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娘の話と、『ラースと、その彼女』 (2007/アメリカ)

   ↑  2014/02/05 (水)  カテゴリー: ロマンス、ドラマ




ラースと、その彼女<特別編>


●原題:LARS AND THE REAL GIRL
●監督:クレイグ・ギレスピー
●出演:ライアン・ゴズリング、エミリー・モーティマー、ポール・シュナイダー、ケリ・ガーナー、パトリシア・クラークソン 他
●雪に覆われた小さな田舎町。町の人たちからも慕われている心優しい青年、ラース。しかし、純粋すぎるがゆえに極端にシャイで、女の子とまともに話すことも出来ない。そんなラースを心配していた兄夫婦のもとに、ある日、当のラースが"彼女"を紹介しにやって来た。しかし驚いたことにその彼女とは、インターネットで購入した等身大のリアルドール「ビアンカ」だった。困惑する兄夫婦は医師に相談し、当面ラースの妄想に話を合わせるようにとの助言をもらう。そこで町の人たちにも協力を仰ぎ、みんなでビアンカを生身の女性として扱うことにするのだが・・・。




実はこの映画、一番最初に観たのはGyao!のオンライン試写会(いや、当時はYahoo動画だったかな?)でして、恥ずかしながらその時は主演のライアン・ゴズリングのこともよく知らず、そして今回再見するまでなぜだかずーっと「カナダ映画」だとばかり思い込んでいた私。

そんなせいもあって、今回観直してみたらまるで新しい作品を観る時のような、めちゃくちゃ新鮮な気持ちで鑑賞することができました。






いわゆる"リアルドール"のビアンカを、主人公ラースに紹介される兄夫婦。

このシーン、以前観た時はエミリー・モーティマー演じる義姉カリンが機転を利かせてラースに合せようとする反応を普通に「うんうん、そう言ってあげた方がいいよね!」なんて笑って観ていたけれど、いや普通だったら確実に仰天&動転のあまりに陣痛がくるような状況でしょうよね(笑)。

そう、以前はコメディだと思ってさらっと流して見ていたけれど、今の私はこの数年ですっかり現実路線になってしまった。だからこそ、なお一層この映画は≪理想の世界≫のように思えました。





、突然ここで私事なのですが。
実は、私の6歳になる娘はいわゆる"脳機能障害"を持って生まれました。
一口に「障害」といっても(例えば落ち着きがないとか何かに強いこだわりを持つ等々)その症状の出方は人によって様々です。

私の娘の場合はといいますと・・・楽天的でありながら慎重型のマイペースさんである一方、一度会った人の名前は勿論のこと、誰がどんな服を着ていたとか、どこで何を買ったか、どこに何が書いてあったかなど、様々な場面を事細かに覚えているという記憶力が凄まじい面もあったりします。

つまり"定型発達"の子どもたちと比べ、発達や能力に偏りがあるんです。でも、映画のセリフや歌も私より完璧に覚えていたりと、私の方がタジタジになるほど「型にはまらないユニークで面白い子だな~」なんて呑気に思っていました。

しかし、そんな娘が成長するにつれ、それが本人の生き辛さになるのでは?という心配が生まれました。それ以降、ここ数年は大学病院の専門家や地域の発達支援センター、園のカウンセリング、就学前には教育センターなど、本当に数多くの方々のご縁や支援に恵まれてきました。周りのお友達や大人たちからの支えや理解、協力の中で育てられているんです。


で、どうしてここで娘の話を出したかというと。

いわゆる"普通の人"とは違う突拍子もない言動をとると、その人は少なからず奇異な目で見られたり、嘲笑の的となるのが≪厳しい現実世界≫の反応です。が、この映画でのラースの町の人々は違いました。皆でラースを受け入れよう!と。

もちろん強い対人恐怖症を拗らせてしまったかのようなラースと娘のケースは全く違いますけれど、ラースに対する町の人々の協力を見ていて「娘もこんな風に周りの人に受け入れてもらっているんだ、だから娘は安心して成長しているんだ」と、何だか他人事とは思えなくなってしまったんです。

人は多かれ少なかれ互いの理解の中で生きているとは思うのですが、試行錯誤の育児の中で自分が経験してきたことに重なり合う部分、共鳴する部分が多くて、今回はこの物語が胸がジーンときてしまったのでした。





この映画でちょっと面白いなと思ったのは、町の人々が「ラースに協力しましょう!」と決めた経緯。

教会を中心とした町において「あんたのイトコはネコに服を着せてるでしょ」「あんたの甥っこは全財産をUFOクラブに寄付したじゃない」と互いのオカシなところを突っ込みながら「大事なのはイエス様ならどうするか?ということ」と、神や信仰を通じて行いを決めたこと。もし万が一、ラースが普段から不信仰者だったとしたら、彼は一体どんな風に理解されたのかな?そんなことも思いました。

それと改めて感じたのは、ラースは"ビアンカ"を通して母親と共に過ごすはずだった時間を再現し、体験し直そうとしていたのではないかな?ということ。無条件に愛され、寄り添い、時にぶつかり合い、分かち合い、尊敬し、そして死を見取ること。ビアンカとの出会いから別れまでは、母親とのそれを実体験していないラースにとって、兄と話していた大人になるための必須の経験、通過儀礼、人生の再構築だったのかもしれないな、と。




触れられること、抱きしめられることに痛みを覚えるほどデリケートな心の持ち主だったラース。変わること、失うことが怖くて"造花"で安心していた彼も、ビアンカと一緒の世界なら葛藤を抱えながらも乗り越えられたのだと思います。

そんな彼を辛抱強く静かに見守ってくれた女医役のパトリシア・クラークソン。ビアンカの血圧を測って「だいぶ低いわね」なんて冷静に言い放つ彼女の演技は、なんだか強く頼もしい母親のようにも見えました。あんな風に私もドッシリ構えていたいな。



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  2014/02/05 | Comment (5) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit

Comment


こんにちは!
この作品、大好きなんですが、こんなに優しく受け入れられるなんてあり得ないことだと決め付けて観てました…。

>「娘もこんな風に周りの人に受け入れてもらっているんだ、だから娘は安心して成長しているんだ」と、何だか他人事とは思えなくなってしまったんです。

そうですよね、現実は厳しくても、理解ある優しい人だってたくさんいますよね。
わたしも周りの人の優しさをうっかり見逃していたかもしれないと、思わず振り返ってしまいました。
再見する時は、もっと素直なこころで観られそうです!

>互いのオカシなところを突っ込みながら「大事なのはイエス様ならどうするか?ということ」と、神や信仰を通じて行いを決めたこと。

このシーンは印象的でした。ホント、ラースが不信仰だったらどうなってたでしょう…。それでも兄夫婦のために協力してくれたでしょうか。
最近スポーツによる地域住民の繋がりを描いた作品を観て、スポーツってすごいなぁと思ってましたが、それ以前に信仰による繋がりもあったのかも!

>ラースは"ビアンカ"を通して母親と共に過ごすはずだった時間を再現し、体験し直そうとしていたのではないかな?

おぉ、たしかに!
一連の体験を母親に置き換えるとしっくりきます。ストンと納得できましたよ~。
新しい観方を教えてもらって、再見がますます楽しみになりました♪

宵乃 |  2014/02/06 (木) 16:37 [ 編集 ] No.237


はなまるこより

宵乃さん、おはようございます!コメントありがとうございました♪

>こんなに優しく受け入れられるなんてあり得ないことだと決め付けて観てました…。
私も最初に観た当時は、宵乃さんの言葉そのまま、そう思ってましたi-229
こんないい人たちだらけの町なんて、やっぱり映画だよなーと。
(他の監督が撮ったら悲惨な話にもなりそうな題材ですし・・・)
でも実際に自分が支えられる側になって改めて観てみたら、本当にガラっと印象が変わりました。
それから、こういう人間でありたいなとも思えました。

>最近スポーツによる地域住民の繋がりを描いた作品を観て、スポーツってすごいなぁと思ってましたが、それ以前に信仰による繋がりもあったのかも!
おぉ、もしやこれは「僕はラジオ」のことでしょうか!?
残念ながら私は未見なのですが・・・外国映画を観る時にその底辺に流れている道徳観
みたいなものには、やっぱり信仰心も少なからずあるのかもしれないですよね。
無神論者は助けてもらえないかな(笑)?

>一連の体験を母親に置き換えるとしっくりきます。ストンと納得できましたよ~。
いやーi-229 もしかしたら本当に恋人が欲しかったという気持ちかもしれませんが
でも、動かない&喋らない"人形"が相手だったからこそ、ラースは苦痛を感じることなく
"リハビリ"が出来たんでしょうね!
考えてみたら、ラースを最初に理解しよう!としてくれた義姉も女医さんも町のおばさんも
みーんな女性でしたね。
よく障碍者の家庭で言われることは「自分の子どもに障がいがあるなんて!」と
受け入れることが難しいのは父親の方が多いと聞きます。
母親の場合、現実的に状況をドーン!と受け入れやすいのかもしれません。
というか、子どもの将来のことを考えたら
うじうじ言ってるヒマがないのかもしれません←ウチの場合ですがi-229

宵乃さんとラースのお話ができて楽しかったです♪
ありがとうございました^^

宵乃さんへ★ |  2014/02/07 (金) 08:54 [ 編集 ] No.238


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 |  2014/02/08 (土) 02:48 No.239


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 |  2014/02/10 (月) 22:09 No.240


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 |  2014/02/13 (木) 21:20 No.241

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