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『ブラック・スキャンダル』 (2015/アメリカ) ※試写会レビュー 第2弾

   ↑  2016/02/03 (水)  カテゴリー: シリアス、社会派
 
●原題:BLACK MASS
●監督:スコット・クーパー
●出演:ジョニー・デップ、ジョエル・エドガートン、ベネディクト・カンバーバッチ、ロリー・コクレイン、ジェシー・プレモンス、ケヴィン・ベーコン 他
●1975年、サウスボストン。アイリッシュ系ギャングのボス、ジェームズ・バルジャーは、イタリア系マフィアと激しい抗争を繰り広げていた。一方、弟のビリーは州の有力政治家として活躍していた。そこに、バルジャーの幼なじみジョン・コノリーがFBI捜査官となって戻ってきた。折しもFBIはイタリア系マフィアの掃討を目標に掲げており、功名心にはやるコノリーは、バルジャーにある提案を持ちかけるのだが・・・。





顔を白塗りにしたり、珍妙なコスチュームなんかで観る者を煙に巻く演技を連発してきたジョニー・デップが、久々に本領発揮!

彼が時折見せるデリケートで感傷的な表情。そしてそのすぐ裏に見え隠れする破壊的な狂暴性。ハゲ頭で冷酷なブルーアイズ。「こんなジョニデを見たかった!」という欲求を存分に満たしてくれる映画です。

最初から最後まで首尾一貫、不穏な空気が流れまくり。特に、皆裏切ることがわかっていて話が進むので虚しさが余計に募るという重々しさに加え、「くるぞくるぞー」というジョニデお得意の緊張感溢れるバイオレンスが要所要所で炸裂するので、ドス黒い雰囲気が充満している映画でもあります。実話ですからね、重い・・・・。



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この映画を観賞し始めてからすぐ、なんだか既視感のようなものを感じました。「スコセッシ作品?あれイーストウッド映画かな?」とか。そう、よく考えてみたら『ブラック・スキャンダル』の舞台は米国ボストンなんですね。

アメリカ建国からの古い歴史を持つ街ボストン。
その南部(South Boston)通称サウシー地区はアイルランド系移民が多く暮らす界隈。ここがこの映画の舞台です。

もともとマフィアやギャングが生まれた背景には、カトリックの国からやってきたアイルランド系やイタリア系といった移民たちの貧しい生活(低賃金労働や宗教差別)がありました。街の世話役として貧しい庶民の就職などサポートをする一方、そこで起こった犯罪は「Code of Silence(沈黙の掟)」で覆い隠され、義理と忠義の帝国が築き上げられることに。

やがて彼らのパワーは政治やビジネスの世界奥深くまで入り込んでいき、そのラインの区別はつかなくなっていくのです。親子代々ギャングとか、兄はギャングで弟は政治家とか。スゴイ世界ですね。


たとえばね、以下は4作品とも全てボストンを舞台にした映画です。

『ミスティック・リバー』

『ディパーテッド』

『ゴーン・ベイビー・ゴーン』

『ザ・タウン』



ベン・アフレックが脚本・監督・主演を務めた『ザ・タウン』の舞台はボストン北東部に位置する犯罪多発地域チャールズ・タウン。さらにベンの弟ケイシー・アフレックが主演の『ゴーン・ベイビー・ゴーン』はサウシーに隣接するドーチェスター地区が舞台。そして、この『ゴーン~』の原作者デニス・ルヘインによる『ミスティック・リバー』はボストン南部の物語として設定されています。また、『ディパーテッド』に登場するギャングのボス(ジャック・ニコルソン)は本作『ブラック・スキャンダル』のジミー・バルジャーがモデル。

"犯罪物"というジャンルだからなのか、或いは古い街並みや訛りという言葉から醸し出されるものなのか、ボストンを舞台にした映画作品の雰囲気はどれも独特の重々しさがあります。

権力の腐敗、汚職、欲望の絡み合う複雑な人間関係。表からは見えない人間の不道徳な部分、陰惨な面が描き出される映画が幾度も作られ続けるのは、やはり人間、こういった後ろ暗い部分に惹かれてしまうところがあるのかもしれませんね。


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で、ますます映画の話から飛んでしまうのですが、そんなボストンを舞台にした映画を"パロディ"にした動画があります。

SNL出身でコメディアンのセス・マイヤーズが司会を務める「レイト・ナイト・ウィズ・セス・マイヤーズ」で放映したもので、ボストンのアクセントから犯罪映画の「あるある」的な"お約束の展開"に至るまでを茶化したフェイク映画の予告編です。

ボストン訛りをよく表す[a:]の発音で、「Boston(ボストン)」を「Baaston(バーストン)」と言ったり、"park the car in Harvard yard."というボストンアクセントを表現する有名なフレーズも"お約束"で決めてきます!"R"の音を発音しない話し方(parkはpahk(パーク)、carはkah(カー))は、よくRの音に弱いと言われる日本人の英語に近いので「日本人には真似しやすい!」とまで言われています(笑)。イギリス英語に近い感じがするのは、やはりこの地域が出来上がってきた歴史が大きいのかな。






さてさて。話は逸れに逸れましたが、やっと『ブラック・スキャンダル』について。

ギャングとFBIが手を組んだ“アメリカ史上最悪のスキャンダル”とも言われ、ウサマ・ビンラディンに次ぐ最重要指名手配者だったとまで言われた伝説のギャング、ジェームズ・“ホワイティ”・バルジャー。

ということで、まぁこれはショッキングでセンセーショナルな事件ではあるんでしょう。実際、2011年6月、81歳にしてジミーが御用となった時、アメリカでは臨時ニュースとして速報で伝えられ、メディアは暫くこの話題でもちきりだったそうですから。

が、これを映画にして、実際に地元ギャングの影響を受けるような生活をしたことのない日本人の私が観たところではですね「はぁそうなんですか・・・」としか言いようがないんです。だってFBIだったらこれくらいのことしてるんだろうな、という米国ドラマの観過ぎなのかも知れませんが大した驚きもなく。なんでしょう【ザ!世界仰天ニュース】なんかを見て「へぇー」と言う感じなんですよ。【奇跡体験!アンビリバボー】でもいいんですけど。



極悪人の心情や事件の全貌に迫った!!という新たな試みらしいものも特になく、事実を客観的に積み上げていくのであれば「仰天ニュース」なんかの再現映像でもいいような気がするし。ジョニデが殺気立った狂犬病みたいなキレッキレの役柄がピッタリで、それを演じてみたい、見てみたいという気持ちも解らないではないですが。

曲者俳優であるケビン・ベーコンがFBIの上司役だったので、ここで何かドカン!と展開があるのかなと思いきや、法の番人としての意識が非常に高い不正に厳しい、ただの人だったので逆にビックリした。何もないのか!(笑)


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しかもですよ、私は今日、これだけは言いたい。
ベネディクト・カンバーバッチ、ほとんど絡まないんですよ!
これこそがアンビリーバボー(涙)。。。

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↑日本での宣伝を見ると、ポスターもそうですが"アンサンブルキャスト"っぽく、カンバーバッチがででーん!と出ているじゃないですか。私はFBIの汚職事件には全然興味がなくて「カンバーバッチが出ている!」という下心?だけでこの映画の試写会に元気よく出向いて行ったくらいだったものでショックも倍増。

「彼(ウィリアム・バルジャー)の話も映画化できるほどの内容だが、今作ではほとんど描いていない。兄が犯罪組織のトップで、弟は政界のトップにいるなんて、まさにシェイクスピアの舞台劇のようだが、彼らがお互いを助け合ったかはわからない。人々が兄ジェームズに恐怖を感じて弟のウィリアムの選挙などで批判(攻撃)することを恐れていたことや、一方でウィリアムが上院議会の議長を務めていたため、警官や捜査官がジェームズを捕まえることをちゅうちょしたことなどの証拠もない。ただ、そんな環境を想像しただけでも怖いね」と明かした。
ジョー・バーリンジャー監督インタビュー:最重要指名手配のギャングのボス、ジェームズ・J・バルジャーを描いたドキュメンタリーとは?【シネマトゥデイ】

「2人(*注)が互いの立場をどう守り、フォローしあっているかについてはあえて描いていない。そこには触れず、2人が強い兄弟愛で結ばれていることだけを示して、あとは観客の想像に任せることにしたんだ」
(*注)ジョニー・デップ演じる凶悪犯ジミー・バルジャーと、ベネディクト・カンバーバッチ演じる政治家ビリー・バルジャー
ベネディクト・カンバーバッチ インタビュー:映画『ブラックスキャンダル』公式サイト Pproduction Notesより


描いてほしかった!ここを見せて欲しかった!
カンバーバッチのどす黒い腹の奥底を見てみたかった~
(・・・あ、でもここだけの話、絶大な権力者だし、ご存命だし、ヘンなことは言えませんものね・・・・)


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兄は20世紀を代表する凶悪犯罪のお尋ね者で、弟は絶大な権力を揮った民主党の大物上院議員だなんて、なんでしょう、このバルジャー兄弟の凄まじいほどのコントラスト
アメリカってスゴイ国ですねぇ。

ウィリアム・バルジャー。
1960年から40年以上に渡りマサチューセッツ州の政界で支配的な力を揮ってきた政治家。1978年以降、20年近くマサチューセッツ州議会上院議長を務め(歴代最長期間)、その後はマサチューセッツ州立大学の総裁職に。彼は70年代アメリカで公民権運動やアファーマティブ・アクション(差別是正措置)といった人種差別問題の中で「差別撤廃に向けたバス通学」(各人種の生徒数の均衡を保つよう、強制的に通学させるのが目的)に真っ向から反対し、国家の介入・干渉に対して抵抗を示して支持された政治家でもあります。



そして、『ブラック・スキャンダル』の映画でもそうですが、実際に彼が兄とどのように関わったのか?という証拠や証言というのは一切あがっていないと言われています。

ただ、ニュースや新聞記事などを読むと、逃亡中の兄ジミーと電話で会話したことを大審院で認めながらも「兄の容疑は冤罪だと信じたい」と議会委員会で証言したり、また捜査当局へは「兄が見つかるような協力はしない」と捜査への協力を拒むなど、実はこの映画の中で最もダークなのは弟ビリーなのではないだろうか!?と思ってしまうほど。


「誰にも見られなければ、なかったのと同じことだ」
映画の中で、ジミー・バルジャーが息子に言い聞かせるセリフですが、この教え、実はビリーも実践していたのでは・・・。確実に、誰にも何にも証言も証拠もとられていないのですから。彼の本当の政治人生、事実を知ったらビリーの人生よりも黒い闇が広がっていたりして。いやいや、まさかまさか、そんなそんな・・・


そして、この映画。エンドロールが逸品です。
ここに出てくる実録映像が、わたし一番怖かったです。背筋が凍りました。
そう、この映画で一番不気味で恐怖を感じたのは、あの『セブン』のタイトルデザイナー、カイル・クーパーによるエンドクレジットかもしれません。
・・・後味の悪さとともにゾワゾワっときますよ。








まぁそれにしても、よく世の親御さんたちは「どんなことでもいいから、好きな事、得意な事を見つけて一番になりなさい」とか言いますけれど、バルジャー家のお母ちゃんは一体どんな育て方をしたんでしょう!? 息子たちは本当に"その世界"で一番になりましたよ。うーん、そんな子育て論の方がじわじわと気になります。ほんと、すごい兄弟だ・・・・



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  2016/02/03 | Comment (2) | Trackback (1) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit

Comment


こんにちわ

ご無沙汰してます。
その節は心温まるメッセージを沢山ありがとうございました!

2016年・・・いっぱい映画を見るぞ!と意気込んでるmia☆miaです。
どうぞ今年もお喋りの相手をお願い致します(^^)/

この映画。。。難しくて暗いイメージがあったので敬遠してたのですが、実話ものなのに面白そうですね。
はなまるこさんのレビューですっかり1本見終わった気分です(*^-^*)相変わらず深い!!し、楽しかったです!
そして、ボストン訛りのクダリは大変勉強になりました!
Rどころかどんな発音もヘタッピですが、将来住むとしたらボストンにします(笑)

また遊びに来ますね☆☆☆



mia☆mia |  2016/02/11 (木) 11:32 No.402


はなまるこより

mia☆miaさん、こんばんは!

私など何もお力になれず歯がゆいばかりでしたが、出来ることと言ったらmia☆miaさんと映画の話をノンビリとすることくらいです。
今年もたくさん、映画のはなしをしていきましょうね!

>この映画。。。難しくて暗いイメージがあったので敬遠してたのですが、実話ものなのに面白そうですね。
そうなんですよー。この映画、私も試写会でなければスルーしていたかもしれません。"暗いイメージ"、合ってます(笑)。私のレビューなんて、もうただ書き連ねているだけなので、mia☆miaさんがこうしてコメント残して下さるだけで感激です!

そういえばmia☆miaさんは、学生さんの頃に英語を勉強されていましたもんね!mia☆miaさんがボストン住まいされたら、きっと最新映画をガンガンレビューして下さりそうで想像しただけでもワクワクします♪いつか実現させてください~☆

こちらこそ、今年もどうぞ宜しくお願いいたします^^
ご訪問、本当にありがとうございました☆

mia☆miaさんへ★ |  2016/02/11 (木) 23:17 [ 編集 ] No.403

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 2016/12/05