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『めまい』 (1958/アメリカ)

   ↑  2014/03/13 (木)  カテゴリー: サスペンス、ミステリー
 

めまい(Blu-ray)


●原題:VERTIGO
●監督:アルフレッド・ヒッチコック
●出演:ジェームズ・スチュワート、キム・ノヴァク、バーバラ・ベル・ゲデス、トム・ヘルモア、ヘンリー・ジョーンズ、エレン・コービイ 他
●かつて同僚を転落死させてしまったトラウマから極度の高所恐怖症を患う元刑事ジョンの前に、ある日旧友が現れる。昼間から夢遊病者のように不可解な行動を取る旧友の妻マドレイヌの調査を依頼され、ジョンは早速彼女の尾行を始めるのだったが、そんなある日、彼の目前でマドレイヌは海に身を投げてしまう・・・。




『ロープ』 (1948/アメリカ)   『舞台恐怖症』 (1950/イギリス) ※ネタバレ注意!
『ロープ』 (1948/アメリカ)    『舞台恐怖症』 (1950/イギリス)

ヒッチコック映画作品は、これまでに学生時代から長~い時間をかけて学校の図書館のLDやVHS、TV放映やDVD-BOXなんかでコツコツと観てきたような気がします。それでも1936年以前のものはまったく手つかずの未見状態。改めて確認してみると、まだまだ未見のものが沢山ありますなぁ・・・

第3逃亡者(1937)、バルカン超特急(1938)、巌窟の野獣(1939)、レベッカ(1940)、海外特派員(1940)、断崖(1941)、スミス夫妻(1941)、疑惑の影(1942)、逃走迷路(1942)、マダガスカルの冒険(1944)、闇の逃避行(1944)、救命艇(1944)、白い恐怖(1945)、汚名(1946)、パラダイン夫人の恋(1947)、ロープ(1948)、山羊座のもとに(1949)、舞台恐怖症(1950)、見知らぬ乗客(1951)、私は告白する(1953)、ダイヤルMを廻せ!(1954)、裏窓(1954)、泥棒成金(1955)、ハリーの災難(1955)、知りすぎていた男(1956)、間違えられた男(1956)、めまい(1958)、北北西に進路を取れ(1959)、サイコ(1960)、鳥(1963)、マーニー(1964)、引き裂かれたカーテン(1966)、トパーズ(1969)、フレンジー(1972)、ヒッチコックの ファミリー・プロット(1976)




"映画"というものを知り尽くしているヒッチコック監督作品は、カメラアングルや光の当て方、小道具やセットの位置に至るまで完璧に練り上げられており、そこに展開される巧みなストーリーはまるで豪華なディナーのよう!観る者を楽しませてくれるサービス精神を感じます。スパイ・サスペンスの巧みさに唸ったり、異常心理の犯人の登場にドキドキしたり、悪趣味スレスレのブラックユーモアにヒヤヒヤさせられたり、軽快に繰り広げられる丁々発止のやり取りにクスリとさせられたり。

そのため、あまりに有名で長年未見のままだったこの『めまい』にも、そんなヒッチコックセンスを期待して観始めたのですが・・・・「どうも他の作品とは何だか違うぞ」と、これまでにない"嫌悪感"を感じて途中降板しそうになるほど、息も絶え絶えで観終えた作品となってしまいました(第1回目鑑賞)。


何等かの恐怖症、消息を絶つ人間、不安定な精神状態・・・そういったいつものモチーフは見られるものの、それらは全て物語の途中で木端微塵。技術的な部分や実験的芸術性がただ飛び抜けているように思え、更に正直に言うなら、この映画が発している"何か"がもう気味悪くて仕方なかったんです。これまでは物語のエッセンスであっても程よくカモフラージュされていたブロンド美女への執着、覘き趣味や死体愛好といった倒錯的・偏執的な愛などが、この『めまい』ではパワー全開、全面に押し寄せてくるんですもん・・・・ジェームズ・スチュワート、ここまでやったのか・・・・

コントロール不能な運命を目の前にした主人公の緊張感は、いつものヒッチコック作品で見られるような期待の展開とはならず、狂気と正気の間を行き来する心理サスペンスは、ズルズルと泥沼に入り込んでいくかのような嫌悪感に変わって終わってしまいました。世間の高評価とのあまりの落差に、90分過ぎたあたりからは「あ、もしかしたら今日の自分は体調が悪いか機嫌が悪いのかもしれない!」と思うことにして、しばらく寝かせてから改めて観てみましょ!と決めていた(放っておいた)作品となっていました。





で、今年に入ってからもう一度チャレンジしたんですよ。健康状態の良い時に。
あぁ、観直しておいてよかったです。初見時には振り回されまくった主人公が執拗に抱く"愛情"への抵抗感が薄まり、冷静に彼らの姿を追うことに集中できたことで、だいぶ印象が変わったのだと思います。


不思議ですね、以前は主人公の行動すべてが不気味で、精神の均衡さえも崩しながら愛する女性の影を求めていく姿をどうしようもなく気味悪く思ったものでしたが、今回はそんな彼の姿があまりに痛々しく、そして不憫に思えてなりませんでした。マデリンの面影を求めて彷徨うスコティ。そのカットには「ONE WAY」という道路標識が映っていたり、また悲痛なまでに鳴り響くバーナード・ハーマンの音楽など、二人の絶望的な行く末を語っているようで特に胸に刺さりました。彼との愛に翻弄されて苦しむキム・ノヴァクの姿にやっと目が行ったのも、今回の大きな収穫です。尾行シーンだけは「や、やっぱり長すぎる・・・」と相変わらず思いましたけど(笑)。

男女の愛にこれだけ強いフォーカスを当て、しかも悲恋物語を描いたヒッチコック監督。この映画だけは妙に感情的・個人的なお話として、他の作品にはない情緒を感じます。

それはきっと、私が最初に出会ったヒッチコック作品が『知りすぎていた男』だったために余計強く感じるのかもしれません。スリルもミステリーも音楽の使い方も絶妙、ユーモアも忘れない巻き込まれ型サスペンスの傑作!(だと信じている)『知り過ぎていた男』が、私の中で揺るぎない存在感を放っているからです。もしもヒッチコック作品との出会いがこの『めまい』だったとしたら・・・私は彼の作品を好きになれたかな!? 今回そんな風にも思いました。


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  2014/03/13 | Comment (10) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit
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Comment


う~、この作品、大の苦手なんですよ。
まさしく、はなまるこさんが初見で感じられた事とまったく同じで、主人公への嫌悪感がこびりついてしまって。
たぶん二度は観たと思うんですが、印象が変わることはなく…。
私には向かないみたいです。
きっぱり諦めて、他の未見作品を観た方がいいかな。

>この映画だけは妙に感情的・個人的なお話として、他の作品にはない情緒を感じます。

ここは少しわかる気がしますね~。これがあるからこそ、思いっきり入り込める人と、完全に拒絶する人に分かれるのかも。
万人に愛されなくても名作は名作ですね!

宵乃 |  2014/03/14 (金) 10:27 [ 編集 ] No.260


ヒッチコック作品は、小学生の時にTVで観た「鳥」の1作みなんですが、なんだか子供には「怖いけど、頭が?」となった記憶しかないのですが、またあらためて観たくなりました。

タマ |  2014/03/14 (金) 13:35 No.261


はなまるこより

宵乃さん、こんばんは♪
あぁ~この記事を書いてヨカッターi-229と思えるコメントをありがとうございました(笑)

名作!!と称えられることの多いこの作品ですが、この映画の主人公の恋愛観(?)って率直に言ってただ気持ち悪いんですよねi-282 髪を染めさせるとか、同じ服装にさせたいとか、女性から見るともう"嫌悪感"しか感じないというか・・・・宵乃さんの仰る通りです。2度目に観た時に彼を痛々しく感じたのは「・・・こうなってしまうと哀れだなぁ」という"上から目線"だったと思います(笑)

私は映画を観てピンとこない時、時間をおいて再見するクセがあるんですi-229
でも、もう二度と見たくない!!と思っている映画もたくさんありますので
>私には向かないみたいです。
>きっぱり諦めて、他の未見作品を観た方がいいかな。

↑もう、まったくをもってそのまま完全スルーしていいと思いますよ~i-199
何度も書いてしまいますが、ほんと主人公の行動が気持ち悪いですもんねi-201

>思いっきり入り込める人と、完全に拒絶する人に分かれるのかも。
なるほどなるほど。もしかしたら、男性と女性の感想にも違いが出てきそうですね!

宵乃さんへ★ |  2014/03/14 (金) 21:18 [ 編集 ] No.262


はなまるこより

タマさん、こんばんは~♪コメントをありがとうございましたi-178

>ヒッチコック作品は、小学生の時にTVで観た「鳥」の1作みなんですが、なんだか子供には「怖いけど、頭が?」となった記憶しかないのですが、またあらためて観たくなりました。
タマさんのコメントを読んだ時に「おぉ!」と思ったのですが、
もしかしたらヒッチコック映画って、初めの一作目の選択が意外と肝心なのかな!?と。

実は私の母は、私が勧めるまで「ヒッチコックってちょっとアタマが??な人なんでしょ」
と言って、なかなか観ようとしなかったんですよ~(笑)i-202
「鳥」や「サイコ」などは、名作とか代表作と言われていますが、ヒッチコック作品への"とっかかり"としては難しそうだなぁと、今更ながら思いましたi-229
しかもタマさんは小学生だったんですもんね!レベルが高いですi-199

タマさんへ★ |  2014/03/14 (金) 21:36 [ 編集 ] No.263


こんばんわ

ヒッチコックは、子供のとき地上波で見た以来見てないです。
【裏窓】【鳥】【サイコ】は覚えてるけど、この作品は見たかどうか記憶が
無いです(-ω-;)

そのときの気分や体調によって、同じ作品でも感じ方が変わるものなんですね☆

はなまるこさんの感想をお聞きして、ワタシもまたヒッチコック作品を見直したい!気持ちになりました。
そして、どのシーンに彼自身が登場してるかも捜してみようと思います。
(・-・*)

mia☆mia |  2014/03/16 (日) 18:21 No.264


こんばんは。
ヒッチ先生の映画なれば、黙って素通り出来ませんね(笑)
この作品、賛否両論だと思います。
私も、何度も何度も見ましたが、いつものヒッチ作品とテイストが違うので、かなり違和感を覚えたものです。
ところが、これは誰も指摘していないので、今からはなまるこさんに、この映画の本当の姿を解いて見せましょう。(そんな偉そうなことでもありませんが…)
他のヒッチ作品と全く違うテイスト。
例えば、『鳥』と『サイコ』、同じ恐怖映画でありなからも、やっぱりヒッチ先生の演出の雰囲気が伝わって来る作品、と言う事には、殆どの人が賛成するでしょう。
『北北西に進路を取れ』も冒険サスペンスでありながらやっぱりヒッチタッチだし、『裏窓』もそれまでの作品とは全く違う内容のサスペンスですが、やっぱりヒッチタッチ。
ところが、この『めまい』だけは、何処かヒッチ先生らしくない。
助長過ぎる演出が目立つ目立つ。
それにイライラしちゃいます。
これには、長年ヒッチ作品を愛したヒッチコキアンたちも、どっか変だねと…。
そこなんですよ、この映画の秘めた恐ろしさは。
ヒッチ作品を見続けたファンでさえも、どこか違和感を覚えるこの作品。
見方によっては、気分が悪くなる人もいるかも知れません。
気分が悪くなる…。
違和感を覚える…。
そう感じた人は、知らず知らずの間に、ヒッチ先生の魔法にかかっているんです。
そうなんです、この映画を見る事で、見る者にめまい、を与えていたのです。
ま、これはいつもの個人的妄想で、どんな本、解説書にも記載されていませんし、ヒッチ先生自身もそんな事は言ってませんから、私の戯言だと思って下さい。
また遊びに来ま~す。

ロッカリア |  2014/03/16 (日) 21:30 No.265


はなまるこより

mia☆miaさん、こんばんは~♪コメントありがとうございますi-80

>ヒッチコックは、子供のとき地上波で見た以来見てないです。
そうそう!昔は夜9時からの映画番組なんかでヒッチコックとかよくやっていましたよね!
なんだか怖そうなんだけれど「鳥」を親と一緒に観たりとかして・・・・
横で親が「このドアを開けるとぉ・・・・!!」とか解説しようとしたり(笑)

>【裏窓】【鳥】【サイコ】は覚えてるけど、この作品は見たかどうか記憶が無いです(-ω-;)
>そのときの気分や体調によって、同じ作品でも感じ方が変わるものなんですね☆

私の場合、タイトルが有名なので観たような気になっていました(笑)。
この映画一度見たらちょっと気持ち悪い印象を持つので、たぶん忘れないと思いマスヨ~i-229
もしご覧になる場合は、この映画の場合体調の良い時がオススメいたします~i-6

>そして、どのシーンに彼自身が登場してるかも捜してみようと思います。 (・-・*)
あははは!そうなんですよね!監督の姿探しも、ヒッチコック作品ならではの楽しみですよね♪
あ、この映画、確認していなかった・・・・ご覧になった時はぜひ教えてくださいi-237

mia☆miaさんへ★ |  2014/03/16 (日) 21:51 [ 編集 ] No.266


はなまるこより

やったーロッカリア先生!!!ご登場ありがとうございますi-237
コメント残していただいて本当に嬉しいです!ありがとうございます。

>この作品、賛否両論だと思います。
>私も、何度も何度も見ましたが、いつものヒッチ作品とテイストが違うので、かなり違和感を覚えたものです。

あぁ・・・やっぱり賛否両論なんですね。ネットでは"賛"の方を沢山見かけたので「こ、この違和感をどうしてくれよう!?」と一人で暫くモンモンとしていましたi-229

>他のヒッチ作品と全く違うテイスト。
>例えば、『鳥』と『サイコ』、同じ恐怖映画でありなからも、やっぱりヒッチ先生の演出の雰囲気が伝わって来る作品、と言う事には、殆どの人が賛成するでしょう。
>『北北西に進路を取れ』も冒険サスペンスでありながらやっぱりヒッチタッチだし、『裏窓』もそれまでの作品とは全く違う内容のサスペンスですが、やっぱりヒッチタッチ。
>ところが、この『めまい』だけは、何処かヒッチ先生らしくない。
>助長過ぎる演出が目立つ目立つ。 それにイライラしちゃいます。

もう、本当にそうなんです!頭をぶんぶん縦に振りながら読ませていただきましたi-203「いつもならこっちにいくだろう、こんな話になるだろう」という所が全部ハズされて、期待していたいつもの"ヒッチコック・タッチ"を全く感じられなかったんです。セリフなしの尾行シーンなど延々と映されて、初見の時は物凄く驚きました。

>見方によっては、気分が悪くなる人もいるかも知れません。
>気分が悪くなる…。 違和感を覚える…。
>そう感じた人は、知らず知らずの間に、ヒッチ先生の魔法にかかっているんです。
>そうなんです、この映画を見る事で、見る者にめまい、を与えていたのです。

ロッカリアさん・・・・・私この映画のラスト、本当に「めまい」がしましたよ・・・・i-6
主人公の行動には嫌悪感を覚えながらもなんとかついてきたのに、そこで何とまた彼女を失ってしまうなんて・・・・本当にめまいでクラクラしたまま映画は終わってしまい、突き放された気分で茫然としたものです。ヒッチコック先生の術中に見事にまはっていたんですね・・・i-202

ロッカリアさんのコメントで、曇っていたこの映画に対する気持ちも少し晴れた気がしますi-229これでまた、新たな気持ちでヒッチコック作品に挑んでいけそうです♪映画愛に溢れたコメントをありがとうございましたi-179ロッカリアさんの解説をお聞かせいただけて嬉しかったです^^

ロッカリアさんへ★ |  2014/03/16 (日) 22:19 [ 編集 ] No.267


ははは、大袈裟!

ロッカリア |  2014/03/18 (火) 23:22 No.268


はなまるこより

えーっロッカリアさん!全然大袈裟なんかじゃないですよ~i-237
やっぱりロッカリアさんのように長年映画をこよなく愛してこられた方のご感想は、
おぉぉなるほど~!と思うことが多くてとっても楽しいんですよi-190
"戯言"でしょうとなんでしょうと、これからもジャンジャンお聞かせください♪
宜しくお願いします!!

ロッカリアさんへ★ |  2014/03/19 (水) 23:44 [ 編集 ] No.269

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