お散歩シネマ 映画の世界へ出かけよう!!映画の数だけ、もっと世界は面白くなる! 

『ワールド・ウォー Z』 (2013/アメリカ) ※原作&映画版ネタバレ全開でいきます

   ↑  2015/08/20 (木)  カテゴリー: アクション、パニック



ワールド・ウォーZ 3D&2DアルティメットZ・エディション



●原題:WORLD WAR Z
●監督:マーク・フォースター
●出演:ブラッド・ピット、ミレイユ・イーノス、ジェームズ・バッジ・デール、ダニエラ・ケルテス、デヴィッド・モース、ルディ・ボーケン、ファナ・モコエナ、アビゲイル・ハーグローヴ 他
●妻と2人の娘と平穏な日々を送っていた元国連捜査官のジェリー。ある日、家族を乗せた車で渋滞にはまった彼は、謎のウイルス感染によって凶暴なゾンビが瞬く間に増殖する現場に遭遇してしまう。そして必死で家族を守り、間一髪で逃げ延びたジェリーのもとに、現場復帰の要請が入る。いまや謎のウイルスの爆発的な感染拡大で、全世界が崩壊しようとしていた。そこで、かつて伝染病の調査や紛争地域での調停に手腕を発揮してきた彼に、調査隊への協力が求められたのだった。愛する家族の安全と引き換えに、調査への同行を決意したジェリーは、米軍とともに、混乱が拡がる世界各地の感染地域へと向かうのだったが・・・。



※この記事は、2013年のレビュー記事を訂正・加筆→再投稿したものです。

WORLD WAR Z 上 (文春文庫)

WORLD WAR Z 下 (文春文庫)


まずは、これを抜きに映画を語れないわ~!と思ったマックス・ブルックス(メル・ブルックス&アン・バンクロフト夫妻の長男)による原作「WORLD WAR Z」について。

原作では「Z」感染が最初に発見されたのは中国となっていて、それを政府がひた隠しにしたために一気に感染拡大が進んだ・・・という非常にリアルな設定になっていました。しかし映画化にあたっては、やはり今や巨大マーケットとなった中国を無視することは出来なかったとのこと。他にも移民問題とか臓器の違法移殖による原因などもありましたが、Zの起源については大人の事情ということで映画版ではウヤムヤになっていました。

「この世界で実際に起こっている本当に怖いもの・・・911、イラク、アフガニスタン、カトリーナ台風、地球温暖化、世界的な金融危機、鳥インフルエンザ、新型インフルエンザ、SARS・・・そういったものに対して、様々なシステムが崩壊してきているように人々は感じているんじゃないかと思う」
 Max Brooks Is Not Kidding About the Zombie Apocalypse【The New York Times】

ニューヨーク・タイムズで原作者ブルックス自身がこう述べたように、それは現実世界の恐怖を"ゾンビ世界"に落とし込んで描いた世界観ですから、小説版の生々しさは強烈でした。恐ろしいのは「Z」感染そのものだけではなく、背に腹は代えられない追い詰められた人間たちが引き起こす、隠蔽、略奪、内戦、粛清、経済崩壊、難民への爆撃、人間の選別、核戦争など。それはまるで政治社会学のリアルなシミュレーションのよう。

コンテイジョン



むかしからゾンビ映画って人気のあるジャンルですが、ゾンビそのものやその世界観というのは何かの"メタファ"だったりして、実は奥が深かったり。こういった人間の集団心理行動などを見ていると、スティーブン・ソダーバーグ監督の『コンテイジョン』なんかにも相通ずるものを感じます。







で、やっと映画版『ワールド・ウォーZ』の感想を。

「Z」そのものの描写は他の"爆走系ゾンビ"と大した違いはなく、ゴア描写等含め目新しさは感じられませんでしたが、その奇をてらうことのないキッチリとした手堅さが逆にワールドワイドな物語に安定感を出していたのだと思います。さらに、全体的にはシリアス調なわりによかれと思ってやったことが悲惨にも裏目に出るなんていうズレたリアルさが笑いを誘う部分もあって、タイトにまとめられた映画版の中でユニークなテンポを生んでいたと思います。

例えば「自然は弱さを強さに見せようとする(キリッ)」とかカッコいいことを言っていた【人類の希望の星】とまで思われた若きドクターがいきなりスっ転んで自分を撃って死んじゃうとか、夫が心配で携帯かけたら着信音でゾンビが覚醒ちゃって米軍大パニックだとか。これって「このキャラクターは生きるだろうなと思っていた人がいきなり死んだりすると面白いですよね(笑)」という監督の意図そのままだったみたいですね(笑)。

というわけで、独自の構成・展開のためブラピの世界一周双六のようになっていた『ワールド・ウォーZ』でしたが、それでもマーク・フォースター監督いわく
「イスラエルや韓国など、現実の世界でも戦争の火種を抱える地域が映画の舞台に選ばれている。Zと人間の戦いは、現実にある国家同士の戦争の暗喩でもある」
  ※希望とは現実に挑むこと/国家の暗喩?「その通り」 【2013.8.10朝日新聞】
だから映画版も原作のトーンをそれなりに引き継いでいる、というわけなんですね。




ただ、このゾンビ映画。あるシークエンスだけがかなり大きくクローズアップされ、世界各国で政治的に物議を醸すことにもなった映画となりました。

日本では映像的には話題になりましたが)映画版で最も力の入ったあのエピソード、イスラエルでのZ襲撃についてです。


この部分、実は原作では、イスラエルがエルサレムを放棄したことによって国内で内戦が勃発してしまうという展開になっていました。ところが今回の映画版においては、エルサレムを含めイスラエルは巨大な城壁によって守られていたものの、"或る出来事"から壁はゾンビに突破され、侵入を許してしまうという内容へと変更されていました。

これは、内部が調和したにもかかわらず外部からの攻撃で全ては崩壊し全滅するという、パレスチナ・イスラエル問題に過敏に反応する現実の中東情勢から見るとかなり衝撃的なものだったと思われます。和平共存が実るというユートピアを見せたところで、いきなりイスラエルの壁は何の役にも立たず、パレスチナとイスラエルの和平が外側から切り崩されるという・・・映像的にはもちろん大迫力なのですが、それを圧倒的に上回る衝撃の展開でした。

しかも映画では、"壁"建設の正当性を説いていたことなどから「『ワールド・ウォーZ』の"Z"はシオニズム(Zionism)のZなのでは!?」とか「これはイスラエルのプロパガンダ映画で、親イスラエル的作品だ」といった批評やコメントが各国のメディアから噴出し、ツィッターなどでも熱い議論が続きました。

↓各国の大手紙による記事のタイトル&内容の簡単な引用はコチラ
イスラエル【Haaretz.com】:批評家たちは親イスラエル的なプロパガンダ映画として酷評
カタール【GulfNews.com】:『ワールド・ウォーZ』は親イスラエル映画か?・・・世界中の論争を巻き起こした
カタール【Aljazeera】:「Z」はシオニズムの略だ (※アルジャジーラの編集方針ではなく、あくまでも意見・寄稿として)
【The Times of Israel】:トルコではエルサレムのシーンの字幕を「Jerusalem」ではなく「Middle East(中東)」へ変更
【The Times of Israel】:レバノンではエルサレムのシーンには検閲が入り、カットや編集が加えられている
アメリカ【Washington Post】:『ワールド・ウォーZ』のイスラエルの壁が問題を提起する
アメリカ【Los Angeles Times】:『ワールド・ウォーZ』はイスラエルと中東について何を語っているか?


tapelinepink.jpg
エルサレムでのシークエンスについて、もう一つ。

日本版Wikipediaを見ると「避難民が歌い始めたイスラムの祈りを大音量のスピーカーで流したため」という記述があるのですが、これは誤り。あれは祈りなどではなくイスラエルでは非常にポピュラーなヘブライ語の“Od yavo shalom aleinu”という歌なんです。


城壁内に入ったパレスチナ人女性が、今や"和平の象徴"となったこの歌をイスラエル人らと共に歌い始めるとその輪が次第に大きくなり、それが皮肉にも"ノイズ"となって「Z」を刺激する引き金となってしまうのですよね(歌詞は以下の通り)。


Ohd yavo shalom aleinu (Peace will come upon us /平和は私たちの上へ)
ve’al kulam        (And upon everyone /すべての人々の上に)
Salaam (Arabic)      (Peace /平和)
Aleinu v’hakol haolam  (Upon us and the whole world /私たちと世界中の上に)
salaam salaam       (Peace, Peace... /平和、平和)


報復と憎しみの歴史を乗り越えた喜びは一瞬で切り崩されました。ハリウッド大作のゾンビ映画として、よくここまで描いたものだと思います。いや、ゾンビ映画だから描けた、ということなのかな。






、結局のところ。
ブラピが実子も養子も抱きしめたり世界を駆け回る国連職員だなんて「コレはアンジーの影響か!?」なんて思いつつも観ていた『ワールド・ウォーZ』でしたが、最後の「君も戦いの準備をしてくれ!」みたいなエンディングは何だかとってつけたようで、うーんちょっと拍子抜けでした。

もちろん原作と映画は別物だと考えても、例えばそれまで親兄弟や知人といった愛する人々が「Z」になった途端、彼らを容赦なく"始末"しなくてはいけない、そういった悲しみや痛み、遣り切れなさなど、人間性や躊躇といった繊細な部分がこの映画ではほぼ木端微塵でしたので。悲哀の色がないと、ゾンビ映画はただのアクション映画になってしまいがちですね。

それと、どーしても突っ込みたくて仕方ないのは「米軍」!!
「コイツ、ゾンビに見向きもされなかったんだぜ♪あっはっは☆」とか言ってないでさっさと上に報告しろー!日本の社会人の常識は【ホウ(報告)・レン(連絡)・ソウ(相談)】だ!ってことですよ、まったくもう。


関連記事

■この記事に関連する映画制作国、地域 : アメリカ映画 

FC2共有テーマ : 映画レビュー (ジャンル : 映画

  2015/08/20 | Comment (5) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit

Comment


こんにちは!

ラッシュ/プライドと友情の試写会、お声を
かけていただきありがとうございました、本当に
嬉しかったです♪
ただ残念ながら、我が家のPCは年季がはいってきて、
動画固まってしまうんですよ、残念です。。
けど、声をかけていただき嬉しかったです、ありがとう
ございました!

映画の話
わたしも、最近見ました、Z
(最近ブログさぼりっぱなしで書いていないですが笑)

インパクトのあるシーンはほとんど、予告編で
見せてくれてしまっていましたね。

あの場面で携帯の電源入れっぱなしな、ありえない
ドジなブラピに爆笑しました(笑)

タマ |  2013/12/24 (火) 10:19 No.211


書き忘れていました

メリークリスマス♪

タマ |  2013/12/24 (火) 10:35 No.212


はなまるこより

タマさ〜ん v-354メリークリスマスv-354お返事&コメントありがとうございました~♪

あー、試写会ムリでしたか。ザンネン!i-201
でも、私も前のパソコンの時、やはりパワーがなくて
動画がガチガチに止まってしまって観られなかったんです。
またいつか機会がありましたら・・・・・i-229

タマさんもご覧になりましたかー、Z!
そうそう、映像的には予告編が全て!でしたよね(笑)
それに世界規模の一大事という時の、あの携帯ったらもう・・・・・
しかもブラピが必死で自転車こいでるし・・・・i-202
もし映画館で観ていたら、笑いそうになるのを必死にガマンしている自分の姿が
容易に思い浮かびます(笑)プププ
色々突っ込みどころのある面白いブラピ×ゾンビ映画でしたねーi-179

タマさんへ★ |  2013/12/24 (火) 21:49 [ 編集 ] No.213


こんにちわ。はなまるこさん☆

最近、アメリカ映画ご覧率が高くなってるご様子♪
共通鑑賞映画が増えて嬉しいデス。
しかしながら。わたくしこの映画は未見でして・・・・。
ゾンビにブラピときたら是非鑑賞しなくてはですね。
(ワタシが感想文書くとしたら、もうホントしょうもない文章になるの
今から判ってますが・・・)
はなまるこさんの手にかかると、たかが(?)ゾンビ映画がそれだけでは
終わらない。
すごく深いですね!!
鑑賞したら又来ます。

今年も、楽しく行き来させていただき感謝しております☆
はなまるこさんとのオシャベリはすっごく自分を高められるし
この上なくHAPPYです☆
来年もどうぞヨロシクお願いいたします。

良いお年を!!!川*'-'*川/

mia☆mia |  2013/12/29 (日) 16:49 No.216


はなまるこより

mia☆miaさん、こんばんは~♪
ご訪問ありがとうございますi-178

そうですねー!今年は(ワタシのわりに)新しめの映画もちょこっと増えたかなーと思います。
なにせ、mia☆miaさんのレビューを読んでいると「こ、これは面白そう!!」と
思わず引きずられていってしまうのですよ~(笑)
影響大!のmia☆miaさん、来年もついて参りますッ!!どうぞよろしくお願いいたします♪



・・・あ、そうだ映画の話だった(笑)!
ブラピがゾンビ映画をやるとここまで大きな話になってしまうのか~!と
それだけでもハリウッド映画のスケールの大きさにワクワクでしたが、
でもそのスケールの割には小ネタ的なネタもあったりして
色々な意味で楽しめるゾンビものになっていたと思います♪
mia☆miaさんのレビュー、今から楽しみに待っていますネi-190

来年もまた、mia☆miaさんと、ブログと、パソコンと、ご家族様にとりましても
素敵な一年となりますようにi-175どうぞ良いお年をお迎えくださいませi-179

mia☆miaさんへ★ |  2013/12/29 (日) 22:00 [ 編集 ] No.217

コメントを投稿する 記事: 『ワールド・ウォー Z』 (2013/アメリカ) ※原作&映画版ネタバレ全開でいきます


  任意 : 後から修正や削除ができます。
  非公開コメントとして投稿する。(管理人にのみ公開)
 

Trackback