お散歩シネマ 映画の世界へ出かけよう!!映画の数だけ、もっと世界は面白くなる! 

『小さいおうち』 (2013/日本)

   ↑  2014/02/01 (土)  カテゴリー: ロマンス、ドラマ
山田洋次監督最新作『小さいおうち』公式サイト 
●監督:山田洋次
●原作:中島京子『小さいおうち』
●出演:松たか子、黒木華、片岡孝太郎、吉岡秀隆、妻夫木聡、倍賞千恵子、橋爪功、吉行和子、室井滋、中嶋朋子 他
●大学生の健史は、亡くなった大伯母・布宮タキから彼女が遺した自叙伝を託される。そこには、健史が知らない戦前の人々の暮らしと若かりしタキが女中として働いた家族の小さな秘密が綴られていた・・・。昭和初期、山形から東京へと女中奉公に出たタキは、小説家の屋敷に1年仕えた後、東京郊外の平井家に奉公することに。その家は、赤い三角屋根が目を引く小さくもモダンな文化住宅。そこに、玩具会社の重役・雅樹とその若い妻・時子、そして幼い一人息子の恭一が暮らしていた。3人ともタキに良くしてくれ、タキはそんな平井家のためにと女中仕事に精を出し、とりわけ美しくお洒落な時子に尽くすことに喜びを感じていく。ある年の正月。平井家に集った雅樹の部下たちの中に、周囲から浮いた存在の青年・板倉正治がいた。美術学校出身の心優しい板倉に恭一がすぐに懐き、時子も妙にウマが合って急速に距離を縮めていくが・・・。




先月、我が家が加入しているプロバイダーの試写会に初めて当選して、自宅にて鑑賞。最近、所謂「おうち試写会」によく当たって嬉しいなぁ。





映画の冒頭、火葬場の煙突から真っ白い煙が立ち上っていくカットがあるのですが、これを見て「邦画を観るってやっぱりいいなぁ」としみじみ感じました。本当に些細なことなんでしょうけれど、こんな小さな場面でも故人を偲ぶ登場人物たちの心情を自然に汲み取ることができるのは、やはり身近な生活の中にある1シーンだからなんですよね。あーもっと邦画を観ようっと!


・・・・・と思っていたのも束の間(笑)。
そのうち「これはまるで朝の≪連続テレビ小説≫なんじゃないか!?」と思うほどお行儀のよい話になっていったので、私の気持ちは萎んでいく一方・・・。つまるところ、これは邦画・洋画云々とかいうことじゃなくて、ただ単に山田洋次監督の語りぶりが今の私には合わなかったのだろうな。【赤い屋根の小さいおうち】の外観も妙にメルヘンチックで、一体コレをどう捉えたらよいのか・・・うーむ、見ていて変な居心地の悪さを感じました。

あ、でもタキちゃんは良かったですよ!"昭和の地味なお顔立ち"そのままで。純粋で一途で一生懸命で優しくて強いタキちゃんを黒木華さんが演じたことは、(映画化にあたって)唯一絶賛されてよい点だと思います。


一方、タキちゃんに慕われる平井家の奥様 時子さんを演じた松たか子さんですが・・・

所作も言葉遣いも美しいお嬢様育ちでありながら(←ここまでは松さんの味が出ている)、どこか危なげな情熱を秘めている感じが"演じている"のは分かるものの、口には出さねど抗いきれない高揚感や背徳感というものが、なんだか紋切型に見えてしまうんです。でもこれって、松さんのせいだけでもないような気がするんですよねぇ・・・・

タキちゃんが奥様の脚をマッサージするというシーンがあるんですが。ここ、山田洋次監督のお考えなのかどうかわかりませんが、脚をドーン!と投げ出しているだけの大雑把な撮り方なんですよ。タキちゃんがドギマギしてしまうような、奥様のオトナの無邪気な色っぽさを見ることは残念ながら出来ませんでした。うーん、それならば、タキちゃんが熱のこもった女中部屋で汗ばんだ二の腕を剥き出しにして休んでいたところ、時子さんがやって来たので慌てて袖を下す・・・なんてシーンの方がよっぽどドキっとしました。






そ、そして「それを言っちゃあお仕舞いよ!」という正直な感想を。
人妻である松さんが心奪われてしまう板倉さん、いくら戦争によって男性が少なくなったとはいえ、映画の絵的にあのワンワンみたいな髪型で本当に良いのだろうか、あれが昭和のクラシックな芸術家のヘアスタイルなのだろうか、だとしたらあのスタイルと吉岡くんは本当に似合っているのか??奥様のハートをギュッとつかんで離さない!!そんな魅力を実感できる俳優さん(出来ればお若い人希望)を、山田組以外から選ぶことは出来なかったのだろうか・・・。






あーそれで、私はどうしてここまでこの映画にチグハグな印象を持つのかな?と(不安になって)、試写会の後に原作小説も読んでみたんです。その理由、ちょっとだけ分かったように思いました。

小さいおうち[中島京子]


原作では、時子奥様は恭一坊ちゃんを連れて平井の旦那様と再婚していたという設定であり、また、男女問わず誰もが彼女に魅了されてしまうという危うい魅力に満ちた女性として描かれていました。山田洋次監督の映画版では、年上の洗練された奥様に対するタキちゃんの淡い思いや細やかで深い心の結びつきなど、その温もりさえも感じ取れた女性のリアルな部分はかなり削ぎ落とされていたように思います。設定はだいたい同じでも、人物描写の重さやバランス、匂いなどが小説とだいぶ異なっていたんですね。


山田洋次監督がこの映画で本当に言いたかったのは、道ならぬ恋に落ちていく人妻の止めようもない情熱に似た、今思えば暴挙としか思えない戦争へと転がり落ちて行った日本の姿を重ね合わせ「誰もが不本意な選択を強いられた時代」をもう二度と繰り返してはならない!小さなおうちの中にあったような人々の小さな幸せを二度と奪う時代であってはならない!ということなのかな、と。

それはそれで良いのでしょうが、私は年老いた小さな背中を震わせて「長く生き過ぎた・・・」と嗚咽する倍賞千恵子さん演じるタキおばあちゃんの姿がこの映画の中で最も印象的でした。彼女が戦後の時代にたった一人で抱えてきたものは何だったのか?――あの小さなおうちの幸せなご家族と奥様をお守りしたかった、それが叶わないのなら自分だけ生きながらえるよりも本当は一緒に死にたかったのでは・・・と。これだけでもその時代の持つ背景が胸に迫るようで、妻夫木君にペラペラ喋らせるよりもずっとずっと心に残るセリフだったと思います。






「今どきこんな爽やかカップルいないよなー」と思いながら見た終盤。
"個人情報"をキュレーターが教えてしまうなんて、なんとなく気分のよくない流れもあり(原作では、健史が来館者ノートから盗み書きしてきてしまうという・・・・これもいやだ・・・)、おまけに恭一坊ちゃんを泣かせてしまうという、私にとってはこれはギャグなのか!?と思うラストに驚愕して幕を閉じたこの映画。

絵的には微妙、山田洋次節がやや臭く、最も胸に迫るはずだった空襲シーンでのあまりのチープさ逆に衝撃を受け、全国に吹き荒れているという「感動しました!」の嵐に私は乗れなかったのだな・・・と実感した次第です。

きっとまた早いうちに地上波放映があると思うので、その時に再見して自分のこの感想を確認してみようと思います(←今回は久々の邦画ということで、何だか自分の映画の見方(感想)に今一つ自信がない。いつもと何が違うんだろう・・・・??)。


関連記事

■この記事に関連する映画制作国、地域 : 日本映画 

FC2共有テーマ : ☆試写会☆ (ジャンル : 映画

  2014/02/01 | Comment (2) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit

Comment


こんにちわ はなまるこさん

初めに・・・・
>自分の映画の見方(感想)に今一つ自信がない。いつもと何が違うんだろう・・・・??)。
これだけは言えます。自信持ってください!
はなまるこさんの映画を捉える感覚と文才溢れるレビューにいつも感動している人間がここに1人ヾ(´▽`*)ゝ

この作品をすっかり最初から最後まで見たような気分になりました♪

邦画って、どうもキャスト選びが大雑把な気がしますよね。
大人の事情があったり、俳優という人口が少ないせいもあるかも知れませんが、もっと無名でも雰囲気にぴったりあった人を使うなどして欲しいです。

お家で試写会。当選おめでとうございま~す☆(^O^)


mia☆mia |  2014/02/04 (火) 16:29 No.235


はなまるこより

mia☆miaさん、こんばんわ~♪
いつもコメントをありがとうございます~i-189

いやー、せっかくおうち試写会に当てていただいたにもかかわらず
「映画館で観たらもっと違う感想なのかなー」とか「褒めの一言も発せられず悪いなー」
とかちょっとモジモジしながら(笑)この記事を書いたところでしたi-229
私なんか文才のブゥの字もありませんよ~オハズカシイ(。v_v。)

>邦画って、どうもキャスト選びが大雑把な気がしますよね。
>大人の事情があったり、俳優という人口が少ないせいもあるかも知れませんが、もっと無名でも
>雰囲気にぴったりあった人を使うなどして欲しいです。

あーなるほど!そうですね、俳優の数が少ないせいもあるんでしょうねi-202
いつもどこかで見る役者の使い回しのようにも見えて"新鮮味"なんて完全になかったですねぇ。。
mia☆miaさんの励ましを頂いたことで、まためげずに映画を選んでいこー♪と思えました。
ありがとうございます~

そう!そういえば今日ですね、こちらでは雪が積もりました!!i-4
雪!極寒!といえばmia☆miaさん、「ザ・グレイ」ですよi-204リーアム・ニーソンですよi-204
mia☆miaさんのレビューを読んで以来「雪が積もったら絶対に観る!!」と決めていた映画です。
借りてきましたよぉ~
観終えましたら、またmia☆miaさんのブログに遊びに参りま~す☆楽しみ楽しみ♪

mia☆miaさんへ★ |  2014/02/04 (火) 21:54 [ 編集 ] No.236

コメントを投稿する 記事: 『小さいおうち』 (2013/日本)


  任意 : 後から修正や削除ができます。
  非公開コメントとして投稿する。(管理人にのみ公開)
 

Trackback