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『我が家の楽園』 (1938/アメリカ)

   ↑  2012/01/21 (土)  カテゴリー: ロマンス、ドラマ





我が家の楽園 【CINE STYLE @ SONY PICTURES アカデミー賞セレクション 2011】 【DVD】


●原題:YOU CAN'T TAKE IT WITH YOU
●監督:フランク・キャプラ
●出演:ジェームズ・スチュワート、エドワード・アーノルド、ジーン・アーサー、ライオネル・バリモア、アン・ミラー、ミシャ・オウア、スプリング・バイイントン、ドナルド・ミーク、ハリウェル・ホッブス 他
●ブロードウェイで大ヒットを記録した舞台劇(M・ハートとG・S・カウフマンの『それを持っては行けない』)を「或る夜の出来事」の名コンビ、R・リスキンが脚本化し、名匠キャプラが演出に当たって映画化したヒューマンコメディ。大富豪カービー家の跡取り息子トニーは恋人アリスの家を訪ね、自由奔放に暮らす彼女の家族に好感を持つ。その後、トニーの両親もアリスの家へ招かれることになったが、彼等はアリスのことを快く思っていない。ありのままの姿を見せて両親を納得させたいトニーは、わざと約束の日の前日に訪問することにしたのだが、何とこれが裏目に出てしまい・・・。




人情味あふれる映画にホロリとしてしまった。なんて優しくて温かい映画なんだろう。

フランク・キャプラ監督は1930年代のハリウッド映画界を代表する巨匠であり、彼のユーモア溢れる映画は大好きだけれど、観る時を間違えてしまうといわゆる「キャプラ・コーン」と呼ばれるあまりに楽天的で理想主義的な物語の描き方や、"いかにも"な古き良き時代のアメリカの善人たちの登場に正直辟易してしまうこともあるのですが・・・・



それでも!この映画に次々と出てくるユニークなキャラクターたちが、生き生きと人生に泣き笑いをしている姿を見るのが、私は本当に好きでした。

優しさと力強に溢れた「良い映画」の典型「キャプラ・コーン」を時々欲してしまうのは、そのあまりのセンチメンタルさを知りながらも「人々の善意や正義を信じたい、そんな世界に拍手を送りたい」と思う気持ちが、心のどこかにあるからなのかもしれません。



一家の主バンダーホフを演じるライオネル・バリモアは、撮影以前から実際に関節炎の症状が酷かったため松葉杖をつくという設定となったそうですが、そういった身体的弱さを見せながらも彼の飄々とした存在感は大きく、1932年のエルンスト・ルビッチ監督作品『私の殺した男』でバリモアのセリフに思わず涙したことを思い出してしまいました。そして、同じくキャプラ監督作品の1946年映画『素晴らしき哉!人生』のことも。






イタリアのシチリアからの移民として、6歳の時に「自由の女神」と出会ったフランク・キャプラ監督についてはいずれ一度は書いてみたいと思っているのですが、彼の映画作品たち(『或る夜の出来事』『オペラハット』『スミス都へ行く』『群衆』『素晴らしき哉!人生』など)を思う時、アメリカという国の歴史を無視することはできません。


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時に大笑いしながらも、いつの間にか涙を流している彼の映画作品には(ロバート・リスキンの脚本やジョセフ・ウォーカーのカメラ、ジェームズ・スチュワート等役者の力といった映画的技術が優れていたのは勿論のこと)、大恐慌の影響から巻き起こった経済不安や"赤狩り"による社会的混乱といった"現実世界"を真っ向から捉えている力強さがあり、そしてそういった社会性に対して、個人の政治的信条や社会的見解といったものよりも(リベラルな映画作品を制作していたキャプラは政治的には保守共和党支持者だった)あらゆる垣根を越えたメッセージ――個人の自由と尊厳を愛し守ること――をキャプラ監督は信念のようにずっと持ち続け、それが当時の観客たちの心を強く捉えたのだと思っています。

当時の観客たちもまた、苦しい生活や時代の波に揉まれながらも、スクリーンに映し出される物語に夢を託したり勇気づけられたりしたことでしょう。「映画」にそんな力があった時代を羨ましくも感じます。


そして、コメディ映画とはいっても、行き過ぎた資本主義社会を痛烈に批判したこの『我が家の楽園』は、ヴァンダーホフ老人の「いくら金を儲けても、あの世までには持って行けない」という意味の原題「YOU CAN'T TAKE IT WITH YOU」の言葉を、現代に生きる私たちのもとへ現実味を持って響かせてきます。もちろんそこには「希望を捨てはいけない」という温かな励ましも伴って。






何十年も前に作られたクラシック映画を私が観たくなるのは「どんなに時代が変化しても人の心に訴えかけてくる映画の強さ、そこから生まれる温かな感情はきっと変わらないものなのだ」ということを時々確かめたくなるからなのかもしれません。

仕事に疲れた日の夜にそっと一人で観てみると、シビアで世知辛い現実世界を少しだけ忘れられるかもしれません。嘘でもいいから、ハーモニカや音楽を奏でて誰かとダンスしたくなるかもしれません。

この映画に出てくるお利口なカラスくん、なんと『素晴らしき哉、人生!』でも登場していたハリウッド映画界の名バイプレイヤーだったとのこと!(『素晴らしき哉、人生!』特別版DVD メイキングより)そんな遊び心もあるフランク・キャプラ監督。彼のメッセージは、こんな時代だからこそ語り継がれるべきだと思っています。





参考文献

素晴らしき哉、フランク・キャプラ [ 井上篤夫 ]


■「素晴らしき哉、フランク・キャプラ」集英社新書 
  著:井上篤夫


【書籍】「Frank Capra: The Catastrophe of Success」
■「Frank Capra: The Catastrophe of Success」Univ Pr of Mississippi  
 著:Joseph McBride


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