お散歩シネマ 映画の世界へ出かけよう!!映画の数だけ、もっと世界は面白くなる! 

『キング・オブ・マンハッタン 危険な賭け』 (2012/アメリカ)

   ↑  2013/11/14 (木)  カテゴリー: サスペンス、ミステリー

キング・オブ・マンハッタン -危険な賭け- [Blu-ray]


●原題:ARBITRAGE
●脚本、監督:ニコラス・ジャレッキー
●出演:リチャード・ギア、スーザン・サランドン、ティム・ロス、ブリット・マーリング、レティシア・カスタ、ネイト・パーカー、スチュアート・マーゴリン、クリス・アイグマン、グレイドン・カーター、ブルース・アルトマン 他
●ニューヨークに暮らすヘッジ・ファンドの大物ロバート・ミラー。一代で巨万の富を築き、幸せな家庭にも恵まれた彼は誰もが羨むニューヨークの成功者。ところが実態は、ロシアの投資で巨大な損失を出してしまい、彼の会社は破綻寸前で、ロバートは会社の売却に一縷の望みを託して懸命の工作に追われていた。そんな最中に、愛人のジュリーと密会し、あろうことか事故を起こしてジュリーを死なせてしまう。しかもその車がジュリーのものだったのをいいことに、黙って現場から逃亡を図るロバートだったが・・・。




自業自得、四面楚歌。必死のギア様が観られます。

ギア様はこの作品で、『フライト』のデンゼル・ワシントンらと共にこの年のゴールデングローブ賞の主演男優部門にノミネートされていたんですね(受賞はアカデミー賞と同じ『リンカーン』のダニエル・デイ=ルイス)


人生も決算も粉飾まみれという、何と偽善的な笑顔の似合うことか。
それはいつもの(ギア様お得意の)ニヤニヤ顔なんだけれど、その裏に隠された追い詰められ度MAXのギリギリ感と、常に冷静すぎるストーリー展開にこちらも煽られてしまいました。状況打開のために打って出る必死さ、痛々しさ、胡散臭さ。「アイスクリームを食べに行っていたんだ」なんてお前は子供か!という幼稚な言い訳からも滲み出る主人公ミラーの愚かしさ。

もともとギア様の演技からは、金融界トップというカリスマ的存在感などほとんど感じられないんだけれど、ギア様の持つボンボン的な甘く空っぽな感じが(褒めているんです)見事にミラーの空虚感とマッチしたんだろうなぁと思います(いや褒めてるんです)。ま、きっとミラーは"偽善"だなんて思ってもおらず、その場その場は彼なりに全力で本気なんだろうけれど。




「逃げ切れるんだろうか、いや、これは逃げ切れないのかも・・・」なんて、途中までは【クライム・サスペンス系】だと思って見ていたのだけれど、「黒人青年ジミーはなぜ偽証までしてくれるんだろう?」とか「娘は事実を知ってどう動くんだろうか」とか、或いはミラーが「こんなこと理不尽だ!!」と大泣きなんかする姿を目にするうちに、誰がどんな基準でどんな行動を選択するんだろうか??を追う【心理ドラマ】へと印象が変わっていきました。

「自分が正しいと思うことをしなさい」というスーザン・サランドンや、同じセリフを口にしながらも金持ちを毛嫌いして手段を選ばず、己の正義を振りかざしてミラーを追い込んでいくブライヤー刑事(ティム・ロス)の行動も強烈。互いのイヤラしさ全開で繰り広げられる二人の尋問シーンは見ものです。







ミラーには完全に寄り添えないけれど、彼を知ることのできるセリフが2つ。
なぜジミーなんかにファミリーの命運を託したんだ?の問いに対する「彼は我々とは違うからだ」。持ちつ持たれつの損得ばかりの"金の関係"とは違う何か・・・・ジミーとの間だけには、血の通った人間としてのミラーの姿が見え隠れします。「お金を受け取ったら何て言われるかな」("If I take this, then what does that say about me?")と躊躇したジミーが印象的でした。

そしてもうひとつは、二重帳簿を指摘された時に娘ブルックに放った“You're not my partner, you work for me”。絶体絶命の窮地に陥った際、(出来の悪い息子は完全スルーで)味方にならない者は出来の良い娘であっても彼の人生の歯車の一つにしてしまう、そんな彼の持つ"無関心さ"が怖いなと思いました。

ちなみに、この「お前は部下だ!!」発言はギア様のアドリブで出てきたものだったそう。続けて“That's right! You work for me. Everybody works for me”とドヤ顔で念押しちゃうところがちょっとツボでしたが。そういえば、父ミラーとは対照的にホワイト系の衣装ばかりを着る彼女の無垢なイメージは、このシーンで最も際立っていましたねぇ。







ジャレッキ監督自身の両親がトレーダーだったこともあり「この世界のこういったタイプの人たちを知っている」と答えているだけあって、家族が皆絶望的に偽善の仮面を纏って出席する、この華々しい慈善パーティーの虚しさと言ったらもう・・・。寒々しく哀れにも見えるミラーのラストシーン、彼が何をスピーチするつもりなのか、観る者にその後の彼の運命を委ねる手法は強い余韻を残します。

※余談ですが・・・・この悪徳を背負った背中を追う"ルック"の素晴らしさ!←撮影監督は、ヨリック・ル・ソー。フランソワ・オゾンやジム・ジャームッシュ、ホウ・シャオシェンといった各国の映画監督や、日本の作家吉田修一らと共に素晴らしい映像美で物語に惹き込んでくれるシネマトグラファーさんの功績です。

このブツっと切れるこのエンディング、私はすごく好きでした。・・・きっと、私たちが思わず期待したくなるようなドラマチックなことは何一つ起きないだろうけれど。この映画、ある意味ブラックでシニカルな大人のコメディとでも言えるかもしれませんね。

あ、それと最後に!酷すぎる邦題の件ですが、私は何も言いますまい。ホント酷すぎるんで!!





■追記
映画冒頭のインタビューでミラーが答えていた"悪いことは必ず起きる"というセリフは、映画的にはもちろんミラーの人生を象徴するものでもあるんだけれど、『泳ぐひと』で見た50年代以降のアメリカの経済の一端である"すべてを失うことへの恐れ"を人々が抱え、心のどこかで一瞬ですべて失った大不況という一世代前の記憶が刷り込まれていたのかもしれない、という側面にピタリと繋がるようで興味深かったです。

 『泳ぐひと』 (1968/アメリカ)
『泳ぐひと』 (1968/アメリカ)




関連記事

■この記事に関連する映画制作国、地域 : アメリカ映画 

FC2共有テーマ : アメリカ映画 (ジャンル : 映画

  2013/11/14 | Comment (2) | Trackback (1) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit

Comment


こんばんわ

ごめんなさい。記事見落としていました。
拝読して笑ったぁ。
はなまるこさんのギア様論(笑)
おっっしゃるとおり。胡散臭さは昔は無かったですもんね。
アイスを食べに行くなんてアホな理由は見え見えですね。奥さんはもうとっくに気づいてたんですよね(・-・*)

「キング・オブ・マンハッタン」邦題なのに横文字。
そのパターンで成功してる例を見たことがありませぬ!!

mia☆mia |  2014/04/03 (木) 18:44 No.277


はなまるこより

mia☆miaさんヽ(≧▽≦)ノ"こんばんは~♪コメントありがとうございましたi-178

>ごめんなさい。記事見落としていました。
いやいやもう、全然見落としていただいて構いません(笑)。私のダラダラblogですから、目についた記事でもあれば読んでいただけるだけで感謝です~i-237

>はなまるこさんのギア様論(笑)
>おっっしゃるとおり。胡散臭さは昔は無かったですもんね。
>アイスを食べに行くなんてアホな理由は見え見えですね。奥さんはもうとっくに気づいてたんですよね(・-・*)

ギア様のこと好きなのに、なんでだかいつも軽~く書いてしまうんです(笑)ゴメンナサイ!でも「アイスを食べに行ってたんだ☆」というあのシーンは、ほんとギア様にピッタリ過ぎてちょっと笑いましたi-190ミエミエすぎる言い訳ですが、奥さんはまぁいつものことねーという感じでずっと流していたんでしょうねぇi-202

>「キング・オブ・マンハッタン」邦題なのに横文字。
>そのパターンで成功してる例を見たことがありませぬ!!

そうそう!本当にそうですね(笑)!
あと、アレです、「リチャード・ギアの キング・オブ・マンハッタン」とかだったら
もう絶対に完全スルーしていた自信がありますっゞ(≧ε≦o)プププッ

mia☆miaさんへ★ |  2014/04/03 (木) 22:04 [ 編集 ] No.280

コメントを投稿する 記事: 『キング・オブ・マンハッタン 危険な賭け』 (2012/アメリカ)


  任意 : 後から修正や削除ができます。
  非公開コメントとして投稿する。(管理人にのみ公開)
 

Trackback


この記事にトラックバックする (FC2ブログユーザー限定)

キング・オブ・マンハッタン -危険な賭け-

キング・オブ・マンハッタン -危険な賭け- [DVD](2013/09/03)リチャード・ギア、スーザン・サランドン 他商品詳細を見る 【ARBITRAGE】 制作国:アメリカ 制作年:2012年 マンハッタンを闊歩するヘッジ・ファンドの大物ロバート・ミラー。 幼少の頃から「世界はM-O-N-E-Yの5文字で回っている」と悟り、 2008年の世界的金融危機も先見の明で回避。彼が...

miaのmovie★DIARY 2014/04/03