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『懺悔』 (1984/ソ連)

   ↑  2013/12/15 (日)  カテゴリー: シリアス、社会派



懺悔 [ アフタンディル・マハラゼ ]


●原題:Repentance、მონანიება(Monanieba)、Покаяние(Pokayaniye)
●監督、脚本:テンギズ・アブラゼ
●出演:アフタンディル・マハラゼ、ゼイナブ・ボツヴァゼ、エディシェル・ギオルゴビアニ、ケテヴァン・アブラゼ 他
●物語の舞台はソビエト連邦時代のスターリンによる恐怖政治を思わせる、架空の国の独裁政権時代。偉人として誰からも尊敬されていた市長が死んだ。人々がその死を悼む中、まるで故人を冒涜するかのごとく毎夜、その墓が暴かれる。誰が?なぜ?遂に逮捕された犯人が法廷で口を開く。それは、狂気の独裁者に翻弄されたとある家族の物語であった・・・。監督は旧ソビエト連邦時代のジョージア(日本語の旧呼称:グルジア)共和国出身で映画界の巨匠、テンギズ・アブラゼ。1987年のカンヌ国際映画祭で審査員特別賞を受賞。日本では2008年12月に劇場公開が実現。



【旧ソ連時代の映画】を観るのは、私なりにけっこう"勇気"のいることです。それはかの大国が辿ってきた激動の歴史に対して、自分の持つ知識があまりにちっぽけである"不安感"から来るものだったりします。正直やはりどこか構えてしまうんですよね。

でもこの映画に関しては、そういった歴史や政治うんぬんを言っているヒマはありませんでした。強烈な異彩を放つファンタジックな映像の連続を目の当たりにすることによって、そんな不安は吹き飛ばされ、「とにかくこの映画は観たい!!観るべきだー!」と強く思わせるものを直観的に感じたのです。どこどこの国の話、と限定することなく"ある国のこんな話"として寓話的に見せてくれていること、導入部分がサスペンスフルなことなど、一度観始めてしまえばグズグズと躊躇うことはありません。


いかにも偉大だったという人が亡くなり、その遺体が何者かによって何度も何度も掘り起こされて邸宅内に置かれるという異常な事態が起こる。犯人は捕まるが「なぜそのようなことを?」と問われる裁判で、被告が事件の経緯(歴史)を語り始める・・・。ここで30分。強烈な掴みなのです。




旧ソビエト連邦の厳格な検閲の下、グルジア共和国で製作された本作は、1984年12月に完成。86年10月、グルジアの首都トビリシでようやく公開された。観る者に1937年のスターリン書記長による大粛清を想起させる内容は、その時代を真正面から批判した映画として、全世界の注目を集めた。(中略)その社会的反響は1991年のソビエト連邦解体にもつながるペレストロイカ(改革)、グラスノスチ(情報公開)の象徴となった。
映画『懺悔』公式サイト イントロダクションより



ある国の、独裁政権下での恐怖政治による粛清。幸せだった家族に起こった悲劇。そして、それが"過去のこと"となった現代に起こる、もう一つの悲劇。そういった一連の出来事が幻想的な映像で紡ぎ出されることによって(これがまるで型破りなフェリーニ風なので尚一層)イマジネーションは刺激され、批判はより痛烈に、また登場人物たちの心の叫びが直接響いてくるかのように感じるのです。もちろん元になっているのはスターリン時代の恐怖政治ですが、決して口には出来なかった体制批判、そんな時代を真っ向から糾弾したのは、怒鳴り声で言葉を並べた演説などではなく、当時のアブラゼ監督による映像の力なのだと実感します。

父が、夫が、生きている証として刻んだであろう名前を探すために、切り出された"木"を材木置き場で必死に探し続ける母親や妻、幼い子どもたち。言葉はないのに、鬼気迫るとても忘れられないシーンでした。


旧ソ連が製作した摩訶不思議なSFコメディ映画。キテレツな砂漠の星へとワープさせられてしまった建築技師と学生が、何とか地球に戻ろうと悪戦苦闘するカルトSFの傑作!
『懺悔』とほぼ同じ1986年制作で、やはり同じジョージア出身の映画監督(ゲオルギー・ダネリア)による、この作品とはジャンルの異なる『不思議惑星キン・ザ・ザ』という【脱力系SFカルト映画】を思い出します。1985年のゴルバチョフ政権誕生をちょうど挟む形で世に出た2作品ですが、ペレストロイカ(改革)とグラスノスチ(情報公開)を実現させたという、強い影響力を持った映画作品としても両作品とも圧倒されるものがあります。




恐怖政治の張本人と言うべきヴァルラムと、思わぬところで過去の悲劇を突き付けられることになる息子アベルを強烈に演じ分けた俳優、アフタンディル・マハラゼ。彼の来日時のインタビューでこんな撮影秘話が語られていました。
アブラゼ監督が、脚本の段階でシュワルナゼ外相に相談したら、シュワルナゼが「是非ともこの映画を作るべきだ」と言い「この作品は、映画だと言わずにテレビドラマということで撮影しなさい」と助言をくれました。当時、モスクワ当局では、映画については脚本の段階でチェックされるのですが、テレビドラマは一切いらない。また映画が出来上がってからも、シュワルナゼのおかげで、ソビエト全土での公開へと至ったのです。
 ※エドゥアルド・シェワルナゼは、もとグルジア共産党第一書記
映画『懺悔』公式サイト「主演俳優アフタンディル・マハラゼ氏 来日インタビュー!」より



オーケストラ!【Blu-ray】



余談ですが、この『懺悔』がNHK BSプレミアムで放映された時に保存しておいたディスクに、フランス映画の『オーケストラ!』も一緒に録画していました。旧ソ連時代の反ユダヤ主義(この映画ではブレジネフ政権下のユダヤ人芸術家の迫害)が主軸となった笑いあり、涙ありの物語でした。図らずも、ソ連史を振り返る一枚となりました。






というわけで。
いよいよ年の瀬も押し迫ってまいりました。毎年この時期になると「あ~、まだあの映画upしてなかったよ・・・」とちょっと後悔も押し寄せてくる自分だったりします。それで駆け込み的ではありますが「今年中に書いておきたい!!」と下書きしてあった映画くらいは、今月のうちに出来る限り載せていきたいなぁと思います。ちょっとだけ頑張ろう!!(笑)




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