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『さよならをもう一度』 (1961/アメリカ)

   ↑  2012/07/27 (金)  カテゴリー: ロマンス、ドラマ





【DVD】さよならをもう一度/イングリッド・バーグマン


●原題:GOODBYE AGAIN
●監督:アナトール・リトヴァク
●出演:イングリッド・バーグマン、イヴ・モンタン、アンソニー・パーキンス、ジェシー・ロイス・ランディス、ダイアン・キャロル、ジャッキー・レイン、ミシェール・メルシェ 他
●トラック販売会社の重役ロジェと5年越しのつき合いの室内装飾家のポーラは、未だに結婚に踏みきれないでいる。ロジェには他にも遊び相手がいるようで気を揉むポーラだが、互いに束縛しないという不文律が二人の間にあるため、あからさまに嫉妬を表にも出せない。そんな時、ロジェから紹介された取引先のアメリカ人の一人息子フィリップの若い情熱にほだされ、彼との同棲生活に入るのだが・・・。



私は、若さと美貌で輝いていた頃よりも、その表情にしわが刻み込まれたイングリッド・バーグマンの方がずっと好き。彼女の人生に積み重ねられた哀しみと疲れと強さが垣間見えるから。少し演技過剰なところがいつもながら気になるけれど、女優として、女として、円熟期に入ったバーグマンの演技を堪能できる作品。






原作であるサガンの「ブラームスはお好き」に比べると、フランス人はイブ・モンタンだけで、国際派のバーグマン、『サイコ』のパーキンスという、英語とフランス語が入り乱れる不思議。「美人だけれど年のいったパートナー」が若い男に惚れられたのを見て、急に彼女の"価値"を思い出したかのように嫉妬する男。映画『さよならをもう一度』では、イヴ・モンタンのその身勝手さがうまい。


 
「もう少し一緒に歩きたい」「あなたが幸せだと思いたい」。恋によって生まれるエゴが、相手を苦しめるということに気づかない若さと残酷さ。若かりし頃のパーキンスの姿は、どうしても『サイコ』と被ってしまってちょっと怖かったりもしましたが(笑)、愛と孤独を描けるサガン、それを体現できるバーグマンが好き。

原作のポーラのイメージより少し苦味があるかな。でもそれは、生きた人間が演じる"熱"みたいなものなのかもしれない。彼女自身が発する、これまで生きてきたこと、起こってきたことの"証"のような。





【書籍】イングリッド・バーグマン、アラン・バージェス著 新潮社
バーグマンの回想記「マイ・ストーリー」の中に、本作品に関するとても興味深い記述があったので少し引用してみます。

わたしは記者会見の席でいった。「酷い映画って?」
「『さよならをもう一度』フランスでは『ブラームスはお好き?』という題のあれですよ」
「あの映画はフランソワーズ・サガンの小説にもとづくもので、パリでは大当たりをとりましたわ」
「しかし、ひどい映画だ ――ぞっとしますよ」
「いったいどこがそんなにひどいんです?」
「あなたはある男と同棲していて、やがて息子ほども年の違う青年を恋人にする。これは恥知らずなことですよ。それからずっとあなたを裏切ってきたし、これからも裏切りつづけるにちがいない同棲中の男のもとへと帰って行く。いったいこれはどういう映画なんです?」

 これがタフでシニカルなサンフランシスコの報道陣の反応だった!しかしそれは疑いもなくアメリカ人の物の考え方を反映していた。この映画はヨーロッパでは大成功だったが、アメリカではまったくの不入りに終った。
 「イングリッド・バーグマン マイ・ストーリー」イングリッド・バーグマン、アラン・バージェス著 新潮社 p465より

家庭のある身でありながらイタリアのロベルト・ロッセリーニ監督のもとへ走り、アメリカのメディアから一斉に大バッシングされてハリウッドを追放されたバーグマン。女性にはいわゆる「良妻賢母」という理想を求める教会による保守的な意見がまだまだ根強かった当時のアメリカのメディアが、この映画の"愛"について「さっぱり分からない」と評したのはとても興味深いなと思います。


【文庫】ブラームスはお好き 【文庫】優しい関係   

『さよならをもう一度』で描かれているポーラという女性象は、分別があり、自立していて、孤独で、美しい。そして、40歳。20代が永遠にあるように思える時期から、サガンはその先にあるものを知っていた。一瞬にして燃え上がる刹那的な恋に身を委ねること、狂気にも似た情熱からくる若さゆえの過ちなども十分知りながら・・・愛(amour=アムール)を知るサガンは、ほろ苦い女の人生を達観していた。

そして、1956年の『追想』でもコンビを組み、ハリウッドにカムバックしたバーグマンへオスカーをもたらしたアナトール・リトヴァク監督が、彼特有の国籍不明っぽさをうまく表している点。米国映画なのにフランス映画の香りがそこはかとなく漂うというその品の良さが、サガンのそれと似ていてまったく違和感がなかった。

この映画が、合理的で理想的な"アメリカ映画"として見えないのは、こういった要素からくるのかもしれません。






最後に↑このシーンについて。

ポーラ(バーグマン)とロジェ(モンタン)が楽しくナイトクラブで飲んでいるところへ、ぐでんぐでんに酔っぱらったフィリップ(パーキンス)がやってくるという、この「エピック・クラブ」のセット撮影に、『追想』で共演した大スターがエキストラで出演していたとのこと!

えーどこどこ!?と何度か観直してみたのですが、どうもフィルム上ではうまく隠れているみたい。『さよならをもう一度』の撮影現場写真(画像右)を確認してみたら、大混雑したクラブの中央の方で飲んでいたみたいですね、ユル・ブリンナー様!因みに、フランソワーズ・サガンも同様にエキストラ出演していたとのこと。

先述の著書「マイ・ストーリー」でも書かれていますが、映画の内容とは裏腹に、撮影現場はバーグマンにとってとても楽しめた様子。よかったよかった(笑)



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  2012/07/27 | Comment (2) | Trackback (1) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit

Comment


タイトルを見て、こちらの記事を読んで、かなり悩んだ挙句に自分のブログで検索してみて観たことがあるとわかりました(笑)
「サイコ」のパーキンスさんについては何となく思い出せますが、全体のイメージがまるで沸いてきません。
ユル様もさりげなく出演?してたんですね~。

>当時のアメリカのメディアが、この映画の"愛"について「さっぱり分からない」と評したのはとても興味深いなと思います。

感想を読み返したら、だいたい彼らと同じ感想でした(笑)
まあ酷い作品とは思いませんでしたが、共感は出来なかったです。
わたしもバーグマンはこれくらいの年代になってからが好きなのかもしれない?

宵乃 |  2015/02/17 (火) 17:01 [ 編集 ] No.348


再びはなまるこより♪

宵乃さん、コチラにも寄ってくださってありがとうございました☆

>タイトルを見て、こちらの記事を読んで、かなり悩んだ挙句に自分のブログで検索してみて観たことがあるとわかりました(笑)
宵乃さんが悩むほど思い出せない映画(笑)に来ていただいてありがとうございましたi-229

私、10代の学生の頃に通学時間が長くて、電車とかバスでよく本を読んでいたのですが、その頃サガンにめちゃくちゃハマっていた時期がありまして、自分が思っているよりずっとこの"サガンの世界"が自分の中に沁み込んでいるのかもしれません。同じく映画化された「悲しみよこんにちは」なんて、頭の中に残っているのが小説の世界なのか、映画版の映像なのか分からなくなる時があるくらいです^^;

>感想を読み返したら、だいたい彼らと同じ感想でした(笑)
>まあ酷い作品とは思いませんでしたが、共感は出来なかったです。

そうですねー、だからこの映画を見た時も、傍から見れば滑稽な部分もある登場人物たちが織り成す恋愛観が、私にはスンナリ入ってきたのかもしれません。・・・ただ、映像になってすごーく気になるのは主人公が"40歳"という点!むかしと現代の40歳女性の扱いって随分違う気がします。現代バージョンで作ったりしたら・・・なんだかラストも全然違ってきそうです(笑)。

>わたしもバーグマンはこれくらいの年代になってからが好きなのかもしれない?
そうそう、私、イングリッド・バーグマンは、若い頃のただただ綺麗に映っていた頃の彼女より、年を重ねて、もともとの頑固さだとか気骨のある辺りが顔にバンバン出てきてからのごっつい(言い過ぎか!)彼女の方が大好きです(笑)。そういう点ではバーグマンって、私の中ではけっこう"男前"な女優さかもしれませんi-237

宵乃さんへ★ |  2015/02/18 (水) 21:28 [ 編集 ] No.350

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映画「さよならをもう一度」観た

製作:アメリカ’61 原題:GOODBYE AGAIN 監督:アナトール・リトヴァク 原作:フランソワーズ・サガン ジャンル:ドラマ/ロマンス【あらすじ】室内装飾家ポーラは、いつしか5年来の恋人ロジェとの結婚を望むようになっていた。だが、互いに束縛しない約束で、それを言う事もできない。そんな時、彼から紹介された取引先の一人息子フィリップと出会い、彼から熱烈なアプローチを受け…。最...

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