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『アフター・ウェディング』 (2006/デンマーク、スウェーデン)

   ↑  2011/08/30 (火)  カテゴリー: ロマンス、ドラマ



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●原題:EFTER BRYLLUPPET / AFTER THE WEDDING
●監督:スザンネ・ビア
●出演:マッツ・ミケルセン、ロルフ・ラッセゴード、シセ・バベット・クヌッセン、スティーネ・フィッシャー・クリステンセン、クリスチャン・タフドルップ 他
●インドで孤児院を運営するヤコブは、財政的に厳しく破産寸前の状態で行き詰っていた。そんな時、デンマークのある会社から寄付の申し出がある。しかしそれには「ヤコブがコペンハーゲンを訪れてCEOと面会する」という条件がついていた。渋々インドからコペンハーゲンに向かったヤコブはCEOのヨルゲンと会うのだったが、彼はまだどの団体に寄付をするか決めておらず、決定は後日すると語る。戸惑うヤコブをよそにヨルゲンは「娘が週末に結婚するので、式に来るように」と半ば強引にヤコブを招待するのだった・・・。2006年度アカデミー賞「外国語映画賞」ノミネート作品。




デンマーク映画やスウェーデン映画というと、北欧の柔らかな太陽の光や若緑色の自然などと対比するように、極限状態ギリギリまで追い詰められた人間のドロドロとした本性を見せつける暗~いドラマを私は勝手にイメージしてしまいます。きっと大笑いするような楽しい映画もあるのでしょうが、なぜか日本では"内向的な"作品や、パステルカラー調の"センスのいい"作品が好んで公開されるような気がします。

デンマーク語が全くわからないので、まったく馴染みのない言語による映画作品の場合は思い切り「日本語字幕」に頼る他ないのですが、よーく聞いてみると「ヒンディー語」だと思っていたら「インド英語」だったり「ドイツ語」っぽい発音かなぁと思っていたら「スウェーデン語」まで出てくるようで、ちょっと驚かされるところもありました。






私は"あらすじ"やキャッチコピーなどを読まずに『アフター・ウェディング』というタイトルと、レビュー上記に書いた程度の知識だけで鑑賞したのですが、これは自分にとってラッキーでした。何も知らずに観ることができて、個人的には良かったと思います。

鑑賞後に分かったことなのですが、この作品は日本公開時や映画データベースのサイトなどでは、物語の核心に触れるところまで言及しているんですね。公開前から思い切り情に訴えかけるこのアピールは、この作品の醍醐味を失わせているようにも思います。核心を知った上で観るか、私のように知らずに観るかでは、映画への印象が大きく異なることでしょう。



※因みにアメリカ公開時のこのトレーラーは、"核心"には触れずに何かを暗示させるだけ、という非常に良い出来だと思いました(何故かエスニックな雰囲気を漂わせ続けているのが、米国らしい外国映画のアピールですが・・・)。


寝かしつけの時に子どもたちに「ニルスの不思議な旅」を読んで聞かせる優しい家族の姿や、幸せの絶頂ともいえる美しく愛らしい、そしてまだあどけなさの残る花嫁の姿を目にながら「結婚式の後に何かしらの人間ドラマが起こるのだろう」くらいの軽い気持ちで私は観始めたので、水面に落とされた一粒の水滴がゆらゆらと全体の表情を変えていくように、少しずつ変化していく事の成り行きをただじっと息を詰めるようにして見守っていました。純粋に主人公でもあるヤコブの目線で展開される物語を追うのであれば、"核心部分"には触れずに鑑賞できることが最良だと思います。






『アフター・ウェディング』では、何かを決めかねていたり、途方に暮れていたり、感情を抑えていたり・・・そんな登場人物たちの指先や目元を何度も何度もクローズアップで映し出します。彼らの心の揺れを覗き込んでいるような、そんな錯覚に陥るカットです。

人々の間にさざ波が立ち、酷く罵り合い、誰もが悲しみを抱え、そんな感情の混乱から登場人物たちの関係は行き詰まりを見せたとも思えた展開だったのですが・・・私はなぜか途中から、それら寂寥感の間から少しずつ温かな感情を感じていたのです。不思議な体験でした。





映画の良いところというのは、人生を客観的に見ることが出来る上、生き方や心の持ち方を見つめ直し、困難に対するヒントや安らぎを見出すことが可能な点だろうなぁと、私は常々思っています。大袈裟と思われるかもしれませんが、少なくとも私はこの映画に対してもそのように感じました。

何かを失い、傷つけ、何かに巻き込まれ、酷く打ちのめされたようで、実際は沢山のものを得ているのが人生なのかもしれない、と思ったのです。失ったものと引き換えに与えられる何か、ということではなく。「失う」こと自体に「生まれている」ものがあるということ。そして、本当はもう既に「得ている」のに、自分がただ気が付いていないだけだということ。

もちろん以前とまったく同じ時間や幸せは決して帰ってはこないし、「失った」直後には、痛みや苦しみ、悔恨の思いや悲しみなどの感情が重く圧し掛かり、そこから抜け出すこと、忘れること、立ち上がることで精一杯なはずですが・・・それでも、この映画を観ていると、そこから何かが「生まれている」のが感じられるのです。・・・私にとってこの映画は、"救い"と"覚悟"でした。

何もかも目出度い大団円を迎える類の映画ではありませんが、大胆な筋書きの中、最後の最後まで地に足のついた人間の描き方と、人間の繊細さや力強さを感じさせてくれる丁寧な描写がとても好きな作品でした。






因みに大企業のCEOヨルゲンを演じたロルフ・ラッセゴード。

・・・どこかで観たことがある!と思っていたら、昔レビューを書いた1998年のスウェーデン映画『太陽の誘い』(1998年)に主演していたRolf Lassgrdでした(日本語表記では現在「ラッセゴード」もしくは「ラッスゴル」と表記にバラツキがあり、きちんと統一されていないようです)。印象的で力強く、またとても味わい深い演技をされる俳優さんです。

この作品の監督でデンマーク出身のスザンネ・ビア(『未来を生きる君たちへ』が現在公開中)にしてもそうですが、残酷な現実を見つめ、人間への深い愛情を込めた良質の北欧映画が近年ますます注目されてきています。


【トーキョーノーザンライツフェスティバル2011】というサイトでは、今年2月に開催された「北欧映画祭」の上映作品が紹介されています。どれも北欧を代表する映画作品ばかりなのですが・・・そういえばどれも強烈なインパクトの作品ばかりだった!ということにも気付かされました(←トラウマになりそうな作品が多すぎるんですよねぇ)。うーん、これからも時間の許す限り、心して北欧映画と向き合っていきたいと思います!そのためには、相当な精神的タフさも必要となりそうですが・・・(笑)。


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  2011/08/30 | Comment (2) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit

Comment


こんにちは。
これはネタバレなしに観たいですよね~。わたしもまっさらな気持ちで観られてラッキーでした。
アメリカのそのトレーラーは良心的で素晴らしいと思います。あまりにも興行的なものを追い求めた宣伝は、ときに映画の楽しみを奪ってしまいます。この作品以外でも、宣伝に文句を言いたくなる事ってありますよね。

クローズアップ多用は印象に残ってます。「またか」と思いつつも、心の動きが伝わってきて引き込まれました。
この監督さんの静かでずしりとくる心理描写が好きです。

>「失う」こと自体に「生まれている」ものがあるということ。

深いですね~、確かにこの作品は苦しい事、悲しい事を否定的には描いてなかった気がします。
失った代わりに…という事ではないんですね。わたしにはなかった発想で、考えさせられました。

北欧映画はトラウマになりそうなものばかりでしたか(笑)
わたしも幅広く世界の映画を観たいけど、トラウマが増えるのが怖いんですよね~。最近は事前にチェックする事が多くなって、まっさらな心で楽しめる機会も減ってしまったかも。
難しいです!

宵乃 |  2013/06/11 (火) 13:58 [ 編集 ] No.123


はなまるこより

i-179宵乃さん、いつも素敵なコメントをありがとうございます!

この記事は2年前に書いたものだったのですが・・・当時ヘビーなことも多かったためか「レビューがかなりシリアス調だなぁ」と自分でも思いました(笑)。 ただ、そういったおかげでこの物語にシンクロすることができたのかもしれませんね。この映画からは学ばせてもらったことが多かったような、そんな良い思い出があります。

>これはネタバレなしに観たいですよね~。わたしもまっさらな気持ちで観られてラッキーでした。

宵乃さんもご無事だったのですねー!ヨカッタです。いやー、この映画を観た後に初めて「予告編」で"ネタバレ"しているのを見てしまいまして「"それ"を言ってしまったらこの映画の醍醐味はどうなるんだ!?」と、怒りに近い感情がフツフツと・・・i-5 残念なことです。宵乃さんのとおり「映画についてどこまで事前にチェックするか!?」本当に難しい課題ですよねぇ!私もいつも悩みますi-6

>北欧映画はトラウマになりそうなものばかりでしたか(笑)

そうなんですよ~、本当にi-282 この映画の後は、多少コメディ色のある映画にも出会えたのですが、どうも【北欧映画】というカデゴリーには、隠しておきたい人間の心の内を抉るような痛々しさとか"暗さ"を感じてしまうんです。でも、目が離せない。何故なんでしょうね。歴史や地域性、気候や国民性、宗教観などが様々に絡み合ってのことなのでしょうが、北欧映画(特にヒューマンドラマ系)鑑賞前にはいつも体調を整えておこう!と気を付けています(笑)i-201

今日は宵乃さんとスザンネ・ビア監督の映画についてお話できて、とっても嬉しかったです♪コメントを残していただいて本当にありがとうございましたi-80

宵乃さんへ★ |  2013/06/12 (水) 21:48 [ 編集 ] No.124

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