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『運命のボタン』 (2009/アメリカ) 

   ↑  2012/03/09 (金)  カテゴリー: サスペンス、ミステリー



【Blu-ray】運命のボタン/キャメロン・ディアス


●原題:The Box
●監督・製作・脚本:リチャード・ケリー/原作:リチャード・マシスン
●出演:キャメロン・ディアス、ジェームズ・マースデン、フランク・ランジェラ、ジェームズ・レブホーン、ホームズ・オズボーン、サム・オズ・ストーン 他
●ある日の明け方、ノーマとアーサー夫妻のもとに見覚えのない箱が届く。箱の中には赤いボタン付きの装置が入っていた。その日の夕方、スチュワートと名乗る謎の人物がノーマを訪ね、驚くべき提案をする。「このボタンを押せばあなたは1億円を受け取る。ただし見知らぬ誰かが死ぬ・・・」。ノーマとアーサーは道徳的ジレンマに陥るものの生活が苦しいこともあり、結局ボタンを押してしまう。が、それは想像を遥かに超えた事態の始まりだった・・・。



『運命のボタン』の原作小説「Button, Button」は、なぜか宗教色が濃くなっている映画版に比べると非常に簡潔で、日本語翻訳版の文庫本ではなんと15ページしかない短篇です。

運命のボタン [ リチャ-ド・マシスン ]


映画のように"余計なこと"は一切なく、登場人物は若い夫婦とボタンを持ってくる謎の男のみ。そしてそのほとんどは「ボタンを押すか?押さないか?」を巡る夫婦のやり取りです。人の持つ弱さや愚かしさ、傲慢さといった本質的な部分をゾワゾワと滲ませながら、ラストでその業苦を一突きする!というスピーディな展開。正直に言って『運命のボタン』は短編である原作の方がパンチがあってずっとずっと面白いと思います






で、この映画版『運命のボタン』の場合ですが。
(以下、ややネタバレしています)

選択肢が次々と現れる"通常の世界観"ではなく、サルトルの「出口ナシ(No Exit)」という言葉が予感させる通り、ボタンを押した瞬間から苦しみを背負う世界へと否応なく墜ちていくという"地獄"を、「これでもか!」と言わんばかりに執拗に繰り返し表現していましたね。

NASAがどうとか火星がどうとか映画的な背景を描いてはいますが、「罪を犯した者は煉獄で魂を浄化しなさい(プロテスタントだと永遠に地獄行き)」とか、「自己犠牲の精神とか他者への愛を忘れるな」とか。そして、そういったことを思い出さないと「"何か大きなパワー"が人類を滅ぼすぞ!」なんていう宗教的脅しをかけた映画だなぁと。



アメリカ映画を観ていて時々思うのは、「無神論になりつつある現実社会を憂うこと」とか「キリスト教における"地獄"を恐れること」などをテーマにした作品が、まるで啓蒙キャンペーンの如く繰り返し作られているということ。

特にSF映画やサスペンスものでよく目にする題材となっており、"神"を否定する悪魔主義的なものを恐れたり、逆に神への冒涜や罰を極端に表すという形で、この『運命のボタン』もそうなのですが『1408号室』や『シェルター』などを観た時と同様アメリカという社会や、その文化に住まう人々が心のうちで何を怖がっているのか?或いは怖がらせようとしているのか?というものを、毎回この種の映画から感じ取れるような気がします。映画は産業であり、文化であり、そしてその時代や社会が持つ思想や宗教観を掲げる産物でもあります。ハリウッド映画によく見られるこの類の映画は、キリスト教社会の世界観を強く表した作品ともいえるのではないでしょうか。






Button, Button (The Twilight Zone) ↑ボタンのデザインが映画版とよく似ている「新トワイライト・ゾーン」バージョン

因みに原作者であるリチャード・マシスン(Richard Burton Matheson)は「欲望のボタン」というタイトルで同作が「新トワイライト・ゾーン」にて映像化された際、オチが違っていたために、ひどくがっかりしたといいます。「製作スタジオには、他人の脚本をいじってダメにする連中がいる」(「運命のボタン」ハヤカワ文庫 解説より引用)と言っていたとのこと。

というのも「新トワイライト~」版はいわば"因果は巡る"というオチで作られており、それはショートストーリーとしてはギョッとするような結末の面白さはあるのですが、マシスンの原作が持っていた解釈とは本質が全く異なってしまったからなのです。


そうなってくると・・・
マシスンが「Logan Swanson」というペンネームを使用するほどに嫌ったというトワイライトゾーン版のプロットを一部借り受けている映画『運命のボタン』は、それ以上の展開――人間の罪深さや愚かさを描きながら絶望的なこの世の不条理を壮大な宇宙規模、SFベースで表現するという世界観を持ち合わせた"巨大な話"となりました。マシスンは一体どんな感想を抱いたのでしょう?ちょっと気になるところです。




ところで、『運命のボタン』の原作者リチャード・マシスンという人物は、恐らく映画好きの方であれば一度は必ず出会ったことがあるだろうと言えるほど、年代やジャンルを問わずあらゆる映画作品に携わっている小説家、脚本家です。

『地球最後の男』The Last Man on Earth(1954/アメリカ,イタリア)※脚本に参加
『縮みゆく人間』The Incredible Shrinking Man(1957/アメリカ)※脚本に参加
『地球最後の男オメガマン』The Omega Man(1971/アメリカ)※脚本に参加
『激突!』Duel(1972/アメリカ)※脚本に参加
『ヘルハウス』The Legend of Hell House(1973/イギリス)※脚本に参加
『衝撃の懐妊・私は宇宙人の子を宿した』The Strange Within(1974/アメリカ)※脚本に参加
『ある日どこかで』Somewhere in Time(1980/アメリカ) ※脚本に参加
『奇蹟の輝き』What Dreams May Come(1998/アメリカ)
『アイ・アム・レジェンド』I Am Legend(2007/アメリカ)
『運命のボタン』The Box(2009/アメリカ)
『リアル・スティール』Real Steel(2011/アメリカ)

私は1954年の『地球最後の男』と1980年の『ある日どこかで』が大好き!!
映画もそうですが、マシスン作品を読んでいると「トワイライト・ゾーン」や「夜にも奇妙な物語」の世界に入り込んだように夢中になり、ついついページを捲る手が速くなって夜更かししそうになってしまいます。面白くて夢中になりすぎてしまうのも、ちょっと困りものですね。



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  2012/03/09 | Comment (2) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit

Comment


こんにちは!
こちらは原作どおり短編向きですよね~。
あんまりゆっくり時間をかけていたせいか、余計な事を考えてしまって、そもそもあんなボタン家に入れないよなぁ…と冷静になってしまいました。

>宗教的脅しをかけた映画

あ~、そうでしたそうでした。かなり鼻につきましたね。
やっぱりあれは映画オリジナルでしたか。
脅しなんてしなくても、本質を伝えて、必要なひとが信じるだけでいいと思うんだけどなぁ…。

『ある日どこかで』はわたしも大好きです!
ロマンティックですよね~。
映画しか知らないと、この作品と「運命のボタン」の原作者が同じだなんて信じられないかも(笑)
誰か原作に忠実な「運命のボタン」の短編映画(ドラマ)を撮ってくれないかな。

宵乃 |  2013/09/14 (土) 13:46 [ 編集 ] No.171


はなまるこより

宵乃さん、こんばんは♪いつもコメントをいただきありがとうございます。

この映画は、私の中では勝手に「アメリカの宗教映画枠」というものに入っています(笑)
キャメロン・ディアス、とっても頑張っていて好きでしたが^^;
ほんと、45分ドラマとかでビシっ!と原作通りに作った方が断然面白いと思いますi-234

>あんまりゆっくり時間をかけていたせいか、余計な事を考えてしまって、そもそもあんなボタン家に入れないよなぁ…と冷静になってしまいました。
本当ににそうなんですよね!
まどろっこしいくらいに時間をかけて、ちょっとアートっぽさも入れたり、鼻血出したりとか、
何かスゴイことを言いたげな感じが気になってイヤになってしまう(笑)、そんな映画でした。
(で、よく考えれば、あんなコワイ雰囲気の見ず知らずの人にもらったヘンなボタン、
なんの機械かもわかりませんし、あれ押したくないですよね!i-229警察に連絡するのが一番だ!笑)

>この作品と「運命のボタン」の原作者が同じだなんて信じられないかも(笑)
ほとんど驚愕!ですよね(笑)
同じ原作者から幅広い分野の物語が紡ぎだされることも素晴らしいですが、これが映画化されると、更に輪をかけてまったく別物・別ジャンルになってしまうところは驚きですねー!

『ある日どこかで』は、昔一度レビューを書いていたのですが、
あまりにその内容が酷かったので削除したままになっているんです。
とても印象的で素敵な映画ですよね~!うまく言葉で表せなくてなかなか再UPできないんですi-238
最初に観た時に込み上げてきたあの"思い"だけは、今でも忘れられません。

宵乃さんへ★ |  2013/09/14 (土) 21:59 [ 編集 ] No.172

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