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『卵の番人』 (1995/ノルウェー) ※ラストの展開&ネタバレしています

   ↑  2013/02/11 (月)  カテゴリー: コメディ




【VHS】卵の番人


●原題:EGGS
●監督、脚本:ベント・ハーメル
●出演:スヴェレ・ハンセン、ヒエル・ストルモーン、レーフ・アンドレ、ユーニ・ダール・ブロンダル
●ノルウェーの森に住む老いた兄弟、モーとファーは完璧なルーティンの中で生活していた。同じ時間にとる質素な食事や午睡、時折訪れる客人など、まるで変わることなく続く穏やかな毎日。ところがファーの隠し子コンラードが現れたことで、二人の生活に異変が起こる。鳥の卵のコレクションを抱え、車椅子に乗り、雌鳥のような奇声を発するコンラード。やがてモーは、不気味な甥によって平穏と自分の居場所が失われつつあることに気付くのだった・・・。各国の映画祭で絶賛された、ノルウェーの雪深い森の中で暮らす老人の兄弟を描いたオフビート感覚の美しい寓話。




観終わったあとに「ねぇねぇ、あのラストどう思った??」と思わず誰かに話しかけたくなってしまう映画でした。VHSのジャケットだけ見るとめちゃくちゃ怪しい作品にしか見えません。ま、確かにかなり独特なリズムのある映画ではあるんですが、でもこれはかなり誤解を与えそうなデザインで、私はちょっと悲しい。


映画の冒頭で繰り返される「これさっき観なかったっけ??」と、思わず自分がボケたのか眠ってしまったか!?と疑ってしまうようなおじいさん兄弟の日常生活。これを見せるカメラはとにかく固定。何が何でもカメラは固定。繰り返される平凡な日常と日々の生活の細かなあれこれをただ映し、喋りまくるのはローカル局のラジオのみ。こんな序盤から、徐々に老兄弟の会話が増えてきて、この映画のテンポを掴んでいきます。一段ずつズレている階段のデザインなんて、なんだかこの映画を象徴しているみたいでスゴク印象的。



二人でラジオ活劇を聴いたり、宝くじをしたり、クリスマスの準備をしたり、縫い物をしたり、クロスワードパズルをしたり。お年寄りのゆ~っくりとした、繰り返される日常です。こんな地味な二人の生活のあれこれを見ているうちに、だんだん麻薬的な中毒性を感じ始め、彼らの微妙にツボに入るやりとりや動きから目を離せなくなるんです。

"歓迎"の意味で「赤地に青十字」のノルウェー国旗を出そうと(凍ってしまったので)お湯で溶かしたら赤が消えてしまって「白地に青十字」のフィンランド国旗になっちゃった!という北欧的小ネタとか、配達に来てくれたおじさんが頭に器具を乗っけたまんま「いつものアレやろうやろう」的な感じで始める「風船卓球」・・・ってなんだあれは!?(笑)とか、本当に好きだなーと思いました。





主演の二人は、実際に大戦中共同生活していたというノルウェーの名優スヴェレ・ハンセンとヒュル・ストルモーン。彼らから醸し出される自然な雰囲気にクスっと笑わせられながら観ていたこの穏やかな日々も、ファーがむかしスウェーデン旅行でつくったという息子のコンラードの存在が発覚し、彼の母親が重病なので二人の家にやってくる・・・・というあたりから、少しずつこの物語に微妙な変化が現れてきます。


だって、このコンラードという息子。鳥卵の膨大なコレクションを大事に持っている彼の存在は、これまで綴られてきた素朴なストーリーの中において、あまりに不気味!この存在感はまちがいなくデヴィッド・リンチ級。何がどうなるんだ!?と見守っているうちに、思いがけないエンディングがこの映画のラストを待ち受けているのです・・・・




ユーモアと不条理に満ちた、この奇妙な傑作!

【DVD】クリスマスのその夜に 【DVD】ホルテンさんのはじめての冒険 【DVD】酔いどれ詩人になるまえに 【DVD】キッチン・ストーリー
『卵の番人』は、『クリスマスのその夜に』(2010) 、『ホルテンさんのはじめての冒険』(2007)、『酔いどれ詩人になるまえに』(2005)、『キッチン・ストーリー』(2003)といった、近年日本でも人気の高い北欧映画界のベント・ハーメル監督のデビュー作品なんです。ちょうど現在、渋谷のユーロスペースでは「トーキョーノーザンライツフェスティバル2013」を開催中(2/9-15)。←い、いきたい・・・



※それでは最後に、あの"ラストの展開"についての感想を!

           ↓  ねたばれ注意  ↓





           ↓  ねたばれ注意  ↓



モウはコンラードの部屋で「カッコウの卵」、それからお金と、「父より」という手紙と写真を見つけました。


「神のご加護を・・・・」
神父様にそう呼ばれて部屋に入っていったモウ。この後は急速にセリフがなくなるので、そこからの展開は観る者の想像力に委ねられることになります。


神父様はモウに何を告げたのだろう?
「カッコウの卵」が象徴するようにコンラードはモウを追い出そうとしていたのか?
「父より」のあの小さなモノクロ写真はファーだったのだろうか?
モウが旅立つ時に、それを確認するかのように窓辺から見ていたコンラードは、なんと立っており、しかも歩いているのが見えるという"衝撃"シーンも。



様々な疑問や想像が浮かんでは消えるのですが・・・
もし、写真に写っていたのがファーとは別人だったとしたら、モウはきっと騙されていることを兄に伝えたと思うんですよね。でも。。。たぶんきっとファーだったのかもしれません。「父より」という手紙は、モウには秘密で送っていたのかもしれません。もしかしたらあのお金も・・・?

最終的にモウが選んだ道は、帆に風を受けて走るあの舟の絵のように、自分の行きたい所へ行ってみること、人生で挑戦してみたかったこと、憧れていたことへ一歩踏み出したのかもしれません。だってこの映画で、まさか耳にするとは思いもしなかった「虹の彼方に(オーバー・ザ・レインボウ)」が、ノルェーのまだ夜も明けぬ薄暗い雪道で、でもこれから確かに日が昇っていくことを感じさせるエンディングを力強く飾るのですから。

モウはきっと、この後どこか遠い憧れの地からファーに絵葉書を送ってくるような気がしてなりません。そうだったらいいなぁ・・・。不思議な余韻の残る、私の大好きな映画です。

卵の番人@映画生活



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