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『J・エドガー』 (2011/アメリカ)

   ↑  2012/10/25 (木)  カテゴリー: シリアス、社会派



J・エドガー ブルーレイ&DVDセット【初回限定生産】【Blu-ray】 [ レオナルド・ディカプリオ ]


●原題:J. EDGAR
●監督:クリント・イーストウッド
●出演:レオナルド・ディカプリオ、ナオミ・ワッツ、アーミー・ハマー、ジョシュ・ルーカス、ジュディ・デンチ、エド・ウェストウィック、デイモン・ヘリマン 他
●ジョン・エドガー・フーバー。FBI初代長官にして、死ぬまで長官であり続けた男。“憧れのFBI”を作った明らかな英雄でありながら、彼にはつねに黒い疑惑や、スキャンダラスな噂がつきまとう。国を守るという大義名分のもと、大統領をはじめとする要人たちの秘密を調べ上げ、その極秘ファイルをもとに彼が行なった“正義”とは何だったのか?豪華キャストを配した最強布陣で臨む、事実に基づく隠されたドラマ。




【書籍】ケネディ その実像を求めてアメリカ近代政治史をやっていると【気になる人物】として必ず一度は引っ掛かる名前、それがこのジョン・エドガー・フーバーFBI初代長官(局長)でした。
例えば井上一馬氏の著書「ケネディ その実像を求めて」の中の「ケネディ対FBI長官フーバー」の項にはこんな一節があります。


・・・そのいっぽうでフーバーは、キング牧師の側近に共産主義者がいる、という理由で、キングの電話を盗聴することを提案し、それを実行に移していた。
 フーバーは、驚くべきことに1924年以来40年近くにわたってずっとFBI長官の椅子に座り続けてきた。その間彼はなによりもFBI捜査官の体面を気にかけ、禿頭の人間はけっして入局させなかった。以前にも何度か歴代の大統領が彼の首をすげ替えようとしたことがあったが、そのたびに彼は、FBIの情報網を駆使して大統領の弱みを握り、それを大統領の前にちらつかせて解任を免れていた。
 ケネディもフーバーを解任したかった。だが、彼もまたフーバーに女性関係での弱みを握られていた。両者の関係は日増しに険悪になっていったが、どちらも手の下しようがなかった。ケネディが暗殺されたまさにその日に、フーバーは、ケネディが設置したロバート司法長官の部屋とのホットラインの電話線を引きちぎったといわれている。
井上一馬・著「ケネディ その実像を求めて」講談社現代新書 P.180~181 一部引用

↑か ー な ー り 毒のある、パンチのあるキャラクターです(笑)。
フーバーの在職中に入れ替わった大統領は8人。ルーズベルトは彼に逆らえず、J・F・ケネディは彼の監視下に置かれ、ニクソンにとって彼はこの世でいちばん邪魔な存在となった、と言われるほどの強烈な人物。

なので、私の中では既にフーバーFBI初代長官といえば「悪代官」「闇の権力者」「怪しすぎるキャラクター」でしかありませんでした。そんな人物に対し、なぜクリント・イーストウッド監督は彼を描こうと思ったのか??ディカプリオちゃんは、どうして彼を演じようと思ったのか??この映画を観るにあたっての一番の興味はまずそこでした。





 「J・エドガー」特集:監督クリント・イーストウッド × 主演レオナルド・ディカプリオ [8人の大統領が恐れた男] 【映画.com】
■インタビュー:クリント・イーストウッド、映画製作の原動力は「自分が見えてくる」
■インタビュー:レオナルド・ディカプリオ、イーストウッド監督とのタッグは「これ以上ない幸せ」

インタビューを読んでみたり、これまでイーストウッド監督が常に携わってきた作品を思うと、彼が描いてきたのは心に闇を抱え、業を背負った孤独な人物たち。そう、フーバーもまた然りなんですね。きっと監督がこれまで寄り添うように描いてきた人物像にピタリと当てはまったのでしょう。

日本公開前のインタビューでも以下のように答えていたのも印象的でした。

(中略)・・・だが、「フーバーは結局、敵意より愛情の方が大事だと気づくんだ」。
「愛情」は、右腕のクライド・トルソンとの愛に描き出される。恐怖支配の代償としての孤独を埋めるかのように、生涯独身のフーバーが公私にわたり行動をともにした様子から、人間としての弱さもほの見せる。81歳のイーストウッドにとって、「子供のころ、フーバーはいつもFBI長官だった。しかし情報がすぐ出回る今と違い、我々は彼の多くを知らなかった。えたいの知れない人物で、興味深いと思った」。だからこそ、フーバーの私生活や性格描写に重きを置いた。
朝日新聞 2012年1月27日「J・エドガー」イーストウッド監督に聞く




正直な感想を言えば・・・・・正直に言っちゃいますね、
ディカプリオちゃんが演じるJ・エドガーは(青年期はともかく)、特殊メイクで作られた経年変化が随分と力んでいてわざとらしく、恐らく役者として彼が挑戦したかったであろう"人間性の描写"はちょっと突飛な感じがして、見ていて何だか恥ずかしかったです。特にクライド・トルソンとの痴話喧嘩など、「ちょっとなによ!」「なによったらなによ!キーっ!!」みたいな【おすぎとぴーこの言い争い】を見ているようで・・・。

『ミルク』でオスカーも受賞した脚本家のダスティン・ランス・ブラック自身がゲイという影響が大きいのだろうけれど、どうもイーストウッド監督のトーンとディカプリオちゃんの力み具合があまり合っていなかったように思います。

それでも。
女性運動家でリベラル派の人気者であったエレノア・ルーズベルト(フランクリン・ルーズベルト大統領夫人)を執拗なまでに嫌っていた点をラストシーンの「極秘ファイル」で見せるなどして彼のダークな部分を強烈に見せつけつつも、一方で「クライド・トルソンの墓は、フーバーの議会墓地から数ヤードの所にある」という彼への"愛情"もエンディングの文言でそっと見せるという方法で、女装家、ゲイ、人種差別主義者で嫌われ者、という悪役――そんな人間の中に、弱さや愛情を細やかに描いてみせたのは監督の技だと思いました。

心の奥底に隠した感情をそっと包み込むような音楽も、いつもながら控え目でいて印象的でした。





No, Mr President – how the FBI bosses the White House,Hoover (right), who helped Richard Nixon (left) gain power, was dead by the time Nixon clashed with the FBI over Watergate. Photograph: Bettmann/Corbis 【US elections 2012】 J. Edgar Hoover, left, with his then assistant Clyde Tolson【abc NEWS】
左:リチャード・ニクソン元大統領とフーバー  右:クライド・トルソンとフーバー

「今では想像することも難しいだろうが」というフーバーのイントロダクションから始まる、1920年代からの"時代感覚"の再現も丁寧でした。悪党と英雄。共産主義は悪魔。医者の勧めでタバコはリラックスのためにも吸え、と。「思想を取り締まる」という危険極まりないやり方、国家の安全が脅かされるということ、国家転覆への危機感に過剰反応していた時代。国が辿ってきた歴史や事件を振り返られるアメリカ人がこの映画を観ると、私などとはまた違った感慨を持つのだろうな。


・・・あ、そうだった。
ジュディ・デンチのこと。どの映画で観ても彼女の存在感だけは圧巻。これだけは忘れずに書いておかなくちゃ!彼女が母親役だったからこそ、J・エドガーを描く上での人間味に説得力が出たのは間違いないでしょうね。


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  2012/10/25 | Comment (2) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit

Comment


ご無沙汰しております

ご無沙汰しております。お元気ですか?
忙しい日々が続き、やっとのことでブログ訪問させて頂きました。

政治に疎い私ですが、、最近自分でもびっくりするぐらいジャンルの偏りや、作品の評価に好き・嫌いが出ていることに気付きました。。善し悪しだとは思いますが・・

その点McBealさんはオールジャンルかつ多国籍なので、若干羨ましいです。。

本作品はディカプリオ氏に救われました。笑

S×S |  2012/11/13 (火) 16:58 No.43


はなまるこより

S×Sさん、スミマセンスミマセン
ほんとお忙しい時にわざわざご来訪いただいて!!
コメントも残していただいて、本当にありがとうございました。

いやー、私の方こそ偏りまくっていて、
以前もお話したかと思いますが、このことはS×Sさんのコメントで私が気付かされたことでして
それから「ジャンル分け」をしてみたり、「国別」にしてみたりと
自分のブログと映画歴を見直してみるという、とても良いきっかけになったんですよ~
しかも、私は人のレビューや感想にものすごく影響受けまくっていて
(何しろ自分自身が偏りまくっているので笑)
S×Sさんのレビューは昔からすごく参考にさせていただいています。
この映画もその一つでしたもん!ありがとうございました^^

そうそう、ほんと、この映画イーストウッド×ディカプリオでなければ
観なかったかもしれません!
ディカプリオちゃんとS×Sさんに救われました(笑)

S×Sさんへ★ |  2012/11/15 (木) 21:41 [ 編集 ] No.44

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