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『エクス・マキナ』 (2015/イギリス) ※物語の展開、ネタバレに触れている部分にご注意を

   ↑  2016/06/13 (月)  カテゴリー: サスペンス、ミステリー
映画『エクス・マキナ』公式サイト 







●原題:EX MACHINA
●監督、脚本:アレックス・ガーランド
●出演:ドーナル・グリーソン、アリシア・ヴィカンダー、オスカー・アイザック、ソノヤ・ミズノ 他
●世界最大の検索エンジンを運営するブルーブック社でプログラマーとして働くケイレブは、社内試験の結果、社長のネイサンが隠遁生活を送る山荘に招かれ、1週間滞在できることに。しかし人里離れたその場所は、ネイサンが人工知能を開発するための研究施設だった。そしてケイレブに与えられた役目は、ネイサンが開発した人工知能の実用性と人間性についてのテストに協力することだった。そんなケイレブの前に、女性型の美しきロボット“エヴァ”が姿を現わす。精巧なエヴァに興味を抱き、戸惑いつつも彼女との会話を重ねていくケイレブだったが・・・。





イギリス公開時の『EX MACHINA』のキャッチコピーが面白いなと思いました。

"To erase the line between man and machine is to obscure the line between men and gods"
"人間とマシンとの線引きをなくすということは、男たちと神々の間にある境界線を覆い隠すということだ"

一般的に"Machine"に対しては"Human"を使うところなんでしょうけれど、ここはあくまで"Man(Men)"を。


これってこの映画のド真ん中を突いてきたキーワードじゃないかな、と思うんです。

というのも、『エクス・マキナ』という映画は人間のエゴ、もっと言えば男性側のエゴから生まれた悲劇としか言いようがないからです。







なぜ、AI/人工知能に"性別"を持たせる必要性があるんでしょう?
肉体を持った人間らしく見せるため?「理想の女性を作りたい」という男性の欲求?で、どうせ作るならセックスが出来る方が良いということ?

うーん、私はドランクドラゴンの塚地さんが大好きですが、だからと言って【塚ちゃんロボット】を作りたいとは思わない!ましてやイケメンロボットもいりません(笑)。

私、Pepperくんの真っ黒な大きな瞳を見つめるのだって本当に怖いんですよ。だって、なんだか・・・人間ではないものに覗き込まれる時、居心地の悪さというのか、何か得体の知れない"違和感"のようなものをゾクゾクっと感じるんですよ。あぁ、私は「不気味の谷」を越えられないんだわ・・・・


だから「人工知能を搭載しているのなら外見は人間でなくてもいいのになー」と個人的にはずっと思ってきました。無機質な外見でありながらユーモア満載の『インターステラー』のTARSや、形作るとしても『スターウォーズ』のC-3POか『素敵な相棒 ~フランクじいさんとロボットヘルパー~』といった完全ロボット型で十分なのにな。だって、どんな"思考"を巡らせているかも解らないような目を見るのは、本当に怖い。




一方で、身体を鍛え抜いている社長ネイサンの"肉体の誇示"がとても印象的でした。

ネイサンは強靭な肉体に拘るんですね。
彼が持つのは、他者を力で服従させることのできる強さからくる「支配欲求」の表れなのでしょう。そして内気なケイレブが持つのは、弱い者を守りたいという「保護欲求」。いずれも、男性が持つ心理的欲求の象徴のように思えました。







ところで、AIたちが織りなす問題 ―― そこに"意識"は生まれるか?自己を認識することはあるのか?――といった、これまでも映画や小説の中でも繰り返し語り尽されてきた『2001年宇宙の旅』のHAL9000の反乱や、『ブレードランナー』のレプリカントたちが抱える苦悩、そういったテーマに関しては『エクス・マキナ』という映画ではさほど目新しさを感じることはありませんでした。


でも。
この映画の先にあるもの。
私が怖かったのは、この先の話。


設定された目標を試行錯誤の末に"クリア"した彼女が、今度は外部の人間と接することで更に膨大なデータを蓄積し、複雑な反応を習得し、習熟していったとしたら・・・・



exmachina06.jpg
エヴァは人間に対し、どう接するようになると思いますか?








人間の感情は、複雑な"揺らぎ"を持っています。

意外性のあるものに心惹かれたり、感情に溺れたり、本心とは裏腹の行動をとってみたり。"正しいこと"と理解していても"正しい行い"が出来るとは限らないし、"悪いこと"と思いながらもそれを止めることの出来ない弱さを抱えたりもします。

この白黒つけられない曖昧さや矛盾など、揺さぶられやすい脆さを持つのが人間らしさだと思うのです。


そんな複雑な人間の感情を、人工知能が外部要因からの刺激として記号化し、分析し、無数の組み合わせからなるあらゆる感情表現をパターンとして導き出せるようになったとしたら・・・・



そこに生まれるのは、
きっと人間がまだ経験したことのない未知の感情
人間には到達しえない、もっと何か別の知性


今、現実問題として人工知能は「ディープラーニング」を通して人間の予想を遥かに上回るスピードで進化し続けています。「人間とは何か?」という問題を定義できなければ【自己の思考を認識してしまった人工知能】に対して、きっとヒトは飲み込まれていってしまう。

それは、どこまでいっても、何が起きても、人間のエゴから生まれた"悲劇"にしかならない気がするのです。






≪※この部分、ネタバレ注意です!≫

エヴァは"目的"を達成するために女性性を利用するという正しい選択をしました。

興味を引き、共感を得、同情を引き、名前を呼び、瞳を覗き込み、微笑み、ささやき「"きみ"は素晴らしい」「もっと"きみ"を知りたい」と思わせる。

そこには"感情"などは存在せず、ただ膨大なデータの中から人間の行動理論に基づいた基本を忠実に再現したまで。

その行為がたとえ"模倣"であったとしても、エヴァは感情表現を繊細に表すことで心理面で人間をコントロールし、支配していくことは十分に可能だったのでしょう。人工知能に"肉体"を与えたことで人間の"感情"を奪うことを可能にしてしまったなんて、人間にとっては皮肉な話ではありますね。人間とは、なんと揺らぎやすいものか!

魅惑的な外見の女性にあっという間に心惹かれてしまう男性たち、要注意ですよー!・・・あ、これは、相手がマシンじゃなくても気を付けるに越したことはない話ですね(笑)。







ここからは余談です

映画や小説、ドラマでも、人造ロボットやAIが主役なり端役なりたくさん出てきますね。

メトロポリス [DVD]

新スター・トレック[DVD]


高校生の時に観た『メトロポリス』という古典映画で頭をガツンとやられ、米国ドラマ『新スタートレック』のアンドロイド、データ少佐が人間の"感情"を学んでいこうとする健気さに心奪われて以来、私は「人工知能を持つロボットの話」に魅了されてきました。

ほんと弱いんですよ、この分野。

これらAIロボットの物語には、全力で主人公を救おうとしたり、時には自身を犠牲にしたり、また記憶を失うといった"悲しみ"がどこか付き纏うのです。『ターミネーター2』とか、あと「ドラえもん」もそうかしら。この辺りの魅力が私には堪らない。

ALMOST HUMAN / オールモスト・ヒューマン DVDコンプリート・ボックス


最近では、"心"を持つ高性能アンドロイド刑事と、心に傷を持つ人間の相棒刑事とが織りなすエピソードが毎回心に残った米国ドラマ『Almost Human/オールモスト・ヒューマン』が大好きでした。とても上質なSFドラマで勢いもあったのに資金面の困難で打ち切りになったなんて本当に残念!






【人型ロボット】についても興味深い記事があったので、少し古いのですがここに紹介しておきたいと思います。

「昨年、講演などのためドイツやオランダに行きましたが、先方から、『技術の話は半分ぐらいにして、残りの半分は日本だけなぜこんなに人型ロボットが多いのかについて話してくれ』と言われました。やはり向こうでは、『人を創るといった神と同じ行為をやってはいけない』というキリスト教の影響が根底にあり、人的な形をした自動機械に対して、まだ根底的に抵抗感があるなと思いました。



人間の定義は「機械 ( テクノロジー ) プラス何か」なのです。しかし、その「何か」がはっきりと分かっていないために、新しい機械が現れると常に「人間とは何か」という哲学的問題にぶつかるのです。このため、ロボットが進歩するたびに人間との差異を定義し直すのです。 (中略) 西欧では「フランケンシュタイン・コンプレックス」㊟1に現れるように神話や伝説で人間が人工のものを造ろうとすると必ず、大問題が起こります。神に助けを乞う場合は辛うじて大丈夫ですが。ギリシア神話でもピグマリオン㊟2がそうです。

㊟1:神に代わって人間やロボットといった被創造物を創造することへの憧れと、その創造物によって創造主である人間が滅ぼされる恐れ。 ㊟2:キプロス島の王がガラテアという理想の女性を彫刻し、アフロディテが彫像に生命を吹きいれ、ピグマリオンが妻として迎える。




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