャイク 他
●抱腹絶倒!映画作りの舞台裏。マレガオンは、インド西部のマハラシュトラ州にあるイスラム教徒が暮らす町。若者たちが、ハリウッドとボリウッドを強烈に意識しながら、人気映画「スーパーマン」のパロディ映画『Malegaon Ka Superman』を制作した。そこには、現代の世界やインド社会への痛烈な皮肉が込められている。最近、マレガオンで生み出される低予算映画は「モリウッド」映画と呼ばれ、インドで人気を博すようになってきた。十分なお金も、撮影機材も、経験もない。それでも映画を作りたい・・・。映画「スーパーマン」の制作風景の一部始終を追いながら、夢を追い、奮闘する若者たちの情熱を描く。2008年度 アジアフィルム賞 in ローマ【ベストドキュメンタリー賞】受賞作品。




インド西部のマハラシュトラ州にあるマレガオン。機織り機の音がひっきりなしに聞こえてくる織物産業中心のこの町の人々は、みんな映画が大好き。「一週間ずっと働き詰めだったんだから、週末は皆でハッピーな映画を観て楽しむんんだ!」歌と踊りと美女とスーパーヒーロー、サービス精神いっぱいの独特な世界観を持つ映画がインド人に好まれるのは、人々の生活の中で「映画」が求められているからなんだなぁ。



このドキュメンタリーでは、マレガオンという町で「スーパーマン」をパロディにした映画『Malegaon Ka Superman』が低予算で作られていく過程をユーモアたっぷりに見せてくれます。いや、制作側はみんな大真面目なんだけれど、それが可笑しく見えてしまうのですね。



スーパーマン役のシァフィークさんは主役なのに一番弱々しい上に、身体を張った過酷な撮影に臨みます。水に飛び込むシーンでは泳げないので溺れてしまって皆でスーパーマンを助けに行ったり、牛乳屋さんがスポンサーのため「牛乳ダイブ」のシーンが盛り込まれたり、空飛ぶシーン(でもメチャメチャ低空飛行)では、荷車から突き出た板にズボンのお尻に切り込みを入れて通すなど、情けない表情を存分に見せてくれます。突っ込みどころも満載です(笑)。





十分なお金も、撮影機材も、経験もない中で撮影は続き、トラブルやハプニングも続出。でも次第にまるでインドの社会を映し出す鏡のように、そこからは彼らの町での生活や人生観、宗教観、映画に対する情熱などが浮かび上がってきます。

家族を養うために「映画はあくまで趣味であるべきだ」と考えるナシール監督、イスラム教徒の多いこの町では女性の出演は難しいという現実、何をやっているのかよく分からない撮影現場で「神に従う者が、こんなものを見てはいけない」とポツリと呟くおじいさん。


たった一台しかない監督の大事なデジタルカメラが、川に落ちてしまった時のこと。撮影も遅れるし修理代もかかるしで、見ている私からしても非常に落ち込んでしまうような悲惨な状況!!としか思えませんでした。でもナシール監督はこう言うんですよね。「これも運命だ」

・・・ただ、ここで私はふと思ったのですが、この大事なデジカメが水に濡れて撮影がストップしてしまう!!という彼らにとっては一大事を、このドキュメンタリー制作側は、それこそ高価なカメラでジーッと撮影しているんですよね。これってちょっとシュールというか、ドキュメンタリーって「映す側」と「映される側」の距離感って難しそうだなーと思いました。私がドキュメンタリー撮影側だったら、かなり居づらい(笑)






監督は、インド映画の聖地ムンバイへ行きたいとは言いませんでした。ここマレガオンで映画を撮り続けたい。宗教の違いで争いが絶えない現実、機織り機を回したくても停電ばかりで思うように収入が上がらない生活、だからこそ、人々を笑顔にできるそんな映画を撮りたいのだ、と。「人生は悲しいことの繰り返し。楽しいことなんて、そんなにない。だからこそ、笑顔はかけがえのないものなんだ」


一度耳にしたら絶対忘れられなくなるようなテーマ曲の歌詞にも『Malegaon Ka Superman』への"愛"が込められています。「スーパーマン♪ 私はマレガオンのスーパーマン♪ 織機の音に乗って街中を飛び回る♪ ヒンドゥ、イスラム、シーク、キリスト、みんなが愛するスーパーマン♪」








出来上がった『Malegaon Ka Superman』のダイジェスト版を観て明るい気持ちで観終わったこのドキュメンタリーでしたが、その後の情報で、主役であるスーパーマンを演じたシァフィークさんが2011年にまだ26歳という若さで癌で亡くなられたことを知りました。
Malegaon Ka Superman Shafeeque dies of cancer at 26【Ummid.com】

シャフィークさんは映画撮影当時まさに結婚したばかりで、本当に幸せそのものでした。彼の幸福だった姿が『Malegaon Ka Superman』に焼き付けられたこと、そしてこの映画がインドのマレガオンの人々に笑顔をもたらしたこと。ナシール監督をはじめ『Malegaon Ka Superman』に携わった人々は本当に素晴らしい仕事をしたのだと思います。

どうか、いつまでもこの映画がシャフィークさんのご遺族をはじめ、マレガオンの人々の心に残りますように。



関連記事

■この記事に関連する映画制作国、地域 : インド映画 

FC2共有テーマ : ドキュメンタリー映画 (ジャンル : 映画

  2013/07/04 | Comment (4) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit

Comment


録画できなかった~!!

これ観たかったんですよ~。
はなまるこさんのレビューを読んだら、まさに観たかった内容で…なんでこういう時に録画失敗しちゃうのか!(涙)
この前観た「僕らのミライヘ逆回転」や「エド・ウッド」を連想するような撮影風景で、映画愛を感じます。映画はお金のあるところだけが作るものじゃなく、チープでも愛がつまった良作はたくさんあるんですよね。こういう良さに気付ける鑑賞者でありたいです!

>大事なデジカメが水に濡れて撮影がストップしてしまう!!という彼らにとっては一大事を、このドキュメンタリー制作側は、それこそ高価なカメラでジーッと撮影しているんですよね。

あはは、確かに。
さすが目の付け所が違います。かなり気まずい空気が流れてそう。
再放送があったら、今度こそ観ます!!

宵乃 |  2013/07/05 (金) 11:15 [ 編集 ] No.133


はなまるこより

宵乃さん、こんばんは♪
ぅわー、宵乃さんのために録画したもの、とっておけば良かったです~i-237i-201
でもきっときっと再放送ありますよ!!楽しみに待っていましょ~♪

私も、逆に宵乃さんのブログを見に行きますと「あ、この映画録画したまままだ観てない・・・i-6」「あ!これ観ようと思っていたのだ!!」というものばかりで、宵乃さんの"感触"が良さそうなのを確認してからチャレンジしよう!といつもいつも思っています(なかなか追いつかないのですがi-202)
観ようと思っているもの、観たものが宵乃さんと沢山重なっていて、なんだか面白いやら嬉しいやら♪です(笑)

そうそう、ところでこのドキュメンタリー映画ですが・・・
"映画愛"というのはお金でもスケールでもないんだな、映画への強い情熱ってスゴイな、と純粋に思いました。ほんと、作りはめちゃくちゃチープですし、表現方法にしたってとても稚拙なのですが、それによって誰かを笑顔にできることや、誰かのための特別な一本になることってそう簡単に出来ることじゃありませんもんね!
>こういう良さに気付ける鑑賞者でありたいです!
ほんとうにほんとうに、その通りだと思いましたi-179

・・・デジカメが濡れてダメになるシーンは・・・観ていても気まずかったです(笑)i-229

宵乃さんへ★ |  2013/07/05 (金) 21:16 [ 編集 ] No.134


やっと観られましたよ~。
期待した通り映画愛がたくさん詰まった作品でした。
みんなを映画で笑顔にしたいという監督さんの気持ちは、映画制作の中でも最も大切なことなんだと改めて気付かされます。
映画を楽しみに仕事に励んでいる、昔の日本にもあった光景なんだろうなぁと思うと遠い地インドだということを忘れました。

工夫を凝らし、大変な思いをしてもみんな笑顔で撮影している様子は本当に見ているだけで笑顔になります。
シァフィークさんの事は残念だけど、きっとこの映画に出られた事は彼にとっても家族にとっても幸せなことだったでしょうね。

再放送を見逃さなくて良かった~。
忘れず観られたのははなまるこさんのこの記事を読んで印象に残っていたからだと思います♪

宵乃 |  2014/08/11 (月) 14:37 [ 編集 ] No.310


はなまるこより

わー、この映画、ほぼ1年くらい前になるんですね。
宵乃さん、よく覚えていてくださいましたね!!スゴイ~i-179

映画愛、溢れていましたねー。
>映画を楽しみに仕事に励んでいる、昔の日本にもあった光景なんだろうなぁと思うと遠い地インドだということを忘れました。
そうそう、なんだか今の日本での映画を取り巻く環境とはまったく異なるのですが、それでもどこか懐かしいような気持ちにさせてくれるんですよね!この「映画愛」たちが^^ 映画一本を見るぞ!というワクワクした感覚を皆で共有する思い・・・いいですよね。

>シァフィークさんの事は残念だけど、きっとこの映画に出られた事は彼にとっても家族にとっても幸せなことだったでしょうね。
彼の"健気なスーパーマン"という存在感あってこその、ドキュメンタリーでしたよね。私も1年経つというのに、彼のおかげでこの映画のことを忘れることはありませんでした。観た人皆を幸せにしてくれた映画だったと思いますi-189

>忘れず観られたのははなまるこさんのこの記事を読んで印象に残っていたからだと思います♪
よかったです!!嬉しい^^
ブログを書いていて嬉しいなぁと思う時があるのですが、映画の話はもちろん、コメント下さった方のことや、記事を書いた人のことなど、ブログを離れることがあったとしても、その映画を思い出すたびにその人のことも一緒に思い浮かぶんですよね。この先、きっと「インドのマレガオン」と耳にしたら、私は必ず宵乃さんのことを思い浮かべると思います♪

宵乃さんへ★ |  2014/08/12 (火) 23:45 [ 編集 ] No.311

コメントを投稿する 記事: 『インド・マレガオンのスーパーマン』 (2008/インド)


  任意 : 後から修正や削除ができます。
  非公開コメントとして投稿する。(管理人にのみ公開)
 

Trackback